(……クソヤバい)
マジアアトラ級魔物が、死に瀕して笑う様子を見て、レオパルトが抱いた印象はそれだ。
別にアトラ級が脅威となる、となると思っての印象ではない。
頭のネジがどっかに飛んでいったとしか思えないうてなの様子や姉が大好き過ぎてそれ以外心底どうでもいいと考えているつぼみの様子に良く抱く印象だ。
(……あれ? 何だっけ?)
……そう言えば、とレオパルトは、頭の隅に追いやって考えることを止めていたことを思い出す。
『これってたぶん彼女があこがれる身近な存在が中学生であるということからきっと年齢は小学校三四年生くらいなのでこりすちゃんと同学年くらいだと思うけどあの生活能力の高さからすると相当なしっかりもので頭もいいと思うんだよねあとあと身体能力の高さも目立つから運動とか得意かもしれない』
(あぁ……うてなちゃんはかわいいなぁ♡ ……って、そうじゃなくて!)
年齢は、こりすと同じくらい。
生活能力が高い。
しっかりもの。
頭がいい。
身体能力が高い。
加えて、身近なあこがれる存在が中学生。
……で、クソヤバ女。
(………………………………………………『つぼみ』?)
そう意識した瞬間、ぱりん、と何かが砕けるような音がした。
そして、見下ろしたその先にある、マジアアトラの姿の形をしていたハズの何かは、血を流して倒れている
「……うぷっ!」
足が引きちぎれ、抉れた肉とその中にわずかに見える白い骨。妹分の血だらけの姿を見て、レオパルトは込み上げてくる吐き気に、思わず口を手で押さえた。
(……マジアアトラがつぼみ!? いやいやいや!? うそーん!?)
だが、確かに思い当たるフシはある。
つぼみはうてなと話を合わせるためだけに、魔法少女ものの番組は欠かさずチェックしているが、魔法少女そのものにはあまり興味を抱いていない。たまに、うてなとキウィ、それにつぼみが加わってアニメを見ることもあるが、そのとき、どちらかと言うと、つぼみは悪の女幹部を見て、目をキラキラさせていた。
姉は魔法少女に。妹は悪の女幹部にあこがれて。
しかし、姉は、悪の組織の総帥に。そして、妹は、お助け魔法少女に。
まったく自分の希望どおりになってない!
それが姉妹そろって厄介ごとに巻き込まれるとか!
何という不憫な姉妹だろう!
(……アトラがつぼみだって言うなら、ちょっとマズいなぁ)
つぼみのスペックは異様に高いが、その行動原理はうてな第一。
彼女はキウィと同じ、狂信的うてな原理主義者過激派である。
うてなのために生き、うてなのために死ぬ。……殺されたいまである。
キウィがつぼみに関して、うてなLOVEを黙認しているのは、彼女がうてなの妹であることや自分と同志だからだけではないのだ。
……彼女の中の闇は深く、濃い。
そして、そのどろどろとした感情は全てうてなに向けられている。
うてなだけに向けられた感情は、ほかの余分なものを排除しようとすらする。
うてな以外の全てを拒絶するかのように。
以前のキウィであれば、自分を認めない存在を壊してしまいたいと考えていた。
そして、つぼみは、今でも、姉が認めてくれれば、他は全て壊してもいいと考えている。
似たような考えでも、少しだけ異なる……しかし、かつてのキウィと同類。
キウィと違うとしたら……つぼみは、自分の命さえ壊してしまうことを躊躇わない……いや、むしろ、積極的にうてなに殺されたいとさえ考えている破滅願望がある。
もし、仮に……つぼみがマジアベーゼの真実に気づいていたとしたらどうだ?
これ幸いと殺されるために、何か企んでいたとしてもおかしくない。
(……ベーゼちゃんに任せたの失敗だったかも? でも、あのベーゼちゃんには何言っても聞かないだろうし……)
ふむ、と考えるレオパルトにつぼみの姿をした何かは、にやにや、と笑いながら、ずる、ずる、とその体を這わせて近づいてくる。
撃てないだろう、とでも言いた気な様子に、しかし、レオパルトは、はん、と鼻で笑うと改めて、銃を構える。
「……撃てないと思った? 残念でしたー! ……アタシは、ここにいたのが本物だったとしても躊躇しねーよ?」
パンパン、と頭と心臓の辺りを打ち抜いて止めを刺す。
(……間違ってもうてなちゃんに殺させるわけにはいかないしな。つぼみに会ってからずぅっと考えていた。もしかしたら、あるかもしれない未来……アイツがアイツのためにうてなちゃんに自分を殺させようとするなら……先んじてアタシが殺す。それでうてなちゃんに恨まれることになろうとも。憎まれることになろうとも。……お前ならわかってるハズだろ、つぼみ?)
