悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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34 魔法少女、それぞれ……

 シオちゃんズはマジアアトラ級には特段脅威を感じていない。

 

 故に、その戦闘の半分以上は情報収集だ。

 

「パンタノペスカ!」

「承知いたしましたわ!」

 

 突っ込んできたアトラ級を、パンタノペスカの作り出した土壁でガードする。

 動きが止まったところに、土壁をイミタシオが切り倒して、アトラ級に落とした。

 

 がらがら、と瓦礫を崩しながら、アトラ級が再び立ち上がる。

 

(……ふむ。ベルゼルガの『血の舞踏(ブルートダンツ)』よりも、土壁で潰した方が効いているようだな。血液の結晶化と操作の魔力を吸収するより、物質化を伴っているこちらの方が難しいのだろう)

 

 イミタシオが、ちら、とパンタノペスカを見れば、こくり、と頷く様子から、ほぼ同じ結論に至っているのだろうと考える。

 

(……ベーゼなら、質量の多いものを魔物化して、アトラを押しつぶせば、仮に、魔力を吸収されてもその重量で圧殺できる。……しかし、それでは、アトラは殺してしまうか。……さて、こちらはさっさと片づけて、お手並み拝見と行こうか)

 

「……ベルゼルガ、足を止めてなの☆」

「う、うん……シオちゃん」

「パンタノペスカ……わかっているのなの?」

「お任せくださいまし、イミタシオ様」

 

 アトラ級に戦略のようなものは特にない、その莫大な魔力を以て、ダメージを気にせず突っ込み、『黒星』、『黒霆』で魔法攻撃してくるだけだ。

 

 攻略プランが既に出来上がっているシオちゃんズにとっては、やはり容易い相手でしかない。

 

「……死ね」

 

 ベルゼルガの鎌がアトラ級の足に傷を付けるが、それでもなお、アトラ級は魔力の高いイミタシオに導かれるように進んでいく。

 

「……キモ……」

 

 とん、と飛んだベルゼルガがアトラ級の背後からドロップキックをかます。

 

 吹き飛ばされたアトラ級が、イミタシオの方へと吹き飛ばされ、衝突する寸前、イミタシオが後方に後退し……アトラ級が落ちる場所には地面がなかった。

 

 パンタノペスカの魔法による深い落とし穴である。

 無論、このままでは飛び上がってきてしまうだろうが。

 

「『ペインフル#8』」

 

 落とし穴に落ちたアトラ級にめがけて、イミタシオが、痛みを増加する毒を放つ。

 当然、これだけでは意味がない。

 

「パンタノペスカ、やれなの☆」

「はーい、承りまして……よっ!」

 

 土魔法で落とし穴を作り、その分の土を一時的に移動させ、アトラ級の落ちたところで元に戻す。

 

 圧倒的な質量で押し潰され、そして、倍化した痛みの内にアトラ級は滅びることになる。

 

 ずん……、という音で地面が元通りになったのを確認したイミタシオは、アトラ級がどうなったかは既に興味がなくなっており、足早にベーゼたちの戦闘を観戦するため、見晴らしのいいところに移動し始めた。

 

◇◆◇

 

 放たれた『黒星』を例の如く、マジアアズールは、羽衣で一旦は受け流し、しかし、自分にその攻撃を浴びせる。

 

 普段であれば、愛を感じることができるのに、アズールは、まったく愛を感じることができずに不満そうだった。

 

「……まったくもって愛を感じないわ。ベーゼの魔物の攻撃ですら愛を感じるのに」

「何や、アズール……別に痛いのが気持ちええだけとちゃうんかいな?」

「痛いのが気持ち良いんじゃなくて、そこに愛を感じるから気持ち良いのよ♡ その点、これはダメね。零点よ」

「……小夜ちゃん、回復するよ?」

「ええ、ありがとう、マゼンタ」

 

 マジアマゼンタからの回復を受けているアズールをちょっとだけ羨ましそうに見ながらも、マジアサルファは作戦を考えていた。

 

(……アズールにダメージ溜めさせて一気に、が一番効率ええんやけど。チャージできとるんやろか)

 

 できているのだとしたら、問題ないのだが、いつも、愛が、愛を、と言っている彼女は、攻撃の中にある愛を感じとって、ダメージ返還しているのだとしたら、愛を感じないというアトラ級相手では、『愛のアヴァランチ』による反撃はできないかもしれない。

