傍に立つ君は完璧で究極のアイドル 作:カミキヒカラナイ
すまない……亀更新ですまない……
第一幕が終わり、束の間の
舞台「東京ブレイド」は三幕構成となっており、一幕が終わるごとに二十分の休憩が挟まる。その間に観客は水分補給やお手洗いなどを済ませる……ことになっているのだが、半ば放心状態で席を立つ者が少数いるのみで、大半の観客はその場に残ることを選んだようだった。
鮫島アビ子と吉祥寺頼子の両者も、そんな席を立たない……否、席を
「いやー……何というか……すごくすごかったですね……」
「そうですね……すごくすごかったですね……」
二人して語彙を消失させながら酷く頭の悪い会話を繰り広げる。
しかしそれも無理からぬことだった。舞台上を発生源とし、つい先刻まで会場全域を覆い尽くしていた死の威風。それは二人から思考力を奪うには十分な威力を有していた。周囲を窺えば何人か卒倒している者が散見される程に、
アビ子は思わずといった様子で、無意識の内に低く唸った。それは満足の表れだったのか、それとも分野は違えど同じく芸術に生きる者の呼応ともいうべき何かであったのか……知らず漲ったものが握力を高めたようで、彼女はきつく拳を握り締めていることに遅れて気が付いた。
「……上手く言えないんですけど……何か私、今猛烈に漫画が描きたい気分です。記憶が薄れない内に、あの迫力を絵として手元に残しておきたいというか……!」
「ちょっと分かるなぁ……私はジャンルが違うからアビ子先生ほどじゃないけど、あのレベルの幻想を見せられちゃうとね……」
漫画家とは二次元上に非日常の幻想を現出する芸術家である。人間がその五体で表現できる幻想には限界があるが、漫画にそれはない。描き手の発想力が許す限り、空想の世界は無限である。しかし、今シオンがその身一つで見せた演技は人間が想像できる領域の幻想を軽々と超えていった。
熱い。あの新しい幻想はとても熱い。それ故に今へ強く影響するだろう。人の心を昂らせ、未来へ思いを馳せることを促すだろう。彼女らも既にして囚われた。彼の巻き起こす火嵐は恐るべき熱量を以て見る者の心を焼こうとしている。恐ろしいことだ。しかし惹かれもするから困る。
「でもまだ始まったばかりなのよね」
「そうです! 鍔姫の見せ場はまだまだこれからなんです! クライマックスの第三幕は初っ端からオーラ全開でバーン! と行く予定で……」
「つまり……さっき以上の迫力を見せられるってこと?」
「そうなんです! きっとすごいですよ! 思わずチビっちゃうぐらいの迫力を見せてくれるに違いありません!」
興奮冷めやらぬ様子のアビ子は荷物からエナジードリンク*1を取り出す。慣れた手つきでプルタブを引き起こすと、飲み口にストローを突き刺しズコーッと中身を勢いよく吸い上げた。非常に手馴れた様子である。こんな所でエナドリをキメるなと言いたいところだが、吉祥寺も漫画家としてエナドリストローイッキ飲みは──外でやるかは別として──当然のようにマスターしているため
しかし行為そのものには突っ込まないが、それとは別に言っておかなければならないことがあった。
「……ところでカフェインって覚醒効果があるけど、同時に利尿作用もあるわよね」
「? ええ、はい、それは知ってますけど……あっ」
「思わずチビっちゃうぐらい凄い迫力なのよね?」
「……スゥー……ちょっとお手洗い行ってきます……」
「私も行くわ……」
尊厳など漫画家にとっては連載と〆切のためならいくらでも投げ捨てられる程度のものでしかないが、それはそれとして積極的に失いたいものではない。二人はいそいそと席を立ち、お手洗いへと急ぐのだった。
