悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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02 魔法少女にあこがれて?

 姉は私の追撃を諦めて、キウィちゃんと出かけたようだ。

 

 私は自分の部屋から、キウィちゃんが姉の腕に抱き着きながら楽しそうに出かける様子を見送った。

 

 ……ちょっぴりジェラシー。

 

(……それにしても)

 

 いつも自信無さ気に、おどおどして、友達の一人もいなかった姉に急に友達ができた。キウィちゃんの姉に対する好意はどうやら本物らしいし、変な目的から近づいたようではないので、それはそれでいいのだが。

 

(……急に変わり過ぎじゃない?)

 

 何が、というわけでもないのだが。

 

 私は、がちゃ、と姉の部屋のドアを開けて、室内に入る。

 

 すぅぅ、と息を吸えば、姉の匂いと、出かける前に使ったベビーパウダーの香りがする。

 

「……はぁぁぁ♡」

 

 ……いやぁ、本体がいるときはそれそれでよきなんですが、残り香は残り香で切ない感じがして趣深いですな!

 

 ちなみに、ベビーパウダーは姉も私も体質的にあせもができやすいから、季節を問わず、子供の頃からお世話になっているのである。

 

 きょろ、と室内に視線をやれば、相変わらず、魔法少女のフィギュアやグッズが飾られている。

 

(……異常なし!)

 

 姉は魔法少女が大好きだが、今、一番の推しは、『トレスマジア』という三人組の魔法少女らしい。彼女たちは、街で結構よく見かける。『エノルミータ』という悪の組織に大体えっちぃ目に合わされているのが彼女たちの日常である。

 

(うーん……気のせいなのかな……?)

 

 代り映えのしない姉の部屋の様子に首を傾げる。

 

 キウィちゃんとの出会いがきっかけで姉が変わったのだろうか。

 

 ……だが、私のカンはもっと別の何かだと訴えかける。

 

 姉の机に座り、引き出しを開けて見る。

 

 ノートの下に隠されていたのは、どこで拾ってきたのか分からないが、縛られている女性が写ったエロ本である。

 

 ……SM、というヤツだろう。同じジャンルのものが何冊かある。

 

(……キウィちゃんとこんなプレイを……?)

 

 ……楽しんでいるのだろうか。

 キウィちゃんなら、求められれば応えてしまいそうではあるが……おそらく、キウィちゃん自身にそんな趣味は無いように思われる。

 

 だとすれば、この趣味は姉のもの、というわけで……。

 

(……どっちかな? 姉の性格からすれば、被虐趣味の方が似合いそうだけど。そういう人に限って逆に……みたいなのもあるし)

 

 ……だが、私はそんな想いとは裏腹に、姉は加虐趣味だろうと確信している。

 

 ……何故って? 決まっている。

 

 姉の、あの目だ。

 

 怒りとともに垣間見える恍惚に濡れたその色。

 

 あれはたぶん()()()()()()だ。

 

「……ふふ」

 

 にちゃあ、と笑みが零れる。

 

 姉は露骨には見せなかったが……あれは私もそういう対象として見ているということ。

 

「いいよ……おねえちゃん♡」

 

 私ならちゃんと受け止められる。

 姉の思うとおりの反応ができる。

 

 この世界で、他の誰にもできない私だけの特権。

 

「……妹だからって遠慮しなくていいんだよ♡ 全部ぜんぶ、ぜぇぇんぶ! 私が受け止めてあげる! 飲み込んであげる! おねえちゃんのやりたいこと全部! 私なら全部許してあげるよ♡ だから、だから! だからさぁ!!」

 

 ぎゅぅ、と自分の体を抱きしめると、まるで姉に抱きしめられているように錯覚し、下腹部から脳天まで快感が突き抜けていく。

 

「……どうか、私を滅茶苦茶にして♡」

 

 びくん、びくん、と体を震わせる。

 唇から流れ落ちた自らの涎を、ぺろ、と舌で舐めとる。

 恍惚で、とろん、とした目から涙が零れる。

 太ももの辺りがじっとりと濡れているのが分かる。

 

