悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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38 閃き(テーン)

 ふぅ、と耳に息を吹きかけられた。

 

(……な……んで?)

 

 レオパルトが答えを探すよりも早く、マジアアトラの手がレオパルトの体に伸びる。

 

 ……むにゅう。

 

「なっ!?」

「あ、すごい、おっきぃ♡」

 

 むにゅむにゅ、と背後からレオパルトの身長に比して大きい胸を揉みしだかれる。

 アトラがその指を動かす度にレオパルトの柔らかい胸はその指を包み込むように形を変える。

 

「こ、このっ!? ……んぁん……っ♡」

 

 レオパルトはアトラを引き剥がそうと抵抗するが、遠慮なく胸を揉んでくるアトラの指から、魔力を吸い上げられるとともに、じわじわとこみ上げてくる快感に力が抜けていく。

 

「……レオちゃんから……離れなさい、この変態!?」

 

 マジアベーゼが怒りで顔を歪ませ、『メナスヴァルナー』を放つが、次の瞬間にはアトラの姿はそこにはない。

 

「……嫉妬かな、ベーゼ様? だいじょーぶ、だいじょーぶ♡ 私はベーゼ様一筋だよ? ちょっと遊んじゃうかもだけど♡」

 

 くふふ、という笑いとともにベーゼの背後に現れたアトラが、今度はベーゼの胸を揉む。

 

「なっ!? このっ!?」

 

 ベーゼが体を捻って鞭を振るおうとすると、やはり、その姿はすでにそこにはなく、いつの間にかネロアリスの側に現れて、彼女の体を蔦で縛り上げると、ぐりぐり、とその頭を撫でている。

 

 アリスは不服そうにアトラを睨む。

 

「やだなぁ、ネロアリス。そんなに睨まないでよ? ちゃんとあなたにもしてあげるから♡」

「……っ!」

 

 アトラはアリスの胸に正面から優しく触れる。

 

 むにむに、と軽くアリスの胸を揉んだ後、自分の胸を、ぺたぺた、と触って、ずぅぅん……と一人落ち込んだ。

 

「………………………………同い年くらいなのにぃ!?」

 

(……あ、実は気にしてたんだな、つぼみ……)

 

 アトラの正体を知るレオパルトは、その様子に苦笑するが、ベーゼは怒りにその身を震わせた。

 

「…………………………ふざけているのですか、マジアアトラ……?」

 

 ぴり、と空気が張り詰める。俯いたベーゼの表情はレオパルトからは見えないが、怒りのあまり表情が無くなっているであろうことが想像できた。

 

「やだなぁ、ベーゼ様♡ いつもあなたがやっていることじゃないですかぁ♡」

 

 ……まぁ、実際、普段、ベーゼが魔法少女にやっていることと大差はない。むしろ優しいくらいである。

 

 あえて、それを指摘しながら、アトラは煽るように、にたぁ、と笑う。

 

「……それなのに私はダメだって? 私だって楽しく遊びたいんだよ? あなたみたいに……あなたたち()♡」

 

 言いながら、アトラがアリスの服を引き裂いた。

 アリスの白い素肌と幼い胸が露わになる。

 

「……っ!?」

「……そう言えば、ネロアリスだけ、あまりこういう目には遭ってないね?」

 

 くす、と笑ったアトラは、アリスの桜色のぽっちを、くり、と指で弾く。

 

「!?!?」

 

 その行動にアリスが目を白黒させていると、アトラはより楽しそうに笑う。

 

「……ふぅぅん? あんまりこういう経験ないみたいだね♡ いいよ、私が教えてあげる♡ ……あーむ♡ ……ちゅっ、ちゅ……ぇろ♡」

 

 アトラはアリスの桜色のぽっちを吸い、そして舐め上げる。

 

「っ!? ……ぁっ……♡」

 

 か細くアリスが声を上げた瞬間、ベーゼの魔力が弾けた。

 

「……アリスちゃんに何してくれちゃってるんですかっ……!?」

 

 一瞬で間合いを詰めたベーゼが、鞭を振るって、アトラがいた場所を薙いだ。

 

「……ナ・ニ、してんのよ?」

 

 全く別の場所に現れたアトラが、ベーゼに向けて中指を立てた。

 

 ……ぷち、と何かがキレる音がした。

 

「……マジアアトラぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ベーゼが叫び、アトラに向けて吶喊する。

 

 アトラは心底楽しそうに……嬉しそうに、ソレを受け止めた。

 

「あっははははは! やっと本気になってくれたね、ベーゼ様! そうこなくっちゃ! さぁ、私と遊ぼう!? 私と楽しいことしよう!? 私と気持ちいいことしよう!? そしてそしてそして、一緒に殺し愛ましょう!?」

 

 激情に駆られたベーゼの魔力と哄笑を上げるアトラの魔力がどす黒く吹き上がる。

 

 莫大な魔力を発現させるマジアベーゼ。

 それを喰らい、自らも魔力を練り上げていくマジアアトラ。

 

 この状態。この状況に至っては、二人以外の誰もそこに加わることは不可能だ。

 

(………………やられた)

 

 その光景を見て、独り、レオパルトは歯噛みした。

 

(……つぼみの計算通りだってことか!!)

