悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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129 親睦会 IN ナハトベース

『……~~♪』

 

 ……歌声が響いている。

 

 きゃぁ♡ と声を上げているのは、マジアベーゼとパンタノペスカ。

 ベーゼはサイリウムを楽しそうに振って、パンタノペスカはローアングルからカメラのシャッターを切っていた。

 

 パンタノペスカの撮影から逃れるべく、スカートを押さえながら、恥ずかしそうにしているロコムジカの声は、()()には到底及ばないが、それでも十分上手いと言えるものであった。

 

『夜を越えて』

 

 マジアアトラとトレスマジアがグループとして売った曲である。

 

 そして、今……ナハトベースの中で、トレスマジアの三人とロコムジカが歌った曲である。

 

 歌い終えたマジアサルファはソファにどっかりと腰かけると、コーラをストローで啜る。

 

 パチパチッ、と喉の奥で弾ける炭酸の心地よさに、ふぅ~……と息を吐いた。

 

(……あ~……ウチらは一体何してるんやろなぁ……)

 

 ……まぁ、カラオケしているんだが。

 

◇◆◇

 

 パンタノペスカこと桃森百花は、どういったルートを使ったのか、マジアベーゼたちエノルミータとのコンタクトに成功していた。

 

 彼女に連れられて、薫子たち……トレスマジアの三人は待ち合わせに指定された廃工場を訪れた。

 

 何度か戦闘の場所にもなった廃工場であるが、人目に付かない場所という点では優れていた。

 

 イメージ戦略的に、エノルミータと接触していることが表沙汰になることはあまりよろしくない。

 

 ……それも、対マジアアトラのため、と言えば、おそらく世間はいい顔をしないであろうことは想像に難くない。

 

「……お待ちしていました」

 

 恭しく胸に手を当てて一礼したマジアベーゼが出迎える。

 

「要件は大体想像がついています。……ですので、内緒話に都合の良い場所にご案内しましょう」

 

 そう言って、マジアベーゼは黒いゲートを開いた。

 

 パンタノペスカは何の警戒もなくそれを潜り、ほぇ~……、と言いながら、マゼンタがその後に続こうとする。

 

「ちょ、ちょい待ちぃ、マゼンタ!? これが罠だったらどないする気なん!?」

「……おや? 信用がありませんねぇ……悲しい……」

 

 ぐすぐす、とベーゼがわざとらしく泣きまねをする。

 

「え~? 大丈夫だよ? ……ねぇ?」

 

 マゼンタはベーゼを全く疑っている様子がない。

 

(……純真! 尊い!)

 

 ほわぁ、と頬を緩めて、サルファはマゼンタを見た……隣のベーゼも同じような感じである。

 

「……まぁ、今回、あなたたちと敵対する意思はありませんし、話し合いが必要なのは理解しています。ですから、罠の心配は必要ありませんよ?」

「そうよ、サルファ。ベーゼたちが乗り気じゃないなら、そもそもこの場に来ないだろうし、罠を張るんであれば、私たちがここに来た時点で奇襲した方がいいでしょう?」

 

(……まぁ、確かにアズールの言う通りやな……)

 

 ……もっとも、ベーゼが趣味を全開にしてくるなら、奇襲ではなく奇策の方が可能性が高い。ある程度油断させてから、ということもあるだろう。

 

 基本的に善性であるマゼンタとアズールはあまり疑うということをしないだろうから、サルファこそが疑って警戒しているくらいで丁度よいだろう。

 

 ……だからこそ、マゼンタより先にサルファがゲートを潜って、その先が安全かを確認する。

 

 一瞬の浮遊感。こつり、と靴が床を叩く音が響き……。

 

「……何や、ここ……?」

 

 部屋は真っ黒い。壁紙は黒で、床はぴかぴかの黒。窓はない。

 

 ……天井には何故かミラーボール。サルファの視線の先には大きなモニター。よく見れば、大きなスピーカーなども見える。

 

(……カラオケルーム……?)

