悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

23 / 132
23 吸われて、感じて、マジアベーゼ

「……ぅくっ!?」

 

 マジアベーゼは体を起こそうとするものの、衝撃によるダメージと雷撃による痺れで体がまともに動かない。

 

 マジアアトラの手から逃れる術はなかった。

 

「ふふっ♡」

 

 仰向けになっているベーゼの頬に、アトラの左手が触れる。そっと。大切なものを扱うように優しく。

 

 ずる、と体から何かが抜けていく感触がした。

 

「あ……あぁぁ……っ!」

 

 アトラが最初レオパルトに行ったときは、加減などできなかったのだろう。だが、彼女はレオパルトが苦しんでいる様子を見て、おそらく吸収の速度を加減した。

 

 ……急激に奪われるのではなく、優しく丁寧に吸い上げられる。

 

 今のアトラはそうできる程度には、吸収という能力に慣れたらしい。

 

(な……なに、コレ……♡)

 

 アトラは、ベーゼの頬から、唇へとその指を動かし、ゆっくりベーゼの口の中に指を入れていく。

 

「んぷっ!? ん……んっ……ちゅ……んぁ……♡」

 

 軽く抜き差しするようにしながら、ベーゼの舌をアトラの指が蹂躙する。

 アトラの冷たい指の感触。

 花のような香りが甘く蕩けるように舌の上に広がる。

 

 ちゅぽっ、と音をたてて引き抜かれた指は、今度は少しずつ下に下がっていく。

 

 つーっ、と肌に触れるか触れないかの指の感触。

 

(……こんな……こんなのぉ……♡)

 

 やがて指は胸の辺りに到達し、全体を覆うようにしながら、右の胸を揉みあげられる。

 

「ぁっ……♡ ……ぅん……♡」

 

 ベーゼの反応を楽しむかのように、アトラは、くす、と微笑んだ。

 

 イミタシオの『ラブポーション#13』が暴力的なまでの快楽を押し付けるものだとしたら、アトラの直接接触による『吸収』は、緩い快楽を導くものだ。

 

 我慢していた排泄を促されるように。焦らされ、溜まったものを開放するかのように。

 

 しかし、徐々に導かれ、昂っていく。

 

 ただ、触れられているだけなのに、体全体を丹念に愛撫されているような感覚。

 そして、その全てが、触れたその手に集まっていくような感触。

 

 アトラの指がお腹の辺りを触れ……そして、至る。

 

「あっ♡ あぁっ♡ そこはぁ……♡」

 

 つぷぅ、とアトラの指がベーゼのおへその穴に沈んだ。

 

「~~~~~~~っ♡♡♡」

 

 ベーゼの体が、びくん、と大きく跳ねた。

 

(……ぁ……ダメ……)

 

 意識が飛びそうになるのを堪え、しかし、それでも大きく魔力が波打ち、それをアトラは喰らった。

 

 ベーゼが真化を維持できなくなるほどに魔力を吸収されると同時、アトラの背には翼が一対増えた。

 

「……すごいですね、マジアベーゼ。まだ半分もいっていないのに、これほどとは」

 

(……半分……? これで……?)

 

 ベーゼは絶望感を覚えた。

 

 イミタシオの『ラブポーション#13』は、抗えないほどの快楽をベーゼに与えはしたが、それでも理性を飛ばすことはなかった。

 それは所詮毒による効能でしかなく、ベーゼの精神そのものに作用する力はなり得なかった。

 

 一方で、アトラの場合はどうか。

 彼女からすれば、相手に快感を与えているのは、魔力を『吸収』するという能力の単なる副産物に過ぎない。

 しかし、彼女の触れ方から広がるその快感は、睦み合いで起こるそれに極めて近い。

 愛されていると錯覚してしまうほどに。

 ……愛していると錯覚してしまうほどに。

 

 それが、まだ半分程度でしかないという。

 

「……ここがいいみたいですね、マジアベーゼ。もう少し、虐めてあげましょう」

「あ♡ あがぁ♡ あ、ああああぁぁぁぁ♡♡♡」

 

 アトラの指がベーゼのへその中を引っ掻く。

 声を堪えることができないほどの快感が下腹部からへそへと上がってくる。

 ばちばち、とした白い光が視界を埋め尽くし、体がそれ以上の快感を求めようとする。

 

(…………………………ダメっ!!!!)

