マジアアトラの対応をトレスマジアに任せたマジアベーゼは、後方で何やら画策しているらしいレオパルトたちの元に下がってきた。
「……ベーゼちゃん♡ よかったぁ……間に合った~」
ベーゼは、ぴょんこ、と飛びついてくるレオパルトを抱き留めた。
「レオちゃん……何か、作戦があるとか……正直、今のマジアアトラは危険です。何かしら対処は必要ですが、私には何も思い浮かばなくて……」
アトラの体を奪った何かから、アトラを引き戻すことはそんなに難しいことだとは考えていなかった。
あのマジアアトラが成す術もなく、体を奪わせるわけがないと信じていたからだ。
トレスマジアが戦っていたならば、アトラは何も反応しなかったかもしれないが、自分であれば、何かしらの反応があるとは思っていた。彼女は、ベーゼに執着している様子だったから。
……まぁ、まさか、性的な執着だったとは考えもしなかったが。
「……あの子であれば、体を乗っ取った相手を普通に倒して戻ってくると思っていたんですけど」
予想の斜め下に来た。闇堕ち暴走状態になるとはベーゼは夢にも思わなかった。
「……いや、戻ってきたじゃん、ふつーに」
しかし、レオパルトの感想は違うらしい。
きょとん、と彼女は首を傾げた。
確かにあの状態は、一見すると闇堕ち暴走状態に見えたが、戦ってみれば、良くわかったのだ。
「……レオちゃん、あれが普通だと?」
「……そっかぁ~……さすがのベーゼちゃんもわかんないか~……」
うんうん、とレパルトは一人頷く。
それだけアトラは……つぼみは完全に猫を被っていたということだ。
多少、小生意気で。
多少、シスコンで。
多少、変態ちっくではあったが。
しかし、それでも普通の範疇内に収まる程度には、自分を演じていた。……律しきっていた。
今の彼女は、この機に乗じて、自分の悲願の一つを叶えようとしているだけに過ぎない。
暴走闇堕ちに見えるのは、一般的な価値観で彼女を見ていることが原因だろう。
同じ側に立ってみれば、その行動は、暴走でも何でもない。
「……アトラは正気だよ、ベーゼちゃん。あの子は、他の人たちとは世界の見え方が違うんだ」
かつての自分と同じように。
レオパルトは人知れずその言葉を飲み込んだ。
「……だから、無理矢理こっちの世界に引きずり込む!!」
ぎゅっ、とレオパルトが手を握りしめ、不敵な笑みを浮かべる。
……それができるのは、自分だけだと大きく笑う。
「さぁ、見せてやんよ、アトラ! 悪の組織はこっからだ!」
悲劇的な世界なんて許してやらない。
……ここから始めるのは、エロくて、背徳的で、冒涜的な……とびっきりの
「…………え、え!? えぇぇぇぇぇ…………」
……作戦の概要を聞かされたベーゼの困惑する声が響いた。
◇◆◇
ぺろ、と唇を舐めてから、私はマジアマゼンタを地面に横たえた。
マジアアズールはともかくとして! マゼンタには別に隔意はないし、それはマジアサルファも同様だ。アズールはともかくとして!
(……後は、シオちゃんズとエノルミータか。思ったよりトレスマジアに時間を取られた)
特に、苦戦することもないと思っていたマゼンタが思いのほか健闘した。
「……論外、と言ったことだけは訂正するよ、マジアマゼンタ」
彼女は確かに姉好みの魔法少女だった。
姉が推すだけの価値のある魔法少女だった。
……きっと、これでもっと強くなってくれるだろう。
エノルミータとの闘いももっとずっと面白くなるハズだ。……姉が喜んでくれるといいのだが。
(……次はシオちゃんズかな。やっぱり、エノルミータは最後に食べないと♡)
あまりにおいしそうなので、少々つまみ食いしてしまったが、やはりコースはちゃんと味わわなくてはならない。
最初は前菜、次にスープ。……お行儀の悪いは私は、メインもデザートにも手を出してしまったけど。ここで初心に帰ることも必要だろう。
(……イミタシオか……どうやって虐めようかな♡)
見た目こそ、ネロアリスより幼いが、アレはどうせ姿を偽っている類だ。「なの☆」とか言う口調が大変痛々しい。……もしや、おばはんだったりするんだろうか。
……三十代の主婦があんなことやってるんだったら笑えるが。
(……ま、精神的未熟さが残っているから、せいぜいで、大学生くらいかな? 厨二病が卒業できていないのはいただけないけど……いい声で鳴いてくれるなら許してあげるよ♡)
……あの『毒』の能力も面白い。
ベーゼ様が媚薬でトロ顔になっていた姿は眼福だったし、評価しても良いが、どうせだったら、レオパルト辺りとちゃんと絡ませたらいいのに!
……この辺、わかってない感が強すぎて気に入らない。
再構築自体は問題ない。実験ついでに、アレよりも強力な媚薬を使って、イミタシオを快楽堕ちさせるのは、割と楽しそうだ。
「……くふふっ♡」
敵としては興味のない相手ではあるが、レオパルトが何やら作戦を立てているらしいし、それの準備が終わるまで、丁度良い暇つぶしくらいにはなるだろう。
あの嘘くさいにやけ面を快楽でぐちゃぐちゃにして、自ら奪ってくれるように懇願させれば、どんな泣き顔を見せてくれるのか。
張り付いたような気持ちの悪い笑みの目の前で、愛する人を淫らに喘がせ、初めてを奪ってやれば、どんな絶望の顔を見せてくれるのか。
……そして、エロいことしか考えてないヤツも、自分が対象となったときに、いったいどんな声で鳴いてくれるのか。
「……楽しみ♡」
……笑みが零れる。
自分を抑えなくて良い。それだけでこれほどまでに心躍る。
(……それだけは感謝してやるよ、クリーチャー!)
その願いを踏みにじり、闇に還してやったクリーチャーに感謝の言葉を捧げる。
何かご大層な願いがあったようだが、
どれだけ崇高な想いがあったところで、行為を正当化できるわけもない。
あのクリーチャーは汚いことをする覚悟はあったようだが、それ以上に汚いことをされることは埒外だったようだ。
……クリーチャーの癖に甘過ぎる。
相手が汚い手を使ってくるなら、それ以上のド汚い手で潰し、それが無理なら、盤外で刺し、それすらもできないなら、盤面ごとひっくり返す。勝てば良かろうなのだ。
アレは、私のそういう考えを理解仕切れなかった。私たち
魔力。それがあれば、世界一つ救えるんだろう?
……なら、私のちっぽけな望みを叶えることなんて容易いことだ。
「……くふっ♡ くふふふふ♡」
この世界に『私』という存在を刻み付け、滅茶苦茶にされて、ぐちゃぐちゃにされて、殺されたい。
……本当は、おねえちゃんにして欲しいけど、優しすぎるおねえちゃんにはきっと無理。
だけど、激情に駆られたベーゼ様ならできるだろう。
魔法少女を手にかけること。それ自体はベーゼ様の主義に反するだろうが、ライバルが、仲間がぐちゃぐちゃに凌辱された姿を見れば、その考えも変わるだろう。
イミタシオを犯し、ベルゼルガを壊し、パンタノぺスカを辱め。
ロコムジカを穢し、ルベルブルーメを汚す。
ネロアリスを散らし、レオパルトを手折り。
……そして、今は、眠らせただけのトレスマジアを順番に。
マジアアズールを虐め、マジアサルファを責め。
純真無垢なマジアマゼンタを私色に染め上げて。
それらを見せつけられたベーゼ様はどんな怒りを、憎しみを見せてくれるだろうか。