傍に立つ君は完璧で究極のアイドル   作:カミキヒカラナイ

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気が付いたらお気に入り登録者数が5000件超えてた上に、総合評価も10000ポイント超えてました。

ウ…ウソやろ…こ…こんなことが許されていいのか!?
こんなアイにゲボ吐かせるような小説が評価されていいのか!?

本当にありがとうございます。これからも頑張らせていただきます。



10.告白

 また週末がやってきた。土日を使って行われる「今ガチ」の撮影もいよいよ佳境。前週はノブユキ君とケンゴ君が不在だったため、七人揃っての撮影は二週間ぶりになる。最終回が近いこともあり、出演者のみならず裏方のスタッフ達にも気合いが入っていた。

 

 そんな中、最近不調が続いていたあかねさんの表情は明るかった。ここ最近は気丈に振る舞いつつもどこか張り詰めた雰囲気を漂わせていた彼女だったが、今のあかねさんから感じる空気は柔らかい。緊張はあれど気負いはなく、まさにベストコンディションであると言えるだろう。

 その様子に僕は安堵の息を吐く。自分がしてやれたことなどさして多くはなかったが、何あれ持ち直してくれたのなら言うことはない。

 

「おはよう、あかねさん。今日もよろしくね」

「シオン君! うんっ、こちらこそよろしくね」

 

 声をかけると、あかねさんはパッと花が開くような笑顔で振り向いた。その頬は僅かに紅潮し、声には隠し切れぬ喜色が乗っている。

 その様子を見て僕は全く心配が要らないことを確信する。これほど血色の良いあかねさんの表情を見るのは随分と久し振りのことのように思えた。

 

『うわぁ、うわぁ……これ完全に落ちてる……完全に落ちてるよこれ……』

 

 すると、いつものようにすぐ傍で気儘に浮遊していたアイが青褪めた表情でそう呟いていた。

 絶対演技じゃないよこれ……まだカメラ回ってないし……と誰にともなく呟くアイに首を傾げる。落ちているとはどういうことだろうか。見たところあかねさんは顔色、声色共に悪くない状態のように思える。落ち込んでいるようには見えなかった。

 

『あっ、分かってなさそうな顔。落ちてるってのはそういう意味じゃなくて……あれ? 気付かないならそれに越したことはないのでは?』

 

 何やらブツブツと呟き、独り自己完結している様子のアイから意識を外す。気にならないでもないが、そろそろ撮影開始の頃合いだ。

 

「じゃあ、今日も頑張ろう。行こうか」

「うん──()()()()()()()

 

 ふっ、と空気が変わったような気がした。

 返ってきた声に違和感を覚える。反射的に傍らのアイに目をやると、彼女は信じられないものを見るような目で僕の背後に視線を向けていた。

 

 ふわぁ、と欠伸を噛み殺しながら、淀みない足取りで誰かが僕を追い抜いていく。

 横並びになった刹那、感じたのは酷く懐かしい感覚だった。まるで恒星がすぐ隣で生じたかのような熱量と共に、圧倒的な存在感が膨れ上がる。

 

「眠いんだよねー、収録早すぎてさ。……あっ、もしかしてもうカメラ回ってる?」

 

 聞き覚えのある声質と聞き覚えのある口調。だがその二つは全く別人のもののはずで、本来交わらぬ二つの声が一人の口から発されたことに、僕は暫しの混乱を余儀なくされた。

 

 “彼女”が振り返る。

 ただ振り向くという動作一つにすら目を奪われる。揺れる髪の一本一本にさえ魂が宿っていると錯覚するほどの、肌が粟立つような存在感がそこにはあった。

 

 華がある、という表現ではあまりに大人し過ぎる。殴りつけてくるような、まさに目も眩むばかりのオーラの暴力。

 

「てへっ☆!」

 

 照れたように含羞(はにか)んだ顔がこちらを向く。感じたのは圧倒的な既視感。それは十二年間常に傍らにあった、この世に二つと存在しないはずの気配。

 

 吸い込まれるような引力を放つ青碧(せいへき)の瞳と視線を交わす。

 その双眸には、一番星の輝きが宿っていた。

 

「────」

 

 あまりの驚愕に忘我しそうになるのを(すんで)のところで踏み止まる。気を抜けば他を圧する存在感を放ってしまうのはこちらも同じ。

 

 周囲に存在するカメラと他者の配置を把握──手動一、定点二。スタッフ数はスタジオ内三、外八。こちらを向くカメラは定点の二つのみ。

 自身のコンディションを分析──皺眉(しゅうび)筋、眼輪(がんりん)筋の微細な緊張を確認、誤差の範囲と判断。(きょう)筋及び笑筋、口角下制筋に異常はなし。表情とは目と口許に表れる。再度表情筋を制御下に置き、汗腺を閉じることで発汗をコントロール。

 

 異常なし(オールグリーン)──幸いにして化けの皮が剥がれるという最悪の事態は防げたようだ。

 つまりそれだけの衝撃だったということだがおくびにも出さない。ここで動揺を露わにすればあかねさんの()()が演技であると露見しかねない。少なくとも僕だけは普段通りに……以前から彼女の性格がこうであったと知っていたように振る舞う必要がある。

 

「撮影中に生欠伸とは感心しないなぁ。もしかして寝不足気味?」

「そうそう! 昨日ちょっと夜更かししちゃってさー、もう眠くって!」

「その割には調子良さそうだね。先週の撮影軽かったし、リフレッシュできた感じかな?」

「それもあるかも! だから今日は張り切っちゃおっかなーって☆」

 

