悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

13 / 132
5,000UA超えたと思ったら、10、000UA超えちった。

びっくり。


本話は、バトル回だから、えちぃのはそんなにないよ! ホントだよ!


13 タコとアトラとマジアサルファ

「……ベェェェゼェェェ!! アンタはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 マジアサルファ。只今、真化の上、絶賛全力ダッシュで逃亡中。

 

「……な・ん・で、タコやねぇぇぇぇん!?」

 

 サルファはタコが嫌いだ。見るのも食べるのも。……触るなんて論外。

 

 ……それに襲われるとしたら、逃げる以外に選択の余地があろうか。

 

「……おやぁ? 何を言うんです、マジアサルファ? 敵の弱点を突くのは当然ではないですかねぇ?」

 

 サルファを見下ろすマジアベーゼの顔は愉悦に浸った余裕の笑みだ。

 マジアマゼンタも、マジアアズールもこのタコに奇襲を受けて、すでに捕らわれている。

 

「……いやっ!? いやぁぁぁぁ!?」

「あふぅぅぅん♡」

 

 本気で悲鳴を上げているマゼンタは、何とか助けなければ、と思うが、アズールは当面放置しておいても大丈夫だろう、ととりあえず考えから除外する。

 

 どこかで攻撃に転じなければ、とそう考えても、ベーゼのタコは数を増やしつつ迫ってくる。

 

 あのぬるぬるも、吸い付いてくる吸盤も、うねうねと動く触手も触れるのは正直遠慮したい。だが、この物量差は如何ともし難い。

 

(……押し切られる!?)

 

 ちら、と後方を確認してしまったのがいけなかったのだろう。

 

 うぞ、と回りこんでいた触手が、サルファの足に絡みついた。

 

「……ひっ!?」

 

 一瞬で足を絡めとられて宙吊りにされる。ぬちょぉ、とした触手が、足に巻き付いて、更にその上を目指してくる。

 ……その目指す先がどこか、を想像して顔を青くする。

 

「……や、やめっ……!?」

 

 悍ましさに、涙が零れる。無力さに、悔しさが込み上げる。

 

 絶望が目の前を暗くする。

 

(……クソがぁ……!)

 

 ギリ、と歯を食いしばるものの、抗う力が湧いてこない。

 

 ……目を瞑って、覚悟をした。

 

 ……その瞬間。

 

 

 ばさり、という羽音と少しの浮遊感。

 

 気持ち悪い触手の感触が消え、温かい人の体温を感じる。

 

 ……サルファは恐る恐る目を開けた。

 

「……大丈夫ですか、マジアサルファ?」

「……アトラ……?」

 

 はっ、と自分の体勢がどうなっているのかに気づき、少しだけ頬を染めた。

 

 マジアアトラは、サルファの背中を支え、膝裏に手を入れている。

 

 ……いわゆる、お姫様だっこというヤツである。

 

 先日はちょっと顔を合わせただけなので、間近で顔を見るのはサルファも初めてである。

 

 たれ目がちな目。

 軽く開いた口から見える八重歯。

 クセのないストレートの長い黒髪。

 ぴょこ、と生えているアホ毛。

 

 ……誰かに似ているな、と思うが、その誰かがわからない。これも認識阻害の影響なのだろう。

 

 ゆっくりと着地した彼女は、サルファをそっと地面に下ろす。着地と同時、アトラの背中の羽は黒い粒子のように宙に溶けた。

 

「立てますか?」

「……おおきに」

 

 サルファの手を取りながら、きちんと立てるかを見届けた彼女は、ちらり、と周囲に目を向けると、右手をかざして、黒い光線を放って、マゼンタの周囲の触手の一部を焼き払う。

 

「……足りない」

 

『足りない』。前回も確かそんな言葉を呟いていたな、とサルファは考える。

 

 アトラは周囲を警戒しながらも、ちらり、とサルファに視線を送ってきた。

 

「……マジアサルファ、魔力に余裕があるなら私に全力であなたの魔法を放ちなさい」

「はぁ!? アンタ、何言うてんのや!?」

 

 少なくとも自分を助けた相手に、全力で魔法を撃てるほど、サルファは狂っていない。

 だが、そんな当たり前の躊躇に、アトラは苛立たし気な視線を向けた。

 

「……できますか? ……できませんか?」

 

 子供にでも問いかけるような二択。言い含めるような強い口調。

 

 傲慢なその問にサルファも、いらっ、とした。

 

「……やったるわぁ!! ウチの全力の魔法は半物理やぞ!? 覚悟できてんのやろな!?」

「……別に効くところに当てろ、と言っているんじゃありません」

 

 ほら、とアトラが左手を振る。

 

 要は当てるなら、そこに当てろ、ということだろう。

 

 ……まぁ、確かに。その程度であれば、心理的抵抗は少ないが。

 

 ばちっ、とサルファの周囲に電流が迸る。

 

「……雷霆掌・重!!」

 

 ごぉぉ、と轟音を立てて、サルファの拳と雷撃が大砲のように放たれる。

 

 ……ぱん、と乾いた音が響いた。

 

 ……音の正体は、サルファとアトラの掌同士が接触したからだ。ハイタッチをするかのように、ただ、手と手がぶつかり合った音を奏でただけ……。

 サルファの魔法は、アトラの手に触れる前に消え失せていた。

 

(……消えた……? ……いや……吸われた!?)

