「……ベーゼの指示に従うのは癪やけど。アイツがやるいうんやから、ウチらはウチらの仕事をしよか」
一時的にでもマジアベーゼの指揮下に入る、ということは、マジアサルファにとって面白いことではない。
ただ倒す。それだけならおそらく問題ない。しかし、今の状態から確実に救う、となれば中々に難しい。
……だが、正直。サルファはあまりマジアアトラのことを心配してはいない。
「で、でも、サルファ。マジアベーゼに任せちゃって大丈夫なの……?」
マジアマゼンタはその決断に不安があるようで、あわあわ、と心配そうにしている。
「……そうね。ベーゼは確かに強いけど……彼女がアトラを救う意味はないんじゃない?」
マジアアズールの言葉に、マゼンタも、こくこく、と頷いた。
……トレスマジアの側から見たら、問題はそこだ。
マジアトラの行動原理は今のところ不明だが、魔法少女として活動している現状、エノルミータとは敵対関係と見て良い。
倒す、と言うならまだしも、彼女を助けるというのは、エノルミータ側からすれば、一見すると無駄な行為でしかない。
「……意味ならある」
しかし、サルファは断言する。
「意味はあるんや。少なくともベーゼにとっては」
ベーゼは魔法少女と戦うことを楽しんでいる。
彼女の行動を振り返ってみればわかる。
彼女は悪の組織の総帥という立場ではあるが、目に見えて一般人に攻撃をしたこともなければ、世界征服に真面目に取り組んでいるわけでもない。
やっていることと言えば、自分たちと争って、えっちぃことをしてるくらい……。
ロード団との抗争で、街を結果として壊してはいるが、それは彼女たちの……少なくともベーゼの本意ではない。
さて、それではベーゼは何がしたいのか。
エノルミータの行動で迷惑を被っているのは、専ら魔法少女、特にトレスマジアであり、周囲の反応はどうかと言えば……。
『いいぞ! もっとやれ!!』
……まぁ、こんな感じだろう。
トレスマジアの行動には大きな金が動いている。
グッズ販売も、アイドル活動もそうだが、SNSとその広告収入も侮れない。
彼女たちのあられもない姿が晒される度に、莫大な金が動く。
エノルミータの資金源は今のところ不明だが、彼女たちの行動の結果で、一部のそのお金がキックバックされているとしたら、つじつまが合う。
……つまり、ベーゼの目的は、魔法少女にえっちぃことをすること!
(……はるかにも、小夜にもこんなこと言えんなぁ……)
幸い、と言っていいのか悪いのか、認識阻害という魔法があるおかげで、どんだけえっちぃ目にあったとしても、自分たちの将来には(たぶん)影響はない!
……………………………………いや、多少、性癖がねじ曲がったりしているケースもあるので、ないことはないのかもしれないが。
ベーゼの目的(仮)を考えれば、アトラを倒しても意味がない。助けて、虐めて、恥ずかしい姿を晒してこそ意味がある。
あくまで、これはサルファの想像だが、そう大きく外れてはいないだろう、と考える。
「……大体にして、ウチらにアトラを正気に戻す方法ある?」
「それは、ほら、友情とか!」
「……正体も知らんし、基本、ウチらが一方的に助けられてるだけやで? しかも会うたんもこれで四回目やし?」
「……愛!!」
「アズール、それ言うとけば、何とかなるとか思てへん? ……わかったやろ? ウチらには特に手立ては何もないねん。ほんなら、勝算があるいうベーゼに任せた方がマシや」
サルファの言葉にマゼンタは不満そうに頬を膨らませているし、アズールも眉根を寄せている。
……無論、サルファとて、アトラを助けたい気持ちはある。
(……まだ借りもあるしなぁ)
借りっぱなしは好きじゃない。
しかし、だからこそ、より勝算の高い方に譲るというのは、最善の選択だ。
……それに。
「アレ、一人相手にするんも結構キツいで?」
マジアアトラ級魔物一体。
感じる魔力は、少なくとも、最初にアトラを見たときと同等。
魔力の総量だけを見るなら、トレスマジアよりも上だ。
「……でも、やるんでしょう、サルファ?」
くす、と笑ってアズールが一歩前に出る。