 コロコロと変わる表情。声色に抑揚、息遣いの癖までまるで別人のよう。それを普段通りの表情で見つめながら、僕は内心で凄まじい戦慄を味わっていた。

 

(まるでアイそのものだ)

 

 今回の撮影から星野アイの演技をして臨むことは分かっていた。だが流石にこのレベルで仕上げてくるとは予想外もいいところ。

 あかねさんを……女優黒川あかねを侮っていた。精々が性格や口調の再現にとどまると予想していた僕の浅い考えを、彼女は容易く飛び越えていったのだ。

 

 まるで舞台の上で彼女にだけスポットライトが当たっているかのような、否が応にも目を奪われる尋常ならざるオーラ。気が付けばその一挙手一投足を目で追っている……追わざるを得ない、引力とでも評すべきカリスマ性。

 太陽を思わせる眩い笑顔。指先にまで神経を張り巡らせているかのような完璧なパフォーマンス。自らへの圧倒的な自信を窺わせる、まるで無敵に思える言動。そして──吸い寄せられる天性の瞳。

 

 演技? 否、ここまで来ればもはや神憑(かみがか)りの域。

 これが黒川あかねの真髄。徹底した役作り、与えられた役への深い洞察と考察、それらを完璧に演じ切る天性のセンス。

 

 明朗闊達にして天衣無縫── “黒川あかね星野アイ” の姿がそこにあった。

 

『えー……えぇー……? マジ? こんなことってある? こんなの演技じゃなくてコピーじゃん、コピー能力じゃん。芸能界広いわー……いるもんだねぇ天才って。ドン引きだよ()()()()()。ちょっと興味湧いちゃったじゃん』

 

 アイが驚きのあまり面白い顔になっている。驚いた顔さえも美しいのは流石と言うべきだが、その彼女をしてあかねさんを“天才”と評したことが全てを物語っている。

 自他共に認める天才であるアイはこう見えて滅多に人を褒めない。例外はアクアとルビーぐらいのものだ。何故なら彼女にとって大抵のことは──芸能の分野であれば特に──できて当たり前であり、生半可な水準のものを殊更に評価するような真似は決してしない。

 

 そんなアイが手放しにあかねさんを評価している。

 それも当然と言えば当然だろう。カメラを前にしたパフォーマンスはアイが最も得意とするもの。それを本人と遜色ない水準で実行するあかねさんの姿は、彼女の潜在能力がアイに決して劣らぬことの何よりの証左である。

 

「ア──あかね……?」

「? どしたのアクア? 幽霊でも見たような顔して」

「いや……」

 

 そしてこの場には星野アイという人物を良く知る人間がもう一人いる。星野アクア……他ならぬアイの実子である彼にとってはまさに驚天動地の心境だろう。

 幽霊でも見たような? さもあらん。僕のように本人がこの場にいることを認識しているわけでもないアクアからすれば、まるでアイが化けて出てきたような心地に違いない。姿形はあかねさんでも、纏うオーラや雰囲気はアイそのものと言っても過言ではないのだから。

 

「元気そうで良かったけど……何つーか、大丈夫なのか?」

 

 そう声をかけたのはノブユキ君だった。

 彼の困惑も当然のものだ。少し前までの影を感じさせるあかねさんの雰囲気と比較すれば、今の彼女の振る舞いは別人と言って良いほどに変貌している。

 不調が一周回って過度な躁状態になってしまう芸能人は多い。あかねさんの豹変ぶりはその前兆に見えなくもなかった。

 

「えっ、何が?」

 

 だが、そう返すあかねさんの表情はあっけらかんとしたものだった。心の底から何を心配されているのか分からないといったような、キラキラとした眼差しに射抜かれたノブユキ君は二の句が告げられず「いや……えぇ?」と押し黙る。

 

「あかね、何か雰囲気変わった……?」

 

 “何か変わった”というようなレベルではないが、他に言いようがなかったのだろう。何とも陳腐な問いを口にしたゆきさんに、あかねさんは愛らしく可憐な、それでいてどこか蠱惑的な微笑みを向けた。

 

「ゆきはこういう私、嫌い?」

 

 星の輝きを湛えた瞳に見つめられ、ゆきさんは首を横に振りつつゴクリと唾を飲み込んだ。

 あの瞳に見つめられると、別に威圧されているわけでもないのに気圧されてしまうのだ。僕が幼い頃、まだアイと出会って間もない時分に同じような感覚を味わったからよく分かる。

 

 ……ああ、そうか。今のあかねさんは()()()のアイなわけだ。

 

「ねっ、シオン。今日は一緒にいようよ!」

「……そうだね。僕も話したいことが色々ある」

「やったっ☆」

 

 あの頃。出会ったばかりの頃。

 即ち、()()()()()()()として振る舞っていた時の彼女である。

 

 今のあかねさんが演じているのはそれだ。まあ「B小町のアイ」を調べた結果の演技なのだから当たり前だが、「星野アイ」は彼女が演じる姿ほど完璧でも絶対でもない。

 

 地頭は良いのに勉強してこなかったから学力は低いし。

 昔よりマシになったとはいえ、相変わらず他人の名前を覚えるのは苦手だし。

 どこか抜けていて変なところで変な失敗するし、割とテレビの前ではお見せできないような表情も晒す。

 