 

 視線を巡らせれば、先に到着していたであろうレオパルト、ロコムジカ、ルベルブルーメの姿があった。

 

 ソファに座った彼女たちの前……大きなテーブルの上には、フライドポテトやピザ、唐揚げなどが所狭しと並んでいる。

 

 レオパルトが大きな口を開けて、唐揚げを口の中に入れ、もぐもぐ、と動かしているとサルファと視線があった。

 

「……んくっ、よ~、遅かったじゃんか~。罠かと思ってビビったのか~?」

 

 挑発するような彼女の視線に若干、イラッ、としながらも、現時点ではどうやら敵対意思がないことは間違いないらしい、と息を吐いた。

 

 ……何せ、一番サルファと敵対しているレオパルトがのんびりしているのだから、戦闘になる可能性は限りなく低いと言えるからだ。

 

「……一体、これは何やねん……」

「カラオケルームに決まってんだるぉ? ……あれぇ? もしかして、サルファちゃんはぼっちだから来たことないのかな~?」

「アホッ!! それくらいウチかてわかるわっ! 何でカラオケルームかって聞いとんねん!?」

 

 けらけらと笑うレオパルトにサルファが食って掛かる。

 

「……あら、これは?」

「……わぁ!」

 

 アズールは辺りを怪訝そうに見渡し、マゼンタは楽しそうに目を輝かせた。

 

「……親睦会、と言ったところでしょうか。あと、ナハトベースを自慢したいのもあります」

 

『あなたたちにはこんな秘密基地ないでしょう?』と言わんばかりに、ベーゼはちょっぴりどや顔である。

 

(……いや、逆にどうやってエノルミータはこんな設備を維持しとんねん……)

 

 トレスマジアとてアイドル活動したりしているし、スポンサーも付いている。資金面の管理はヴァーツがやっているわけだが、トレスマジアが使えているお金はそう多くはない。一応、アイドルをしているのだから、異空間の秘密基地とまでは言わなくても、事務所の一つくらいあってもよさそうなものなのだが……。

 

 対するエノルミータである。『歌星ぱある』の件からすれば、芸能界へのコネもあり、プロデュース力などから考えても、相応の資金力があることは間違いないだろう。ナハトベースの全容はわからないが、カラオケルームだけということはあり得ない。

 

 ……謎の資金力。それもまたエノルミータの強みとも言えるかもしれない。

 

「……対アトラへの共闘。パンタノペスカがトレスマジアを連れて、私とコンタクトを取るということはそれ以外にあり得ません。そして、あなたたちが来なければ、こちらから提案するつもりでした。……つまり、あなたたちがここにいる時点で、答えは決まっているということ。だとすれば、必要なのは共闘のための相互理解……というわけで、手っ取り早く、カラオケで盛り上がりつつ、わいわいすればいい……って、レオちゃんとロコちゃんが」

 

(……ん~? ベーゼの発案じゃないんか……。いや、まぁ、でも、ベーゼが積極的にカラオケする、っちゅーんはなぁんかキャラと違うしなぁ)

 

 ……たぶんベーゼは陰キャでオタクだとサルファは思っている。

 

「……と言うわけで、早速、一曲どうぞ♡」

 

「って、いきなりかい!?」

 

 マイクを押し付けられたサルファたちトレスマジアはなし崩し的に歌い始め……。

 

◇◆◇

 

 ……今に至る。

 

 ノリノリだったベーゼを見るに、単純にトレスマジアが歌っている姿を最前列で見たかっただけでは? と思わないでもないが、普段、敵として戦っているベーゼが狂喜乱舞しながらサイリウムを振っている姿を見ると、あ、コイツ、実はガチファンやん、とちょっぴり気分も良い。

 

 コーラで喉を潤した後、ピザを一切れとって、口に運ぶ……。

 

「……うっま!? 何や、コレ!? うんまぁ!?」

 

 てっきりデリバリーか冷凍のを焼いたヤツかと思いきや、どうやら、生地から手作りの本格派だった。トマトソース、サラミ、オニオン、ピーマンといったシンプルな具材でありながら、チーズはとろっとしている部分と、カリッとしている部分があり、ピザは生地はもちもちとさくさくの両方の歯ごたえがあった。

 

「そうだろう、そうだろう! ウチのシェフは有能だからな!」

「……え、誰なん!? ま、まさか、エノルミータにこんな料理上手がっ……!?」

「あ、いや……エノルミータのメンツじゃないんだけどな……」

「……そりゃそうやんなぁ……あ~よかったぁ……コレ、アンタが作ってたらどうしてくれようかと」

「作れねぇけどな!? いちお~下ごしらえは手伝ったんだぞ、これでも!?」

 

 

「……ん~……? この味付け……どこかで覚えが……?」

 

 

 ……サルファはレオパルトと言い合いをしていたので、不思議そうに首をひねっているマゼンタには気づくことはなかった。

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