悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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……戦闘回へ、と見せかけて日常回に


112 田中との邂逅

 ……放課後。

 

「……♡」

 

 ……いや、もう諦めましたよ……?

 

 隣にはがっちりと私の腕をホールドしたこりすちゃん!!

 

 ……もう、学校からこのままです。商店街でお買い物中もこのままです……。

 

『きゃー♡』という同級生たちの歓声(一部は慟哭)を背中で聞きつつ、『あらあら♡』と商店街の皆様に生温かい目で見送られ、やたらおまけの多かった戦利品をエコバックにぱんぱんに詰めて私の家に向かっている途中です。

 

「……あ、あの~……こりすさん……?」

「……?」

 

 ふにふにと当たってくるお胸は慣れたけど、何でお手てはがっつり恋人繋ぎになってるんですかね?

 

「♡」

 

 えへ、と微笑まれれば、かわいいから許すしかないじゃないの!?

 

(……あ~……ダメだわ……やっぱり、これはもうムリだわ~……)

 

 暴君からは逃げられない!

 

(……私も覚悟を決めなきゃなんだなぁ……)

 

 ……まぁ、あと一歩を踏み出すことができないのと、踏み出すための仕掛けがまだ途中なだけだ。

 

 しかし、私は姉とキウィちゃんを諦めるつもりもない。私は強欲なのだ!

 

 私と一緒に楽しそうに歩いている親友を悲しませることなんてできるわけもない。

 

(……だからこそ、やらなきゃね。誰を敵に回したとしても)

 

 ……くふ、と自然に笑みが零れる。

 

 私の顔を覗き込んでいたこりすちゃんが、にやぁ、と邪悪な笑みを浮かべた。

 

 ……おそらくは、私の考えを察して、同じようなことを考えていたんだろうけど。

 

 ……あれ? もしかして、私もだいぶ悪い顔をしてたかな?

 

「……柊つぼみ、杜乃こりす……二人で何を邪悪な笑みを浮かべている……?」

 

 掛けられた声に顔を上げると、ジーンズにYシャツ姿の田中がいた。

 

「お、田中じゃん! おっすおっす! バイト帰り?」

「……目上には「さん」くらいつけんか、貴様」

 

 相変わらず細かいなぁ、田中は……。

 

「……それにしてもお前たち……いや、深くは言うまい」

 

 私たちの姿を見て、何やら色々察したらしい田中はそっと目を逸らした。

 

 ……そりゃあね? 田中と多田さんはもっと不健全な感じだしね? 私とこりすちゃんがベタベタしてるくらいかわいいものですよ?

 

 ……って言うか……ん~……?

 

 私は田中に近寄って、彼女の姿をよく見る。

 

「……? どうした?」

「田中田中、ちょい屈んでみて?」

 

 田中は身長がでかいから、ちっさい私じゃよく見えん!

 

 ……しかし、田中は私や姉を見ると嫌そうな顔をする割には、意外にも付き合いがいい。怪訝そうな顔をしつつもこちらの要求どおりに、前屈みになってくれる。

 

 さてさて、私の要望どおりになってくれた田中の首元を覗き込む。反対側は、何かに気づいたらしいこりすちゃんが確認している。

 

「……ふむ」

「……っ」

 

 こりすちゃんと二人で頷き合う。

 

 ……この感じ、田中はおそらく気づいてないのだろうけども。

 

「……いやぁ、田中、お盛んですなぁ♡」

「♡」

 

 くふふ、と私とこりすちゃんがにやにや笑みを浮かべる。

 

 田中は何のことだとばかりに不思議そうな顔をしているが……。

 

「……キスマーク、ついてるよ♡」

 

「……っ!?!?」

 

 私の言葉に田中は顔を赤くして、私たちから距離を取りつつ、両手で襟を正すような仕草で首を隠した。

 

 さて、ここからどうからかおうかなぁ、と思案していたところ……。

 

 ……何故か、周囲の空気が重くなり……。

 

「…………………………みっちゃん…………………………?」

 

 地の底から響くような低い声が……。

 

 声の主はどうやら田中の寄生先、多田さんのようだけど……あれ? 何かおこ?