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青い巫女服姿となった彼女は、ふわ、と羽衣を舞わせる。
「……当たり前やろ? ベーゼにいいところ取られるんやから、ちょっとは格好いいとこ見せんとなぁ」
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チャイナ服姿となったサルファは、辺りに青白い電撃を纏わせる。
「……二人とも、回復は私に任せて!」
未だ真化に至っていないマゼンタは少しだけ寂しそうな顔をしながらも精一杯に微笑む。
強大な魔力を持つアトラ級を前にしても、トレスマジアの三人には一歩も引く様子を見せなかった。
◇◆◇
(……ベーゼちゃんはやっぱりクソヤバいなぁ……)
完全にブチギレている彼女を見るのは久しぶりだ。
あまりの怒気で、背後の空間が魔力で揺らいでいる様子を見て、レオパルトは、ぽぽっ、と頬を染めた。
(そんなところもすき♡)
戦闘中だと言うのに、まるで緊張感がないが、実際、レオパルトの前には何ら問題となるようなことはない。
『……!!』
マジアアトラを模したその魔物を前にしていたとしてもだ。
「……くぁ」
傍らのネロアリスも、暇、と言いた気に欠伸をしている。
「……相手が本物のアトラだったらなぁ」
それであれば、もう少し……いや、本気を出してもなお危ういかもしれないのだが。
「アリスぅ~、ぱぱっ、と片付けて、ベーゼちゃんに加勢しようぜー」
「……」
レオパルトの言葉に、何でもないことのように、アリスが、こく、と頷く。
『……!!』
そんな二人の様子にアトラ級は怒ったように襲いかかる。
「……『ぶっ飛べマイン』」
しかし、レオパルトは慌てずに、予め進行方向に仕掛けておいた地雷型魔法を起爆して、アトラ級の体を宙に浮かせる。
「……!」
そして、そこには、既にドールハウスを展開して待ち構えたアリスの姿があった。
阿吽。
そう言って差し支えないほどに、彼女たち二人のコンビネーションは完璧だ。
◇◆◇
「アトラってさぁ~、露骨にアリスのドールハウスを警戒してたでしょー?」
アリスのドールハウス内。
にやにや、と笑みを浮かべたレオパルトは、アトラ級を前にして余裕の笑みで銃を構えていた。
「何でかなー、って考えたら、単純な話だよなぁ? 能力が使えなかったら、アトラはここから出ることはできない」
『吸収』は強力だ。チートと言っても良い。
「アリスのドールハウスってさぁ……中ならほとんど何でもできんのよ。ベーゼちゃんなんかダンジョン作ったし? それに比べれば、入ってきた敵の能力の封印って、そんなに難しいことじゃないよなぁ?」
以前、シスタギガントは自分の能力で体を大きくすることによって、内側からアリスのドールハウスを破壊した。
また、ロードエノルメの魔物は、ドールハウスの内側でその数を無数に増やし続けることで、ドールハウスを圧壊させた。
二度も破壊されれば、当然、対抗手段を講じるのは当たり前の話。
一番の問題は、アリスが『おねむ』にならないか、ということであるが。
「……」
アリスはベーゼの影響を多大に受けている。
魔法少女
眠たそうにしているのは、代わりのおもちゃがつまらないからで、彼女の怒りが収まっているわけでは決してないのだ。
「……まぁ、そんなわけで。アタシら全員、お前を許す気ねーから」
ガン、とアトラ級の足に目掛けて、銃を放つと、ぶしゃ、と足が吹き飛んで、その偽りの血がドールハウスの床を赤く染める。
「うわっ……グロっ……アリスー、こっち見んなよ、教育に悪いからなー」
魔力でできているハズなのに、血とか、肉とか、やたらリアルだった。
……が、レオパルトはそんなこと気にしない。
止めを刺すべく、アトラ級の頭に狙いを定める。
……そして、ソレは、嬉しそうに、にやぁ、と笑った。
オリジナル魔法『ぶっ飛べマイン』
レオパルトが任意にしかけることが可能な地雷及び機雷。
死ねボンバーやぶち殺バーストより、威力は低めの浮かし攻撃。
ぶっ飛べマイン → 死ねボンバー → ぶち殺バースト などのコンボを想定。
今回はアリスちゃんとのコンビネーションに使用。