悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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126 囚われの二人はナニしてる?

(……………………………………いたしてしまった……)

 

 暗い部屋の中。乱れたベッドの上。

 

 むわっ、とむせ返るほどの雌の匂い……様々な体液で汚れたシーツにくるまったベルゼルガの白い肢体。

 

(……一服盛りやがったなぁ、あの女ぁぁぁぁ!? でも、ちょっとありがとう!?)

 

 イミタシオの心境は複雑である。

 

 アトラが饗したおかゆをベルゼルガに食べさせ、自らもお腹を満たして、さぁ、体を休めようか、というときに……。

 

『……シオちゃん……♡♡♡』

 

 情欲に濡れたベルゼルガの瞳。はらりとはだけだ白い胸。……我慢なんてできるわけがない。

 

 ……乱れた。そりゃあもう乱れた。

 

 普段だってそれなりのことはしていたが、変身したままというのは初めてだ。そして、変身している状態なら色々無理も効く。イミタシオの体が小くなっていることも加味すれば、そりゃあ、普段よりも萌えるだろう。

 

 イミタシオ自身もその小さな体を利用して、『えっ、こんなこともできるの!?』とかそんなレベルでアレなことをしつつ、ベルゼルガは小さいままのイミタシオをしっかりたっぷり舐った。

 

 ……そんなことを繰り返し、体力の尽きるまでヤれば、そりゃあ、こんな有様になる。

 

「……………………うわぁ」

 

 ベルゼルガの吐息以外の声が響いた。

 

「……来たか、諸悪の根源っ!!」

 

 ぎろり、とイミタシオはマジアアトラを睨みつける。

 

「……ごはん持ってきてあげたのにぃ」

「もう騙されんぞ! また媚薬でも盛ったんだろう!?」

「盛ってない盛ってない。私が料理にそんな異物を混ぜ込むとでも?」

 

 ……昨日のおかゆは素朴なら丁寧に作られたものであった。簡単だからこそ、作り手の技量やその熱意もわかろうと言うもの……。マジアアトラが作ったのだとしたら、普段から丁寧に料理を作っているであろうことを伺わせた。

 

 ……確かにそんな料理に愛情を向けている相手が、何かを盛ったと決めつけるのは彼女のプライドを大いに傷つけることではあろうが……。

 

「…………必要ならやるだろう?」

「…………まぁ」

 

 ぽりぽり、と頬を掻いて、ばつの悪そうな顔をするアトラ。

 ……彼女の性格上、確かに、料理を冒とくするようなことは、本来ならしないが、目的があるなら、プライドなんて投げ捨てて嬉々としてやるタイプである。

 

「……でも、本当に、何も入れてないよ? 料理にはね? ……いや、でもこんな効果になるのは私も予想外だったんだけど……」

 

 曰く、この牢獄そのものに、ネロアリスによって『欲望を増幅する』効果が付与されているらしい。

 

「……てっとり早く魔力の回復を促そうと思って。……まぁ、実際? 体力面は大幅減でも、魔力はしっかり回復できたみたいじゃない♡」

 

 くふ、とアトラはイミタシオとベルゼルガの痕跡を見て笑みを浮かべた。

 

「……でも、あんまり体力使われちゃうのは困っちゃうなぁ……。効果を弱めてもらう? でも、それだと効率悪くなるし……というか、二人してここまで自制心がないとか予想外だし……」

「……自制心がなくて悪かったな」

 

 囚われて、暗闇で、二人きり、というのが良くなかったかもしれない。身の危険と不安で性欲が高まってしまったのだから仕方ない!

 

「……仕方ないから賢者になるポーションでも作ろうか?」

 

 ……無論、精神的に、という意味であろう。

 

「いらん。必要なら自分で何とかする」

 

 魔法を阻害されている感覚はあるが、何も全てが使えなくなるわけではない。とりわけ体内に対する干渉は極めて弱い。イミタシオ自身の能力とベルゼルガの能力であれば、何とかできそうなレベルではある。……とは言っても、ここから抜け出せるほどに使えるわけでもないのだが。

 

「……ネロアリスはどうした?」

「……いや、この事態を予想してたわけじゃないんだけどね? ……もしかして、こんなことがあるかも? って、考えたら連れてこれるわけないでしょ? 教育に悪いし……」

 