 

 キウィの姿が目に浮かんだ。

 

 ……このまま、アトラに身を任すことなど許されない。

 答えを出す、とそう決めて、まだ答えられていない。

 

「んんっ♡」

 

 どうしようもない快感の中、ベーゼは、まだ、手の中にあった支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)を夢中のまま振るう。

 

 ……ぺしん、と乾いた音が響き、ベーゼは何かを魔物化させた感触を察知した。

 

「……面倒なことを」

 

 苛立たし気にそう呟いたアトラが、ふわり、と宙を舞って、ベーゼの側から離れ、何かを警戒するようにしながら構える。

 

(……一体、何を……?)

 

 自分が何を魔物化させたのかもわからず、ベーゼはようやく動くようになった体をゆっくりと起こす。

 

「ベーゼちゃん! ちょっとヤバいよ!」

 

 アトラの『吸収』の様子に我慢ができなくなったのか、近くまで来ていたらしいレオパルトが、ベーゼに肩を貸しながら、その場から離れようとしている。

 

「……レオちゃん、何が……って、えぇぇ……!?」

 

 ベーゼは目の前の光景に目を疑った。

 

 黒い翼を持った魔法少女。

 

 ……マジアアトラが増えていた。

 

 いや、それは正確ではない。

 ()()()マジアアトラは、本体より小さい……むしろ、幼いと言うべきか。

 

 そして、それは本体と異なり明らかに正気を保っていない。

 黒い魔力を垂れ流し、中途半端に生え始めた翼は翼の体を成さずに、ぐずぐず、と醜い肉塊となり、その体積を増やし続けている。

 

「……やってくれましたね、マジアベーゼ。まさか、私の翼を魔物化するとは……!」

 

 それ、魔物化するんだ、と内心で驚きながらも、ベーゼは、計算通りとでも言うかのように、へら、と笑みを浮かべる。

 

(……幸いにして、ある程度の制御はできそうですし……このまま、彼女たちに嗾けましょうか。私の消耗も激しいし、今日はここまでですね……)

 

「……存分に楽しんでください、マジアアトラ。今日の借りは、またいずれ」

 

 ふふふっ、と笑って、レオパルトに支えられたまま、ネロアリスが眠そうにしながら開いたゲートに、三人で退避していく。

 

 ちらり、と後方を伺えば、アトラがもう一人の自分を吸収しようと接近している姿が見えた。

 

(……マジアアトラはやはりイミタシオと同じ。真化状態で戦っていた……彼女とは逆に、成長した姿で! ふふふ……トレスマジアもそうなのかはわかりませんが、少なくとも彼女は基本を押さえている! 素晴らしい、素晴らしい! とぉっても素晴らしいですよ、マジアアトラ!)

 

 敵味方でなければ、大いに語り合いたいところではあるが……きっとそれは叶わない話だろう。

 

 ……だから、語るとすれば、互いに己の存在で語るしかない。

 

 悪の組織の女幹部、マジアベーゼと、謎の魔法少女、マジアアトラとして。

 

◇◆◇

 

 イミタシオが体をようやく動かせるようになったとき、事態はよりややこしいことになっていた。

 

『が、ぁぁぁぁっ!!』

 

 アトラの姿を辛うじて残しているもう一人のマジアアトラは、増え続ける肉塊を引きずり、唸り声を上げながら、本体に襲い掛かっている。

 

「ふっ!」

 

 それをアトラは容赦なく殴る、殴る、殴る!