 

 レオパルトとベーゼに悪戯を仕掛け。

 アリスを嬲り。

 更にはベーゼを煽るような言動。

 

 それらはベーゼを怒らせる布石だった。

 

(……あの蔦……ルベルの影の魔法……)

 

 アトラの現在の植物系魔物のような姿が彼女の想像の範囲内だったとは思えないが、しかし、彼女はその特性を十分に活かしていた。

 

 更にはルベルブルーメの影の魔法。

 接触した影の中を移動することも可能なその魔法は、細かい蔦を伸ばした今のアトラからすれば、自分の手の届く限り、何処にでも移動可能な単距離転移魔法に近い。

 

 レオパルトが知る限り、アトラは直接的にルベルブルーメの魔法を吸収してはいない。

 

 だが、『マジアアトラは吸収した魔法を解析して再構築する』というその条件は自分たちの想定の話に過ぎない。

 

 ……アトラのことだ。自分の能力の真髄を隠していたとしても何の不思議もない。

 

 だから、彼女が、この場にある者のどの魔法を使ってきたとしてもおかしなことではないのだ。

 

 ……いや、おそらくは。それらの魔法を使うこと。それすらも……。

 

(……丁度いいから使ったってだけ)

 

 あるなら便利だから利用するが、無くても別に支障がない。

 

 ……柊つぼみならそうする。……できる。できてしまう。

 

 伊達に生まれてからずっと、ウソをつき、役割を演じて、普通の振りをして、世間を欺き続けてきてはいない。

 

 特に今の彼女は全開だ。自重という言葉を無くした彼女は、おそろしくヤバい。

 

(どうする!? 今のベーゼちゃんならアトラを殺せてしまう! アイツ、どこまで気づいて、どこまで望んでいる!?)

 

 マジアベーゼの正体が『柊うてな』であると知られていたなら最悪だ。

 アトラはどんな手を使っても自分を殺すために何でもやってくるだろう。

 

 それに気づいていなかったとしても、マジアベーゼに殺して欲しいと思っているなら、幾分マシなくらいで、何をやってきてもおかしくない。

 

(……どっちも最悪だなぁ!?)

 

 何て厄介な妹分なんだ、とレオパルトは頭を掻きむしった。

 

 これがどうでもいい他人であったら、悩むこともなかった。

 しかし、彼女はうてなの妹で、将来の自分の義妹だ。

 恋敵でもあるが、彼女が欠けた未来は見たくない。

 

 どうせ見るなら、うてなとつぼみ、そこに自分が加わって三人で笑っている未来が良い。

 

 ……うてなを泣かせるわけにはいかないのだ。

 

(……マジアアトラがつぼみだって教えれば、ベーゼちゃんは止められる)

 

 いくら激怒状態のベーゼであっても、自らの妹を傷つけたいハズもない。せいぜいで後でお尻ぺんぺんするくらいだろう。つぼみにとってはご褒美にしかならないような気もするが。

 

(……でも、それじゃあ、アトラは止まらない)

 

『影繰り』。その魔法を使ってでも、自分自身にベーゼを殺させようとすらするだろう。

 

(マジアベーゼの正体がうてなちゃんだって教える? それは逆効果だろうしなぁ……)

 

 むしろ、嬉々として殺されに来る。

 

(……くそ、アトラを……つぼみを止める方法が浮かばない!)

 

 そもそも、うてな第一主義のつぼみがマジアベーゼという存在にに興味を持っていたという事実すら驚愕なのだ。

 

(……本能か? ……本能かもなぁ……)

 

 病的に、狂気的に姉が大好き過ぎるつぼみである。認識阻害の効果を透過して、無意識領域下で、そこに姉を感じていたとしてもおかしくはない。

 

 しかし、だとすれば、彼女の興味を引けるものは、柊うてな(マジアベーゼ)以外ない。

 そして、当の本人は、現在、彼女と戦闘中。

 

 ……何もできるわけがない。

 

「……おぅ、こらぁ、レオパルト!? 今どないなっとるんや!? 何やねん、あの終末戦争みたいなザマは!?」

 

 マジアサルファのガラの悪い言葉に、ベーゼとアトラの戦闘に目をやれば、どっかんどっかんすごい音と、どす黒い魔力が周囲に満ちて、体に悪そうな状態になっている。

 

「……アレって、アトラとベーゼ……?」

 

 マジアアズールは、その様子に眉を顰めている。

 

「ふぇぇぇ……すっごいね!」

 

 マジアマゼンタは感嘆の声を上げながらも、若干顔を引き攣らせた。

 

「……さっさと止めないとどっちか死んじゃうの☆」

「……シオちゃん以外はどうでもいい」

「何てことを言いますの、ベルゼルガ!? 美少女は世界の至宝ですわよ!? 欠けることは許されませんわ!?」

 

 イミタシオ、ベルゼルガはあまり結末には興味なさそうだが、パンタノペスカ一人は、ハラハラ、と戦いの行く末を心配している。

 

「……うわ……何よ、この状況……」

「……やべーんじゃねえのか、さすがに……」

 

 顔を紅くしたままのロコムジカとそれに寄り添う様にしているルベルブルーメ。

 

 自分の仲間、そして、ライバルたちが勢揃いだ。

 

 レオパルトは、彼女たちの顔を見渡して……。

 

(…………………………お?)

 

 ………………………………テーン、ときた。

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