「……ふぅー……ふぅー……♡ ……はぁぁ♡」

 

 荒い息をつきながら、余韻に浸る。

 

 ……私がこんな風になるのを理解してくれる人はいるだろうか。

 

 考えるに、世界中を探しても、理解してくれるのは、おそらくキウィちゃんくらいだろう。

 

 ……キウィちゃんは私の同類。

 

 どうしようもないほどに、柊うてな(おねえちゃん)の中毒患者。

 

 そんな彼女だからこそ、私も彼女が姉の隣にいるのを許せるのだ。

 

「……うふふふふふ」

 

 あぁ……待ち遠しいなぁ。

 

 新しいお義姉ちゃんができる日が。私と一緒に姉に溺れてくれる日が。

 

「……くふっ……くふふふふふっ」

 

 ……姉に滅茶苦茶に犯されるその日が。

 

 私は世界で一番おねえちゃんが好き♡

 ……キウィちゃんは今のところ、二番目に好き。

 

 大好きな二人に挟まれれば、それはそれは楽しくも、気持ち良い日々が待っていることだろう。

 

「………………おねぇたちが帰ってくる前に掃除しよ」

 

 ……あとはお風呂かな。色々汚れちゃったしね♡

 

◇◆◇

 

 階下では、洗濯機が、ぐぉんぐぉん、と回っている。

 私は、湯上りで火照った体で、姉と同じシャンプーの香りを漂わせながら、ふぃぃぃん、という音を立てながら、私は上機嫌で姉の部屋に掃除機をかけている。

 

「ふっふふ~ん♪」

 

 姉は母を部屋に入れるのを嫌がるが、私が入るのを特に拒みはしない。

 

 ……まぁ、私はそれをいいことに好き勝手しているわけだが。

 

 別に姉は家事が苦手なわけでも、ズボラなわけでもない。むしろいつ嫁にいってもおかしくないくらいに家庭的だ。まぁ、嫁に行くなど私が許すはずがないのだが。キウィちゃんがウチに嫁に来るのは許すけど。

 

 姉は単には私がキレイ好きなだけと思っているようだが、実は理由はそれだけではない。

 

 姉の部屋を物色しても怪しまれないし、怪しい痕跡は抹消できるからである!

 

 掃除機をかけ終えた私は、ほくほく顔で姉の衣類の入っているクローゼットを開ける。そして、そこにある衣装ケースの引き出しをそっと開けてみる。

 

 白、水色、ピンク、縞々。

 

 ……姉の下着である。

 

 魔法少女にあこがれているせいか、姉は割と可愛らしい感じの下着が多い……多かったハズだ。

 

 レースの付いているフリフリやら、ロマンを感じる白パンツ。にゃんこがプリントされている子供っぽいのもある。個人的には苺パンツも結構好きだし、白と水色の縞々パンツを履いた姉の姿を想像すると鼻血が出そうだ。

 

 まぁ、こんな感じで、姉の下着は年齢相応から若干幼めなレパートリーが多いわけだが。……私に見覚えのない下着が幾つか。

 

 今日履いていた黒のスケスケなヤツもそうだし、紫の紐みたいのや、赤の際どいヤツが増えている。

 

 とりあえず、赤いのを取り出して、広げてみる。

 

「……すぅぅ……」

 

 ちょっと匂いを確認してみる。

 

 ……あー……これは、あれだ。少なくともまだちゃんと履いてないヤツだ。……ちっ!

 

 そう考えると、今日、黒のスケスケ履いていたのは、姉的にも大冒険だったのではないだろうか。

 

(……大人の階段昇っちゃう!? キウィちゃん、記念の動画撮影でもしててくればいいのに……!)

 

 ……でも、保留にされているのだったか? だとしたら、何故、そんなえちえちな下着をセレクトしたんだ、姉よ。

 

 万が一か!? 万が一に備えてか!? でも、それってもうキウィちゃんのこと大好きじゃん!!

