悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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113 二人のクズ

 ……何故か田中と多田さんをお夕飯に招待することになった!

 

(……まぁ、田中のことは別に嫌いじゃないからいいんだけど)

 

 結構いい大学入ってたハズなのに、夢(笑)のために大学を中退して、一時期は完全に多田さんの細長くて縛るためのアレな感じになってて、最近はコンビニでギャル店長の下、バイトリーダーやってる面白いおねえさんだし。

 

 ……見た目は格好良い系で近寄りがたい雰囲気出してるおねえさんなんだけどなぁ?

 そこはかとなく漂う残念臭のせいで、近所子供たちにも「田中」呼びされて、キレてるんだろうけども、引きつったスマイルで対応するからかえって面白がられるという悪循環に!

 ……でも、意外と面倒見が良いらしく、低学年女子には割と人気らしい。

 

 そんな田中の衣食住を基本的に養っている多田さん……割と謎。

 

 たぶん、お嬢様なんだろうなぁ、と思うんだけど……その格好は果たして学校で許されてるの……?

 

 何か色んなところにピアス空けてるんだよね……。

 

 口数は少なく、私もたま~に話すことはあっても、基本、田中以外興味なし。……若干、音楽関係やお料理関係の話には乗ってくれるかな?

 

 ……これで、キウィちゃんとこりすちゃんと仲が良いのは本当に不思議。……姉には何か敵対心があるけど……もしや、姉と田中の仲を怪しんでる? ……いや、ナイナイ! だって、姉だもん!

 

 しかし、姉は姉で田中には、微妙に敬意を払っているような気がしないでもない……。

 

 ……何とも複雑である。

 

 さて、そんな二人を連れてやってきた我が家。

 

 勝手知ったるこりすちゃんがいつの間にか先導して……こりすちゃん用に常備しているアイスティーをコップに注ぐとちゃんと二人にもお出ししている。

 

 むふぅ、とドヤ顔のこりすちゃんを膝の上に座らせて、多田さんはこりすちゃんの頭を撫でながら、出されたアイスティーを、くぴ、と口に含んでいる……っていうか、本当に仲いいな!?

 

 田中は……別に嫉妬はしていないが、微妙に居心地悪そうにしながら、こちらもアイスティーを啜っている。

 

 ……まぁ、今のところ、姉もキウィちゃんもいないし、私たちだけだから、そうそう揉めることもないだろう。

 

「さて……っと」

 

 私は調達してきた材料を前にして何を作ろうか考える。

 

 ……いや、本当は献立考えてたんですよ?

 

 せっかくいい感じの豚バラのブロックだったから、じっくり煮込んで角煮にでもしようかな、と思ってたんだけども。腹ペコな人をそのままにしておくわけにもいかないから、別の料理を考えているのである。

 

(……しかし、私のお口の中は角煮を求めている感じだし。……甘辛い感じと豚の油の甘さがぶわぁっとくるあの感じ……)

 

 とろとろによく煮込まれた角煮……残念だが、諦めざるをえまい。

 

 ……だが、わたしの頭には、てーん、ときた!

 

 食感は違えど、あの甘辛い感じと豚さんのおいしさを感じられる一品が!

 

「……よしっ。やるか!」

 

 むん、と気合を入れてエプロンを装着!

 

「……手伝う……?」

「……?」

 

 こりすちゃんに後ろから覆いかぶさるようにして、抱きしめつつ、台所にやってきた多田さんとこりすちゃん。

 

 ……こりすちゃんは最近、私と料理(と言っても簡単なことだけど)をしているから、手伝いをしてくれることは多いが、多田さんが手伝いを申し出てくれるのは意外だった。

 

(……あ~、でも田中がまともに料理するとも思えないし、多田さんがやってるのかな?)

 

「……ん~……いいよ、二人はゆっくりしてて? 揚げ物するから、こりすちゃんはちょっと危ないかもだし」

 

 こりすちゃんは私が料理するところに興味津々なのだが、油を使っているときはちょっと危ない。うっかりすれば、油が弾けて、こりすちゃんのシミ一つないきれいな白い肌に火傷が! そんなことになったら私は首つりそうなくらいに後悔する!

