「……どうしよっかぁ……」
「……いや、どないもこないもないやろ。明確な敵対状態やん」
「……でも、相手はアトラよ? 何か考えがあるかもしれないわ」
……ファミレスで三人は、
「……まぁ~……あの腹黒がそのドス黒い腹ん中見せてないんはそうなんやけどな……小夜が思ってるほどお優しい性格はしてへんで? お遊びがある分、マジアベーゼの方がマシ……でも、ないけどな!?」
対マジアベーゼで命の危険は少ない。尊厳の危機は多々あるが。
思い出すだけで、腸が煮えくり返る。薫子のコメカミには思わず青筋が浮かぶほどに。
「……さすがにイミタシオとベルゼルガを殺ってはおらんやろうけども。正直、下手したら死ぬくらいの覚悟は必要な相手や……アイツは目的のために慈悲を捨てることに躊躇いがないタイプやもん」
「そ、そんなことないよ! アトラちゃんはいつも私たちを助けてくれるもん!」
「そうね……彼女の目的自体はそんなに悪いものではないのだし……」
シオちゃんズとアトラたちの戦いは明らかに魔法少女に対する敵対行為だ。
……もっとも、世間ではエンタメ扱いされているため、あまり真面目に受け取られていないが。
アトラの行動は、世間的には「魔法少女が不要な平和な世界を作る」として受け止められている。
対して、イミタシオたちは「魔法少女は世に必要」という主張を行った結果、アトラと対立した、という形だ。
……翻って、トレスマジアは、というと……。
(……どっちつかずなんよなぁ……)
アトラの「平和な世界を作る」という部分には賛同できる。イミタシオたちのように「魔法少女が必要」とまでは思っていない。そう考えるなら、アトラよりの考えによっても良いのだが……。
(……クリーチャー……マスコットを排除をする、っちゅーんはなぁ……)
ある意味、被害者(笑)であったアトラからすれば、当たり前に思いつく結論ではあるが、トレスマジアはヴァーツのことを信頼しているし、ヴァーツが何かあくどいことを考えられるとも思っていない。……エノルミータの黒いのは知らんけど。
「……しかし、エノルミータからネロアリスの引き抜き、旧ロード団からはシスタギガントが合流……やってることはウチらに対する明確な敵対行動なんよ。……何なら、全方位にケンカ売っとると言ってもええ」
シオちゃんズ、エノルミータ……そして、トレスマジア。
その三者を相手に取って、勝算があるからこその行動。
最悪、同時に三者を相手にしても勝てる戦力を集めた、とも言える。
……そして、その内、一者が崩れた。
(……戦力的には不利……協調を取れるハズのシオちゃんズを最初に潰されたのも痛い)
……状況的にアトラの狙いは各個撃破だ。それが最も勝率が高い。
アトラに対抗するために、トレスマジアとエノルミータが取れる選択肢は一つ。
(…………もし、アトラに対抗するんやったら、早い内にエノルミータの手を取るしかない)
……あるいは、静観しても良いのかもしれない。別段、トレスマジアにとって大きな不利益は目に見えてはないのだし。……ただし、その場合、ヴァーツの命は保証されない。
(……………………さすがにそれはなぁ)
……エノルミータは黒いのを「どうぞどうぞ♡」と差し出すかもしれないが。薫子たちは別にヴァーツに恨みはないのでそうする理由もないし、義理もある。
……しかし。
(………………………………………………………………………………いややなぁ……!)
……散々な目に合わされたエノルミータと協調路線を取るとか! さぶいぼが出る!!
「……う~ん……でも、それなら、アトラちゃんの次の目標はエノルミータってことに?」
「……そうなるんちゃう? ウチらは、シオちゃんズの仇、って面はあるけど、アイツの主義主張とは反してへんからなぁ」
「……でも、それでエノルミータもやられたら」
「……詰みに決まっとるやろ。アトラだけでもバケモンやっちゅーのに、ネロアリスもおるんやぞ?」
(……しかも、ネロアリスのあの能力……相当ヤバいんちゃうん……? アトラも全力ではないし、シスタギガントも暗黒真化した力を十全に振るったとは言えへんし……)
「……まぁ、ウチらとしては、まずはパンタノペスカと連絡とるしかない。話はそれからや」
「ペスカちゃんだけでも無事でよかったねぇ!」
(……天使や)
シスタギガントをある意味弄んだあの戦いを見て、喜べるはるかは尊い……。
パンタノペスカが垂れ流している捏造映像、シスタギガント(大)×シスタギガント(小)の性器のおっぱい大決戦を目に触れさせてはならない!
……ぽっ、と頬を赤らめた小夜は実はすでにチェック済のようであるが!
ずずっ、と薫子は誤魔化すようにコーラを一気に啜った。
(……うん?)
ぴんぽ~ん、と新たな来客を知らせるチャイム音。
「……ほ~れ、キリキリ歩けぇ♡」
「……♡」
「ひぃ~ん……」
薫子も最近見慣れてきた二人の少女と見慣れない一人の少女であった。
「……お? はるかちゃん、おいっす~☆」
「……☆」
「……ぁ♡ つ、つぼみちゃん……♡ ……ぉ、おいっす~?」
はるかはつぼみの姿を見るなり、目をハートにした! みりょうのこうかがつづいている!
(……あァン!? 春香の今の顔、何なん!?)
「……どしたの、薫子ちゃん? 顔、怖いよ?」
「はぁぁぁん!? 何でもありまへんけどぉぉぉ!? ……それよりいいご身分どすなぁ? 今日はこりすはんだけやなくて、新しい子も侍らせてぇ!」
「あぁ、コレ? コレは、奴隷……いや、下僕……んんっ、新しい友達だよ」
「……酷いですぅ……」
(……ナチュラルに奴隷とか言いよったぞ、コイツ……)
……ドン引きである。何なら春香がハート目してたことも吹き飛んだ。
……しかも、奴隷呼ばわりされたその少女……。
(……………………死ねっ!!!!!)
薫子が脳内でそんな呪詛を吐くくらいに、ばぃ~んな巨乳なのであるっ!
(……いや、バランスぅぅぅ!?)
背丈は何ならつぼみよりも小さいのに、その胸の大きさは一体何倍あるのかっ……! ……いやゼロに何を掛けてもゼロなので比べるのも烏滸がましいが。
「……薫子ちゃん、何か失礼なことを考えなかった……?」
「そないなことあらへんよ☆」
ホントかなぁ、などと言いながら、つぼみたちは隣のテーブルに座った。
……なお、座り順は、廊下側から巨乳な少女、つぼみ、こりすである。
(………………うわぁ………………)
……思わず白目になる光景であった。テーブル席の意味とは……?
はるかは、はわはわして、小夜は、興味津々な目を向けている。
「……こりすちゃんは山盛りポテト? ごはん食べられなくなるよ? ……え、私のごはんは別腹? ふつ~逆じゃない? 私は、イチゴパフェとコーヒーで……アンタは何すんの? アンタのおごりだから遠慮しなくていいよ?」
「うぅ……そういう約束ですからねぇ……私はチョコレートパフェを紅茶でぇ……」
くすん、と泣き真似をした少女が、それでも、ちょっと嬉しそうにしている姿が印象的である。
(うん……やっぱ、こりゃあ……いつものアレやな……)
……本人にあんまり自覚はないが、つぼみは女誑しなのである!
(……いつか刺されそうやな……)