 

(……今日は絶対おねぇと一緒にお風呂に入ろう!)

 

 何か痕跡があれば、それだけで、によによできるし、当分、オカズに困らなさそうだ。

 

「……うひひ♡ ……おっと」

 

 じゅる、と垂れてきた涎を啜る。

 

 私は涎が付かないように気を付けながら(付いたら付いたで、姉がそれを身に着ける未来を想像して楽しめるが)、物色していた下着たちを元に戻す。

 

 ……姉もまさか、妹である私に下着を物色されているとは夢にも思うまい!

 

 痕跡は残さない。侵入前よりキレイにして、「掃除しておいたよ♡」と言うだけだ。

 

 しかし、姉の部屋は魔法少女グッズが多い。

 飾っているフィギュアは動かすとめっちゃ怒るので、その辺りは私もママも触らない。姉の趣味に付き合うだけの知識はべんきょーしてはいるけれど、私は魔法少女にはあまり興味がない。

 

 ……だが、姉が魔法少女にあこがれる気持ちは理解しているつもりだ。

 

 誰しもが一度はヒロインにあこがれる。

 アニメだったり、特撮だったり、現物だったり、と違いはあれど、あんな風にキラキラしてみたいと思うのは、成長過程において、ごく自然なことだろう。

 

 だから、ちょっと度が過ぎているとは言え、姉の魔法少女への熱の入れようは理解はできるのだ。

 

 私の周りでも魔法少女にあこがれている子たちは多い。ごっこ遊びを未だにやっているものもいるし、姉と同じようにグッズを買い集めている子もいれば、ライブに入り浸っている子もいる。

 

 ……しかし、私はあまり魔法少女には興味がない。無論、姉のために仕入れた知識で、話を合わせることくらいはできるが。

 

 私はこの世界で一番姉がかわいいと思っているが、そんな私でもあこがれる存在はある。他の子たちとは変わっているというだけで。

 

「……ベーゼ様……♡」

 

『マジアベーゼ』。いつの間にかエノルミータ総帥となった悪の女幹部。

 

 初めて彼女を目にしたとき、脳天から爪先まで電撃が走ったような気さえした。

 

 世界で一番かわいくて愛しい姉以外に、私が思わず、美しい、と思ってしまった少女。

 

 私はあまり魔法少女に感情移入できないタチではあったが、今より幼い頃から、悪の女幹部には心惹かれていた。

 

 この世界は美しいものだけでできているわけじゃない。

 愛と希望と正義だけでは世界は成り立たない。

 憎悪と絶望と悪がなければ、世界は単調で美しさが分かり辛い。

 

 だから、私は醜いものこそを愛でたいと思う。

 でろでろに腐って、ぐずぐずと崩れそうでな醜い己の感情も肯定する。

 

 誰に何を言われたって構わない。これは、これこそが私の感情。私の愛するもの。

 

 姉に加えて、マジアベーゼという少女が私の愛するものに加わったのだ。

 

 ……無論、レオパルトやネロアリス、ロコムジカ、ルベルブルーメにも興味はあるし、あこがれのようなものは感じている。

 

 だが、あえて言うなら、マジアベーゼは私の最推し♡

 

 私もトレスマジアのようにイジメられてみたい、と思うほどに彼女のことも大好きだ。

 

「……SM……」

 

 姉の持ってるえっち本では、イジメられている方も気持ちよさそうであった。

 イマイチその感覚はよく分からないが……。

 

 もし、姉の趣味がそっちだとしたら……?

 万が一、マジアベーゼに責められる立ち位置になったとしたら……?

 

「……んふふ♡」

 

 そうなったときに困らないように予習することは大事だろう。

 問題はどうやって予習をするか、だが。

 

 幸いにして、教科書はここにある。

 姉はデートで夜まで帰らないだろうから、とりあえず、内容を全ページ写真に撮ろう。

 

「ふふふふふふ♡」

 

 ……ああ……待っててね、おねぇ♡ ベーゼ様♡

 私、ちゃんと気持ちよくなれるよう頑張るから♡

 

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