悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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いや、今回はホントにえちぃのないよ。


14 いただきます

 マジアアトラは手元のタコを投げると、出現させた異空間への入り口に放り込んだ。

 

 わざわざそんなことをするとは……どうやら本当に食べる気らしい。

 

(……ま、まさか……)

(……アレを……?)

(……食う気なんか!?)

 

 何せ、さっきまで魔物として動き回っていたヤツである。それを食べる気とかあんまりしない。

 

 アトラの言葉を聞いていた、マジアベーゼ、マジアマゼンタ、マジアサルファは奇しくも同じ想いを浮かべ、そして、引いた。

 

 特にタコ嫌いのサルファは隠そうともせず、うげぇ、とちょっとだけえずいた。

 

 それを見咎めたらしいアトラは若干不機嫌そうに口を開く。

 

「……何ですか、マジアサルファ。食材は無駄にしてはダメでしょう?」

「アンタ、正気かいな!? ソレ、さっきまで魔物やったんやぞ!?」

「……魔力は抜けましたし、鮮度の良いタコでしたが」

「そうやけど、そうやないやろ!?」

 

 きぃ、とサルファは頭を、がしがし、と掻きむしった。

 

 ……自分が食べるわけでもない。自己責任で「食べる」というアトラにそれ以上強く言うこともできないのだが。だが、何かもやもやするものがある。

 

 そして、自分たちと同じくらいの年代であろうアトラは、サルファと同じかそれ以下の身長であり、体の起伏も小さい。

 

 ……先のアトラの行動と今のアトラの体付きを見て、サルファは、まさか、と余計なことを考える。

 

(……まさか、メシもまともに食えてないんか!?)

 

 ある意味、食い意地を張っているともとれるアトラの言動から、そうまでしないと食事にありつけないのでは、いや、それどころか、変身前は、貧乏で苦学生で育児放棄されていて食費ももらえていないのではないか、給食だけで食いつないでいるのではあるまいな、などと斜め下方向に想像が膨らんだ。

 

 ……また、それはベーゼも同じだった。

 

(……アレを食べるというほど食に困っているというのですか!?)

 

 ベーゼが魔物化させたとは言え、その後、本当に食材として使えるのかは検証していないし、していたとしても遠慮したい。何か後から依存性が出たり、中毒症状が出たりする可能性があって恐ろしい。

 しかし、アトラはそれすらも承知の上で口にしようとしているように見える。

 それはつまりイコール彼女の生活が困窮しているということで。だと言うのに、一銭の得もなさそうな魔法少女をやって無駄にカロリーを消費しているということだ。不憫だ。アトラはもうちょっと食べて肉をつけた方が良い。そうでないと嬲り甲斐がない……いや、それ以前に可哀そうすぎて、やる気が削がれるまである。

 

 結論。

 

((……ふ、不憫……っ!!))

 

 サルファとベーゼはまったく違う思考回路で、しかし、同じ結論に至った。

 

 なお、マゼンタは、「食材を無駄にしてはダメ」というくだりで、うんうん、と大きく頷いていた。自分は食べる気は一切しないが。

 

「……あ、あの……こちらも進呈しましょうか……?」

 

 アトラが捕らえたのは一匹だけだが、ベーゼの周りのタコの魔物も連動して魔力が吸収され、タコが何匹か地面に落ちていた。まぁ、調理前には洗うだろうし、活きがいいので、全然食べれるだろう。食べる気があるなら、の話だが。

 

 ベーゼは恐る恐る残りのタコを差し出した。

 

「……せっかくだし、いただきましょう」

 

 ほくほく顔のアトラが若干かわいい。

 ベーゼもサルファも少しだけほっこりした。

 

 わっしわっし、と残りのタコを謎空間に回収したアトラは非常に満足気な顔をしていた。

 

 それを見て、ベーゼもサルファも若干の違和感を覚える。

 

 ……姿と表情が見合っていない。

 

「ふふふ……()()()()()()ですか」

 

 思い当たることがあったらしいベーゼは一層楽しそうに笑みを浮かべた。

 

「……さて、マジアアトラ? 続きをしてもよろしいですかねぇ?」

「……聞く必要ないでしょう」

 

 何を当たり前のことを、と言いた気なアトラの態度に、ベーゼは笑みを崩さない。

 

「大変結構です」

 

 ベーゼが言葉を終える前に動きがあったのは、エノルミータ側だ。

 

 影の中から、ネロアリスが、ぴょん、と飛び出し、アトラに向けて、ドールハウスの扉を開いた。

 

 ルベルブルーメの影を使った移動にアリスが便乗した、隠密性が高い奇襲のコンボ。

 

 ずぉぉ、と周囲の空気すら巻き込んでアリスのドールハウスがアトラを吸い込もうとする。

 

 経験的に、アレはヤバい、と判断したサルファは、アトラを庇おうと動くが、がく、と膝から崩れた。

 

(……何でや!? ……いや、アトラに魔力を吸われたせいやん!)

