本日二度目のシャワータイムを終えた私は気分転換に出かけることにした。
……さすがにあのままだと、脳みそがえっちな気分にしかならないしね?
一日中あれでは、さすがに不健康が過ぎるだろう。
とりあえず、コンビニでしゅわしゅわする黒くて憎いアイツでも買いつつ、アイスでも貪ろうかと考えている。
「……お?」
近くのコンビニまで向かっていると、見知った背中を発見。
てってっ、と走って追いかけ、横に並ぶ。
「こりすちゃん、こんにちは」
「……(こく)」
ん、という頷きとともに、軽く頭を下げたのは、同じ学校の『杜乃こりす』ちゃんだ。
つやつやでまっすぐな長い髪とぱっちりおめめ。
今日も可愛らしいアンティークドールを抱いている。
彼女はどういういきさつか知らないが、姉やキウィちゃんとよく遊んでいるらしく、それから私も声をかけるようになった。一応、友人、と言ってもいいのではないだろうか。
「……?」
こりすちゃんは私が一人だけなのを不思議に思ってか、軽く首を傾げた。
要は、姉はどうしたのか、ということだろう。
「え? おねぇは今日はキウィちゃんとデートだって」
「……」
……ん、と彼女は納得いった様子で軽く頷いた。
どうやら、彼女も姉かキウィちゃんから、今日はデートだと聞かされていたらしい。
ちょっと、眉根を寄せている様子から、いい加減、はよくっつけや、と思っているようだ。
「あはは、そうだね。……こりすちゃんも、今日は一人? ……ん? 違う? 待ち合わせ?」
歩いている方向は私と同じで近所のコンビニ。おそらくそこを待ち合わせ場所にしているのだろうが。
「あぁ……真珠ちゃんとネモちゃんね」
「……ん」
こくこく、と頷くこりすちゃん。
同い年なんだけど、これは愛でたくなる可愛さ。
どうやら彼女も妹属性らしい。私も妹だが、こりすちゃんは私的にも妹にしたい。
さて、話題に上った、『阿古屋真珠』ちゃんと『姉母ネモ』ちゃんも、最近姉と仲がいい人たちだ。
一見、まったく共通点のない彼女たちが、基本、地味で根暗な姉とどうやって知り合い、仲良くなったのか……私からしても謎である。
「……でも、こりすちゃん。あの二人の間に挟まるのってキツくない?」
私はあの二人は恋人同士だと思っている。
たまに、姉と共に会うと、二人でぽわぽわ空間作って、お互いに目を合わせては、顔を赤くして、目を逸らし……でも知らない内に、距離を詰めて、付かず離れずの距離をキープしている。
こんな感じの二人だから、間に挟まると結構いたたまれない。自分が明らかなお邪魔虫と認識してしまうので。
……しかし、こりすちゃんは、こてん、と首を捻った。
……まだ、難しかっただろうか?
「いや、まぁ、こりすちゃんはそれでいいよ……」
頼むからこりすちゃんは、そのまま純真でいてください。
たまに出てくる男前な感じの黒こりすちゃんは寝てていいです。
うぃぃん、と自動ドアが開くと、エアコンの涼しい空気が肌を撫でる。
「いらっしゃいませーーーーっ!!!!」
ここは軍隊か、と思うほどの大きな声。
そして、彼女は私たちを見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした。
「田中、ちぃぃっス!」
「田中と呼び捨てにするなっ! 柊つぼみっ!」
彼女は『田中みち子』。近所の怖いコンビニの店員さんである。おわり!
「説明が雑過ぎるだろう、貴様!」
「心の声に突っ込まないでよ、田中!」
まぁ、こんな感じの見た目格好良いのに変なおねーさんである。
彼女は未だに厨二を引きずっているのか、何故か軍隊口調であり、姿勢なんかもそんな感じである。左目の下の刃傷が色んな意味で想像をかきたてる(笑)。
……大学をドロップアウトして、現在、フリーターという残念具合がまた何とも。
彼女も何故か姉と知り合いらしい。まぁ、ご近所のコンビニの店員さんだから、知り合いなのは別におかしくはないのだが……。
彼女は何故かうちの姉に敵愾心があるらしく、姉を見ると苛立たし気にしていることが多い。その癖、どこかで認め合っているような……?
少なくとも姉からは、彼女に対するネガティブな感情はなく、どちらかというと憧れのような感情を感じる。
……本当にどういった関係なのだろうか?
