Laughing at the blue sky   作:ロリコン先生

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ブルアカのアニメ、いいね


session7 アンウェルカムスクール

「クソッタレ!いつになったら止まるんだよこのポンコツ!」

 

 砂塵を巻き上げながら未だ加速が止まる様子がないバイクにボクはしがみつくように跨りながら、この相棒(ポンコツ)をどうやって止めようかと思案してみる。

 ブレーキ?ナシだナシ。多分ボクが前方に吹っ飛ばされて死ぬ未来しか見えない。

 飛び降りる?そもそも、止める案でもねぇ。なによりコイツはオンボロではあるが大事な相棒だ。壊れたら困る。これ以上請求書がかさむのも勘弁したいって理由もあるが。

 暫くウンウンと考えてみたものの、他に何かナイスなアイデアが浮かぶことはなかった。なにぶんボクもバイクを操ることはあれど、勝手に暴走するバイクを止める方法なんて知るわけがない。いくらなんでも無茶がすぎる勘弁してくれ。

 そもそもニトロ機能なんてのはただ一瞬加速するだけでいいんだよ。なんでどこぞのレースゲームよろしく、一定時間加速し続けるんだ。別にレースなんざしちゃいねぇんだよ。最下位でもねぇし。

 ウタハから他の機能と同じように、コイツもしっかりと説明を聞いておけばよかったと今になって後悔している。ニトロなんてのは名前と触りだけ聞けば問題ないと思うだろ、普通。それがなんでこんなエンジン全開になるまでジェット噴射してるのか。

 声で勝手に起動してから、登録した機器から発せられる信号座標の場所へ走ってくる自動走行機能に関してはしっかりと聞いたんだがなぁ。

 ウタハにしては良いもんつけてくれたと思ったよ。あのアラビア音楽みたいなのは訳分からねぇが。あれに関しては本当に訳が分からない。

 試しになんのためにつけたのかと聞いたところ「ハマってるんだ」と即答された。

 ならお前のもんにつけやがれ!と言いたかったが、こちらが整備を頼んでる手前流石にはばかられるものがあった。

 嘘だ。説明と解説好きのメガネちゃんが見るからにうずうずしてたから逃げた。あの子話が長ぇのなんので。

 

「しっかし、腹減ったなぁ……」

 

 砂漠を走り続けてはや十分。もはや止めることを諦めたボクは相棒の気が赴くままに身を任せていた。

 広がる景色は砂漠ばかり。時折砂に埋もれている民家や電柱、植物なんかが目を引くがそれくらいしかめぼしいものはない。人気どころか生物の気配すらないだだっ広い砂漠が視界の限りを埋めている。

 もちろん、一部の道路なんかは人が通れるように整備されている。確かバスも通っているんだったか。その為走れない、通れない。なんてことはあまり起こらない。ただ一面砂漠ばかりで景色が変わらないというのは退屈ではあった。

 とりあえず便利屋の事務所を目指してはいるものの、こんな加速状態で人が住む場所に突撃できる訳もなく。そのためいささか遠回りになる帰路を取っているのだが、一向に止まる気配はない。

 しっかし、腹減ったなぁ。アビドスにいた時から時間も経っている。身体も盛大に動かしたし、そもそも肉のない中華風野菜炒めとカップ麺だけでしかも大体が空腹なボクすれば、あの程度ではまぁ足りなかった。

 その証拠にぐぅぅぅと腹が盛大に鳴った。

 

「肉が食いてぇ……。そういや、最近食ってねぇなぁ、北京ダック」

 

 以前たまたま所用で立ち寄った山海経に美味い飯屋があったんだが、あそこで食った北京ダックは最高だった。

 また行くかぁ。金が入ったら。

 本当に入るのか……?いや、今回の襲撃上手くやれば入るだろう。上手くいくのか……?行かねぇんじゃねぇのか……。

 ダメだな。腹が減ってネガティブになってやがる。

 ため息を盛大に吐けば、ガクン、と加速が止まった。

 

「お、おお?」

 

 そのまま、マフラーから吹き出していた炎のようなものが段々と収まっていく。そうしてゆっくりとバイクはその速度を落としていき、ボクがブレーキを引くまでもなくそのまま静止した。

 試しにアクセルを踏んでみるが、動き出す気配ない。

 首を傾げながらメーターを見れば、ガソリンがなかった。

 

「……お前もかよ…」

 

 どうやら、ポンコツの相棒共々ボクらは腹ぺこらしい。

 

 

 一方その頃。便利屋の事務所ではソラを除いた便利屋のメンバーがおそらく手描きのマップであろうものを広げたデスクを囲み、一同黙して座していた。

 

「遅いわね」

「遅いね」

「うん、遅い」

「遅い、ですね……」

 

