悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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04 黒歴史

 これから公園に行く、というこりすちゃんたち三人と別れて、私は一人で散歩を続行中だ。

 

 ぽてぽて、と歩いていると近所の神社に到達。

 

(あー……神社って何か久し振りー……)

 

 最近は初詣くらいでしか来ないからね! パワースポット巡るのは嫌いじゃないんだけど。

 

 幸いにして、財布も持っているので、お賽銭もある。

 

 最近はスマホがあれば買い物できるから、お財布持ってないことも多いしねー。

 

 とんとん、と階段を上がって、鳥居の前で一礼。

 

 誰が見咎める、というわけでもないが、作法に則った方がご利益ありそうなので。

 

 参道の脇に寄って歩き、手水舎に向かう。

 柄杓で水を掬ったら、左手、右手の順で柄杓を持ち替えながら手を洗い、右手に水を取って、軽くしゃがみこみながら、口を濯ぐ。

 柄杓を立てて、柄の部分に水が来るようにしながら洗って、元の位置に柄杓を伏せて置いた。

 

 社の前まで行き、鈴を鳴らす。

 からぁんからぁん、という音を聞きながら、邪念まみれの心を落ち着ける。

 取り出したお賽銭をそっと賽銭箱に入れて、姿勢を正す。

 

 ……まずは、二礼。

 そして、二拍手。

 

(……おねぇのデートが上手くいきますように!)

 

 もっと自分ファーストな願いもあるけれど、あんまり欲に塗れていると神様も呆れるだろう。これくらいならまだセーフのハズ……(その裏にある自分の欲望は置いといて)。

 

 ……最後に深々と一礼。

 

「……ふぅ」

 

 ああ、心が洗われるようだ!

 洗われてもすぐ汚れちゃうけどね!

 

「……ふふっ」

 

 くす、という笑い声が聞こえて、私は思わず振り返る。

 

 巫女姿の『水神小夜』ちゃんが、こちらを見ながら、にこにこ、と微笑んでいる。隣には、境内の掃除を手伝っているのか、竹ぼうきを持っている『花菱はるか』ちゃんと『天川薫子』ちゃんも一緒だった。

 

 ……そう言えば、ここは小夜ちゃんのお家の神社だったか?

 

「こんにちは、はるかちゃん。小夜ちゃん。薫子ちゃん」

 

 私は会釈するようにしながら三人に挨拶する。

 

「こんにちは、つぼみちゃん!」

「こんにちは。随分、熱心だったみたいね?」

「こんにちはぁ。何ぞ悩みがあるんやったら、聞いたってもええよ?」

 

 姉は三人と同級生だし、はるかちゃんと小夜ちゃんは昔から面識もある。薫子ちゃんはどうやら転校生のようだが、ここ最近は、姉たちと一緒に顔を合わせることも多い。

 

「あはは。悩みじゃなくて、おねぇ、今日、キウィちゃんとデートだから。上手くいってるといいなぁ、って」

 

 私がそう答えると、小夜ちゃんは、私を眩しそうに見つめる。

 

「……姉想いなのね」

 

 にこ、と笑みを浮かべる様子も、凛としていて格好良い。

 これでスタイルも良いなんて正直反則だと思う。

 

「……そういや、昨日、教室で何や楽しそうにしてはりましたなぁ」

 

 薫子ちゃんのおっとりとした話し方は見た目に反して艶っぽい感じがする。二人に比べれば、背は低いがそれでも可愛いよりもキレイ、という印象が先に来る。

 

「……で、デートかぁ……♡」

 

 はるかちゃんは、ぽっ、と頬を染めながら、ちょっと羨まし気な顔をしている。容姿はともかく、はるかちゃんは二人に比べると幼い印象で、年下の私でも可愛いと思ってしまう。いつも太陽のような笑顔を浮かべているのが特に印象的である。

 

「つぼみさん、私たちも今から休憩だから、良かったら、一緒にお茶でもどう?」

「あー……んっと」

 

 小夜ちゃんの誘いに、私は少し逡巡する。

 

 こりすちゃんたちと比べれば、彼女たちとの関係性は薄い。

 ……とは言っても、最近はあまりそうでもないが、昔は遊んでもらったこともあるし。

 

 幸いにして、特に予定もないし。

 

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 そう答えた私は、三人に続いて社務所へとお邪魔する。

 

 程なく、小夜ちゃんが、楽しそうにしながら、お茶を淹れてくれた。

 

「それにしてもつぼみちゃんとこんな風にお話しするのは久しぶりだねぇ!」

 

 まぁ、はるかちゃん本人と遊んでいたのは、ホントにちっちゃいときだからね……。彼女の妹の三つ子、なつな、あきほ、みふゆとは結構よく遊んでいるが。

 