一方、舞台裏。
第一幕を終えて楽屋に引っ込んだ演者一同は──全員同時にその場に
さもあらん。いくら稽古を繰り返したことでそれなりに耐性ができたとはいえ、流石に限度というものがある。まして物理的に距離のある観客と異なり、彼らは同じ舞台上で至近距離から
そして彼らがこうも疲弊しているそもそもの原因はといえば、たった一人疲れた様子もなくピンピンしており、汗のひとつさえかかないまま興奮も露わに目をキラキラさせていた。
「第一幕お疲れ様でした! 僕の演技どうでした!? 我ながらかなりよくできたと思うんですけど!」
『うんうん、完璧だったよシオン! 皆シオンの魅力にノックアウトされてたよ!』
確かにノックアウトされていた。まあ共演者はもれなく現在進行形でノックアウトされているわけだが。
「お前っ……お前よォ……!」
ゆらり、と幽鬼のような表情でアクアが立ち上がる。その足はプルプルと産まれたての子鹿のように震えていた。演技中ずっと全肯定幽霊から褒められまくられたことで自己肯定感爆上がりでペカペカしているシオンとは正反対の青白い顔色である。
「お前っ……なんだあの……ヤケクソみたいなオーラはっ……! 少しは加減しろっ……バカッ……!」
「え? あー、その……ちょっと張り切りすぎちゃったかな……?」
「張り切るにしても……刻むだろっ! 普通もっと……段階をっ……!」
アクアのただならぬ様子に、シオンはようやく楽屋内に漂う疲労困憊の空気に気付いたようだった。比較的上手く受け流した方であるあかねでさえグッタリしているのだから相当である。
シオンは張り切りすぎたのだ。折角ある程度は制御できるようになってきたオーラの加減を誤ってしまう程度には。それを真正面から受ける羽目になった姫川は仰向けにぶっ倒れながら抗議の声を上げた。
「こんな序盤からかっ飛ばしてどうすんだよ……まだ本命の最終幕が控えてるってのに……!」
「いや姫川君が文句言うのは違くない?」
「かなり自業自得じゃんね?」
「いやもう全くもって……ハァ……おっしゃる通りです……!」
しかし
不服はなかった。大方その通りであると認識していた。シオンが鍔姫の役を拝命することになった切っ掛けを作ったのは他ならぬ自分自身である。姫川は力なくその場で寝返りを打った。
しかしシオンの本気の演技を歓迎していた姫川でさえ音を上げるレベルのオーラを出してしまったのは事実である。打って変わってしゅんとしてしまったシオンに慌ててあかねがフォローの声を上げる。
「で、でも演技は本当に良かったと思うよ! 稽古の時よりずっと感情が乗ってたと思う!」
『そうそう、あの程度のオーラで気圧されちゃう側が悪いよ。私ならあの三倍までは耐えられるもんね!』
ちなみに今し方発揮されていたオーラ出力が全力の1/11000程度なので、アイが耐えられると豪語する出力は3/11000である。どんぐりの背比べとか言ってはいけない。
「何にせよ、これは気を引き締めてかからないとまずいわね。観客はさっきのシオンと姫川さんの演技を基準に私達を見るはず……」
楽屋に着くなり白目を剥いてぶっ倒れ、ついさっきまで小刻みに痙攣していた有馬かなは、よろよろと身を起こしながらそう言った。
第二幕は鍔姫を打倒するために新宿クラスタと渋谷クラスタが同盟を結ぶ場面が描かれる。主に中心となるのは主人公たるブレイドと、鍔姫と深い因縁を持つ
観客は第一幕で受けた衝撃の余韻冷めやらぬ中で第二幕を観ることになる。必然、そのつもりがなくとも比較してしまうことだろう。直前に目の当たりにした、隔絶した感情の熱量、戦場の壮絶を投射するが如き確度の演技と。