 

「アトラァァァ!?」

 

 危険と伝えようと声を出す。

 

 しかし、アトラは、さっき一応回収したマジアアズールをむんずと掴むとドールハウスに向けてぶん投げた。

 

「……え、えぇぇぇぇ……!?」

 

 恍惚の表情で横たわっていたアズールは、自分がアトラに投げられたことに気づき、次いで、その先がネロアリスのドールハウスであることを認知し、困惑の声を上げた。

 

 アトラは一切の躊躇なく、味方、であるはずのアズールを自分の身代わりにしたのである。

 

「……は?」

「アズールぅぅ!?」

 

 呆気に取られるサルファとアズールの心配をするマゼンタ。

 

 アズールは吸い込まれながらも、親指を立てて非常に良い顔をしながら、アリスのドールハウスに吸い込まれ、ぱたん、とその扉は閉じた。

 アリスはちょっと戸惑った様子で少し考えたが、まぁ、これはこれでいいや、と中の方に向けて意識を集中させる。

 

 だが、それが許されるのは一対一の場合のみ。隙、と言っても良いそれをアトラは見逃さない。アリスに一歩近寄ろうとする。

 

「……ロコォ!!」

 

 ルベルの影から新たにロコムジカが姿を現す。

 

 ……狙いはもちろん、アリスに近寄ろうとしているアトラである。

 

「ヴォワ・フォルテ!!」

 

 声を媒介にした音の攻撃。単純だが、その威力は、レオパルトに次ぐ。

 

 しかし、それもアトラが突き出した左手によって霧散する。

 

 追撃を、と構えたアトラの前から、ロコもアリスも影に沈むようにして姿を消す。ルベルが影の中に回収したのだろう。

 

 その代わりに、いつの間にか、真化した状態のレオパルトが不敵な笑みを浮かべて、ベーゼの隣に控えていた。

 

 ……この一連の動き。アドリブでやったものではい。

 

 アトラをアリスのドールハウスに閉じ込められれば、それでよし。仲間に危害がない状態で今の状況を作れれば、なおよし、の二段構えの作戦であろう。

 

 解せないのは、何故、またレオパルトなのか、というところではあるが。

 

「……レオちゃん、打ち合わせ通りに」

「任せて、ベーゼちゃん! 滅殺光線シュトラール!!」

 

 それは効かないと分かっているはず、とサルファも首を捻るが、黒い光線は、アトラに向かって放たれたと思いきや、アトラの左手に触れる直前に軌道を変えて、地面を抉った。

 

(……目くらまし!? 狙いは……!?)

 

「ガチンコや! アトラ!」

「……わかってます」

 

 爆風を目くらましにして、接近して相手に直接魔法をぶつける。おそらくは『死ねボンバー』と名付けられているレオパルトの十八番の一つ。

 

「おらぁぁぁ!?」

「……しっ!」

 

 大振りに振られたレオパルトの攻撃を、ギリギリで躱すと、アトラはそのまま、左のボディアッパーでレオパルトを撃墜する。

 

「がっ!?」

 

 更に追い打ちをかけるように、右のハイキックが崩れ落ちようとしているレオパルトの側頭部を振り抜く。

 

「ぎっ! ……かはっ!」

 

 レオパルトはおそらく全く予期できない状態でクリーンヒットを受けた。普通なら立ち上がるどころか、意識を保っていることすら難しいだろう。だが、レオパルトは、片足をついて、なおも立とうとしている。

 

 今の攻防、サルファでしかわからないこともあった。

 

(アイツ、ケンカ慣れしとる!)

 

 サルファほどではもちろんないが、それでも、ガキのケンカではあり得ない狙い済ました一撃だった。特に、レオパルトの攻撃を避けながらカウンターをとったボディアッパー。おそらくは、ストレートでクロスカウンターを狙うことすらできただろうタイミングだ。その一撃だけを見ても、彼女の技量の高さがうかがわれた。

 

 レオパルトを見下ろしたアトラは、にぃ、と笑みを浮かべると、まだ立ち上がれないでいたレオパルトの首を左腕一本で持ち上げた。

 

「……ぅ……ぐっ……」

「……お粗末ですね、レオパルト。あの程度の攻撃で私に勝てるとでも? まぁ、でもそれはいいです。あなたが、私の手の中にあるのですから」

 

 ふふふ、と笑ったアトラには何故か邪悪な気配を感じる。

 ちろり、と彼女の舌が艶めかしく動き、ぺろ、と唇を湿らせた。

 

「………………いただきます」

 




個人的には、ベーゼとサルファは意外に似たもの同士じゃなかろうかと……。
原作でバチバチやりあってるのは、実は同族嫌悪的な?
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