悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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31 強さの所以

 ……マジアアトラ級の魔物一体。

 

 単なる魔物ならまだしも、アトラの性質を受け継いでいるのだとしたら、その厄介さと言ったら、マジアベーゼが普段作っている魔物はお遊びとしか思えない程だ。

 

 ……まぁ、実際、彼女にとっては、楽しいお遊びの一環なのだろうが。

 

「……どうするよ、ロコ? 一体アタシらだってよ?」

「大丈夫よっ!」

 

 自信満々のロコムジカの姿にルベルブルーメは嘆息した。

 

(……何なんだよ、その根拠のない自信は……)

 

 ポジティブ過ぎる。

 

 皆のアイドルを目指すロコムジカ……阿古屋真珠は、素ではまったく音程の取れない極端な音痴である。

 

 しかし、彼女はそんなことは全く気にせず、アイドルになると宣う。

 

 幼い頃からずっと。

 

 根拠なく、自分はかわいいと、アイドルになれると信じて疑わない。

 

 ……容姿はともかく、皆が閉口する様子から、彼女は音痴なことは自覚している……ハズだ。

 

 だが、それでも、折れない。曲がらない。止まらない。

 

 故に、今日も彼女の喉は空気を震わせ、奏でる。

 

「ロコの歌を聞きなさい、アトラ! ヴォワ・フォルテ!」

 

 外れた音を、不協和音を、狂騒曲を!

 

「……やれやれ。ロコ、そんなんじゃ、アイツだってノって来ないだろ? アタシに聞かせろよ、お前の歌を!」

 

 ルベルブルーメの言葉に、ロコムジカは、恥ずかしそうに……だが、嬉しそうな笑顔を向ける。

 

 ……どきり、と胸が高鳴った。

 

(……反則だろ……)

 

 ロコムジカの影に溶け込み、そこから見える景色を凝視する。

 

 短いスカートから覗くむっちりとしたふともも。そこを辿っていけば、その先には肌色で、桜色のスジが見える。わずかな光の反射、そこからぬらぬらとした粘液が垂れていることがわかる。

 

 デリケートゾーン。本来そこを覆うべき布は見当たらない。

 

 ……いつからか、彼女は変身しても、パンツは出なくなった。

 

 そして、そんな彼女の恥部を見上げることを日常としてしまったルベルブルーメ。

 

(……ごくっ)

 

 ……何度肌を重ねたことだろう。

 

 ハジメテのときから、それでも数えるほど。

 

 しかし、覚えている。その蜜の味を。

 だから、また味わいたいと思ってしまう。

 そして、自分だけのために、その美しい声で囀らせたいと願ってしまう。

 

(…………………………アタシも変態になっちまったなぁ)

 

 直接、肌を合わせるのももちろんいいが、こうやって彼女の痴態を眺めて、彼女が羞恥に頬を染め、体を震わせながら、囀る姿を見るのもまたおつなものだ。

 その姿を愛でるだけでも、昂ってくるが、互いにおあずけ感が高まるので、その後が非常に盛り上がる。

 

 ルベルブルーメは、この後のことを考えて、少しだけにやにやする。どちらかと言うと、いつも彼女が受け身だが、たまには責めてみるのも悪くない。特に、今、無防備に晒している、そのいやらしいスジを自分に見せつけていることが、本当に恥ずかしいことだと気づくよう徹底的に、容赦なく。

 そうすれば、ロコムジカは、一層輝くことだろう。

 

 ……羞恥で肌を桜色に染めるロコムジカが一番美しい。

 

 ルベルブルーメは心底そう思っている。

 

 露出狂と覗き魔となってしまった二人が互いに互いを高めあうユニゾンスタイル。

 

 真化に至っていない、しかし、ある意味、真化以上の真価を秘めている彼女たち二人だけの必勝の陣。

 

「ぶちかませぇぇぇぇ!! ロコぉぉぉぉ!!」

「しっかり見てなさいよ、ルベル!!」

 

「「フォルティシモ・カノン!!!!!」」

 

◇◆◇

 

(……思った以上に強くなったな、あの二人)

 

 たかだか三つ星でしかない上に、真化に至る兆候すらなく、マジアベーゼやネロアリスのように冗談みたいに星を増やすこともできない。

 

 イミタシオ……かつてのロードエノルメにとっては、駒の一つに過ぎなかった。

 

 その程度だろうとしか思えなかった。

 

 だが、ベーゼは彼女たちを一段階上へと引き上げた。

 

 自らの恐ろしいまでの欲望と闇を内に秘めたところもそうだが、ベーゼの怖いところは、自分も、仲間も、好敵手ですら高見に上らせるある種の才能があることだ。

 