「……へっ、上等だろ」
「元々負けるつもりなんて更々ないしな」
ララライに在籍する者は誰もが等しく根っからの演劇好きである。そういう者でもなければついていけない程に、ララライの中には常に技術の向上を目指す努力と克己の気風が根付いていた。だから心が折れない。端から上しか見ていないから、その途上に何者がいようが足を止める理由足り得ないのだ。
「誰も怯んだ様子もなし、と……流石は天下のララライ、どいつもこいつも演劇バカねー」
「そういうお前は大丈夫なのかよ。さっきまでお茶の間にはお見せできない感じの顔で痙攣してたけど」
「アクアうっさい。本番になればスイッチ入るから大丈夫なのよ私は!」
そういう意味ではかなも似たようなものだった。彼女は物心つくより以前から演技の世界に身を浸している。それ相応に実力があり、また相応に自負もあった。それは決して傲慢ではなく、むしろ実力からすれば謙虚といえる程に、彼女は己の技量を客観視している。
冷徹に己の実力を推し量りながら、自分はまだこんなものではないと飽くなき向上心を抱き続ける。それが仕事を失ってなお演技の世界にしがみつき続けた、有馬かなという演者の、執着とも言える決して表には出さない本質だった。その執着があればこそ、かなは障害の一つや二つを前にした程度で足を止めるようなことはない。
それとは逆に、執着が皆無であるが故に逆風を物ともしない者もいる。星野アクアにとって、演技とは手段であって目的ではない。良い演技をして良い評価を得ることを目的としている他の演者と異なり、彼にはこの世界での栄達など眼中にはない。
無論良い評価を得られるに越したことはないが、それは業界内の特定人物……星野アイと生前関わりがあった業界人に接近するという大目的に集約される。故に突出した才能と己を比較して腐る必要がそもそもないのだ。自分に才能がないことなど十年以上も前に自覚している。そんなアクアにとって自分より才能ある誰かの存在など今更珍しくもない。自分以上という意味では有馬かなも黒川あかねも、姫川大輝も大して変わりはないのだから。
野心もなければ執着もない。あるのは死んでも目的を達成するという漆黒の意志が一つのみ。それ以外の全ては等しく瑣末事である。シオンに対する文句は純粋に生命の危機を感じたから苦言を呈しただけで、彼の演技を受けて自信を喪失しただとか、何か精神的に揺らいだわけでは決してない。その程度で揺らぐ程、アクアの意志は……もはや怨念とでもいうべき復讐の刃は
「…………」
しかし、彼らほど達観できない者もまた存在する。
疲労の中に軒昂たる意気を隠しもしない演者達を見渡して、
「一つ聞くぜ、鍔姫とやら。お前はこの東京を地獄に変えると言った。強者のための楽土を築き上げるとも言った。何をするつもりだ? その力で、その刀で、お前は何を望み、この地で何を為すつもりだ──?」
第二幕は、ブレイドの問い掛けから始まった。
対するは捻くれた片角を天に聳えさせ、不吉を纏う黒の長髪と紫色の深みを持つ瞳を血の色に濡らす少女。身の丈ほどもある巨大な刀身を苦もなく片腕で保持しつつ、鍔姫は小さく微笑んで告げた。
「開拓だ」
ただの一言であるそれが衝撃的に全ての聴衆の胸を打った。復讐でもなければ改革でもなく、ましてや全ての盟刀使いの最終目的たる国盗りでもない。淡々と、まるで庭の草を刈るのだと言うかのように、その少女は事もなげにそう告げた。
