悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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128 認識阻害という魔法

(……やはり、イミタシオはいい……!)

 

 ……コレが何であんなアホな理由で大学中退したのか理解に苦しむが、頭のキレの良さは私が知る魔法少女の中では随一と言ってもいいだろう。

 

 人生経験の差だろうか? ……いや、二十歳を過ぎても現役厨二病患者であるが故の無駄な知識の蓄積のせいかもしれない。

 

 与えられた情報を頭の中で組み立て、考え得る結果を導き出す。……言葉に出して言うのは簡単だが、知識と知識を線で結ぶのは思っているよりも難しいものだ。

 

 だが、イミタシオは私の意図を正しく酌んで答えを導き出した。

 

(……やはり、総合力ではシオちゃんズが一つ頭抜けていたかな)

 

『理』で詰めるイミタシオ。『勘』に優れるベルゼルガ。『発想』に秀でたパンタノペスカ。

 

 ……私が開示する情報で真相に到達できる可能性が最も高かったのは彼女たちだ。

 

(……予定通りとは言え、早めにご退場いただけだのは幸いだねぇ)

 

 最悪は三人全員を逃がしてしまうことだったが、二人確保できた。パンタノペスカが確保できなかったのは、予想の範疇内……つまりは私の思い描いたとおりということだ。

 

「……『認識阻害』はねぇ……実に厄介な魔法だよ。何故って、『変身(ラ・ヴェリタ)』とセットになってしまっているから。……昔ならいざ知らず、現代において、今日撮った映像が数秒後には地球の裏側で再生できてもおかしくない。そして、ネットの海に流れた映像は、未来に向けて消すことは不可能に近い。……ああ、全人類を抹殺するとかの方法を除けばだけどね?」

「そうか……少なくとも、変身している最中だけではなく、少なくとも未来に向けて、対象の認識を阻害する、ということは……単純に魔法の規模が大きいというだけでは済まされない!」

 

 ……さて、この『認識阻害魔法』の最低条件を考えてみよう。

 

 我々人間の活動下におけるレベルを考えれば、最低限、地球を覆う結界であること。

 変身中、魔法少女を目撃した人間がその正体に気づけないこと。

 撮影した映像などを見ても、その正体を気づけないこと。

 更に言うならば、魔法少女の正体たる本人がその場にいないことに違和感を抱かないことも付け加えられるだろう。つまりはいないことをもって、魔法少女の正体と関連付けができない、ということだ。

 

 もっと細々とした条件はあるだろうが、大きなところではこんなところか。

 

 まとめると……。

 

 発動は常時。対象は魔法少女を観測するもの全て。範囲は全世界。効果は、過去から現在、未来までをも含んで、魔法少女の正体を認識できない。解除条件は、魔法少女の正体を確信をもって看破すること。

 

「……私が、大魔法って呼ぶ意味が理解できた?」

「……ああ。些細なことだと思って誰もが気にも留めない……いや? あるいは、これも認識阻害の内か?」

「あ~、なるほどね……私は最初から疑っていたから、その線は考えていなかったな」

 

 アニメだったらその辺別にふんわりでいんだよ? 「ふ~ん」って感じで誰も気にしないし、というか余計な設定盛られたところで、「……で?」って感じだしね。

 

 しかし、自分が対象となるなら話は別だ。

 

 ……そんな都合の良い魔法ある?

 

 私はそう疑った。初めて『変身』したときから。

 

 ……そして、そのときからずっと、この魔法を解析し続けてきた。

 

 他の魔法も解析してきた。

 

 私を乗っ取ろうとしたクリーチャー……ニセアトラの記憶を、感情を、魔法を解析した。

 

『認識阻害』の魔法にはアレが関わっていることは間違いないし、魔法の根幹となっているのは『吸収』だ。『認識阻害』の魔法を解析することは、私自身の魔法をより深く解析することにもなる。

 

 そうやって、魔法とは何か、魔力とは何かを考え続けているうちに、『認識阻害』をどうして作ったのかに気づく。

 