 それらも含めてアイの魅力と言えばそうだが、「アイ」のパフォーマンスは欠点も含め全て計算され尽くした完璧なもの。意図せぬ乱数が入り込む余地はない。

 一方、「星野アイ」は決して完璧ではない。持って生まれた天性のオーラやカリスマこそ健在だが、アイドルとして振る舞っている時の彼女であれば絶対にしないような態度や言動も見せる。(まか)り間違っても爽やかイケメンキャラを演じるアクアを見てゲボ吐いたりしないし、アク×シオのハッシュタグがトレンド入りしているのを知って白目剥いたりはしないのだ。

 

 姿を目にできる者が僕一人しかいないためか、あるいは自惚(うぬぼ)れでなければ長い付き合いで気を許してくれているからか、「星野アイ」は僕の前では飾らない姿を見せてくれる。そんな付き合いがもう十年以上も続いている所為(せい)か、久し振りに見る完璧な「アイ」の姿に違和感を覚えてしまったのだ。

 

 つまり、何と言うか。

 あかねさんが演じるアイは“外向きの顔”。要は他人行儀なのである。

 

「そっかぁ。これからあの『アイ』と恋愛劇をしないといけないわけだ」

 

 誰にも聞こえぬよう小声でぼやく。

 何とも複雑な気持ちだ。十年をかけて(つちか)った親愛やら友愛やら何やら、そういうのを全てリセットした「初めまして」状態のアイとこれから恋愛をするのである。

 

『私の方がもっと複雑なんだけど?』

 

 ご(もっと)もである。僕はドロドロと黒いオーラを撒き散らすアイからそっと目を逸らした。

 

『あっちの私を無下にしたら泣くよ? でもイチャイチャしたらもっと泣くよ? そこのところ弁えて恋愛してね?』

 

 どないせいっちゅうねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【シオ×あか】今ガチを見守るスレ【釣り合わないとか言ってた奴www】

 

1:推し活の名無し ID:kjrjga33k

 すみませんでした

 

3:推し活の名無し ID:9tXfW6lsj

 すまんかった

 

5:推し活の名無し ID:aQbKwrczX

 スマソ

 

6:推し活の名無し ID:9cq/hHiBU

 俺は信じてたで! シオン様とあかね様はお似合いだってな!

 

7:推し活の名無し ID:zxjTVtiaY

 っぱシオ×あかよ

 

8:推し活の名無し ID:EhPanx3yB

 シオ×あかしか勝たん

 

9:推し活の名無し ID:cEqi8ENI6

 シオ×あか最高! お前達もシオ×あか最高と言いなさい

 

10:推し活の名無し ID:/3KazQD3M

 シオ×あか最高!

 

12:推し活の名無し ID:3JyEiiKmp

 シオ×あか最高! あかねアンチ冷えてるか〜www

 

14:推し活の名無し ID:iBCBDKsWz

 手のひらクルックルで草なんだ

 いや、というか真面目に何があった? あかねのオーラ半端ないやんけ

 

15:推し活の名無し ID:G4P22ULD0

 何か垢抜けた? シャンプー変えたのかな

 

17:推し活の名無し ID:aI6A7eIXB

 シャンプー変えたぐらいであんなになってたまるか

 

18:推し活の名無し ID:X3YF0iFdU

 垢抜けたとかいう次元じゃないんだよなぁ

 

20:推し活の名無し ID:c1pcxTOHd

 シオン様と並んでも負けないどころか下手すりゃもっと目立ってるぞ? どないなっとんねん

 

22:推し活の名無し ID:hU0Ha2yci

 まさかこんなになるなんて思わんやん普通

 

24:推し活の名無し ID:yQmexqssc

 これが劇団ララライのホープですよ皆さん

 

25:推し活の名無し ID:ZMY+yn2Ps

 正直ナメてたわ

 

27:推し活の名無し ID:uMcoGmVWJ

 伊達に天才女優と呼ばれてないわけだ

 

29:推し活の名無し ID:oi/aqPzpK

 むしろ今までが何だったんだよ、もはや別人じゃねーか

 

30:推し活の名無し ID:MKfRWsbga

 なに? 初めての恋愛に緊張してカメラの前での振る舞いとか忘れてた感じ?

 

31:推し活の名無し ID:QdX7MHAnU

 あかね「思い出しました」

 

33:推し活の名無し ID:8rBPJTswZ

 二度と忘れんな

 

34:推し活の名無し ID:po7IgiBLP

 お陰で別スレで散々扱き下ろしちまったじゃねーか

 

36:推し活の名無し ID:x/gKEOaK8

 そもそも扱き下ろすな定期

 

38:推し活の名無し ID:G8A/Mb6WN

 でもしょうがなくね? 最初の頃はガチでおもんなかったし

 それが今やご覧の有様だよ、あんなの誰が予想できたよ

 

39:推し活の名無し ID:kynhe2lce

 そのオーラで初回放送から伝説を巻き起こし、圧倒的なビジュアルから一気に知名度を増したカリスマ読モ「シオン」

 まさかそれに匹敵するオーラを発揮する者がもう一人いたとは……! 読めなかった……! この海のリハクの目をもってしても……!

 

40:推し活の名無し ID:gxQtBXzY7

 あかね半端ないって!

