Laughing at the blue sky   作:ロリコン先生

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皆さんはドレスカヨコ当たりましたか?僕は当たりませんでした。
キレそうです。


session5 目の色の違う女

 

「昔を懐かしむ、ね。でもソラさんがいたのって二週間程度だから、言うほど懐かしむって感じでもないけど」

「そりゃそうだけどよ。一応……一年、いや二年か?それくらいの期間は空いてるわけだし、昔懐かしって感じではあるだろ?」

「そうかな〜?……ま、別になんでもいいけどさ。それより一応名目上は捕まってるわけなんだから、その縄、ほどかないで欲しかったな」

 

 ホシノは目線を足元にころがっている縄へと目をやった後、こちらへと咎めるような視線を向けた。つってもあんな適当な拘束で捕まえてるつもりだってなら意味はねぇぜ。

 捕まえるんならちゃんと手錠を使わねぇとな。ちゃんと頑丈なやつ。一部のキヴォトスの生徒は手錠の鎖の部分を引き千切って暴れた奴もいるって話だ。油断はしない方がいい。

 とはいえ相手はボクなんだから油断もするんだろうが。

 

「しっかし、可愛い後輩ばっかりじゃねぇか。しかも五人もだろ?随分と増えたな」

「でしょ〜?」

「そんなに増えたってことは借金は順調に返せてんのか?」

「ぜんっぜん。むしろ増えてるかも」

「まぁ、それもそうか」

 

 肩を竦めて窓の外に目をやる。当の後輩ちゃんたちは先輩を置いてラーメンか。ボクのせいだけど。

 ラーメン、ラーメン。……腹減ったなぁ。腹ぺこすぎてお腹と背中がくっつきそうだ。

 

「……なぁ」

「うん?」

「なんか食いもんねぇか?」

 

 ホシノは今日で何回目になるかも分からない、呆れたようにしてこちらを見つめてくる。

 

「……だから、捕まってる自覚ある?」

「あるけどよ。腹は減るもんだろ」

「それはそうだけどさ〜。用意してる間に逃げたりとかしない〜?」

「するならとっくに逃げてるさ」

 

 あそこまで囲まれてたさっきまでの状況と違い、今はホシノだけだ。多少怪我はするかもだが、逃げるくらいならできるだろう。

 しないのは、単にボクがこの敵情視察すらもやる気がないのと、捕まったことを社長に話すのが億劫だからだ。できることならもう少し先延ばしにしたいね。それこそ襲撃直前くらいで、忙しなくなって社長の余裕が全くなくて、その上でボクの失態が有耶無耶になりそうなタイミングとか。

 ボクがぐでっとパイプ椅子の背もたれにもたれかかって、ぐぅーとお腹を鳴らしてみればホシノは目をぱちくりさせたあと、呆れたように溜息を吐いた。

 

「ほんとそういう適当なとこは変わらないね〜?」

「そっちは随分と変わったみたいだけどな。失恋でもしたか?」

「……ま、そんなとこかな」

「そうか。そりゃ、ご愁傷さまだ」

「……それで、何が食べたい〜?」

 

 ホシノは一瞬目を伏せた。そしてそれを誤魔化すようにうへ〜と笑った。

 

「……肉、かな」

「や、さすがにお肉はないかな」

「ならアイツらみたいにラーメンとか」

「おお。それならあるよ〜」

 

 言うと棚の下の方を漁るホシノ。そんなとこに何があるというのか。成り行きを見守るボクは、しばらくしてホシノが手にしていたそれを見て、「うげ」と声が漏れた。

 

「どしたの?もしかしてこういうの嫌いだった?一応これもラーメンだけど」

「カップ麺じゃねぇか……。しかもヌードルのやつ」

「……ああ、食べ飽きてる感じ?」

「昔ちょっとな……」

 

 ここに来る前、それこそ日々食べていくので精一杯だった頃、とにかく安いカップ麺を箱買いして毎日食べていた。そんな昔の忌まわしい記憶を思い出して少しばかりげんなりする。別にマズかねぇんだが、毎日食っていたともなると飽きる。なんなら今も飽きている。

 

「でもこれくらいしかないよ?」

「せめてインスタントとかねぇのかよ。あるだろ、袋のやつ」

「そんなものないよ〜。あっても具材がないし」

「麺だけはさすがに味気ねぇわな」

「でしょ?我慢してよね。というか捕虜なんだから我慢するのが当たり前じゃない?」

「それを言われると耳が痛いぜ」

 

 仕方が無いので黙って待つ。彼女がお湯を用意している間、沈黙が続いた。

 やることもなくて、手持ち無沙汰なボクではあったが、ことこういう暇な時間は便利屋にいる時の騒がしさと忙しなさを考えれば貴重なので堪能させてもらっている。

 ほんと落ち着きがねぇからな。あいつら。いやカヨコは別にそうでもないんだが、社長がな。調子に乗って問題を起こすもんだから、ムツキとハルカが暴れる。巻き込まれるこっちの身になって欲しいもんだ。アイツらと違ってすぐ死ぬんだぞ。命が幾つあっても足りゃしねぇよ。