とりあえず、私は目的の飲み物をカウンターに持って行き、会計をする。
「……あと、ソフトクリームね。千円チャージも頼むわ、田中~」
けらけら、と笑いながら、そう言うと、彼女はこめかみに青筋を浮かべつつ、ぎり、と歯ぎしりをしながら、引きつったような笑顔を浮かべる。
「……フクッ……袋はア……お付っ…ケ、致しますかァ……?」
「あ、そのままで」
「ア、りがと、ウございましたぁぁぁァ!」
ひくひく、と笑顔を浮かべた田中に、ぺろっ、と舌を出しながら、私は会計を済ますとブツを受け取って、後ろに並んでいるこりすちゃんにレジを譲る。
(……いつものあの調子でどうやって注文するんだろう……!?)
こりすちゃんはあんな感じなので、あまり喋っているところを見たことがない。
……と言うか、いつも誰かがこりすちゃんの言葉を代弁している。
そんなこりすちゃんのオーダー! 私、気になります!
「……何か注文か、杜乃こりす」
あ、さすがに田中もこりすちゃんには優しめの対応なのね。
「……っ」
じっ、と田中を見つめるこりすちゃん。だが、田中は私たちと違って、こりすちゃんが何を言いたいのかわかる人じゃないよ! どうするこりすちゃん!?
「……」
こりすちゃんが、ぷい、と私の方に顔を向けて、物言いたげな目で私を見る。
……そんなことしたって、こりすちゃんのオーダーしているところを見たいから、私は手助けなんてしな……い……?
……あれ、何か目眩……?
……あ、違う……そうじゃなくて。
「……田中、こりすちゃん、アイスカフェラテだって。おっきぃヤツ」
……はっ!? 今、私は何をした。
「承知した……ほら、落とすなよ」
「……っ!」
会計を終えたこりすちゃんが楽しそうにしながら、私に近寄ってきて、どやぁ、と笑みを浮かべた。
「……私の負けだよっ、こりすちゃん!」
これが妹力の差か……困った様子のこりすちゃんを助けざるを得なかったよ!
二人で店の外に出ると、コンビニに近寄ってくる二つの影。
「……二人とも~~~!」
ぶんぶん、と手を振って、近づいてくるのは、キラキラオシャレさんの真珠ちゃん。
その後をちょっと眠そうにしながら付いて来ている不良っぽい格好をしたのはネモちゃん。
「真珠ちゃん、こんにちは。ネモちゃんは……昨日振り?」
「おう。昨日はサンキュー。遅くまで付き合わせて悪かったな」
……ちなみに、ネモちゃんと私は毎夜毎晩一緒に狩りに勤しんでいる仲である。
「……ネモちゃん、昨日は激しかったね♡」
私は軽く頬を染めながら、ネモちゃんにそう答えた。
ぴき、と真珠ちゃんが青筋を浮かべている。
「……ちょっと、ネモ!?」
「ち、違う違う!? ゲーム!! ゲームの話!!」
ネモちゃんが慌てて言い訳をしつつ、私に非難めいた視線を送ってくる。
……うーん……おもろ♡
あんまりやり過ぎると真珠ちゃんが泣きそうなので、からかうのはこれ位にして。
「……二人とも、こりすちゃんと待ち合わせって何処か行くの?」
こりすちゃんは皆に愛されているから、誰と一緒でもそれほど不思議ではないが、この二人だけと一緒にお出かけ、というのは割とレアな感じがする。
「こりすのお母さんが仕事だから、遊んでやってくれって。うてなとキウィはアレでしょ?」
「アレだねぇ……」
おデートである。
キウィちゃんの様子からすると、カフェに行って、ウィンドウショッピングして、という感じだったが。最近はキウィちゃんのお家にもお邪魔しているみたいだし、もしかすると、途中からお家デートかも?
……お家に誰もいないなら、ワンチャン……!! ……うひひ♡
「「……うわぁ……」」
真珠ちゃんとネモちゃんが明らかに引いた顔をして、こりすちゃんは、やれやれだぜ、とばかりに首を振っている。
「なぁに、皆して……」
ぷくっ、と私は皆の様子に頬を膨らませる。
「……他人様に見せられない顔すんじゃないわよ……」
「……そういう顔を見ると、血を感じるよなぁ」
「……ん」
……どういう顔だろう? わたしは、うにうに、と自分の顔を揉んでみる。
「その、何と言うか、にちゃぁ、ってした気持ち悪い笑顔よ……ホント、うてなにそっくり」
「……だな。性格は全然似てない感じなのにな」
「……(こくこく)」
は? 姉は気持ち悪くないが?
まぁ、でもおねぇに似ていると言われるのはちょっと嬉しい。
「でゅへへへへ☆」
……だから、気持ち悪いって言われたって気にしない!
こりすちゃんの飲み物は、最初、ハロハロの予定だったけど、プロフィール見たら、嫌いなものに甘い物との記載があったので、急遽、カフェラテに……