 

42:推し活の名無し ID:u0veQxd20

 そんなんできひんやん普通、そんなんできる? 言っといてや、できるんやったら……

 

44:推し活の名無し ID:dnMMZ/MXF

 散々あかね扱き下ろしてた連中、お通夜状態で草なんだ

 

45:推し活の名無し ID:VuiH4Esma

 アンチなんてそんなもんだぞ

 形勢不利になった途端に今までの喧しさが嘘のようにダンマリよ

 

47:推し活の名無し ID:V704d01uF

 中には素知らぬ顔でシレッと擁護側に回ってたりする厚顔無恥な奴もいるけどな

 

49:推し活の名無し ID:hb9yziF8M

 やっぱし怖いスねアンチは

 

50:推し活の名無し ID:s6Dzy9XWY

 アンチを実力で黙らせたあかねさんマジパネーっスわ

 

52:推し活の名無し ID:yN0n8JRGo

 一生ついて行きます

 

54:推し活の名無し ID:Lpbt4I8yN

 あんなオーラ出せるんなら最初から出せよって思ったが……まさかこういうギャップで>>52みたいなファンを増やす巧妙な策だったのか?

 

55:推し活の名無し ID:34UdV3IVy

 あかね策士説

 

56:推し活の名無し ID:yN0n8JRGo

 自分ガチ恋いいスか?

 

57:推し活の名無し ID:4BtgUr6O9

 待て、これは孔明の罠だ

 

59:推し活の名無し ID:yN0n8JRGo

 罠でもいい!

 罠でもいいんだッ!

 

60:推し活の名無し ID:eSYOoXdVy

 冷静になれ! あかねの目にはシオンしか映ってないんだぞ!

 

62:推し活の名無し ID:vLy+owYF6

 これが恋愛劇だということを忘れていないか? 我々はどこまで行ってもショーを観劇する第三者に過ぎないのだ

 

63:推し活の名無し ID:yN0n8JRGo

 それはわかってるけど、あんなキラキラした子好きにならないわけないだろ

 

64:推し活の名無し ID:0Lsqy7hNL

 まあ気持ちは分かるが……

 

66:推し活の名無し ID:Vn1g54H2Y

 クラスカースト最上位にいるタイプだよな、あれ

 

68:推し活の名無し ID:H6m2c52WG

 まあ俺達はカースト最底辺の陰キャなんやけどなブへへ

 

70:推し活の名無し ID:7LB+eoeBu

 い、一緒にすんなし……

 

71:推し活の名無し ID:jIvxgs6e9

 陽キャはこんな場末の掲示板になんかいない定期

 

72:推し活の名無し ID:oy6I8qtRx

 とにかくガチ恋はやめとけ、推しに留めておくのが最善だ

 

74:推し活の名無し ID:SCdUzL9YT

 ガチ恋したところで接点ないしな

 

75:推し活の名無し ID:uqg5YyFFP

 つーかこれ最終回でカップル成立する流れだろ? ガチ恋したところでって話だよな

 

77:推し活の名無し ID:rmjl8ob2H

 それな

 

79:推し活の名無し ID:/feI1iaMl

 これで成立しなかったら逆にシラけるレベル

 

80:推し活の名無し ID:MrYDakjYi

 見るからにメロメロだもんなあかね

 

82:推し活の名無し ID:cOBI143tx

 逆に分からないのがシオン様だよな

 

84:推し活の名無し ID:zX9QMYOCp

 それ、あかねが垢抜ける前と後で態度が全く変わらないのがちょっと気になる

 

86:推し活の名無し ID:b14Udwus/

 最初から優しかったし好意的だったじゃん

 

88:推し活の名無し ID:YgzkgWBXS

 でもシオン以外はあかねの変化に戸惑ってるんだよね

 

89:推し活の名無し ID:a58XrRdjs

 今のがあかねの素だったにしても、シオンだけがそれを知ってるってのも不自然だよなぁ

 

91:推し活の名無し ID:XoFkqMIH7

 やっぱ最初から画面外で接点あったんじゃないの? アクアとは普通に親友止まりで特別な感情があったわけじゃないんだよきっと

 

93:推し活の名無し ID:wnYjLH6SF

 アク×シオ推しとしては憤死しそうな結論だな

 

94:推し活の名無し ID:qWdoDWkza

 腐女子ワイ、アク×シオ完全消滅を確信し無事死亡

 

95:推し活の名無し ID:KmtL6LA65

 アク×シオなど所詮は視聴者が勝手に作った幻想に過ぎなかったのだ

 悔しいだろうが仕方ないんだ

 

97:推し活の名無し ID:7+qmO2bc9

 やっぱりあの時のシオンは普通にゲボ吐きそうなだけだったんだね

 

98:推し活の名無し ID:FR8kMWt36

 ゲボ顔があんなに美しいのやっぱおかしいよ

 

99:推し活の名無し ID:2MEy9Q0y8

 勘違いするのもしょうがねーってあんなん

 

101:推し活の名無し ID:71zhFg7gV

 俺まだシオン様が男だってのが信じられないんだけど

 

102:推し活の名無し ID:j7lc/+qdU

 俺なんかシオ×あかは百合だと思って見てるからな

 

103:推し活の名無し ID:rK1TXXckM

 百合豚は黙っとれ、と言いたいところだがちょっとその気持ちも分かってしまう……

 

105:推し活の名無し ID:omgqRSd0E

 ついこの間発売された某ファッション誌のシオン様にときめかなかった者だけが石を投げなさい

 

106:推し活の名無し ID:lm+Mb3LC0

 ああ、アレか……

 

107:推し活の名無し ID:cQFNPli9f

 あれはヤバかったよね……

 

109:推し活の名無し ID:m+hDG0jLz

 白ワンピがあんなに似合う男がこの世にいるか?