 

「……充分です」

 

 ばちばちっ、とアトラの周囲に青白い光が舞う。

 

「……っ!!」

 

 頭上に掲げられたアトラの右手から、ばちぃ、と電撃が雨のように放出される。

 細かく分かれたそれは、マゼンタの周囲の触手を爆ぜ飛ばした。

 

「……あ、ありがとう、アトラちゃん!」

 

 触手から解放されたマゼンタは、粘液に塗れており、服の一部は破れて用をなさなくなっており、サルファは目のやり場に困った。

 

 マゼンタの無事を確認したアトラは軽く頷くと、アズールの方向に目を向け……首を捻った。

 

「あふぅ♡ あぁん♡」

 

 真化前に捕らわれたアズールは、あんあん言いながら、涎を垂らして、恍惚の表情をしている。

 

「……??」

 

 それを指さしたアトラは困惑した様子で、助けを求める視線でサルファを見る。

 

 ……言いたいことはわかる。

 何か特殊なプレイでも楽しんでいるから邪魔しちゃダメなのか、それとも助けていいのか判断がつかない、ということだろう。

 

「……………………助けられるんなら、助けてくれる……?」

 

 こんなんでごめんなぁ、とサルファは情けなく思い、ちょっと泣きたくなった。

 

「っ!!」

 

 ばちばちばちぃ、とマゼンタに対してのものとは比して、大きく電撃が荒れ狂う。

 アトラの顔は結構なお怒りモードである。

 気持ちはわかる、ものすご~くよくわかる!

 でも、あんなんでも一応仲間なので、消し炭にされるのはちょっと困る。

 

「……ちょっ!? 待ちぃ!?」

 

 ……が、サルファの制止を振り切って、極大の雷が、触手にアズールを巻き込む形で、落ちた。

 

「……おほぉ♡ しゅご、しゅごいぃぃぃ♡」

 

 ……アズールは無事だが、アレな感じだった。まぁ、色んな意味で耐久力はアレなので。

 

 そんなアズールの様子を見たアトラが、いらぁ、とコメカミに青筋を浮かべているのがサルファにもわかった。……何ならサルファもそんな感じである。

 

「あ、アズールぅぅぅ!?」

 

 心配しているのはマゼンタくらいである。ホント、いい子や。

 

「……やはり現れましたか、マジアアトラ」

 

 ゆっくりと地面に降り立ったマジアベーゼは、余裕の笑みを浮かべていた。

 

 まるで、マジアアトラが来るのも作戦の内、と言いたげな様子である。

 

 ぱちぱち、とベーゼは楽しそうに拍手をする。

 

「素晴らしい素晴らしい。ピンチのマジアサルファを救い、彼女の力を借りて、マジアマゼンタを解放し……マジアアズールは……まぁ、アレですが」

 

 ベーゼからもアレ呼ばわりの安定のアズールである。

 

「よぉく、見させてもらいましたよ? 『吸収』ですか、その力は!? 怖いですねぇ、恐ろしいですねぇ! 私、困ってしまいます!」

 

 困る、などと言いつつも、ベーゼの顔は、その笑みで大きく歪んでいる。

 

 楽しくて楽しくて仕方がない。新しいおもちゃでどう遊ぼうか、と考えているその表情に、サルファはぞっとした。

 

 マジアベーゼの考えがわからない。

 いや、元々、よくわからないヤツではあるが、強敵を前にして、より楽しそうに笑うなどまともな神経ではあり得ない。

 ……しかし、彼女はいつも()()

 

「さぁ、これはどうしますか!?」

 

 ぞぞぞっ、とベーゼの近くに控えていたタコの魔物が一斉に動き始める。

 

「……ひぃ!?」

 

 あまりの気持ち悪さにサルファは思わず悲鳴を上げるが、アトラは全く気にした様子もなく、一歩踏み出すと……。

 

 ……殴った。グーパンで。

 

 それはそれは見事な左ストレートである。

 

 本来なら、そんな攻撃は何の意味もなさないだろう。

 だが、ベーゼが自分で言っていたように、アトラの能力は『吸収』であろう、とサルファも当たりを付けていた。

 

 ……結果は自明。

 

 ぷしゅ、と音を出してタコの魔物は消え失せ、ぽて、と空から降ってきたタコをアトラは右手で受け止めた。

 

「……ありがとう、マジアベーゼ」

 

 何故かベーゼにお礼を言って、アトラは初めて微笑んだ。

 

 ばちぃ、とアトラの右手で電気が爆ぜ、タコは〆られた。

 

「……夕食のおかずが増えたよ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。