自分で言うのもなんだけど。
「……えっへへぇ♡ う~て~な~ちゃ~ん♡」
「も、もう……キウィちゃん……」
キウィがうてなの腕に抱きつくと、うてなは困ったように眉を八の字にする。……しかし、口元には若干の笑みが浮かんでいる当たり、本当は嬉しい、という感情が隠しきれていない。
クラスメイトは特に突っ込みはしないものの、『ああ、やっぱりそういう関係?』と生温かい視線を送る。
……気づかないのは当事者と一部の鈍い人たちだけだ。
「今日の晩御飯なぁにぃ?」
「……何だろうねぇ? つぼみは前日の余りの食材から次の日の献立予想しても、その予想を良い意味で裏切ってくるし」
「う~ん……ママからうてなちゃんの家に入り浸るのはいいけど、ごはんは一緒に食べたぁい、って言われても、つぼみのご飯には抗えないんだよなぁ……」
……ちなみに、母の苦情に対するキウィの回答はこうだ。
うてなの家でつぼみの作った夕食
カロリーがやべぇことになっているが、キウィの体型はあまり変わらない……いや!
(……キウィちゃんのお胸が成長しているような……?)
細い腰はそのまま。増えた栄養はそのままおっぱいに吸い取られ、元々大きいキウィの胸は更なる成長を向かえている!!
(……ま、まぁ、あの子の成長期はこれからだし……)
うてながちらりと自分の胸を見下ろすと、以前よりもカップ数の上がったおっぱいがぷるんと震える。
キウィほど栄養を摂っているわけでもないが、何故か最近、成長が著しい!
(……キ、キウィちゃんとつぼみが揉んでくるからなかなぁ?)
女子としては、嬉しいことではあるのだが……何故だろう、素直に喜べない。
「……んふ~♡ どうする、うてなちゃん? ホテル行く? 行っちゃう?」
ぽふぽふ、とキウィがその大きい胸をうてなの腕に押し当てて、悪戯っぽく微笑む。
……ごく、とうてなの喉がなるが、ぶんぶん、と頭を振って、その誘惑を断ち切る。
「……キ、キウィちゃん、そ、そういうのは、まだ、ちょっと……」
……とは言いつつも、一線を越えていないだけで、既にそれなりのことは普段からしているわけだが!
「……んふふ♡ 分かってるよ、うてなちゃん♡ あたしは待てる女だよ?」
キウィは唇に人差し指を当てながら、婀娜っぽく微笑む。
(……そして、積極的に奪いに行く女でもあるっ!!)
うてながキウィのスキンシップを嫌がっていないことは、他の人の目から見ても明らかなのである。
待つ、と言いつつ、積極的にスキンシップを取り、うてなの理性が陥落するのを待っているのは、ある意味、待つ女ではあるのだろうが。
うてなから少し顔を反らし、キウィは、くふ、と悪そうに微笑む。
(……あたしの計画はじゅんちょー……あたしはいつでもバッチ来いだよ、うてなちゃんっ!!)
急なときでも安心! キウィは下着に手を抜かない! いつ見られてもいいように、毎日、えちぃ勝負下着である!
……そして、そういうことの先輩であるネモたまを見習って、替えの下着もばっちりだ! うてなの分も!
そんな内心を察してか、うてなは苦笑しつつ、少しだけ冷や汗を流した。
(うぅ……っ! キウィちゃんの好意が色んな意味で痛いよっ……!)
うてなとしては、まだ自分の気持ちに決着を着けられていない。
大事な親友であるキウィのことはもちろん好きだが、それが恋愛対象としてなのかは未だに自信がないのだ。
……そも、同性同士の親友と恋人の境目は果たして何処にあるのか。
当然、個人で異なるであろうが、うてなとしてはキウィとそういうことをするのは嫌じゃない。求められるなら、身を任せることに抵抗はない。
しかし、うてなは事あるごとにホテルへ連れて行こうとするキウィほど、キウィにそういうことをしたいという欲求はそれほど大きくないのである。
……ただし、それは魔法少女にあれこれしたいという欲求に比して、のことであるが。
どきり、とすることはあるし、むらっ、とすることもある。
だが、魔法少女をイジめたいと思うその情動に比べれば、うてなにとっては我慢できるレベルの些細なものなのである。
魔法少女に向ける情欲とキウィに向ける感情はまるで異なるのだが、対人関係の経験値が少なすぎるうてなはそこのところをうまく分別できていない。
……それ故に、迷い、戸惑い、自信が持てない。
そして、もう一つ。
もし間違っていたら……? そう思うととても怖いのだ。
自分が傷つくことはいい。だが、自分に好意を向けてくれているキウィを傷つけてしまうことが、自分たちの関係が壊れてしまうことが、とてもとても恐ろしい。
(……ごめんね、キウィちゃん。でも、ちゃんと……答えは出すから!)
うてなはそう決意して、キウィと帰路を歩いた。
◇◆◇
うてなが玄関を開けると、つぼみの靴ともう一つの靴があった。
つぼみは行動的なので、外に遊びに行くことは多くても、家に友達を連れてくることは稀なことだった。
珍しい、と思いながらも、見覚えのある靴に納得した。
「……あ~、こりすが来てんのなー」
キウィも気づいたのか、そんな声を上げた。
つぼみとこりすはクラスこそ違うものの、同じ学校の同学年。
元はうてなの友達として、つぼみはこりすと出会ったわけだが、二人の仲は良好らしい。
活動的なつぼみと無口なこりすは対照的ではあるが、意外にも相性は良いようだ。
……もっとも、あの二人を見ていると、つぼみが独り言を喋りまくるやべぇ人に見えるのはご愛敬だが。
うてなは家に上がって、ちらり、とリビングを見てみるが、二人の姿はそこにはなかった。
(……つぼみが人を部屋に入れるなんて、本当に珍しい……)
姉であるうてなから見ても、数えるほどのことである。
多趣味多才なつぼみは、そのとき興味のあるものをメインに据えて、部屋を頻繁に模様替えする。そして、興味がなくなったものも、後で使うかも? とか言って、取っておくので、部屋は結構物で溢れていて雑多だ。
本人はあまり意識していないのだろうが、その雑多具合をあまり人に見られたくないのかも? と考えていた。何なら、うてなが部屋に入るのも嫌がるくらいだし。
キウィと二人、階段を上がる。
(こりすちゃんがいるんだったら、私たちも混ぜてもらおうか……)
……そんなことを考えて、うてなは特に気にもせず、つぼみの部屋のドアノブを捻って……。
……ガチャ、とドアを開けた。……開けてしまった。
「……つぼみ~? こりすちゃん、来てる……の……?」
大きく開かれたドア。
うてなはつぼみの部屋の様子を見て、固まった。
うてなの肩越しに部屋を覗いたキウィも、固まった。
「…………あ」「…………っ」(///▽///)ポッ
……こりすにキスをしながら、下半身に手を伸ばしているつぼみ。
とびっきりの悪戯を目撃されたような感じで、やっべ、という感じで顔を硬直させていた。
……恥ずかしそうに顔を紅くしながらも、とろん、とした目で、どこか悦んでいる様子に見える半裸のこりす。
恥ずかしそうにはしながらも、どうしたの? と言わんばかりに、きょとん、とした目を向けてくる。
「……な、何してるの、二人ともぉぉぉぉ~~~~!?!?」
……うてなの悲鳴が響いた。