 

110:推し活の名無し ID:I6yA8ykDT

 今ガチで知名度が急上昇したせいか雑誌の売れ方やばいよね、慌てて増刷してるみたいだけど追いついてないし

 

112:推し活の名無し ID:D5bL3zYFC

 シオン様が着てたワンピース欲しいのにどの店行っても売り切れで泣ける

 

114:推し活の名無し ID:0iNNCECpn

 某フリマアプリで倍ぐらいの値段で売ってるの見たで

 

115:推し活の名無し ID:WjwH7wQ+b

 転売ヤー死ね

 氏ねじゃなくて死ね

 

116:推し活の名無し ID:6fPiijlWJ

 読者モデルが着たってだけの服が転売ヤーの餌食になるのか……

 

117:推し活の名無し ID:OqrkKkK7N

 これがカリスマの力ですよ皆さん

 

118:推し活の名無し ID:pdIWQ6ZGz

 そんなビジュアルお化けに追随できる演劇女優がいるらしい

 

120:推し活の名無し ID:KqvjFiPk0

 映像系しか見ないからあんなポテンシャルの俳優が板上で燻ってたことに驚愕を隠せない

 最初からカメラ演技やってればもっと知名度稼げたんじゃないの?

 

122:推し活の名無し ID:rCnDrfgaQ

 演劇やってたからこそああなったんやで

 

124:推し活の名無し ID:XyXo5UJ+5

 ララライだもんな、あの姫川大輝がいる

 

126:推し活の名無し ID:Eb9b3/RtS

 あー姫川ララライの役者なんだっけ

 

128:推し活の名無し ID:tenmZslKr

 やっぱララライは強いな

 

130:推し活の名無し ID:uyxaxl8a0

 一流の環境が一流を育てたんやなって

 

131:推し活の名無し ID:xaFgToZom

 ともあれ、これでシオンとあかねのカップリングにとやかく言う連中はいなくなるだろ

 

133:推し活の名無し ID:mRPNWMfEK

 アイツら声デカくて鬱陶しかったからなー

 

134:推し活の名無し ID:oZFRODI+V

 一躍番組の中心だもんな

 

135:推し活の名無し ID:O/AVcNXDW

 個人としては最初から最後までシオン一強だったけど、カップリング人気はノブ×ゆきが一番だった印象

 

136:推し活の名無し ID:yr2u04sfE

 それが今やシオ×あかブームですよ

 

137:推し活の名無し ID:ow7oMQvWR

 ウチのクラスの女子どももシオ×あかの話題ばっかりよ

 ついこの間まであかねのことボロクソに言ってたような気がするんだが……

 

139:推し活の名無し ID:jN7LmAVo6

 やっぱし怖いスね女の子は

 

141:推し活の名無し ID:pZmfwEtav

 完全にダークホースだったよなぁ

 

143:推し活の名無し ID:1nBu8/vD3

 シオンに怖気付いてオドオドしてたあかねはどこ……? ここ……?

 

145:推し活の名無し ID:HbIpksVZi

 あれはあれで好きだったけどなぁ

 

146:推し活の名無し ID:lR+yd+5fP

 身分違いの恋に戸惑う女の子感あって悪くなかったよね

 

148:推し活の名無し ID:gmX5pVQqd

 もしかしてアクアが何か入れ知恵したとか?

 

149:推し活の名無し ID:0Bqo24ghB

 そういやアイツすっかり影薄くなったよな

 その割に謎に活き活きとしてるけど

 

151:推し活の名無し ID:uDPhgPJqa

 一応あかねにアドバイスみたいなことしてたよな、シオンの好きな食べ物だの趣味だの

 

152:推し活の名無し ID:VHTzJ7Ypn

 お、俺もアクアにアドバイスしてもらえばワンチャンあかねみたいなキラキラ陽キャに……!?

 

153:推し活の名無し ID:Prjg2M6Rj

 こんなスレにいるようなガチの陰キャには不可能だから諦めろ

 

155:推し活の名無し ID:Qg5n3bca5

 何かアクア見てると誰かに似てるような気がしてくるんだよなぁ

 ここまで出かかってるんだけど

 

156:推し活の名無し ID:U8tk55noV

 知らんがな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒川あかねが完璧にアイをトレースしたあの衝撃の回が放送されてからというもの、彼女の人気は止まるところを知らなかった。

 今や「今ガチ」におけるカップリング人気はシオ×あかが首位を独走している状態だ。誰もがあかねの一挙手一投足に注目し、その恋の行く末に夢中になっている。

 

 事実、彼女の発揮するオーラは他の追随を許さないものだった。

 

 あかねがパフォーマンスの面で参考にしたのは一番メディア露出の多かった頃……人気絶頂期だったドームライブ直前あたりのアイである。情報の入手しやすさ的にそうならざるを得なかったのだろう。

 それ故、あかねが発揮するオーラはまさに全盛期のアイのそれに匹敵した。如何に若手有望株の集いといえど、他のメンツが容易に太刀打ちできるようなものではない。

 

