悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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131 マジアアトラの目的は……?

「……実際、潜入するとしたらルベルちゃんしかいないでしょう?」

「いや、まぁ、そうだけどよぉ……」

 

『……やだなぁ』というルベルブルーメの心の声が聞こえるようである。

 

「……さて。せっかくですから、すり合わせをしておきましょうか」

 

 ぽむ、と両手を合わせたマジアベーゼの言葉に、全員の注目が集まる。……仲間内だけならともかく、推しであるトレスマジアやパンタノペスカが加わった視線にベーゼは内心でちょっとびびりながら、見えないくらいに頬を引きつらせる程度で話を始める。

 

「……まずは、イミタシオとベルゼルガの確保。これが最優先……と言うよりも、これが私たちの勝利条件です。……それ以外は捨て置くべきでしょう」

 

(……マジアアトラが何を考え、何をやろうとしているのかはともかく……彼女の気が変わらない内にイミタシオたちの身柄の確保は絶対に必要……)

 

 ……現状、アトラの動きは魔力の回収(ついでに影退治)というところで、イミタシオとベルゼルガを捕らえたのは、魔力の回収や彼女たちの魔法の解析……もしかしたら、二人の懐柔ということもあるかもしれないが……少なくともすぐに命の危険があるわけではないとは思っている。

 

 ……だが、何らかの事情でより多くの魔力が必要となったとき、彼女の手の内にあるイミタシオたちの魔力は真っ先に搾り取り尽くされるであろうことは想像に難くない。生かしてくれるならいいが、アトラはいざとなったら躊躇わないであろうことも想像がつく。

 

「……つまりは、正面から戦うのは、ある意味、囮っちゅーこっちゃな」

「……そうなります。そして、重要なのは、彼女たちが現れるとき……」

「本拠地につながっているゲートにルベルブルーメに潜入してもらうのね」

「そうです。……しかし、これに失敗した場合、私たちはアトラを撃退して、彼女たちが退却する瞬間を狙うことになりますが……こちらは事実上不可能と思った方がいいでしょう」

 

 マジアベーゼはマジアアトラたちを過大評価していない。

 

 数的に有利なこの状況であっても、マジアアトラ、ネロアリス、シスタギガントの三人を撃退するのは、かなり難しい。

 

「……マジアアトラとアリスちゃんが組んでいる現状は……正直、最悪です」

 

 ……シスタギガントはまだいい。暗黒真化した彼女の真価はまだわからないが、それでも二人よりはマシだということはわかる。

 

「……ま~、そうだな~。……アイツらの連携はたぶんマジヤベーよ?」

 

 実際に見たわけでもないのに、それだけは断言できる。

 ……それはこの場にいる全員が思っていることだ。

 

「……分断して戦うことも考えはしますが……分断しただけで勝てる相手とは思えませんし」

 

 チート&チートな二人である。下手をすれば、全員でかかっても一蹴されかねない。

 

「……というわけで、彼女たちが現れる瞬間に成否がかかっているわけです。頑張ってね、ルベルちゃん♡」

「……アタシ一人に対する責任が重すぎやしないか……」

 

 えへ、と笑うベーゼと対照的にルベルブルーメは胃が痛そうにお腹を押さえている。

 

「……ウチらはうまいことアトラをおびき出して、気づかれんようにルベルブルーメを潜入させる。これが基本戦略になるんはわかった。せやけど、それだけじゃないやろ?」

「そうですね。最低限、イミタシオたちが救出されるまで時間を稼ぐ必要があります。……更に加えて言うなら、アトラの目的の邪魔をするか否か。……パンタノペスカはシオちゃんズの立場としては、否定的でしょうが、トレスマジアはいかがですか?」

 

「う~ん……私はヴァーツに手を出さないんだったら、邪魔はしない、かな?」

「……私もマゼンタと同じね」

 

「…………ウチは二人とはちゃうなぁ」

 

「……その理由、お聞かせ願いますか、サルファ?」

 

「……いや、相手はアトラやで? あのお腹がどす黒いく染まってるヤツが、果たして額面通りのことが目的なんて到底思えへんもん。絶っっっ対、何かろくでもないこと企んどるやろ?」

 

 ……あ~、と複数同意の声が上がった。

 

(……いやぁ、ある意味、とても信頼されてますね、アトラ……)

 

 ベーゼも全くの同感である。

 

 魔法少女のいらない平和な世界を作る? クリーチャー(マスコット)を排除する?