 

 そうなった場合のことも当然のことながら、考慮に入れる必要がある。

 

(防御はアズール、回復はマゼンタに任して、ウチが攻撃か。……相手がアトラの能力もそうやけど、あの身体能力やケンカの技術まで全部使うてくるんなら面倒やな……)

 

 最悪は、接近でガチンコバトルだ。

 タフそうなアトラ級相手でもおそらくは勝てるとは思うが、削りきるには少々時間がかかりそうであった。

 

「『雷霆掌・連』!」

 

 分かれた手甲に雷撃を纏わせてぶつけ、自らも飛び込んで拳とともに雷撃を叩き込む。サルファの連撃。電撃をある程度吸収できたとしても、その後の物理衝撃まではアトラ級には吸収できない。間髪入れず、動きを止めたアトラ級に追撃を行う。

 

「『雷霆掌・重』!」

 

 こちらは連撃ではなく、一撃の重さに重点を用いた、電撃と加速した拳での一撃だ。

 

 本来であれば、魔物程度は一撃で屠り去るほどの威力だが……。

 

(……やっぱり、ダメージは受けてても、そこまで大きくはないか)

 

 にやぁ、と笑みを浮かべ近づいてくるアトラ級は、衣装は焼け落ちている。それでも、何の躊躇もないというのは、やはり魔物だ、ということなのだろう……と思ったが、そう言えば、アトラもあまり気にしている様子がなかった。もしかしたら、そもそもそういった羞恥心が薄いのかもしれない。

 

「……サルファ、変わるわよ。マゼンタに消耗した分の回復をしてもらったら?」

「……せやな。任せるわ。でも、無駄にダメージ食らって、マゼンタに手間かけさせるなや?」

 

 選手交代、とばかりに二人は、タッチをした。

 

「大丈夫、サルファ?」

「ああ、ダメージは全然。でも、やっぱり、魔力の消費がおっきいなぁ……何でかいつもより疲れよるし」

「……………………サルファ、魔力の消費が大きいの?」

 

 サルファを回復しながら、マゼンタは、何かに気づいたように難しい顔をした。

 

「……そうやなぁ……って、まさか!?」

 

 マゼンタの指摘に、サルファは魔力の動きに集中してみる。

 魔力の感知というのは、魔法少女になってから初めて会得した感覚だ。大きい気配を捉えることは難しくないが、隠された魔力や魔力遮断などは通常では発見できない。

 しかし、自分の魔力がどうなっているか、ならまた話は別だ。

 

 集中すればわかる。

 

 そして、その魔力は、普段では気にしないほどの量の魔力が流れ、マジアアトラ本体に向けて、少しずつ流れだしているのだ。

 当然、これが自分だけということはないだろう。

 

 ……ここにいる全員が……いや、アトラ級ですら対象だろう。

 

「マゼンタ……こら、はよ、決着付けんとエラいことになるかもしれんで?」

「……うん、私もそんな気がしてる」

「手段は選んでられへんな……マゼンタはまだ魔力は行けるか?」

「任せてよ!」

「なら、しゃあないな……受け取れや、アズール!」

 

 バチバチ、とサルファが放った雷撃が、アズールを襲う。

 

「えぇぇぇぇ!? サルファ!?」

 

 マゼンタから見れば、味方に何をやっているんだろうと考えて当然だ。しかし、相手は()()アズールである

 

「あふぅん♡ あ、愛、しゅご……ぃ♡」

 

 びりびり、と感電し、一瞬だけ、痛みによる快感でだらしない顔を作るが、サルファの意図を理解した彼女は、その雷撃を受け続ける。

 

「……ふふっ♡ 受け取ったよ、サルファ、マゼンタ! 二人の愛を♡」

 

 アズールの前に大きな魔力のうねりが生まれ、徐々に大きな球を作り……。

 

「「「いっけぇぇぇぇ!! 『マジカルユナイトバースト』!!」」」

 

 三人の力が集まった魔力の奔流がアトラ級に向けて放たれる。

 

 ごぉぉぉ、という大きな音ともに、その奔流はアトラ級を飲み込み……跡形もなく消し去った。

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