悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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111 敵になるのは……?

 ……<不思議の国>のガゼボに私たちは集まっていた。

 

 シスタギガントはさすがに暗黒真化状態を維持するのはキツイのか、元の姿に戻っている。元の姿に戻ってもぽよんぽよんしているお胸が恨めしい。

 

「……シスタ、イス」

「はぁい」

 

 私の声にシスタがイスを引こうとするが、私はその行動を、ゲシッ、と蹴り飛ばして止める。

 

「……あなたが、イスになるのよ、シスタ。ネロちゃんのね」

「ひ、ひどいですぅ♡」

 

 口では、ひどい、と言いながら、涙を浮かべ、しかし、いそいそとイスになろうとするシスタ……。

 

 ……ちょっと気持ち悪い。

 

「……」

 

 まぁまぁ、とアリスちゃんことネロちゃんが、シスタを立たせると、彼女をイスに座らせ、彼女の膝の上に座るネロちゃん。

 

「……♡」

 

 ……むふぅ、とご満悦な様子である。

 

 私としては上下関係を植え付けるためにシスタをイスにでもしとくか、くらいの感覚だったが、ネロちゃんの場合、そんな座り心地の悪いイスにされるより、おっぱいを背もたれ代わりにした方がいいだろう、というごく単純な思考だろうが……。

 

(……わりとナチュラルに暴君だなぁ……)

 

 何がひどいって、シスタはどっちにしろモノ扱いな当たりである。

 一方で、シスタは屈辱的なイス状態から背もたれ代わりにされるも、イスよりはマシとネロちゃんに感謝の念を抱くだろう。

 

「……はうぅ♡」

 

 ……何なら、ネロちゃんを膝の上に座らせて、抱きしめることができる特権付き。

 

 姉とかはるかちゃん当たりなら、これだけでメロメロになりそうなものだ。

 

「……シスタがそういう反応するのは意外ね?」

「あまり、小さい子たちと触れ合う機会は少ないのでぇ♡ ネロ様はとてもかわいらしくて最高ですぅ♡」

 

 むぎゅぅ、とネロちゃんを抱きしめるシスタ。抱きしめられているネロちゃんは、ちょっと迷惑そうにしているが、満更でもないようだ。

 

 私はそんな二人の様子に苦笑しつつ、紅茶を淹れて、一応三人分をテーブルに用意する。

 イスに座った私は、紅茶を、くぴり、と一口だけ飲んで、ふぅ、と息をついた。

 

「……さて、これで暴君のお茶会(Nero's tea party)のお披露目は済んだわけだけれども」

 

 ネロアリスをリーダーとしたクリーチャー撲滅組織『暴君のお茶会(Nero's tea party)』。

 

 最終的に、この世界にいる全てのクリーチャーにご退場いただくのが目標だが……。

 

「……目下のところは、魔力の収集に勤しむ感じですかねぇ?」

 

 片手でネロちゃんを抱きとめつつ、もう片方の手で器用に紅茶を飲むシスタ。

 

「……並行作業になるだろうね。私たちの目的をよく見れば、死活問題になる相手がいるから」

 

 ……そう、目下、私たちと敵対するものがいるのはわかっている。

 

「……魔法少女たちがすぐに死活問題になるとは思えないのですがぁ……?」

「……魔法少女たちで、街の平和を守る、なんて単純な目標を描いているのは、トレスマジアくらいでしょう? クリーチャー……つまりは、マスコットの撲滅というのは、即ち、魔法少女をこの世から無くすこと」

「……だとすれば、エノルミータ……というよりは、マジアベーゼですかぁ」

 

 ……まぁ、まずはそういう答えになるだろうけど。……そうじゃないんだよねぇ。

 

「……違うよ、シスタ。シオちゃんズだ」

「……はぁ……えぇ……?」

 

 私の答えにシスタは困惑気味だが、ネロちゃんは特段驚いた様子もなく、紅茶を口に運んでいる。

 

「……イミタシオ……加えてパンタノペスカ。この二人は自分が魔法少女であることに執着していると言ってもいい。私たちが魔法少女をこの世から無くすということを目的としていることに気づけば、真っ先に敵に回る。……マジアベーゼも確かに敵対するだろうけど、彼女の魔法少女()遊ぶという目的からすれば、もうしばらくは余裕がある。それに究極、マジアベーゼは、自分である必要性は考えていないだろうしね」

