悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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109 結成! 暴君のお茶会(Nero's tea party)

「……さぁ、一緒に幕をあげましょう、シスタ。さいこーにさいきょーの物語を紡ぐために」

 

 そう言ったマジアアトラは、右手を胸元に持って来ると、一対の翼を消費して、小さな魔力の球体を作り……。

 

「……シスタ、口を開けなさい」

「はぁい♡」

 

 ……半ば物質化しているそれをシスタギガントの口にねじ込んだ。

 

「……んぷっ、んんっ!? うぇ、おごっ……っん……く、っん♡ ……ぷはっ♡ ……ぁむ、ちゅ♡」

 

 飲み込めるハズもないように見えた球体は、しかし、シスタの喉の奥を大きく広げるようにしながら、恍惚の表情をしたシスタが苦しさで涙をこぼしながらも嚥下した……ついでに、口の中にねじ込み、唾液で汚れたアトラの指を愛おしそうに舐る。

 一頻りアトラはシスタに指を舐めさせた後、それを引き抜く。「……あぁん♡」と、シスタは名残惜しそうな声を上げた。アトラは嫌そうな顔をしながら、どこからともなく取り出した除菌用ウェットティッシュで唾液に塗れた指を拭っている。

 

 ……ど、くん……!

 

 その場にいた誰もが、その音を聞いただろう。……発生源はシスタだ。

 大きい魔力が、シスタの中で鼓動を起こし、それが波となって、その場の空気に響いた。

 

「……あっ……あ、あ、あ、あっ♡ す、すごいですぅ♡ これ、これって女王様のぉぉ!? ん、んぁぁぁっ♡ おっほぉぉぉぉ♡♡♡」

 

 絶頂。そうとでも呼ぶべき、シスタの歓喜は、魔力の奔流となって吹き荒れ……シスタの周囲を黒い魔力が包み込んでいく。

 

「……真化(ラ・ヴェリタ)……」

 

 カッ……、と黒く眩い光が世界を満たす。

 その世界の中でシスタの衣装が新たに紡がれ、彼女の肉体もそれに見合う姿へと変化していく。

 

 暗黒真化・シスタギガント<嘆きの女教皇>

 

「……あぁ……っ! 素晴らしいですぅ! 力が沸き上がってきますぅ!」

 

 修道服姿だったシスタは、その衣装を青と白と金で紡がれた豪奢な法衣を纏っている。それは確かに女教皇と言える神秘的なものにも見えた。

 

「…………な、なんで…………!」

 

 レオパルトは突っ込まずにいられない。

 

「…………なんで、ロリ化した上に露出増えてんだよっ!? 変態かよ、オメーはよぉ!?」

 

 シスタは小さくなっていた。長身、爆乳の彼女は、アトラと同年代に見えるロリ巨乳へと……っ!

 しかもその衣装も中々扇情的だった。彼女の元の衣装も下乳が見えるものだったから、それは変わらず、しかし、ちょっと動けば、中身がポロリしそうになっているし、タバードの横からは彼女の長い脚が見えるが、インナーがないため、むちむちのふとももが見え隠れし、申し訳程度に横を紐で押さえているだけで、ひらひらと揺れる法衣の間からむっちりとした横のお尻すら確認できる上、大事なところを隠すための布の存在を横から確認できない。……たぶん履いてない。

 

「……シスタ、何ですか、その乳は」

「えぇ~……でも、このくらいのときにはこのくらいはありましたよぉ?」

「……このけしからんおっぱいめ! おっぱいめ!」

「あぁぁん♡♡♡ やめてくださいぃ、女王様ぁ♡♡♡」

 

 ……ついでにアトラは乳への羨望から、同年代くらいになったシスタの胸が大きく腫れ上がっているのが気に食わず、乳にビンタしている。

 

 ……その姿を、はぁはぁ、と息を荒くして見ているのは二人。マジアアズールとパンタノペスカである。

 

「「……ごくり……!」」

 

 ……うわぁ、という顔で二人を見ながら、レオパルトは二人からそっと距離を取りつつ、マジアベーゼに近づく。

 

 その近くにはいつ到着したのか、ネロアリスの姿もあった。

 

(……アリス……?)