「……もう気づいたと思うけど、『認識阻害』はただ魔法少女を守るだけの魔法じゃない」

「だろうな。……この魔法を維持するだけでも大仕事だ。リターンが見合わない……何かしらの仕掛けがあるのは確かだろうが……」

「そう。これには……というより、魔法には裏道がある」

「……一つは解除する条件をつけたことだろう? おそらくこれだけでも魔法としてのコストを下げる効果がある……いや……違うな……そもそも……『認識阻害』というのが副次的な効果に過ぎないのか?」

「あは♡ 冴えてきたね、イミタシオ。私の結論も同じだよ。別の大きな魔法を組み立てるに当たって、副産物的に生み出されたのが『認識阻害』とその解除条件、というのが私の考え。……材料はあげたよ? あとは自分で考えてみて?」

 

 くす、と笑って、私は踵を返す。背後から、イミタシオの「待て!」という声が聞こえるけど無視。

 

(……あなたなら辿り着く。その無慈悲な答えに。だから教えてあげない♡)

 

 自分で気づかなければ意味がない。誰よりも魔法少女であろうとしているイミタシオがその答えを知ったとき、それでもなお、魔法少女として生きるのか。

 

 ……私はそれが知りたい。

 

「……でも、早く解けなきゃ、遅刻しちゃうよ、イミタシオ?」

 

 ……『暴君のお茶会(Nero's tea party)』はもう動き出している。

 

 終わりに向かって。あるいは始まりに向かって。

 

 ◇◆◇

 

 イミタシオたちを監禁している牢獄から出ると、私はガゼポに足を向ける。

 

 そこでは、<暴君>モードではない通常モードのアリスちゃんが、シスタを四つん這いにさせて、その上に腰掛けながら、優雅に紅茶を飲んでいる。

 

(う~ん……暴君が板についてきたなぁ……)

 

 あるいは、シスタがドマゾの変態っぷりを発揮しきっているとも言えるが。

 

 最初は遠慮していたアリスちゃんも、積極的に椅子になろうとするシスタに、そういうものか、とナチュラルに椅子にするようになった。

 

 ……私? もちろん、シスタは椅子だよ。

 

「……よいせ」

「ぁふぅん♡」

 

 アリスちゃんに密着するように椅子(シスタ)に腰掛けると、何やら声が聞こえたけど、知らんぷりする。

 

「……?」

「うん? あ~、元気そうだったよ? あ、でも、ちょっと元気過ぎるから、効果はちょっと弱めてほしいかな? できる? ……あと、アリスちゃんはあそこに行かないでね?」

 

 ベルゼルガの状態を気にしているらしいアリスちゃんに、彼女たちの無事を伝えつつ、目下の懸念事項の解消をお願いする。

 

 ……もう何日かはあのままにせざるを得ないから、私が食事を運ぶしかないわけだけど。その度にあの惨状なのは……ねぇ?

 

 アリスちゃんにも念を押したけど、もし、現場にアリスちゃんが居合わせるとか……教育に悪過ぎる! エノルミータだってアリスちゃんの情操教育にはいちお~気を遣ってるみたいだし……。

 

「……と、ところで、女王様……つ、次のご予定はぁ……?」

 

 ……若干椅子(シスタ)がぷるぷるし始めてきたな……私もアリスちゃんもそんなに重くないぞ?

 

「エノルミータとトレスマジアが協調路線をとるでしょう? それまでにある程度は仕上げておかないと……あなたも二度目の醜態は許さないわよ、シスタ(椅子)?」

「……何故か、別の呼ばれ方をした気がしますぅ……!」

「数ではあちらが上……特にあなたはパンタノペスカに加えて、あの二人も相手にしてもらうからね? また、慢心していたらホントにヤられるわよ? 私たちが強くなっているのと同じように、彼女たちだって同じままなわけがないのだし」

 

 ……特にあの二人。暗黒真化の原理に気づいて、更にその上に至ったとしたら……かなり厄介だ。

 

 自力でそこまで至るとは思えないけど、パンタノペスカという劇薬が加わるなら話は別だ。

 

「……楽しくなりそう、ね♡」

「♡」

 

 私とアリスちゃんは、くすり、と笑いあった。

 

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