「鍛造と言い換えてもいい。今の東京の在り様は私にとって特に見苦しい。老若男女の区別なく頬を張り、冷水を浴びせ、火で以て追い立てる。弱々しく在り続ける者は皆死ねばいい。強く在らんとする者のみ生き残ればいい。それは遅いか早いかの差でしかない。いずれ同じことだ」
「……戦えない者は皆死ねってか? そんなものがテメエの覇道だと?」
「だから時間をかけるつもりだ。一息に滅ぼすのは容易いが、そうしては全てを虚弱のままに焼き尽くしてしまうからな。言っただろう、まだ決着の時ではないと。そうさな……手始めに足立クラスタから手を付けるか。北より戦火を広げ、少しずつ南下していく。新宿も渋谷もその途上にある。頃合いとしては丁度良かろう」
言い終えるなり鍔姫は背を向けた。斬りたくば斬れと言わんばかりに無防備な後背を晒し、しかし誰もが指先一つ動かすことなくその姿を見送る。戦わずして確信したのだ。その背に斬りかかれば、死ぬのは己の方であると。
ただ一人、鞘姫は縋るようにその背中に向かって手を伸ばす。
「お待ちください鍔姫姉さま! 話はまだ……!」
「──これは私の気紛れであり、慈悲である」
鍔姫は首だけで振り返る。紫を帯びた深紅の瞳が見開かれ、その眼光に炎が宿った。
視線に感情が乗るのなら、さぞかし高熱が吹き荒れ火花が散るだろうと思わせる、あまりに強固な拒絶の意思が眼光と共に世界に放たれた。それは物理的な威力さえ伴っていそうな迫力となって視界内に存在する全てに襲い掛かり、見る者を総毛立たせる。
否。その視線は真実、物理的な破壊力を持っていた。
「……ッ!?」
突如として鞘姫が大きく後方に吹き飛ばされる。まるで全身に甚大な衝撃を受けたかのように、彼女の身体は舞台の中心から端まで十メートル近い距離を飛翔した。その衝撃の威力を物語るかのように、鞘姫の足下に転がっていた小石が発破を受けたかのように粉微塵に粉砕され四散する。
「鞘姫!?」
轟音を立てて板上に叩きつけられ、ゴロゴロと二度三度と転がってようやく止まる鞘姫。刀鬼は血相を変えて主人の下に駆け寄った。
「弱い。そして脆い。唾棄すべき脆弱さだ。私はその弱さをこそ憎む。……覚悟しておくことだ。次に相見えた際にも同じような無様を晒すようであれば、その時こそ容赦なく叩き潰してくれよう」
鞘姫は渋谷クラスタの首領である。その所以は血筋に依るところが大きいとはいえ、それでも彼女は盟刀に選ばれた一流の剣士だ。並の兵士では束になって掛かっても手傷を負わせることすら不可能な強者である。
そんな手練の剣士を、手で触れることも、刀を抜くこともなく、視線一つで以て鎧袖一触にするその脅威。あまりに隔絶した武威に、その様を目の当たりにした誰もが驚愕を隠せなかった。
と、いうより……鍔姫から放たれるオーラにもいい加減慣れてきた観客は、ようやく冷静になってきた頭で先程の現象に思いを馳せる。彼らの視線は刀鬼に支えられ力なく身を起こす鞘姫に注がれた。
空気が爆ぜ震える様を肌に感じる程の物理的な衝撃。普通ならば怪我は必至の速度と勢いで吹き飛んだ鞘姫。
しかし、どう見ても鞘姫にはワイヤーなどの小道具を装着している様子はなかった。だとすれば鞘姫は完全に生身のまま先程の勢いで吹き飛び床に叩きつけられたことになるが、それこそあり得ないことだ。人間は静止状態から十メートルもの距離を水平に跳躍することはできないし、振動が客席に伝わる程の勢いで板上に叩きつけられて無傷で起き上がることは不可能である。
