(な、なんで……)
ソレは不思議な感覚に苛まれていた。
鞭で打たれ、首を絞められ、縄で縛られ……。
これ以上の苦痛を味わったこともある。だから、痛みも苦しみもソレにとっては、どうということはない。
「……ほぉら♡」
マジアベーゼが鞭の柄の部分で、マジアアトラの身体の秘部を抉るように何度も撫で上げる。湿気を帯びた縄が更に食い込んでいく。
「……ぁ、あぁ……っ♡」
耐え切れず声を上げたそれを、嘲笑うかのような笑みを浮かべて、ベーゼは、ぐり、と鞭の柄を強く押し当てた。
「あぐぅ……!」
びくん、とソレは身体を仰け反らせた後、ぷしゃ、と香ばしい臭いのする液体を噴き出して、ベーゼの鞭を汚していく。
「……ふふっ♡ こんなところで粗相しちゃダメじゃないですか♡」
ベーゼはソレが顔を紅くする様子を見てにやにやしながら、股のところから鞭の柄を離すと、濡れたそれを見せつけるように、ソレの顔に持ってくると、もう片方の手で、それの口を押さえつけた。
何をされるのか理解して、ソレは抵抗する。
「ひゃ、ひゃめ……ん、んぷぅ……!」
抵抗空しく、ソレの口の中に鞭の柄が差し込まれる。
つん、とする臭いと、わずかな塩気。その嫌な感じに、首を振って逃れようとするも、ベーゼが更に柄を押し込む。
ごっ、と柄が喉の奥に当たって嫌な音を立てる。
「んぶぇ!? ぉ、おごぉ……っ!」
「……あなたが汚したんですから、あなたがキレイにしてくださいよ? ほぉら、喉の奥までねじ込んであげますから!!」
「んぉぉ!? ん、んぁ、ぉぇぇ、うぇぇ!?」
ソレの喉の奥まで、鞭の柄が入っていく。反射的に嘔吐感がこみ上げるも、ベーゼはそれを許そうとせずに、更に奥へと、柄をねじ込み、更には、軽く引き抜くのと入れるのとを交互に繰り返す。
じゅぼ、じゅぼっ、と水気のある音が響き、胃からは酸っぱい味のする液体が上ってくる。
「ぉぷっ!? うぇ!? んぉぉ!? んぁぁぁ……!」
ずる、とベーゼが柄を引き抜くと、ソレは、涙で顔を汚し、唾液と胃液を吐き出しながら、げほげほ、と咽る。
(……なんで!?)
……ソレは困惑した。
「……おやぁ?」
ベーゼが、楽しいものを見つけたように笑いを浮かべながら、首を傾げる。
「……これは一体どうしたことでしょう?」
ひゅー、ひゅー、とか細い息をつきながら、ソレはベーゼが自らの秘部に指を這わせていることに気づく。
ぴちゃ、くちゅ、と水音が響いた。
内ももを先ほどの粗相とは別の液体がぐっしょりと濡らしている。
「……触れられれば、多少濡れてしまうのは仕方ないにしても。あなたのコレ……それだけじゃないですよねぇ?」
くちゃぁ、と糸を引くほどの粘液をベーゼが涙の残る顔に擦り付ける。
ぬる、とした感触が頬を撫でた。
「……もう気持ちよくなってしまったんですか?」
にやぁ、と口を歪めて、ベーゼが、くすくす、と笑う。
「五月蠅い!! そんなわけない!! ボクにそんな趣味なんて!?」
……ソレには、確かに、痛みや苦しみで感じるような性癖は無いハズであった。
(なんでなんでなんで!?)
ソレが否定するように叫ぶ。
「……あなたに無くても、あるんでしょう? ……その体に♡」
しかし、ベーゼは笑って、ソレのお尻を力いっぱいに引っ叩いた。
ぱちぃん、と大きな音が響く。
「いっ、いたぁっ! やめっ!」
(どうしてどうしてどうして!?)
「やめませぇん♡」
ぱちぃん、と再び大きな音が響き、ソレはその
「……やっ、ぃや……っ♡」
(……なんでどうしてこんなに気持ちいいの!?)