 

「……そう……? ……じゃあ、みっちゃんのお茶のお替りだけ持っていこう」

「……!」

 

 そう言うと二人は冷蔵庫からアイスティー入りのボトルを取り出して、ダイニングの方へ戻っていった。

 

(……思っている以上に多田さんからこりすちゃんへの好意が大きそうだな……)

 

 警戒心が強いというか、田中以外にはあまり興味なさそうな多田さんだが、こりすちゃんは例外らしい。

 

 ……いや、そりゃあね? こりすちゃんのかわいさには誰もが抗えないだろうけどさ……。

 

(……なんかもやもやするなぁ……)

 

 ……交友関係が狭かったこりすちゃんのことを考えれば、やや特殊とは言え、友達が増えることはよろこばしいことなんだけど。

 

「……まぁ、でもまずはこっちかな」

 

 大き目のブロック肉。本来なら圧力鍋でこのまま煮込む予定だったけど……。

 

(……ちょっと分厚くいくか)

 

 幅1センチほどの厚さで切っていき、全体を叩き、また筋切もしておく。

 はちみつとかヨーグルトに漬け込んでおくのもいいが、今回は炭酸水へ……大体30分くらい。

 

 その間に油の加熱と副菜の準備を進める。

 主菜にするように切った豚さんの余りを使いつつ、不足しがちな繊維質を確保できるよう野菜たっぷりの豚汁にする。

 

(……そう言えば、多田さん……野菜ちゃんと食べるかな……?)

 

 私の勝手なイメージは、The・肉食! という感じで、病気だろうが何だろうが肉食って直せ、とか言いそうなレベルである。……将来は大丈夫だろうか。痛風になりそう……。

 

 ……でも、お野菜は大事。お残しは許しまへんで!

 

(……お豆腐にしようか。畑のお肉というくらいだし)

 

 代替肉というものもあるけれど、残念ながらウチはふつーの家なので、わざわざ買わない。

 

 レタス、キャベツ、お豆腐、ちりめんじゃこ、ごま、のりで豆腐サラダにする。

 

 ドレッシングはお好みで。ポン酢、フレンチドレッシング、胡麻ドレッシング、和風ドレッシングを準備しておく。

 

 ……さて、メインの準備も進めなければならない。

 

 お肉はもう少し漬けておくとしても……甘辛~いタレが必要だ。

 

 みりん、ザラメ、はちみつ、醤油にだし汁を加えて、煮詰めていく。全部が混ざって、ちょっとドロッとするくらいが丁度良い。

 

(……油もOK。じゃあ、お肉を揚げていこうかな)

 

 水気をとった豚肉に片栗粉をまぶしたら、油にIN!

 じゅわ~っ、とまずは低めの温度で揚げいく。……今回はちょっと厚めだからね。十分に火が通るようにしないと。

 一度、お肉を取り出して、油の温度を上げて、再度投入!

 表面がパリッとするくらいなので短時間で。……片栗粉はすぐ黒くなっちゃうから注意が必要だ。

 

 そして、揚がった豚肉の油を切ったら、タレにどぼん!

 

 くるくる、とタレに絡めたらすぐに取り出し、丼飯にON!

 

「……豚バラ揚煮丼のできあがりぃ~!」

 

 ……いつの間にか隣で出来上がりを見つめていたこりすちゃんと多田さんが、ぱちぱち、と手を叩く。

 

 二人がお盆に丼やサラダ、豚汁を載せてテーブルへ持っていってくれる。

 

 ……田中? 人んちなのに、新聞広げてゆったりしてるよ?

 

 ……たぶん、多田さんの家でもこんなんなんだろうな……。

 

 ……少しは手伝うとか考えないのかね?

 

(……いや、細長くて縛るためのアレだから仕方ないか……。何なら、バイトして、お金を入れているだけマシかもだし……)

 

 ……まぁ、でも、年下の女の子の家に住み込んで寄生するとか、控えめに言ってもクズだと思うけど!

 

(……多田さんもどうしてアレを選んだのやら……)

 

 ……しかし、普段無表情な多田さんが田中に微笑みかけている姿を見ると……。

 

 ……私の隣で控え目に微笑んでいるこりすちゃんとダブる。

 

(……………………あれ? もしかして、私って、アレと同類……!?)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ……そ、そんなことないよね……? だって、私、料理洗濯炊事なんでもイケるし、何ならちゃんと収入もあるもの! 細長くて縛るためのアレじゃないもの!!

 

 

 

 ………………一人の少女の人生を台無しにしようとしている点では、私も同じクズなんだろうけども!

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