突然弾け飛んだ小石にしてもそうだ。火薬でもなければ再現できないだろう衝撃があったにもかかわらず、火薬はおろか、爆発によって生じるべき熱と光が皆無だった。ただ純粋な衝撃のみが突如として内部より生じた……そうと仮定しなければ説明できない、全く不可思議な現象である。
思い返してみれば他にもある。鍔姫の登場と同時に四方八方へ吹き飛んだ兵士達。平然と宙に浮いて今も鍔姫の動きに追従し浮遊している大刀。会場全体に行き渡る程の風圧を巻き起こす大斬撃。大迫力の演技の勢いに押されてその時は看過したが、冷静に考えればおかしいことだらけだった。
常人の想像を超えた何某かが舞台上で起きている。主に鍔姫を……桐生シオンを原因として。
しかし、ここで鍔姫は一度退場する。彼女の次の出番は最終幕まで待つ必要があるだろう。
客席の回転機構が再び駆動し、舞台は次のステージに切り替わる。血霧に煙る戦場跡はそのままに夜が明け、その場には新宿と渋谷の首脳陣のみが残された。
「……ブハァッ! マジかよ信じらんねーあの女怖すぎだろ! 生きた心地しなかったんだけど!?」
それまで余裕綽々といった表情で鍔姫と渡り合っていたブレイドは、一転してそんな言葉と共に地面に手をついて倒れ込んだ。その態度の変わりようにつるぎはギョッと目を剥く。
「ちょっ、アンタさっきまで余裕ぶっこいてたでねーか!」
「んなもんハッタリに決まってんだろ馬鹿! はーマジでありえねー! あんな奴がいたのかよコエーな渋谷! 実はお前もヤバい奴だったりすんのか? 妹なんだろ、アンタ」
「……いいえ、姉さまは渋谷においても特異な存在でした。あれほどの傑物は我ら血族の歴史の中でも類を見ません」
水を向けられた鞘姫は淡々と答えた。刀鬼に支えられて立つその姿は弱々しく見えたが、しかしブレイドは見た。
「で、どうするんだ? 新宿としてはアイツの語る覇道とやらは到底容認できねえ。悪いが討ち取らせてもらうぜ」
「──いいえ。渋谷クラスタの首領として、姉さま……いえ、鍔姫は私が討ち果たします」
即答だった。ブレイドの予想通り、しかし鞘姫の優しさと慈悲深さを知る渋谷の者にとっては予想外の果断さと苛烈さで以て彼女は告げる。
「過去がどうあれ、彼女は渋谷の……
「へっ、流石は渋谷クラスタの頭。女だてらに肝が据わってやがる。そうこなくちゃ面白くねぇ……と言いたいところだが、アイツの強さは桁が違う。口惜しいが新宿クラスタの戦力だけじゃ心許ない」
「そうですね。首級を譲るつもりはありませんが、渋谷の総力を以てしても勝機の薄いことは認めざるを得ません。単騎で東京の全てを喰らい尽くして余りある怪物を討ち取らんとするならば──」
周囲の理解を置き去りに、立て板に水の如く会話を進めていく両雄。そこには互いに己以外の命を背負う者同士の共鳴があった。
故に、下される結論は一つ。
「新宿だけでは不足。渋谷だけでも足りねえとくりゃ──」
「独立した二つの勢力を束ね、一つの巨大な軍勢と成す必要があるでしょう。であれば──」
「同盟だ」
「同盟です」
「我ら渋谷クラスタは新宿クラスタを目的を同じくする
「同じく、新宿クラスタも渋谷クラスタを志を共にする戦友として遇し、背中を預けることを誓うぜ」
ここに、原作ではあり得なかった関係が生まれる。
互いが互いを強敵として敬意と共に認め合いつつも、一定の線引きを以て決して相容れなかった両クラスタ。それが東京に未曾有の戦禍を齎さんとする巨悪を前にしたことで、ただ一時の間だけとはいえ完全に同じ方向を向いたのである。
その瞬間を目撃した観客の誰もが興奮を禁じ得なかった。原作を知るからこそ、本来であればあり得なかった奇跡のような