「……昔は結構境内で遊んでいたのに、最近はめっきり来なくなりましたし」

 

 お茶を啜りながら、そう懐かしむように語る小夜ちゃんは、何と言うか、おばあちゃんっぽい。

 

「……なんや? 二人して、そんなに昔から知り合いなん?」

 

 薫子ちゃんは、二人と私を見比べながら、怪訝そうに首を捻る。

 

「うてなちゃんちは結構ご近所だし」

「つぼみさんは、うてなさんと違って活発だから、色んなところで遊んでいましたし」

 

 小夜ちゃんは、ちょっとジト目。

 

「何と言うか、野生児、って感じだったね!」

 

 はるかちゃんも何だか苦笑気味。

 

「……その節は、ご迷惑おかけして大変申し訳ありませんでした!」

 

 いやぁ……いい感じの滝があるからって、子供だけで遊んじゃいけないですよね。

 

 自家製イカダ(と言う名の丸太)で、川下りして、滝に落ちて、溺れかけたと言ったら、そりゃあ笑えない。まさか、あんな形で生まれて初めて救急車に乗ることになろうとは思わなかったよ。

 

 でもさすがの私も少しは大人しくなりましたよ?

 

「……最近のつぼみちゃんは、おねえちゃんっぽくなったよね? ウチの妹たちの面倒もよく見てくれるし。こりすちゃんにも世話焼いているみたいだし?」

 

 いや、はるかちゃんには負けると思うよ?

 

 なつなたちは一人一人ならともかく、三人揃うと破壊力は三倍じゃなくて、三乗だからね? 致命的に何かしでかす前に、先を読んで動かないとエラいことに……!

 その点、本物のおねえちゃんは、ごくごく自然に、楽しそうに片づけちゃうんだからスゴイ。はるかちゃんのおねえちゃん力は私も見習いたいと思っている。

 

「……つぼみさんを見ていると、大人になるってこういうことなんだなぁ、と感じます」

 

 ほぅ、と小夜ちゃんは感慨深げに目元を拭っている。

 

「……あんたはん、えらい言われようやなぁ……一体、何したん?」

 

 興味深げな笑みを浮かべる薫子ちゃんに、はるかちゃんと小夜ちゃんが私の黒歴史を暴露していくっ!

 

 ……やめてぇぇ!?

 

◇◆◇

 

 四半刻ほど、はるかちゃんたちにいじられつつ、お茶とお菓子をご馳走になった私は、涙目になりながらも、鳥居をくぐってから、最後に一礼をした。

 

(……くすん)

 

 精神的に凌辱された気分である。

 別にいい格好をしたいわけじゃないが、薫子ちゃんは、昔の私を知らないのだから、そっとしててくれてもいいんじゃないだろうか。

 

 はるかちゃんも小夜ちゃんも結構容赦がない。

 

 薫子ちゃんも薫子ちゃんで面白がって聞きたがるし……。

 

 こういうとき、年下は不利だ。だって、相手の方が色んなことを覚えてるし。ちっちゃいころのやらかしなんて言われないと思い出さないよ!

 お化け屋敷であきほと腰を抜かした話とか、みふゆとお嫁さんごっこしてちゅーした話とか、甘酒で酔っ払って、なつなとマッパで畳の上で寝ていた話とかまだかわいい方だよ!

 

 ……境内で私が立ちションしてた話なんて、私覚えてないし、そんなの一体、誰得なんだよっ!?

 

 復讐したくても、おねぇじゃはるかちゃんたちのそういう話は知らなさそうだしなぁ……。

 

「……くそぅ」

 

 こういうときは、トレスマジアがエノルミータに虐められている動画でも見て、心を落ち着けるのだ!

 

 公衆の面前で、でっかくなって大開帳した『マジアマゼンダ』。

 植物の魔物に縛り上げられ、マジアベーゼに乳ビンタされる『マジアアズール』。

 タコの魔物に触手責めされて顔をぐちゃぐちゃにした『マジアサルファ』。

 

 ……ううん、いいね!!

 

 自分より下がいると思うと安心するよね!

 

 ……それに。

 

 爛々と目を輝かせて、彼女たちを甚振るマジアベーゼの姿にはマジで濡れる♡

 

「……んっ♡」

 

 ……ああ……ダメ……そういう気持ちにならないように気分転換でお出かけしたのに。

 

「……は……っ……ぁ……♡」

 

 ……盛り上がってきちゃうじゃないか。

 

 そうは言っても、路上で盛るわけにもいかない。

 

(……あ♡ ちょっと、そこの茂みに……)

 

 ……境内で立ちションか。私、そっちの気もあるのかな……♡ 

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