 鷲見ゆきや熊野ノブユキ、MEMちょや森本ケンゴが素質で劣るわけではない。彼らはいずれも将来を嘱望(しょくぼう)された新進気鋭の有望株である。

 だが新進気鋭という評価は伸びしろに対しての賞賛であり、裏を返せば現状における未熟が誰の目にも明らかであるということだ。アイという規格外の才能を再現したあかねを上回るには、現時点の彼らではあまりに力不足だった。

 

 故に、この結末は必然だったのだろう。

 

 遂に迎えた「今ガチ」最終回。

 ゆきは「今は仕事に集中したいから」という理由でノブユキからの告白を固辞。

 MEMちょもまた同様の理由でケンゴからのアプローチを遠慮がちに辞退したのである。

 

 個人的な事情もあったのかもしれない。だが二人がノブユキとケンゴからの告白を断った背景には、あまりに突出した存在感を放つ最後の一組に対する遠慮と打算が少なからずあった。

 

 隔絶したビジュアルとオーラで放送初期から変わらぬ人気を維持するシオン。そして彼に伍するオーラと圧倒的なパフォーマンスにより実力で人気を獲得したダークホースのあかね。この二人の組み合わせの人気は放送終盤から怒涛の追い上げを見せ、今や全視聴者の注目の的となっている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()──そう評しても過言ではないほどに、両者の人気は比類ないものとなっていたのである。

 

 決して他の二組が悪いわけではない。むしろ過去放送された恋愛リアリティショーのどのカップルと比較しても劣らぬ演出を見せたと言えるだろう。

 ただ、相手が悪かった。世代に冠たるオーラの持ち主が同じ番組に二人も揃うなどという不運に見舞われなければまだ目があったのかもしれないが、しかし現実は非情である。もはやシオ×あかとそれ以外のカップリングとでは圧倒的なまでに人気の差が生じてしまっていた。

 

 こうなってしまえばシオンとあかねのカップル成立はもはや既定路線である。視聴者達の注目は全てそこに向いており、故に他二組への関心は大事の前の小事と言わんばかりに薄れてしまっているというのが実情であった。

 事ここに至っては、ゆき達がくっつこうがくっつくまいが大した注目は得られない。むしろ無理に告白を成功させてしまえば、将来的な異性人気の低下というリスクを抱えるデメリットの方がカップル成立の話題性を上回ってしまうだろう。

 

(やっぱりこうなったか……)

 

 特に事前の打ち合わせがあったわけではないが、こういう結果になるであろうことをアクアは何となく察していた。

 

 下世話な話だが、男性タレントより女性タレントの方が異性関係はシビアな目で見られやすく、また人気に直結しやすい。特に“親しみやすさ”を売りにするMEMちょのようなタイプの女性ユーチューバーは、アイドルと同様に処女性というものに商品価値が発生しやすい側面がある。

 これに関しては清純さを前面に押し出して「今ガチ」に臨んでいたゆきにも同じことが言える。外見的な良し悪しが重要視されるモデル業において処女性の有無は商品価値に直結するものではないが、図らずもこの番組を通して清純さで人気を得てしまった以上、その印象は今後の仕事にも少なからず影響を及ぼすだろう。清純さを売りにする女性タレントは同性よりも男性人気を獲得しやすい傾向にあり、故にここでノブユキからの告白を受け入れることは、将来的な男性人気を損なうリスクを負う可能性が高い。

 

 以上の理由から、ゆきとMEMちょの二人は高確率でノブユキとケンゴからの告白を断るだろうとの推測を立てていたのだ。

 そしてそれは的中してしまった。こうなった以上、残る最後の一組であるシオンとあかねでカップルを成立させるしかない。でなくばカップル成立数ゼロなどという前代未聞の最終回を迎えることになってしまうだろう。

 

 番組の内外から向けられる熱が無形の圧力となる。それに背中を押されるようにゆっくりと歩みを進めるシオン。その向かう先には、何かを期待するように落ち着きなく視線をさ迷わせるあかねの姿があった。

 

(アイの仮面剥がれかけてないかあれ?)

 

 例の台風の夜の一件以来、明らかにあかねのシオンを見る目が変わった。番組の演出とは関係なく強い好意を向けているのは誰の目にも明白である。

 だがその一方、シオンの側がどう思っているのかが不透明だった。

 

 アクアもつい最近気付いたことだが、シオンは嘘を吐く……というより、自分の内心を隠すことに長けているようだった。

 それにアクアが気付いたのは初めてあかねがアイの演技を披露した時だ。誰もが彼女の変貌に動揺を露わにする中、シオンだけがいつも通りの態度を変えなかったのである。

 

 役者としてそれなりに人の感情と表情の機微というものについて精通しているアクアをして、シオンの表情からは一切の動揺らしき色を感じ取ることはできなかった。あの時はあまりに正確にアイをトレースするあかねに気を取られていたこともあってそこまで厳密に観察できていたわけではなかったが、それでもあの「アイ」を前にしていつも通りの態度を貫くことがどれだけ異常であるかは他ならぬアクアがよく知っている。

 

 出演者だけではない。スタッフも、カメラマンですらあの瞬間あかねに……「アイ」に夢中になった。

 視線を向けざるを得ない不思議な引力、他の一切が視界に入らなくなる程のカリスマ性。あれ程のものを前にして、人は冷静ではいられない。かつて一つの時代において頂点に輝いた一番星の煌めきを前にしては、ただの人間が自分を保つことなど不可能である。