原作者監修という前情報により受容する下地があったことは確かである。しかしそれだけではこうも観客が夢中になることはなかっただろう。それは
畏怖を抱きながらも大胆不敵に笑ってみせ、果断さを以て己が流儀を貫き通すブレイド。
混乱と悲しみ、そして恐怖に揺れながらも凛然たる佇まいを崩すことなく、壮絶なまでの苛烈さで以て刃を放つ覚悟を示す鞘姫。
何より、両者が下したその結論に圧倒的なまでの説得力を与える、鍔姫という存在が示す空前絶後たる脅威にして恐怖。一流の演者達が魅せる一流の演技が、あり得ざる物語にこの上ない説得力を与えているのだ。
とりわけ、黒川あかね演じる鞘姫が示した交戦の意思は衝撃を以て観客に受け止められた。原作においては一貫して争いを厭い、戦に臨んでは常に悲愴を滲ませていた彼女らしからぬ苛烈さは、鞘姫というキャラクターを深く知る者ほど虚を突かれたような驚きがあった。
しかし、驚きこそあれ違和感はなかった。あかねが示したのは鞘姫という少女が生来持つ情の深さの裏返しであったからだ。
それは壮絶なまでの訣別の覚悟。もはや互いを思いやることなどなく、互いの死を願い、その屍を踏み越えた先にしか望む未来など訪れないものと思い定めたのだ。血を分けた肉親に対する情の深さが故に、その決意は血を吐くような壮絶さに彩られて全ての観客に投射される。
原作ファンは深い納得と、それ以上の感動を以て鍔姫を討つと断じたあかねの演技を受け止めた。それが鞘姫というキャラクターを忠実に再現した上で、その人間性に更なる深みを与えていることを理解したからである。
「諸卿、聞くべし」
並の者では威儀を正すことすらできぬ混乱と緊張とが渦を巻く中、それを叱咤するように声を上げた鞘姫は、続く言葉を以てして来たる大戦への第一歩を踏み出した。
ブレイドと向き合っていた鞘姫が自陣を振り返る──観客席に向き直る。
「私、鞘姫は渋谷クラスタの長たる権限により、ここに逆賊たる鍔姫とその傘下にある
「忠を示しなさい。我が身に宿る貴種の血脈と、その歴史に」
ザッ! と音を立て、渋谷クラスタの将兵らは一斉に頭を垂れる。一糸すら乱れぬその様が示すは鉄の忠義。彼らが信奉するは過去の英雄にあらず。今まさにその眼前にて峻厳たる在り様を示す、高潔にして壮烈たる渋谷の姫君である。
鞘姫は流れる涙を拭うことすらなく、厳粛な面持ちで跪く配下を見下ろす。
鍔姫は世界すら呑み込む威容を示した。ブレイドはそれに負けじと気炎を吐いた。ならばこちらも相応の覚悟を以て対するのみ……鞘姫は冷徹にそう断じた。この場に吹き荒れる有象無象の感情を聞き分ける。分析する。計算する。もはやこれは新宿と渋谷だけの戦争ではなく、この場は東京の全てを巻き込み燃え上がる争乱の勢力図を定める分水嶺と化した。その中核たるを自ら選んだ鞘姫には、もはや瞬き一つの油断も許されない。
戦いは、既にして始まっているのである。
【鮫島アビ子】
実は徹夜明けで観劇に来てる超絶売れっ子漫画家。何で徹夜したかといえば脚本作りで発生したロスのツケを支払ったから。つまりは自業自得。
エナドリをストローでキメるとカフェインの覚醒効果が高まるという都市伝説があるが、実際のところ特にそのような効果はない。ただ缶飲料をわざわざストローでチューチュー飲む女の子の姿が可愛く感じるというのは理解できる。しかし今時は一周回ってワイルドにガツガツ食ってガブガブ飲む女の子の方がトレンディだと思うんスよね。令和版いっぱい食べる君が好き的な。恐いか? 「新時代」が……!
ちなみにその行き着く果てが某もちづきさんです。この新時代恐すぎる……これが令和!
