01 わたしのおねえちゃん♡
「おねぇ! おねぇってば!!」
「……ぅ……うぅ~ん……もぅ……なぁに……?」
私は寝ぼけて目を擦りながら、ゆっくりと体を起こした姉である『柊うてな』を呆れた様子で見る。
手前味噌ながら、姉は地味目だが、かわいいと思う。
少し、くるくる、とクセのある髪。
みょんみょん、と跳ねるアホ毛。
たれ目がちな目。
そこそこに育った胸。
外にあまり出ないからか色白な肌。
お尻はちょっとむっちりしていて、全体的に細く見えるのに、ふとももからお尻にかけるラインは結構肉感的。
……そして、ちょっと甘めのボディソープとシャンプー、トリートメントの香り。
は? 最高かよ?
私ってば、この姉と毎日暮らして、色々アレな姿を見てるのよ?
ほら、見て?
今だって、無防備に寝崩れたパジャマから、白い下着が見えてて、ちょっと前屈みになった姉を上から見下ろすと、桜色のぽっちが見える。
……無自覚な色気やべぇな。
押し倒して、ぺろぺろしたくなる!
「もうキウィちゃんが来てるよ! 今日、お出かけするんでしょ?」
……だが、そんな姉にも春が来たらしい。
同級生の『阿良河キウィ』ちゃんとお付き合いを始めたっぽい。
しょっちゅう一緒にいるし、何より距離感が友達同士のそれじゃなくて、恋人同士のそれなのだ。
……姉のことが大好きな私としてはちょっとばかりジェラシーである。
「……ぇ……ぅ……んっ。……そうだけど、待ち合わせはお昼過ぎ……」
ふぁ、と欠伸をしながら伸びをした姉の方からブラの紐が、する、と落ちて、姉のお胸が露わになる。ラッキー!
「おねぇ、まだ寝ぼけてる? もうお昼過ぎだよ?」
私は姉のブラと服を直しながら、そう指摘する。
ぽへぇ、と私のなすがままになっていた姉は、その言葉に首を、ぐりん、と枕元の時計に目を向けると、しばし沈黙。
……その顔はみるみる青くなって、冷や汗が、ぶわぁ、と吹き出した。
「……ぇ……っ!! ぁわわわわわわっ!!! 本当だぁぁぁ!?」
大変大変、と姉が飛び起きて、慌てて服を脱ぎ始める。
……あーあー、そんな寝起きに激しく動いたら……。
「へぷぅ!!!???」
中途半端に脱いだパジャマの下に足を取られて、ベッドの上から床へダイブ!! 顔から床に突っ込んだ姉のお尻が、ぷりん、と突き出される。
……う~ん、眼福!
「……つ、つぼみぃ……十分、十分でいいから、キウィちゃんの相手お願いぃぃ!」
たら、と鼻血を出しながらそう懇願する姉の鼻の穴にティシューを突っ込んで、私は、ふふん、と笑う。
……あ、申し遅れました。
私、柊うてなの妹、『柊つぼみ』です。
「ふふふ……このつぼみちゃんに、お任せあれっ!」
どやぁ、と両手を腰に当てて、笑みを浮かべると、姉からのミッションをクリアするべく、私は階下で待たせているキウィちゃんの下へ赴く。背後ではドタバタと慌ただしく姉が準備している音が聞こえる。
「キウィちゃん、おねぇ起こしたから、もうちょっと待ってて」
「おー、つぼみー、さんきゅーなー」
リビングにお通しして、待ってもらっていたキウィちゃんに声を掛けると、彼女は、へらっ、と笑みを浮かべた。
……正直、姉にはもったいないくらいの美人さんである。
お団子上に結った髪。
厭世観の漂った、病み気味のちょっと昏い瞳。
左目の下の泣き黒子が、彼女の怪しい魅力を際立たせる。
そして何より、そのおっきぃお胸!
あれは至高だと思います!
まぁ、でも、私は姉が世界一かわいいと思ってるんですけどね?