 彼女らはどうやらソラの帰りを待っていたようで、しかしソラの帰りの遅さに疑問をていし互いに顔を見合わせていた。

 さすがに遅い、というのが彼女らの共通の感想だった。ソラは適当な男ではあるが、仕事になればしっかりとやることをやる男である。

 故にそんなに男が何の音沙汰もなく姿も見せないのはおかしいと感じていた。

 我慢出来ないとばかりにガバッと勢いよくハルカが立ち上がる。

 

「わわ、私、探しに行ってきましょうか……!?」

「ダメ。一人では行かせられないし、みんなで行ったら襲撃に間に合わなくなる」

 

 冷静にカヨコに諭されれば、ハルカはおずおずと引き下がる。

 しかしはやるハルカの気持ちが分からない便利屋の面々ではなかった。彼女らとて先程、ラーメン屋で出会い、仲良くなったアビドスの面々を襲撃する決意を固めたばかりである(主にアルが)。

 故にソラの帰りを待っていたのだが、あまりにも音沙汰がないのでソワソワしていた(主にアルが)。

 

「ああ、もう。主任は何をしてるのかしら!」

「うーん。でも確かに何も連絡がないのは珍しいね〜」

 

 どうしたものかと便利屋の面々が頭を悩ませて(主にアルが)いると、突然事務所の電話が鳴り響いた。

 世の中電話と言っても色々とあるが、アルのこだわりの為、ここの事務所に置いてある固定電話は黒電話と少しばかり古いものになっていた。

 アルは一瞬固まるが、すぐに受話器を手に取る。

 

「はい、便利屋68陸八魔です」

『社長か?ボクだ』

「はい?……ってこの声、主任!?あなた今までどこに行ってたのよ!?」

 

 電話越しに聞こえる脳天気な声に思わず声を荒らげて問い詰めるアルに対して、やはり能天気さがなくならないソラの声は少しばかり申し訳なさそうに『あ〜……』と言葉を濁した。

 

「しゅにんさんかな〜?」

「多分ね」

「ソラ主任は無事なんでしょうか……?」

「それを今社長が聞いてるんだろうけど……」

 

 三人はアルの方を不安げに、あるいは楽しげに、あるいは少し面倒な予感がしながら見つめていた。

 受話器を握るのは一人。古臭い黒電話のせいでスピーカーに切り替えることも出来ないため、話し相手の声が聞こえるのは社長たるアルのみだった。

 聞こえるその煮え切らない態度に、アルは若干イラッとしながらもその続きを促す。

 

「それで、何をしていたのかしら?」

『……捕まってた』

「え?」

『だから、捕まってたんだよ。今の今まで。アビドスにな。尋問もされちまってよ、大変だったぜ───』

 

 途端、その言葉を聞いたアルが固まった。

 受話器越しでソラが何か言い訳のようなものを並べているが、おそらくそれら全てアルの耳には入っていないであろう。

 そして、わなわなと体を震わせ口をパクパク開閉した後に、ようやく彼女は声を出した。

 

「な、何ですってー!?」*1

『うおっうるさっ!?』

 

 突然の絶叫はソラの耳には大きすぎたようだ。受話器から聞こえる声が少しばかり遠ざかったのをアルは認識した。

 

『お前な……』

「あ……ご、ごめんなさい」

『たく……電話ぐらい静かにしやがれってんだ』

「えぇ、気をつけるわ……。って、そうじゃなくて!無事なのかしら?」

『生きてるぜ。無事も無事さ』

 

 受話器越しでもわかるヘラヘラとした態度に、おそらく怪我などはしていないのだとアルは内心安堵の息を吐いた。その後キリッとした顔(アル基準で)をした後、彼女はアウトローな声(アル基準で)を出す。

 

「そう。ならいいわ。それよりも、主任?あなたしっかりと情報は守れたのかしら。私たち便利屋にとってクライアントの情報やそれ以外も命と同然なのよ」

『フッ、当然だろ。ボクをなんだと思ってるんだ』

「……そうね、悪かったわ。アウトローたる私の仲間がそんなミスを───」

『もちろん、襲撃するって話したぜ。尋問されるのはゴメンだからな』

 

 その言葉にアルは再びの硬直を見せた。そしてパクパクと口を開閉させる。それはさながら餌を欲する鯉がごときであった。

 

「あっははは、アルちゃんすごい顔〜」

「はぁ……」

 

 その硬直は先程よりも短く、しかし驚きに満ち溢れた声はより大きかった。

 

『つってもな、それでも嘘は混ぜたし何より盗ちょ』

「な、何ですってーーーーーー!!!???」

『うだああああああああ!!!???』

 

 方や受話器越しに、方や事務所中に。驚きと怒りの絶叫が響いた。

 その後、しばらく落ち着く為に受話器を話したアルと変わったカヨコに事情説明をするのであった。

*1
例の曲




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