 純粋で、輝きに満ち、その“(アイ)”によって人の心を漂白する者。それこそが「アイ」──天性の偶像(アイドル)という魔性の名である。

 

 しかるに、あれほど真に迫った「アイ」を演じるあかねを前に冷静さを失わなかったシオンの姿は、アクアの目には殊の外異常に映った。シオン自身も並のタレントではないが、並ではないというだけでアイの魔性から逃れることはできない。“美人は三日で飽きる”という言葉があるが、そんな尋常の感性が当て嵌まるような人間であればあそこまで日本中を熱狂させるようなことはなかっただろう。

 それこそ四六時中、何年にも渡ってアイを見続けそのオーラに間近で触れ続けるでもない限り、あの尋常ならざるオーラに無反応を保つことなど到底できはしないのだ。

 

 故にその理由として考えられるものとしては──アクアからすれば信じられないことだが──シオンにとって、アイというアイドルが彼の好みのタイプからかけ離れた女性像であったという可能性である。

 

(確かに「尊敬する芸能人」だとは言っていたが、「好みのタイプ」だとは一言も口にしてないんだよな……)

 

 よくよく思い返してみれば、アイの演技をするあかねと接するシオンはどこかぎこちないような気がしないでもなかった。むしろ本来の性格で振る舞っているあかねに対しての方が素直な好意を前面に出していたような気さえする。

 

「あかねさん」

 

 アクアの視線の先では、真剣な表情をしたシオンがあかねの前に立っていた。あかねは緊張した面持ちで対面する少年を見つめている。

 

(……まあ、事ここに至ってはアイツがあかねをどう思っていようが関係ないが)

 

 そう、関係ないのだ。たとえシオンにとって「アイ」が理想の女性像であろうがなかろうが、ここでカップルを成立させないことには番組が成り立たない。さもなくば下手をしなくとも炎上騒ぎの再来である。

 

 ふわりと艶やかな黒髪をなびかせ、シオンがあかねの前に(ひざまず)く。

 

 まるで姫君の前で礼をとる貴公子のように片膝をつく。普通ならば気障(きざ)(そし)りを免れまいが、シオンがやると不思議と様になった。嫌味や外連味(けれんみ)を感じさせないのはその人並み外れて優れた外見とオーラ故か。

 その表情、その仕草。一つ一つの所作に品があり、華がある。アイとは似ても似つかないのに、まるでアイの再来を思わせるほど、シオンの一挙一動は不思議なほどに目を惹いた。

 

 あかねの前に跪いたシオンは流れるように彼女の手を取る。もう彼が何をしようとしているかは察しているのだろう、既にあかねの顔は真っ赤である。

 

「どうか、この想いを受け取って下さいませんか」

 

 紫紺の瞳が真っ直ぐに少女を見据えた。星の輝きを湛えた紫水晶(アメシスト)の双眸に正面から見つめられ、青碧(せいへき)の瞳が静かに揺れる。

 その瞳に、もはや星の光は存在していなかった。

 

 シオンはそっとあかねの手の甲に口付けを落とす。まるで物語のワンシーンのような情景に誰もが視線を釘付けにする中、少年は仮面の剥がれ落ちた少女に微笑みを向けた。

 見る者の心を奪う、魔性の微笑みを。

 

「好きです。どうか僕と付き合って下さい」

「──はいっ」

 

 真っ直ぐに向けられたその言葉が本心からのものなのか、あるいは演出に過ぎないのか、もはやアクアには推し量ることができなかった。

 しかし、この場においてはその言葉こそが全てであり。

 歓喜に零れた少女の涙が心からのものであることだけは、紛れもない真実に相違ないのだった。

 

(何にせよ、シオンには感謝しないといけないのかもな)

 

 ──アイには実は隠し子がいる……とか

 

 ──だとしたら色んな感情のラインに整合性がとれるし、不可解だった数々の行動の理由がわかる

 

 ──何を考えてどういう人格なのか数式パズルみたいに分かってくる!

 

 黒川あかね。その分析能力でアイという人間の人間性(パーソナリティ)を詳らかにしてしまった恐るべき才能。

 彼女は語った。どういう生き方をしてきてどういう男が好きかに至るまで、アイの思考パターンは分析できるだろうと。

 

 その言葉を聞いたアクアの脳裏に邪な思考が過ぎった。この才能は使えると。彼女の分析能力を利用すれば、あるいはアイを死に至らしめた黒幕の手掛かりに辿り着けるかもしれないと。

 

 だがそれは、本来関係ないはずの少女を血に濡れた復讐の道に巻き込むことを意味する。

 それは許されないことだ。分かっている。アクアとて無関係の者を自分の復讐に付き合わせ、みすみす危険に晒すことに抵抗を覚える程度の良識は持ち合わせている。

 

 だがもしも。もしも少女が自分に愛を求めるような未来があったのなら──

 

 恋愛とは愛を以て愛の見返りを求める双方向の愛の形。もしも少女が自分に愛を求めたのならば……アクアはその見返りとして、彼女の才能(あい)を要求したかもしれない。

 しかしそれは今や文字通りの“もしも(イフ)”に過ぎない。あかねはアクアではなくシオンを選んだ。彼女の目にはもはやシオンしか映っていない。であれば己のエゴに彼女を巻き込むことは難しいだろう。好きでもない男のために自らの身を危険に晒すほど、黒川あかねという少女は愚かではないのだから。