 

「……深くは聞かないんだね」

「何を?」

「……色々と。私の事とか」

「……誰にだって聞かれたくねぇ事の一つや二つある。ましてやボクは部外者だ。踏み込むようなことをわざわざ聞く気はねぇさ」

「そっか……。あ、沸いたみたい」

 

 コポコポと湯が沸いた音がポットから鳴ったので、ホシノは席を立ってゆったりとした足取りでポットを取りに行く。

 

「熱いから気をつけてね〜」

 

 そう言ってカップ麺に湯を注いだ。待つことおよそ三分。受け取った箸で中身を混ぜた。

 

「そういや、ミレニアムの方で紐を引けば中身がアツアツになるよく分からん機械があったな」

「へ〜、結構便利そうだけど。貰ってないの?」

「ないね。たしかにありゃ便利だった……。機械が馬鹿でかいことを除けば」

「ありゃりゃ、貰ってないのも納得だね〜」

 

 苦笑いすればパンと手を合わせた後、彼女はいただきますとつぶやく。

 特にそういうこともせずに、既に麺を啜っていたボクからすれば大変お行儀が良くてよろしい。

 しかし、以前から疑問ではあったがここキヴォトスにおいてそういう、いただきますとごちそうさまの文化があることはちょっと違和感がある。だがよ、確か日本が発祥の文化だろこれ。

 そう考えるとキヴォトスは日本の文化圏なのかね。それにしては、他にも色々と文化が入り交じってるような気もするが。

 そもそも宗教の統一性もないしなぁ。トリニティにはシスターフッドとやらがあるらしいが、ボクは行ったことがないので詳しくは知らない。

 

「それで、改めて聞きたいんだけど」

「むぐ……。んで、なんだ」

「さっきも聞いたけどなんのために敵情視察しに来たの?」

「ああ……そういや話すって言ったか。OK、話そうか」

 

 ボクは一旦箸をカップの上に置いて、麺をすするのをやめる。麺が伸びるかもだが、残り少ししかないし問題はないだろう。

 

「今日、ここ、アビドスを襲撃する予定があるんだよ」

 

 フーフーと猫舌なのか、麺を冷まし冷まし食べていたホシノの手が止まる。先程までの和やかな表情ではなく、ボクを尋問しようとしていた時の真剣な表情へと戻った。

 

「……それほんと?」

「これがマジなんだな」

「……時間は?規模は?」

「時間は夜。規模はそれなりってとこだな。なんだったか、ガツガツヘリコプター団?」

「カタカタヘルメット団のこと?」

「そう。あれとだいたい同じくらいの数だと思えばいい」

 

 そういうとホシノは困ったように眉を下げた。ボクは最後に残ったちぢれ麺と具をかっこんで、残ったスープも飲み干した。

 

「……ソラさんも参加するの?」

「イマイチ気は乗らねぇは乗らねぇんだけどな。これも仕事さ。公私混同はしない主義でね」

 

 じゃあ今の時間はなんなんだよ、というツッコミはナシだぜ。

 

「……そっか」

 

 ホシノはそう言うと箸を置いて、隣に立てかけてあったショットガンと折り畳んだ盾に手を伸ばした。

 

「……良いのか?麺、伸びちまうぜ」

「見逃がしてあげようかと思った。別にソラさんに恨みはないし」

 

 彼女はそう言って盾のスリングを肩にかけて、ショットガンを構える。銃口は勿論、ボクの方へと向いていた。

 

「ただ敵情視察をするだけなら、昔の好ってことで適当な言い訳をしてあげても良かった。私だって昔の知り合いといがみ合いたいわけじゃないし。悪いのは依頼をした誰かさんだからね。……でも襲撃に参加して、ここ(アビドス)を奪う手伝いをするっていうなら……」

「なら、どうするんだ?」

「このまま大人しくしててもらうよ」

「……断るって言ったら?」

 

 ボクの問い掛けに彼女は目を瞑った。そうして少しの間沈黙が流れた。

 少しはゆっくり出来ると思ったんだが、案の定こうなるわな。それが分かってたから言う気なんかさらさらなかったんだが……。その場のノリで言うって言っちまったもんだから、それ以外に選択肢はなかった。約束は守るのが大人ってもんだ。ま、それを簡単に破るのも大人の特徴だけどな。

 その後、開かれた青と黄色の左右で違う色の瞳は揺らいでいたが、それでも尚今や再び敵となったボクの姿を真っ直ぐと捉えていた。

 

「……残念だよ」

 

 そう言って、小鳥遊ホシノはショットガンへの引き金へゆっくりと指をかけた。

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