 

 アリスはじっとアトラとシスタの様子を見つめている。

 

 それはいつも通りの無表情にも見えたが……。

 

(……何やらかすつもりだよ、アリス……)

 

 ……とっておきの悪だくみを考えているのを、努めて無表情をしているようにも見えた。

 

「……あなたの魔力で、無理矢理に真化させたのですか」

「ええ。マジアマゼンタのフォールンメディックは中々に興味深いものでしたので」

 

 マジアマゼンタが真化……暗黒真化したのは先ごろのこと。

 その原因は暴走時のベーゼが彼女に魔力を注入したことだという。

 

 彼女の場合、自分の魔力の高まりでの真化とベーゼの魔力が絡まりあったための偶発的なものと言える。

 性格の変調。真化時の自己認識のズレなど、様々な不具合があるが、その能力の高さは通常の真化よりも高いとさえ言える。

 

「まぁ、解析して、自分のものにするのは、お前の得意とするところだもんなぁ~、アトラ?」

「ええ、コレは何だか最近気持ち悪いので、別に精神変調を起こしたところで変わらないだろうな、と思って、ちょっと実験させてもらいましたが」

「……酷いですぅ!?」

「まぁ、このとおり、変わらない気持ち悪さとけしからんおっぱいなので、成功、といったところでしょう」

 

 ぷく、と頬を膨らませて抱き着いてくるシスタの胸を、ぐにんぐにん、と弄びながら、アトラが答える。

 

「……その魔力に、暗黒真化させる技術。それで一体何をしようと言うのですか、マジアアトラ……っ!」

 

 アトラ一人でもかなり大きい戦力であるというのに、そこに暗黒真化したシスタが加わる。シスタの力は未だ未知数ではあるが、ロード団のときと同じとは考えられないだろう。

 

 そんな彼女らが何をしようとしているのか、ベーゼはそれを警戒している。

 

「さいこーにさいきょーな物語の幕を上げるだけですよ、マジアベーゼ。……まぁ、目下のところは、クリーチャーどもの排除を目標とするつもりですが」

「……クリーチャー。マスコットたちの排除、ですか……」

「ヴェナリータは利用価値があるから、当分先ですし、ヴァーツとか言う白いのは……まぁ、いつでも殺れますし。まずは、影を操っていたクリーチャーを始末させてもらおうと思っているのですが……」

 

(……それだけじゃね~んだろ~? わざわざアタシらが集合しているところで、宣戦布告めいたことやったんでからよ)

 

「……私の最終的な目標は、この世界の魔力の全てを私の……私たちのものとすることです。……だから、魔法少女たちはいらない」

 

 ……冷たい視線とともに、おぞましいほどの魔力がその場にいる者たちの肌を撫で、誰もが口を開くことすら憚られた。

 

「さすがは女王様ぁ、無道で無情ですぅ!」

 

 ……同等、あるいは彼女の眷属とも言うべきシスタは例外ではあったが。

 

(……相変わらず、肝心なところは口にしないのな)

 

 この中で、どれだけの人間がアトラの真意に気づけたのか。

 

 全てが理解できたわけではない。だが、レオパルトは何となくアトラの思惑を察した。

 

 欲望まみれなつぼみは、自分の野望を諦めない。ゆるゆると下り始めている自らの破滅をより幸せなものとするためには手段さえ選ばない。

 

「……さぁ、おいでアリスちゃん。私と一緒に遊びましょう?」

 

「……なっ……!?」

 

 まさか、とベーゼが驚愕する。エノルミータとロード団。その別離の際であっても、アリスが選んだのはベーゼたちであったが……。

 

 ……とん、とアリスはアトラに向かって歩を進めた。

 

「アリスちゃん!?」

 

 くす、と笑みを浮かべたアリスは少しだけ、ベーゼとレオパルトに振り返って見せた。

 

「……………………真化(ラ・ヴェリタ)

 

 未だ真化に至っていなかったハズの唐突な真化……いや、暗黒真化。

 

 ベーゼとレオパルトが気づいていなかっただけで、アリスは既にアトラ側だった。

 

 黒い光の中で、アリスの新しい衣装が紡がれる。

 アリスモチーフの白と青のドレスが、黒と赤へ。大きなリボンは王冠へと姿を変える。

 

 暗黒真化・ネロアリス<暴君>

 

 変身を終えると同時、控えめなVサインをして見せるのは、実にアリスらしい。

 

「……ようこそ、アリスちゃん。……いえ、我らが盟主、暴君、ネロちゃん」

 

 むふぅ、と満足気な笑みを浮かべたアリス……ネロの側に、アトラとシスタが控える。

 

「……あ、が……!?」

 

 ベーゼは理解できないとばかりに口をぽかんと開き、レオパルトは乾いた笑みを浮かべた。

 

「……暴君のお茶会(Nero's tea party)。私たちのことはそう呼ぶといい」

 

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