 

(……魔物化しているとはいえ、自分と同じ姿のものを躊躇なく殴るとは……)

 

 さすがのイミタシオもちょっと引く。

 

「……イミタシオ! 動けるのなら退避しなさい!」

 

 相手を気遣い、自分は死地に残るという……何とも魔法少女らしい言葉だった。

 

 ちまちまと相手から魔力を削っているらしいアトラには、イミタシオたちに加勢してもらうという考えはないらしい。

 

「……舐めるななの☆ 私はまだ戦えるの☆」

 

 ぶん、と大剣を振って構える。

 

 一瞬、不機嫌そうな顔をしたアトラだが、すぐに表情を元に戻すと、アトラは作戦を叫ぶ。

 

「……ならば陽動を! 隙を見つけ次第、全部、吸い尽くします!」

「了解、なのぉ☆」

 

 ぐぉん、と大剣が唸りを上げて、ニセアトラの肉塊の一部を削ぎ落す。

 

『ご、ぉ、ぁぁぁぁぁ!』

 

 イミタシオを敵として認識したソレは、ずる、と這うようにしながら、イミタシオに向かってくる。元は翼となるはずであった肉塊を大きく振り上げ、地面に待ち構えるイミタシオに振り下ろそうとする。

 

「……やれやれ。魔物化された私はこの程度ですか、まったく……」

 

 呆れたようにしながら、アトラはニセアトラの背中に向けて、左手を抜き手の状態で構える。

 

「……戻りなさい、この駄肉」

 

 アトラはそう言うと、ずしゃ、と躊躇いなくその左手をニセアトラに突き立てた。

 

『ぎ!? ぎぃぁぁぁぁ……!?』

 

 ニセアトラが悲鳴を上げ、ぐずぐず、と溶け始める。

 黒く澱んだ瘴気のような魔力が、渦を巻くようにしながら、アトラの左手に集まり、黒い花びらのような残滓を残しながら消えていった。

 

 ニセアトラが消える頃には、四対の翼を背にしたアトラが、ふよふよ、と宙に浮いていた。

 

「……私一人でも何とかできましたが、助力を得たのは間違いありません。感謝します、イミタシオ」

「……これっぽっちも謝意が込められていないお礼を言うのはどうかと思うの☆」

「……一応、感謝しているつもりでしたが……そうですか」

 

 ちょっと悲しそうな顔をするアトラ。

 物凄く渋々お礼を言った感じではあったが、あれはあれで彼女の精一杯の謝意だったらしい。

 まぁ、相手に伝わらなければまったく意味がないが。

 

 ちら、とアトラがイミタシオから視線を外し、新たにこちらに向かってくる魔力の方へ目を向ける。イミタシオも釣られるように、そちらを見て、ため息をついた。

 

「……トレスマジア……今日は随分と重役出勤なの……☆」

「ふむ……」

 

 アトラは周囲を見回して渋い顔をした。

 ベーゼとの戦いはまだしも、ニセアトラの質量はそれなりに広がっていたので、壊れているものは多い。

 

「……トレスマジアにお小言を言われるのは御免被りたいところですね。……任せましたよ、イミタシオ」

 

 アトラは、ばさ、と翼をはためかせると、上空へと飛び上がる。

 

「はぁ……!? お前、逃げる気なの!?」

「私がやるべきことはやりました。この戦いはあなた方、シオちゃんズが始めたものです。なら、当然、終わらせるのもあなた方のものではありませんか、イミタシオ? ……それでは、ごきげんよう♡」

 

 にこ、と今までにない笑顔を残したアトラは空の彼方へ姿を消した。

 

 イミタシオは、ぎり、と歯を食いしばり、拳を握りしめた。

 

(……あ、あの女ぁ……! 自分はやりたい放題やって、後始末は人任せだと!?)

 

 イミタシオはコメカミに青筋を浮かべて、トレスマジアに何と言おうか、と頭を悩ませた。




あ、何となく気づいてる方もいると思いますが、
アトラはイミタシオが好きじゃありません。
ベーゼを媚薬で快感漬けとかにしてたので。
同様にアズールは嫌いです。
何か一番ベーゼ様にエロい目に合わせられているので。

……要は嫉妬しているということです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。