同じ
……ぱん、とキウィは自分の頬を両手で叩いて気合を入れ直す。
「……っし! さっさと行くぞ、アリス! アトラのことをベーゼちゃんだけに任せるわけにはいかなくなった!」
レオパルトはベーゼなら何とかするだろう、とは思っている。
……だが。もし。万が一。そのときが来たのだとしたら……。
(………………………………止めを刺すのはアタシの仕事だ)
わずかに震える手を、ぎゅっ、と握り締めて、決意とともに一歩踏み出した。
◇◆◇
「……ねぇ、ルベル。コレ、ちゃんと効いてるわよね!?」
「効いてる効いてる! 効いてるから手ぇ緩めんな!?」
『フォルティシモ・カノン』は確かに効いている。
アトラ級が身に纏っていた服は既にボロボロで、その平な胸も、意外にむっちりしているお尻も、幼い割れ目も丸出しだ。
何度も吹き飛ばされ、擦り傷だらけになった体は、至る所で、出血をしているような見た目をしているし、左腕は既に別の方向を向いている。
しかし、何度攻撃を受けても、ゾンビのように襲い掛かってくる。
『吸収』の能力は、半減しているようだし、その効率も悪そうだ。結果、通っているダメージの方が多いのは、アトラ級の見た目からも明らかだ。それでもなお、倒すには至らない。
(……魔力量の違いか?)
そもそもアトラ本人の魔力もベーゼ以上……あるいは暴走したときよりも。
その分体、という点を差し引いてもなお、その魔力量は、ルベルブルーメとロコムジカの二人を加えてもまだ届かない。
ただ、行動自体は単純に『黒星』、『黒霆』といったものしか使ってこないため、威力的にはこちらが上だ。だからこそ、ダメージは通っているのだが……。
ちらり、と周囲を見渡せば、レオパルトとアリスの姿は確認できない。おそらくはアリスのドールハウス内に戦場が移動したのだろうと考えた。
シオちゃんズもトレスマジアもまだ戦闘中ではあるが、自分たちだけが遅くなるという結果になるのは……ちょっと情けない。
(……出力をあげるしかない)
ルベルブルーメのものではなく、ロコムジカのものを!
「わりぃ……ロコ」
『影繰り』。ルベルブルーメの得意とする魔法を使って、ロコムジカの足を止める。
「ちょっ!? 何のつもりよ、ルベル!!」
「……仕方ない! 仕方ないんだ!!」
ルベルブルーメはそう言いながら、自分にも同じ言葉を言い聞かせ、ロコムジカの服を脱がせ始める。
「……やっ!? ルベル、こんなとこで……♡」
「……ロコのかわいくて、いやらしい姿……全部、見せてくれ」
スカートを脱がせる。元々下着は履いていない。少し汗で濡れ、また、ふとももの内側に別の液体で濡れている様子がすぐにわかった。
「んんっ♡」
自由を奪われているロコムジカは秘部を隠すこともできず、恥ずかしそうに頬を染めるが、ルベルは更に上着を脱がしていく。セーラー服様のスカーフを解いて、ビキニを外す。
(……あ、これはこれでエロいな♡)
「……ル、ルベルぅ……♡」
とろん、とした瞳で頬を染め、潤んだ瞳をしたロコムジカはその豊満な肉体も合わせっておそろしくエロかった。
「……ロコぉ♡」
ちゅ、とルベルブルーメがロコムジカに口づけ、僅かな口の隙間に舌をねじ込む。
「んんっ!? ……んむ♡ ……ぁ、ちゅ……あむ、えろ……ちゅぱっ♡」
「ん……あぅむ♡ ちゅろ……ん、ふっ……ちゅる、ちゅ、ちゅぱっ♡」
互いに赤くした顔のまま、引き抜いた舌から崩れていく唾液の橋を、うっとりと見つめた。
「な、何のつもりよ、こんなときに」
「……でも、これで、互いに魔力も一段上がっただろ?」
魔力は想いの力に比例する。今まさに、二人は互いに互いを想い合い、その力は普段以上に高まっていった。
「……そうね。じゃあ、決めましょうか。ちゃんと聞きなさいよ、ルベル! 『フィーネ・レクイエム』!!」
鎮魂歌、その終わり。それは、全ての御霊を送るということ。
物悲しげな、しかし、力強いロコムジカの歌声が、ぽよんぽよん、とおっぱいを躍らせながら響き渡り……アトラ級の動きを止めた。
微細な振動とそれで生まれる波、これを魔法で強化し、対象物の中でランダムで強烈に共鳴させ、内側から崩壊させる。
ぷしゅ、と体の至るところで血を噴出したアトラ級は、目から涙のような血を流しながら、恨みがましい顔のまま倒れ、そして、ゆっくり、黒い魔力へと還っていった……。
オリジナル魔法『フィーネ・レクイエム』
声そのものを魔法化した攻撃に加え、音による空気の振動、ロコちゃんが躍ると揺れるおっぱいの振動を魔力で強化して、相手の体の中で互いの振動を共振させて破壊する。
音楽用語的な意味や翻訳的な意味的にはたぶん合ってないので、雰囲気で読んでください。