今までに味わったことのない快感に、ソレは頭がおかしくなりそうだった。
痛いのは痛い。
苦しいのは苦しい。
それが気持ち良いわけない!
頭ではそれを理解していても、体がそれを許さない。
ぱちん、ぱちん、とお尻を打たれる度にソレは嬌声を上げる。
「あっ……あぅ♡ はっ……ぁんっ♡」
すり、とベーゼが少しだけ腫れたソレのお尻を撫で上げる。
「……おかしいとは思っていたんですよ。マジアアトラならもっとスマートに私と戦えたハズなのに、彼女、意図的に私に隙を見せていた節がありましたので」
「……な、何を……?」
ソレはマジアアトラの戦いを知ってはいるが、彼女はそれほど致命的な隙を見せていたわけではない。
……いや、彼女がベーゼと遊びたいと考えていたことは承知してはいたが……。
(……ま、まさか、あの小娘……!?)
思いついたその結論に、ソレは顔を青くした。
「……あの子、ドMなんでしょう? ……いえ、実年齢を考えれば、無意識なのかもしれませんけど……それにしても、随分とまぁ……感度がよろしいようで♡」
むにゅぅ、とお尻を全力で掴まれて、ソレの頭の中をひりひりとした痛みと、ぞくぞくとした快感が駆け巡った。
「はっ……あっ、あぁぁぁぁ♡」
(柊つぼみ!? あの小娘、シスコンと破滅願望だけでは飽き足らず、被虐趣味まで!? どれだけ業が深いんだ!?)
……ソレに目をつけられたのは、やはり必然だった。
抱えている闇があまりにも深すぎる。
……才能があり過ぎた。嫌な方面にも!
「……さぁ、もぉぉっと、気持ちよくなりましょう……?」
耳元でベーゼが囁く。
甘い誘惑。ここで何も考えず、その快感に身を委ねることの何と甘美なことか!
……これまで散々、自分がやってきたことをなぞられているようだった。
だからこそ、ソレがここで堕ちるわけにはいかなかい。
みし、と体を縛っていた縄が軋みを上げる。
「……………………………………………………………………ころす」
……俯いた顔で、ソレは呟いた。
提示された楽な道、快感の先を選ぶのは、ソレの矜持が許さない。
ぶちぶちぶち、と体の自由を奪っていた縄を魔力で強引に強化した肉体で引きちぎる。
体の自由を取り戻した、ソレは、ふぅぅぅ、と大きく息を吐き、天に向かって咆える。
「…………殺すころすコロス!! お前ら全員皆殺しだぁぁぁ!!」
魔力の嵐が吹き荒れ、大きな雫をつくる。
どぷん、と黒い魔力が雫が零れ落ちて、辺りを濡らすと、ぐるぐる、とソレを中心に渦を巻く。
そして、ソレの身に纏っていた服と背中の翼が溶け、闇色の宝石へと変わった。
闇色の宝石は、一層、昏く輝き、魔力を集め始める。
自らの内にあった魔力。マジアアトラの集めた魔力。倒されたマジアアトラ級の魔物の魔力。結界内に満ちた魔法少女たちの魔力。
それらを全てを飲み込んで…………。
「……ボクは願いを叶えるんだぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ。
自らの故郷。枯れていく魔力。にもかかわらず、魔力を吸い上げてしまうという自らの能力。故に排斥され、しかし、死ぬこともできず、水晶へ封じられ。それでもなお、能力を止めることはできない。故郷は衰退していく。その様子を指を咥えて見ることが嫌で、やがて多くの魔力を得るために、別の世界へ食指を伸ばし、自分の……世界の延命を図るため、数多くの
……だが、それが、ようやく終わる。
『柊つぼみ』という自らをも上回る類稀なる才能を得たことで。その体を得たことで。
完全に自らの能力を御し、莫大な魔力を得て。
万能なる力をもって、故郷の救世主となる。
……そのために、未開の地で、誰が何人死のうと知ったこっちゃない!
魔力は集い、種となる。
そして、根を張り、葉を生やし、やがて、つぼみとなる。
「あっはははははハハハハハHAHAHAHAHA!!」
哄笑し、その力を振るうべく、つぼみは、花開こうとして……。
「……………………………………………………は?」
……しかし、ぐしゃり、とつぼみは手折られた。