 

 一方で、イミタシオは自分が魔法少女でなくてはならない。

 彼女は自分が魔法少女という特別な存在であることに意味を見出しているから、それを真っ向から否定する私たちを受け入れることはできないだろう。

 

 そして、パンタノペスカ。

 彼女の趣味嗜好からすれば、自分の力が無くなることは、マジアベーゼ以上に恐怖を抱いていることだろう。

 

 ……自分で作った魔法少女のゴーレム的なアレでくんずほぐれつつする動画を撮れなくなるわけだし。

 

「……なるほどぉ、シオちゃんズですかぁ……」

 

 ふむ、と考え込む様子のシスタ。

 

 ……まぁ、シオちゃんズは正直敵とするならば、厄介な相手ではある。

 

 トレスマジアに比べれば、この街では新興と言っても良いが、単純な戦闘経験値で言えば、トレスマジアやエノルミータよりも上だろう。

 マジアブラン……ベルゼルガはマジアマゼンタよりも活動歴は長いし、イミタシオはこれまで表舞台に出てこなかったのが不思議な程に魔力の運用に長けている。経験値という意味では、パンタノペスカが劣っていると言えるが……。

 

(……相性の問題もあるけど、パンタノペスカが自分の能力の真価に気づいたら、最も厄介なんだよねぇ……)

 

 ……とは言っても、厄介なだけ、とも言える。

 

 ちらり、とネロちゃんの様子を見る。

 

 おいしそうに紅茶を飲んでいる様子は見ていてほっこりするけども……。

 

(……<暴君>……。ただでさえチートなネロちゃんの能力がどれだけ進化しているか)

 

 検証は必要であるだろうが……単純なネロアリスの能力だけでも事は足りる。

 

 シスタも実験的に暗黒真化をさせたわけではあるが、彼女の能力も元のものから比べれ、数段階上にあるだろう。

 

(……シスタもシスタで、自分の能力をどこまで把握しているのやら)

 

 ……単純に、身体を拡縮できる能力のわけがない。

 

 そして、彼女の場合……。

 

(……いつ裏切るか、それとも裏切らないのか。……ふふっ、楽しい♡)

 

 信用のおけない相手を近くに侍らせる。危険だが、しかし、それくらいの緊張感がないと楽しくない。

 

「……さぁ、楽しい楽しい悪だくみの時間だよ、ネロちゃん、シスタ♡」

 

 私は笑う。

 ネロちゃんが、にやぁ、と笑みを浮かべる。

 シスタが、くふ、と腹に一物を抱えたように笑顔を張り付ける。

 

「『暴君のお茶会(Nero's tea party)』を始めよう?」

 

◇◆◇

 

「……んっ……」

 

 しゅるり、と衣擦れの音と小さな声で田中みち子は目を覚ました。

 

 肌の触れる感触、体温。ぼんやりとした目でその相手を見れば、みち子と褥を共にしていた多田蘭朶の病的なまでに白い肌が見えた。

 

(……あぁ、そうか)

 

 このように肌を重ねるようになって、幾度目の夜を過ぎたのだろう。

 

 その歪な愛情を受け止め、しかし、自らもそれを受け止めるように形を変えた。

 

 かちり、と嵌った歪な関係は、もしかしたら、いつか終わりが来るのかもしれない。

 

 しかし、それは今ではなく……。

 

「……お前が相手ではないな、マジアアトラ」

 

 むくり、と体を起こすと、蘭朶が目を覚ます。

 

「……ん、みっちゃん……?」

「もう少し寝ていろ、蘭朶」

「……ぅん……」

 

 さらり、と髪を撫でれば、蘭朶は安心したようにみち子の太ももを枕にするようにして目を瞑った。

 

 ……いつかは終わりが来る。

 ……そして、それはきっといいものではないのだろう。

 

 もしかしたら、互いのためには、今終わった方がいいのかもしれない。

 

 だが。しかし。それでも。

 

(……まだ、終われないっ!!)

 

 相手がどれだけ強大で、凶悪であっても……。

 

(イミタシオは逃げはしないっ!!)

 

 マジアアトラとの闘いの予感を胸に、みち子は輝く月を睨んだ。

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