一週間以上おかゆ生活をしていたら、体重がみるみる減少したよ……。
「……ただいまぁ」
「……♪」
……何かすっごい疲れた……。
……ナチュラルに私の腕にひっついておうちに付いてきたこりすちゃんを気にしてはいけない。
こりすママは仕事忙しいらしいし……ある意味、私の家にいる方が安心なのはわからないでもない。
……でも、ママ友ネットワークで外堀を埋めようとしてくるのは酷いと思う。
『……はぁ……あなたは、また……』とママにため息をつかれた私の身にもなって欲しい。
……ところで、『また』ってなぁに? 私にはあんまり心当たりがないんだけども……?
「……つぼみ、おかえり」
リビングに入ると、未だ制服姿の姉がいた。
「ただいま、おねえ。……?」
……お友達が来るから、お料理を、と頼まれて、結構な量を用意していたのだが。
……後片付けまで終わってる? いや、姉に家事能力がないとは言わないけども。そんなに要領がいい方でもないし……。大分早く終わった? ……それとも、単に私たちが遅かっただけ?
「……うん? あ、あぁ~……あの、持ち込みできるカラオケがあって……」
「……ふ~ん……?」
……はて? 十人分くらいあるパーティー料理をどうやって持って行ったのかな?
……まぁ、キウィちゃんや、ネモちゃん、真珠ちゃんも手伝ってくれたのなら、大丈夫かもだけど。
「どれがおいしかった?」
「人気だったのは、やっぱりピザとか、からあげとか……あ、あと、フライドポテト! ハーブ効いてておいしかったよ!」
「ふむふむ……ピザはね~、はるかちゃんと私の合作レシピだから! からあげは下味にちょっとだけカレー粉混ぜてあるの! ポテトは、新しいレシピだったんだけど、カリッカリに揚げるのがポイントだよね!」
……工夫を凝らした料理ではあるが、最終的に温めたり、軽く火を通すだけで出せるようにするのは中々苦労した。本当は焼き立て、揚げ立てが一番おいしいけど、最新調理家電を使えば、出来立てっぽい仕上がりにはなる。……かえって、チープな感じの味になって、そっちの方がおいしく感じたりすることもあるし。
……ここに黒くて憎いあんちくしょうが加わればさいこ~だよね! カロリーガン無視でいいならだけど……。
「……っ!」
ズルい、とおかんむりなこりすちゃんが私の袖をくいくいと引っ張っているが……いや、あなた、ファミレスで山盛りポテトを一人で食べてましたよね……?
……え? 愛が足りてない? ……私の愛情が含まれている料理を食べないと腹が膨れない、って……いや、それは嬉しいけども、それ、精神的なもので、物理的なもじゃないですよね?
「……いや、まぁ、私はそんなに食べてないから作るけどさぁ……太っても知らないよ?」
……最近、こりすちゃん、食べ過ぎな気がするの! ついでに、ぷにぷに具合が増している気がするんだよね……特にごく一部が!
……何でだ!? 私は未だにぺったんこだというのに!?
「……♪」
せ~ちょ~きだとぅ!? 抜け駆けは許さんぞ、親友!!
「……くそぅ……豆腐とか牛乳を増量するしか……っ!」
……ピザの材料も余ってるし、一品は豆腐ピザにしよう! ……これなら、こりすちゃんがカロリー過多になることもあるまいよ。
ふ~む……? あとはもう少しお野菜か……サラダは作るとして……豆乳でスムージーにでもしようかな?
「……つぼみ……」
「……なぁに、おねえ……?」
……あれ!? 何故か姉がドン引きしているんですけど!?
「……あなた、本当にこりすちゃんと変なことしてないでしょうね……?」
「してないよっ!?」
少なくとも最近、
「……だとしても、こりすちゃんはくっつき過ぎ! 料理の最中は危ないから離れようね」
「……~っ……!」
そんなぁぁ、というような表情で、姉に首根っこを引っ張られて連行されるこりすちゃん……。
……そうか。私がナチュラルにこりすちゃんとべたべたしているように見えたのか……。
最近、ずっとこんな感じだったから意識していなかったけど、周りからはそう見えちゃうのか……。
てへっ☆ という顔をしているこりすちゃんを見るに計算づくなんだろうなぁ……!
……私はそんな親友が恐ろしいよ……!
「……さて、と!」
きゅ、とエプロンを結ぶ。
……さぁ、何を作ろうか!
◇◆◇
むすぅ、とした顔のこりすちゃんの頭を撫でつつ、キッチンに立つ妹の姿を見る。
(……生き生きしてるなぁ……)
つぼみが料理がすきなのは結構昔からだが、最近は特に気合が入っているというか……。
普段、割と目が死んでるのに、料理をしている最中は目が輝いているのだ。
私からすれば、あのどよんとした目も妹のチャームポイントだと思っている。
……何かキウィちゃんも同じ感じの目つきしているしね。
きらっきらしてるつぼみの瞳は違和感がすごいが、嫌いなわけではない……ないが。
にへらぁ、と顔がゆるゆるになっているこりすちゃん……っ!
(……ホントにこの二人の仲はどうなってるのぉぉぉぉぉぉぉ!?)
……いや、こりすちゃんは見ればわかる。わかるというか、これを見てわからないのは、ニブいを通り越しているレベルだろう。
ママは『……あぁ……また、いつもの……ね』と諦めた目をしていたけれども!
(……どうしてつぼみは無自覚に魅了を振りまくのぉぉぉぉぉ!?)
文武両道を地で邁進するつぼみ。
顔は柊家遺伝のたぬき顔。
もふもふな髪を一生懸命手入れして、つやつやすべすべの長い黒髪。
どよんと真っ黒な瞳は、厭世観が漂っているが、それもまたミステリアス。
同学年の中でも小柄な体ながら、鍛えられた体躯は無駄なお肉がなくスラっとしている。
……正直、周りにはあこがれる要素しかない。本人にあまり自覚がないのが困りものだが。
しかし、これだけならまだ高嶺の花のような感じで遠巻きにされるだけだろう。
ここに妙に家庭的というスパイスを加えると一気に身近に感じてしまう。
……加えて、つぼみはええかっこしいというか、『他人に興味ありません』というスタンスを取りながらも、困った相手は無意識のうちに助けてしまっているという悪癖もある。
……その相手がどうなるか……見本はこちらです!
「♡♡♡」
(……こりすちゃんの目が完全にハートにっ!?)
うへへ、と涎を流しそうな顔でつぼみを見るこりすちゃんの姿は見たくなかったな……!
ハートも胃袋もがっちり掴まれているこりすちゃん……!
二人がただ仲良くしているだけなら、ひたすら尊いだけでいつまでも眺めていられるのに!
「……っ♪」
何やら考えているらしいこりすちゃんがたまに浮かべる、にやぁ、というとっても悪い顔!
……つぼみはこれに気付いているのだろうか……!
(……完全に捕食者の目……っ!)
何でこの視線を向けられて平然としているのだ、妹よ!
(……つぼみ、逃げてぇ……超逃げてぇ!)
……危機感の薄い妹が捕食される瞬間がありありと浮かぶ。
「……ごはんできたよぉ♡」
……だから、そんなきらきらな笑顔を向けちゃダメだってば……!