 

 

 だから星野アクアはシオンに感謝する。

 復讐の狂気から彼女を守ってくれてありがとう、と──

 

 




桐生(きりゅう)紫音(シオン)
 アイ(本物)に見られながらアイ(あかね)と恋愛することになってしまった。しかし自業自得なので同情の余地はない。
 カメラやスタッフの気配察知、表情筋のコントロールは心を落ち着かせるためのルーティーン。かぐや様が頬に手を当てるのと同じく、紫音はこれを行うことで冷静になれる。やろうと思えば数百メートル圏内の人間の気配を詳細に察知可能だし、自らの意思で心臓を止めたり神経系に干渉して痛覚を遮断したりできる。そんなことしてどうするんですか?
 お陰で動揺を表に出すことなくアイ(あかね)と接することができたが、あかねが演じるのは“星野アイ”ではなく“B小町のアイ”であり、しかも過去の姿に過ぎない。十二年の歳月を経た今のアイの人間性は相応に変化しており、紫音からすればそれは無視し得ない違和感として映る。──どちらも“アイ”に違いないことは承知の上で、紫音は“B小町のアイ”よりも“星野アイ”の方を好ましく思っている。

 なお番組収録後、不機嫌なアイのご機嫌取りに奔走する羽目になった。

星野(ほしの)アイ】
 恐るべき再現度で“アイ”を演じてみせたあかねに度肝を抜かれる。けっこう呑気してたアイも自身と遜色ないオーラを放つ彼女の分析力と演技力にはビビった。
 とはいえ十二年の変化は大きい。アイにとってあかねが演じる“アイ”は過去の自分の分析結果に過ぎないが、それでも確かにかつての自分であることに違いはない。そんなアイ(あかね)がフラれでもしたら自分がフラれたも同義。さりとて自分でない自分が想い人とイチャつくのもそれはそれでSAN値チェックものである。私なんか悪いことしました?

 ちなみに最終回で紫音があかねの手の甲にキスした瞬間、溢れ出した嫉妬のオーラで守護霊から大怨霊にクラスチェンジを果たす。これにより今ガチ最終回は見える者にとっては卒倒ものの心霊映像と化した。アイ・オルタが元のアイに戻れるかは紫音のご機嫌取り次第である。

鷲見(すみ)ゆき&熊野(くまの)ノブユキ】
 原作同様、番組では別れたが裏で密かに交際を開始する。
 原作と比べると影が薄くなってしまったが、アイに匹敵するオーラの紫音とアイそのもののオーラを発揮するあかねの組み合わせが頭おかしかっただけで、若手としては大健闘の演出で番組を盛り上げた。

MEM(メム)ちょ&森本(もりもと)ケンゴ】
 今は仕事に集中したいから……というのは表向きの理由。本当はまだアイドルの夢を捨てきれていないため、異性との交際に及び腰になっているだけである。
 MEMちょの側はそういう理由だが、ケンゴの方は割と真剣に心惹かれていた。原作でもゆきと三角関係演出してたくせして最終回ではMEMちょに告白していたし、案外好みのタイプなのかもしれない。

黒川(くろかわ)あかね】
 鏑木(かぶらぎ)Pのお眼鏡に適うレベルの容姿があり、偏差値78の秀才であり、その道でも通用するプロファイリング能力の鬼であり、有馬かなをして天才と認める天性の演技力の持ち主。アイという規格外を知るアクアをして絶句するレベルのヤベー奴。
 命の恩人である紫音に対してかなり重めの感情を向けているが、それは有馬かなと重ねて見ているから。かつて彼女の目を灼いた天才子役の巨星のオーラと同じものを紫音にも見た故である。しかもこっちはかなちゃんと違って拒絶しなかった。そりゃ重くもなる。
 憧れは理解から最も遠い感情である、という某オサレ漫画の名言があるが、あかねに関しては当て嵌まらない。じゃ、分析するね……

星野(ほしの)アクア】
 最初はアイ(を思わせるオーラの紫音)とアイ(を完璧に演じるあかね)の恋愛劇を宇宙猫状態で見ていたが、後にあかねのプロファイリング能力のヤバさを知ったことでそれどころではなくなる。故人の思考パターンをも完璧にトレースしてみせる彼女の分析能力は凄まじい。恐らくは黒幕の足跡を辿る上でこの上なく有用な才能であろう。
 だが原作と異なり、あかねの心が向いている先はアクアではなく紫音だった。これでは利用しようにもその取っ掛かりがない。そのため名残惜しく思いつつも、ひとまずあかねの能力を利用するという案は棄却される。

 アクアは残念に思うと同時に安堵もしていた。
 復讐のために手段を選ぶつもりはなかった。それでも番組を通して親交を結んだ相手……それも自分の復讐とは無関係の善良な少女を巻き込むことに、アクアは少なからず良心の呵責を覚えていたのである。
 別に恋人同士でなくとも利用する手段はいくらでもある。だがアクアは敢えてそれを選択肢から外した。
 “俺ひとりでいい。俺ひとりが、()()をやり遂げるから”──その思いは十二年前から何も変わっていない。孤独な復讐者は、今も独り修羅の道を歩んでいる。





 一方その頃、肝心の(アイ)は紫音の全力全霊のご機嫌取りに気を良くし、満更でもない思いを味わっていた。
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