【吉祥寺頼子】
巨匠鮫島アビ子の漫画の師匠にして、自身もまた大作「今日は甘口で」を世に送り出した超売れっ子漫画家。
だが飲兵衛である。この世界線ではRTA走者雷田Pの隙のないチャートにより実現しなかったが、原作ではアクア(16)、有馬(17)、あかね(17)、メルト(16)ら未成年四人を自宅に招いた上で酒宴に興じるという酒カスぶりを見せつけた。彼女こそ缶飲料にストローなどという女々しい飲み方は似合わない。快音を立ててプルタブを引き起こし、豪快に缶を呷る姿こそが最も相応しいだろう。
【桐生紫音】
“一撃絶命”の拳を持つ達人、
それはそれとして常人相手にぶちかまして良い濃度のオーラでないことは確かである。これ以上は危険や 芝居を止めるぞ
【星野アイ】
『いいよいいよ! シオン輝いてる!』
『その演技、ナイスだね!』
『キャー! かっくいー! 目線くださーい!』
『クククク……シオンは隔絶した声・外見・演技力……そしてオーラが含まれている完全芸能人だァ』
などの褒め言葉を演技中ずっと囁いていたため、普段はあまり自分に自信のないシオンも自己肯定感爆上がりでペカペカしていた。お陰で普段よりもちょっと(当社比)多めにオーラを出してしまい、共演者と一部の観客が阿鼻叫喚となった。
ちなみにあかねをぶっ飛ばしたのはアイの念動力だが、小道具の小石を爆散させたのはシオンの眼力である。以前事務所で実演してみせた時より射程と威力が強化されており、十メートル先の鉄筋コンクリートを爆砕させる眼光を放つことができるようになった。真の英雄は(ry
【脇役を務める劇団「ララライ」の愉快な仲間たち】
・
……メイン女性陣のロングヘアな方。実直な性格の持ち主。演技以外の趣味はボーリング。
・
……メイン女性陣のショートヘアな方。実直な性格の持ち主。演技以外の趣味はボーリング。
・
……メイン男性陣の小柄な方。実直な性格の持ち主。演技以外の趣味はボーリング。
・
……メイン男性陣の大柄な方。実直な性格の持ち主。演技以外の趣味はもちろんボーリングだ。
・みたのりお
……謎のベールに包まれたララライの一員。今後の活躍に期待だ。
【姫川大輝】
キャラクターとして鍔姫と一番因縁が深いのは刀鬼と鞘姫だが、シナリオ的に最も深く関わるのはブレイドである。気炎を胸に未来に向かって前進し続ける人族のブレイドと、過去に囚われ復讐の炎を燃やし続ける鬼族の鍔姫……という対比構造になっており、最終的にはこの両者によって雌雄を決することになる。
つまり姫川は最終幕の
やべぇよやべぇよ……これワンチャン俺死ぬんじゃないか? と今更になって後悔が押し寄せてくる姫川であった。誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない。
【有馬かな】
突出した天才である黒川あかねと比較した上で、姫川から「有馬の方が演技というものに執着が強い」と評された通り、干されようがシオンのオーラに当てられお茶の間にはお見せできないような顔になろうが、死んでも芝居の世界に居座ってやるという気概に満ちている。基本ネガティブ思考なクセして本当の根っこのところにある芯は絶対に揺らがない心の強さがある。そういうところがアクアを惹き付けるんやろね。はよくっついて末永く幸せになれやこの頭ベーキングパウダーがよ。
【星野アクア】
お前がシリアスできるのこの章が最後だから! バーカバーカ! 早く重曹と籍入れろやこのスケコマシ三太夫! いけーっ カミキの息子!
【黒川あかね】
アイや有馬が自ら輝き大衆の目を奪う
問題はあかね自身も巨星に匹敵する才能の持ち主であるという点にある。有馬に憧れて演劇の世界に入り、天才役者として頭角を現したように。またアイを研究し、その神髄の一端に手を掛けたように、追い求める星の輝きが強ければ強いほど彼女の輝きも増していく。
で、今あかねが追いかけているのは完璧で究極のゲッターである。
ララライへようこそ
これがゲッターだ
私は遂にこいつと一体になった
もう誰も私を止める事はできない
死ね
というのは冗談だが、要するにバカみたいなオーラで迫力をブーストしたシオンの演技に追従できるまでに演技力を高めつつあるということ。もはやこの世界線のあかねの演技力は姫川に匹敵するレベルにある。流石にまだ姫川の方が経験豊富な分何枚も上手だが、経験が才能に追いつけばその限りではないだろう。これだから努力する天才は手に負えないのだ。
でもこの子、重曹ちゃんの厄介ファンなんだよね。すごくない?
【鳴嶋メルト】
メルトは 力を溜めている……
悪いが作者はアニメでのお前の活躍に脳を焼かれたんだ。曇っていられるのも今のうちだぜベイビー。