「……ベルゼルガ、足止めをお願いなの☆ パンタノペスカ、解析はどの程度進んでいるのなの?」

「え、えへ……シオちゃんは、わたしが守るよ……?」

 

 イミタシオの言葉にベルゼルガが一歩前に出て、鎌を構えて笑う。彼女はイミタシオのためならば、何も躊躇うことはない。

 

「もう少し情報は欲しいですわね……ベルゼルガ、ちょっと攻撃してみていただけるかしら?」

 

 モノクルを、かちり、と動かしながらそう言ったパンタノペスカに、少しだけ面白くなさそうな顔をしながらも、ベルゼルガは、ぽたり、と垂らした自らの血に魔力を込めた。

 

「……血の舞踏(ブルートダンツ)

 

 魔力を含んだ血は鎌の形をとって、アトラ級を襲う。

 ソレはベルゼルガの鎌をその体で受けると、その鎌のほとんどは、体にぶつかる前に霧散した。

 

「……これは……!?」

 

 ふひ、とパンタノペスカはいやらしく笑みを浮かべる。

 アトラ級は、一応、見た目はマジアアトラであるし、鎌の全てを無効化できなかった、アトラ級は、その衣類が引きちぎれ、幼い胸が露わになり、つるんとした秘部もまるみえだ。

 

「あんな簡単な魔物化でここまでの再現を!? いえ、本物には全く及ばないのですが、それでも、まさか、マジアアトラの不安定で未成熟な美をここまで再現できるなんて!? むちむちボインも、とても良いものですが、ないちちぺったんのわびさびたるや何たる至高!! 未成熟故のいけない感じのエロスがたまりませんわっ!! ……くぅぅ……私でもここまでは難しいと諦めましたのに!!」

 

 ……相変わらず、エロさに脳が極振りされているパンタノペスカ。

 

「……ペスカ」

「ひぃ!? じょ、冗談ですわよ、ベルゼルガ!?」

「……まぁ、お前の趣味はどうでもいいの☆ それで、わかったの?」

「もちろんですわ、イミタシオ様♡」

 

 パンタノペスカはエロいことばっかり目的のように見えるが、その実、観察力が高い。だからこそ、彼女が自身で作り上げる土人形が、まるで本人と見紛うほどにできるのだ。

 そして、観察力が高い、ということは、相手の分析に長けているということだ。

 

 発想力を抜き、純粋な観察力・分析力ならば、今、この場にいる誰よりも、パンタノペスカの能力が高い。

 

「……あの本体、あれを十とすれば、分体の能力は高く見積もっても八程度。『吸収』の能力は確かにありますが、マジアアトラ本人から見れば、半減していると思ってよろしいかと」

 

 パンタノペスカが言外に匂わせる。

 ……マジアアトラに比べれば、敵として値しないと。

 

「……だとすると、マジアアトラは」

「『吸収』の能力を使う場所、条件を制限して、その能力を高めていたのではないかと思われますわ。通常は薄い膜状に展開、常駐……アトラの場合、使用時には、左手に集中、魔法を解析してその根幹から分解。霧散した魔力をより効率良く吸収し、得た魔力を糧に解析結果を自身に最適化して、再構築……そんなところでしょうか。そして、それは彼女たちには無理でしょう。現に、彼女たちはできていない。つまり、簡単にできる技ではないということです」

 

 自分たちの魔法をそういうものだと思って使う。

 

 これは、どうやって手を伸ばしているのか、と同じようなもので、何ら意識するようなものではない。

 

 しかし、何かに向けて手を伸ばす、という動きを工程で分解しようとするならば、視覚で動かす場所を見る、動かす動作を考える、脳から信号を送る、筋肉を収縮させる、関節を動かす、体のバランスを取る、など様々な工程を要する。

 それは、魔法であっても同じこと。

 自然に使える魔法をより高めるために工夫することはあれど、その仕組みそのものを変えることは難しい。

 

(……しかし、アトラに与えられた能力が単に『吸収』だとするならば……)

 

 おそらく、分解、解析、再構築の工程は、『吸収』の能力を彼女自身が、工夫して発展させたものだ。

 

(……アレが『才能』と言ったのもそれが理由か)

 

 通常なら、一朝一夕ではできない魔法の進化。これを無意識領域下まで落とし込むのは、さすがのアトラであっても困難だろう。

 ……つまり、アトラの存在を乗っ取った何者であっても、今ならばまだ、彼女の『才能』を十全に使うことは叶うまい。

 

「……なら、さっさとやっちまうの☆ 無粋な輩は即退場してもらうの☆ ベルゼルガ! パンタノペスカ!」

「任せて、シオちゃん!」

「かしこまりましてよ、イミタシオさま!」

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