 

「……どうして、柊つぼみと杜乃こりすにキスさせてるの……?」

 

 ……うん? 何か誤解されてる?

 あ……あ~……田中が屈んだところに私たち二人が顔を近づけていたから、遠くから見てたら、ほっぺにちゅっ♡ ってしてるように見えなくもないかもしれない。

 

 ……本来ならフォローしなきゃだろうけど、面白そうだからほっとこ♡

 

「……ま、待て蘭朶! そんなことはさせてない!?」

「……………………本当?」

 

 ちなみに多田さん。田中のことは見ずにこりすちゃんの目を見ている。

 

 ……くっ! 私だったら、恥ずかしそうに頬を染めて、「……し、してないよ?」とか言って火に油を注ぐのにっ!

 

 ……こりすちゃんと多田さんは仲良さげだし、普段、会話が少ないもの同士、目と目で通じちゃうんだよなぁ。

 

「………………」

「………………」

 

 じっと視線で会話する二人。

 

 ……何故か互いに、にやり、と笑った。

 

 う~ん……こりすちゃんマイスターな私でもこのやり取りの中身まではわからんなぁ。

 

「……みっちゃん」

「何だ……って、うぉ!?」

 

 多田さんが、田中に近寄ると、襟元をぐいっ、と自分の方に引っ張って……。

 

「…………~~~~~~~~っ!?!?」

 

「……あら♡」

「……♡」

 

 わずかに開いた田中の唇に、自分の唇を重なわせると、ぬちょっ、と無理やりに舌をねじ込んだ。

 

 ちゅ♡ ちゅぶっ♡ ぬっちょ♡ ねっちょ♡

 

 傍から見ていてもわかるほどに、多田さんの舌が田中の口内を蹂躙している。う~ん……濃厚♡

 

「……ちゅっ……ぷはっ♡ ……これで許してあげる……♡」

 

 多田さんは田中から舌を引き抜くと、満足そうに微笑みながら、唾液で汚れた口の周りを、ぺろり、と舐め、親指で唇を拭った。

 

 ……なお、田中は、腰が砕けたように、膝を付いて、座り込んだ。

 

 ……何というか、普段の二人の性活が垣間見えた。

 

(……田中って受けだったんだなぁ)

 

 どっちかと言うと、多田さんが攻められる方かと思ってたんだけど、思っている以上にイケイケで攻める方だったらしい。

 

 ……と、そんなことを考えていると、こりすちゃんと目が合ったわけだが。

 

 くふ、と楽しそうに笑った親友が何を考えているか大体わかった。

 

 …………え~、え~、そうですよ~!? 私もどっちかと言うと、自分が攻めそうな感じなのに、いつもこりすちゃんにいいように攻められるここ最近ですけど!?

 

 ……そう考えると田中に同情心も湧いてくるな。

 ……いや、でも、田中は多田さんの細長くて縛る感じのアレだしなぁ? ある意味多田さんの所有物だし……。

 

「……二人は……買い物帰り……?」

 

 多田さんは田中と同じく姉には割とキツイ対応だが、田中と違って私にはふつ~だ。

 こりすちゃんが私の腕をこれ見よがしに抱きしめて、どやぁ、とサムズアップする様子を見ると、多田さんは、くすり、と笑った。

 

(……パンクな見た目してるけど、意外にかわいいんだよなぁ、多田さん……)

 

 露出多めで、ピアスも色んなところにつけているからいかつく見えそうなものだけど、肌の白さも相まって、これはこれで儚げな美少女に見えるから不思議だ。

 

「……おにく……」

 

 ……多田さんが目ざとく、エコバッグの中の特売豚肉を発見した。

 

 いやぁ、豚バラのブロック肉が安かったんだよねぇ。

 

「……柊つぼみの料理はおいしいと聞いた」

 

 ……じゅる、と口の端から垂れた涎をそっと啜る多田さん。

 

 私の隣で、こくこく、と幸せそうに頷くこりすちゃんが、私をじっと見上げてくる。

 

「……多田さん、お夕飯食べに来ます? 田中も……まぁ、おねえとけんかしないならいいけど」

 

「……行く」

 

 …………何かそうなった!

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