 

 おそらくこれは体のいい目くらましで、本当はもっとどうでもよくて利己的な理由を隠しているだろう。

 

(……だからこその魔力の収集、と見るべきでしょう)

 

 集めた魔力をもって、それ以上に何か叶えたいことがある、と考える方が自然だろう。

 

 ……しかし、それだけなら、ネロアリスやシスタギガントを引き連れる必要はないとも言える。

 

 自分の願いを叶えるだけならば、多少の時間がかかったとしても、マジアアトラ一人でも可能なハズだ。

 

 その方法をとらなかったということは……。

 

(……時間的な制約があるか、あの二人が必要な何かがあるか、あるいはその両方か)

 

 いずれにしろ、マジアアトラは自らが考える駒を盤面に用意して待っている。

 

 ……おそらくは、彼女自身は既に目的を達成することを見越した上で、だ。

 

(……私たちにできるのは、私たちに対する被害を減らすことだけ、かな)

 

 ……被害を減らす、それだけを考えるならば、傍観が正しい。アトラが不必要にイミタシオとベルゼルガを害する可能性は低く、彼女の目的を達成したなら、無事に解放される可能性は高い。

 

 だが、必要とあれば、アトラはヤる。善悪の問題ではなく、必要か否かの合理をもって。

 

 その可能性があるからこそ、彼女に相対せざるを得ない。

 

「……まぁ、彼女が別に何かを企んでいる、というのは私も大いに同意するところですが。……さて、彼女が何を望んでいるのか……」

「……アンタをアレコレしたいとか、そういう、やらしいこと考えとるんと違うの?」

「んんっ!? ……ま、まぁ、確かに、そういう可能性もありましたね……っ!?」

 

 どうにも、マジアアトラはマジアベーゼに好意を持っているらしいことは、件の彼女の暴走事件の際に判明しているが、少なくともそれ以降にそれを露骨に見せてきたことはない。

 

 ……だが、やはりそれが目的だとすると、彼女一人で事足りる。

 

「……そんなに単純じゃないと思うぜ~、サルファよ~? アイツは欲望に忠実に思えるかもだけど、その欲望が常人の考える欲望と同じって考えない方がいい」

「あ~……確かにね~、あのコ、ベーゼ並みかそれ以上にぶっ飛んでそうだもの」

 

 レオパルトの言葉に、うんうん、と頷くロコムジカ。

 

「……えぇ、ベーゼ以上って……こわ……」

 

 これまでのマジアベーゼの行動を思い返したのか、サルファは思いっきり顔を顰めた。

 

(…………反論できない……っ!!)

 

 くっ、とベーゼは唇を噛んだ。変身前ならたぶんやらないことを変身後だと嬉々としてやってしまう。

 

(……でも、だって、それは……魔法少女がかわいくて、えっちなのがいけないと思いますっ!)

 

「……うぅ……でも、確かに、アトラは私たちが考えられることとは、全く違うことをしてくるのはそうだと思います……ただ、それにはアリスちゃんやシスタギガントが何かしら関わってくるとは思いますが」

「……あの引き抜きは単純な戦力強化ではないということね?」

「彼女の計画……あるいは目的に不可欠だからこその引き抜きだとは思います」

 

 ……アトラが何を考えているのかはわからない。

 ただ、彼女は彼女にとっての最善手を常に打っている、と考えるべきだ。

 

「ん~……? そうかなぁ? シスタギガントはともかく、ネロアリスはちょっと違うんじゃない?」

 

 ……ぽつり、とマゼンタが疑問を呈した。

 

「……と言うと?」

「えっと……なんて言ったらいいのかな? 少なくともネロアリスの引き抜きはもっと単純なことじゃないかな、って。例えば……そう! もっと一緒に遊びたい、とかね」

 

(……戯言、と切って捨てることもできますが……ふむ?)

 

 アトラが関わってくると、何かを企んでいるのはアトラだと思ってしまうが、その行動原理は必ずしも自分のためのものとは限らない。

 

 アリスを引き抜いたのも、アリスのためだとしたら……?

 

 アトラは自分の目的だけではなく、アリスの願いも含めて動いているのだとしたら……? そして、だとしたら、シスタギガントは何のために……?

 

(……厄介な相手ですよ、あなたは……)

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