 最近はきわどいアプローチも多いから、余計な知識も与えたくないんだよねぇ、などと、ぼそぼそ、と口に出したのが、イミタシオには聞こえた。

 

(……アトラとネロアリスが、そうか……)

 

 仲が良いとは思っていたが、予想以上の仲の良さだった。年齢を考えれば、大分進んでいるというか、進みすぎである。

 

「……ん……♡ ……シオちゃん……♡」

 

 イミタシオとアトラの声に目を覚ましたのか、シーツの中からもぞもぞとベルゼルガが這い出して、イミタシオの後方から、ぎゅぅ、と抱きしめた。

 

「ん~……♡ シオちゃん、シオちゃんシオちゃん♡ えへへ♡」

 

 抱きつかれるイミタシオはベルゼルガを愛おしく思うが、それを見ているアトラは、こわぁ、と口にしていた。……まぁ、ベルゼルガがの病んでる感じが、周りにそう見えるのは仕方ないのだ! 当の本人であるイミタシオはそれを愛いやつと受け止める準備ができているだけである。

 

「あ……? マジアアトラ? 何でいんの?」

「酷くない? せっかく、ごはん持ってきたのにさ。もうお肉も食べられると思って、いいハム焼いてあげたのに」

「にく……♡」

 

 じゅる、とベルゼルガが涎を垂らす。アトラが持ってきたのは、分厚いハムステーキとサラダあとはスープのようだ。スクランブルエッグやホットミルクなども用意されているようだ。

 

 献立的には朝ごはんのようにも思えるが、時間感覚が麻痺しているせいで、今が何時かはよくわからない。

 

 アトラは特に何かをする意図はないようで、イミタシオとベルゼルガが食事をする様子をにこにこと見守っている。

 

 何を考えているかわからないその様子がイミタシオには不気味だった。

 

 イミタシオたちのお腹がくちくなった頃……。

 

「……そうそう、ご協力ありがとうね? 『田中みち子』さん、『多田蘭朶』さん?」

 

 思い出したように口にしたアトラの言葉に、イミタシオは背筋をぞっとさせた。

 

 ……ぴし、ぱり、と何かが剥がれたような音が聞こえた気がした。

 

「……どうして、気づいた?」

「ん~……? 予想は大分前からついていたよ? 確信していなかっただけでね。認識阻害の解除条件をちょっと探りたかったから、ちょっと実験してみたんだよ。イミタシオが見た目の年齢と一致しないのは予想できたし……何ならたぶん大学生くらいかなー、とか考えつつ、スマホが使える状況なら外に連絡とるでしょう? 急にバイトに穴を空けるわけにはいかないし、ベルゼルガも学生だろうし、無断欠席はねぇ?」

 

(……道理でその辺を緩くしていたわけだ。隔離した空間だろうと予測していたのに、スマホが使えるとかアイツら現代っこなせいかとも思ったが……こういうことも考えていたわけだ)

 

 さすがに、捕らわれた、などと連絡できるハズもなく、インフルエンザにかかった、と連絡したわけだが……。

 

(……アトラの元の姿は、私の周辺か? 私の姿がないことを知り、また、私が連絡を送った店長のことも知っている、と。これだけでは絞り切れないが……いや、そもそも、ネロアリスは私たちのことを話してはいなかったのか?)

 

 ……まぁ、ネロアリスの性質を考えるに、積極的に明かすタイプでもないだろうが。

 

「……パンタノペスカ。桃森百花さんとも顔を合わせる機会があったよ」

 

(……つまり、シオちゃんズの面は割れた、ということになるっ!)

 

「……中々、いいデータが取れたよ。認識阻害の魔法の性質をよく知ることができた。これなら、再現できそうだ」

 

 くつくつ、と昏い笑みを浮かべるマジアアトラ。

 

「……それで、いったい何をするつもりだ、マジアアトラ」

 

 にぃぃ、とアトラが黒々とした瞳をイミタシオに向けて、口を三日月に歪める。

 

「……認識阻害。この大魔法の方法を用いて……世界をね……もっと幸せにするんだよ♡」

 

 夢見る乙女のような声色で……しかし、アトラのその目はまるで笑っていなかった。

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