「あー、でも、ホントは私がうてなちゃん起こしたかったなー……」
「妹の特権だもん。そんな簡単には譲ってあげないよ? ……キウィちゃん、何か飲む? それともお菓子食べる?」
「んー……うてなちゃんと、出てから何か食べるだろうし、とりあえずいいや。ありがとうなー、つぼみー」
よしよし、とキウィちゃんが私の頭を撫でる。
姉とのデートを控えているからか、今日の彼女は機嫌が良さそうだ。タイミング悪いと、私にも嫉妬の目を向けてきて、ちょっと怖いときもあるからね。
「……で、つぼみ? 寝起きのうてなちゃんってどーよ?」
ふへ、とちょっと、いやらしい笑みを浮かべるキウィちゃん。
「無防備でエロい」
私は端的に述べる。
姉は全体的にガードが弱いが、寝起きは更に弱い。
普段は、おどおどしていて、割と警戒心が強いのだが、寝起きだとそんな感じもないので、結果、姉のエロさが際立つのだ。
私の答えに、キウィちゃんは、うへへ、と笑みを浮かべるが、次の瞬間には、眉を寄せて、難しい顔をした。
「……無防備でエロいのかー……」
うーむ、と悩ましそうに考える彼女を見ながら、私は首を捻る。
「おろ? キウィちゃんらしくないね?」
普段から、「うてなちゃん、すきすき~♡」「うてなちゃん、ホテル行こ?」とか言って、好意も欲望も隠そうとしない彼女である。
通常なら、無防備でエロい姉なんて、ごちそうにしかならないと思ったのだが。
「……いや、あんまりアレだとアタシの理性が……」
「あー……おねぇってばそういうところあるからなぁ」
理性なー。アイツ、すぐ死ぬからなー。
かく言う私も、さっきは理性が死にそうになっていた。妹として暮らしている期間がなければ、即死だったと思う。
「……分かるー? まー、うてなちゃんのああいうのがいいんだけどさー」
えへー、と幸せそうに笑うキウィちゃん。
ぐぅかわです。
「でも、別にキウィちゃんならいいんじゃないの?」
恋人同士なんだろうし、と頭の中で付け加える。
それを理解しているのかいないのか、キウィちゃんは、明後日の方向を見ながら、言いづらそうにしながらも、ぽつぽつと言葉を発する。
「あー……まー……んー……一応、保留となってる身としてはさー、色々思うところあるわけでー」
……保留!? いや、姉は確かに奥手だけども!?
でも、キウィちゃんみたいに押せ押せで来られたら絶対に流されると思うのに!
「保留!? あれ!? キウィちゃん、おねぇと付き合ってるわけじゃないの!?」
「……お互い好きだとは思ってるけどー。まぁ、色々とあるんだよ、色々と」
いや、まぁ、お互いに好意を持ってるのは見りゃ分かるけど。あれで付き合ってないとすれば、ホントに付き合ったらどうなるの!?
「なぁんだ……てっきり、おねぇとえちぃことしてるんだと思ってた」
「……いや、いちおー、したことはあるよ? 途中までだけど……」
顔を赤くして、そう話すキウィちゃん。
うーん……姉が大好きな妹としては、姉の情事には非常に興味がある!
「そうなの!? どうだった!? ちゅーもしちゃった!? やっぱり、未だにおへそ弱点なのかな!? おっぱいとどっちが感じるの!? でもでも、私としては、おねぇはきっとお尻とか意外と弱そうな気がしてるんだけど、そこんとこどうなの……って、いったぁぁぁいっ!?」
すぱぁぁぁん、とめっちゃいい音が自分の頭から響いた。
私が、ぷく、と頬を膨らませて後ろを振り向くと、ものスゴイ目をした姉が私を見下ろしていた。
……ギヌロ、といった感じの汚物かGでも見るような殺気の籠った瞳。
……どくん、と胸が高鳴る。
「……つぼみ……何を話しているの……?」
明らかに怒気を含んだ姉の言葉。
……普段は、おどおどしていて、怖いと思うことなどほぼないが、このときばかりはまるで蛇に睨まれた蛙の気持ちになった。
……だけど。
……この背筋が冷たくなる怖さも、どきどき、と恐怖と緊張で早くなる鼓動も。
私は大好きだ!
「おねぇとキウィちゃんの情事の話!」
うひ、と私は笑う。
姉が怒るその姿を想像して。
「……………………………………もうっ!!!!!!!!」
みるみる顔を赤くした姉が、恥ずかしそうにしながら、拳を振り上げる。
……甘んじてそれを受けるのもそれはそれでいいけども。
「……えいっ!」
しゅばっ、と姉が拳を下すより先にしゃがみこんだ私は、右手を振り上げる。
ふぁさっ、と姉のスカートが捲り上がる。
ぶっ、と私の後ろでキウィちゃんの鼻血を噴く音が聞こえた。
……うーん……黒のスケスケ。いつの間にこんなエロい下着買ったんだろう? また今度、姉の部屋を捜検しなければ。
というか、姉よ。起きたときは、あんまり色気ない白の下着だったじゃないか。わざわざ勝負下着に着替えるなんてヤる気満々だな!
「ひぃやぁっ!! こ、こらぁ、つぼみぃぃぃ!!」
姉がスカートを捲られて、その中身をキウィちゃんに目撃されたショックで硬直する瞬間を狙って、私は姉の背後に抜け出して、そのまま部屋を出る。
……あ、でも。
「おねぇ、夕食いらないなら連絡してね♡ ママにはうまく言っとくからさ♡」
顔だけ、ひょこっ、と入り口から見せて、私はそう言いながら、にひ、と笑った。
……いやぁ、私ってばデキる妹。何かあるようだったら、今度、キウィちゃんから根掘り葉掘り聞こうっと。
「へぅぅ~~っ!!」
背後で情けない声を上げる姉の声を聞きながら、私は笑みを深める。
……私はこんな姉が大好きだ♡