悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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06 ファーストコンタクト

 私はパラシュートなしでスカイダイビングをしている。

 

「いっやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……!?」

 

 し、死んじゃう!? 潰れたトマトみたいになって、地面のシミになっちゃう!?

 

 ……ど、どうすれば!?

 

 頭の中では走馬灯がフラッシュバックする。

 

 私を抱いて嬉しそうに笑うおねえちゃん。

 慣れないのに、精いっぱい私の手を引いて、遊んでくれたおねえちゃん。

 手作りのぬいぐるみをプレゼントしてくれたおねえちゃん。

 

 ……そう言えば、こういう普通の姉妹らしいこともしてたな。

 

 ここ最近だと、姉と一緒に布団に入って、寝ぼけたフリして、胸揉んだり、おっぱい枕したり。

 一緒にお風呂に入って洗いっこして際どいところを攻めたり。

 姉の着替えを隠し撮りしたり、と。

 

 …………うん。まぁ、姉は世界一かわいいよ!!

 

「……うへへ♡」

 

 いやぁ、死が間近に迫っているというのに、姉を思い浮かべると思わず、にやけちゃいますな!

 

 ……だが、感覚的にわかる。

 

 これが、今一番必要なことなのだと!

 

 変身したときと同じ。体の奥から何かが溢れ出てきて止まらなくなる感触!

 

「……真化(ラ・ヴェリタ)!!」

 

 コンパクトから黒い奔流が溢れ出て私を覆い尽していく。

 

 私の望む姿に。彼女たちと戦うのに相応しい姿に。

 

 バサリ、と黒い翼が音を立てた。

 

◇◆◇

 

「ぶっ殺したらぁぁぁぁ!!!!」

 

 ぶちギレモードで真化したレオパルトが突っ込んでくる。

 

「な、何でいきなりキレてるのぉぉ!?」

 

 マジアマゼンタは何とレオパルトの攻撃を避けながら、空を舞う。地面はレオパルトの攻撃で爆発が上がっている。

 

「……レオちゃーん……!」

 

 マジアベーゼは彼女の様子をおろおろしながらもフォローしようとしているのか、支配の鞭(フルスタ・ドミネイト)で近くの植物を魔物化させている。

 

「……一度ならず二度までも……! てめぇらの血は何色だぁぁ!?」

 

 血の涙を流している様子は、マゼンタから見ても可哀そうになるほどだ。

 

 ……自分たちは何かしたのだろうか?

 エノルミータの反応があるから現場に急行してきたのだが……。

 

「……マゼンタ、私たちは私たちのやるべきことをやりましょう」

「せやなぁ。面倒なことはアイツら片付けてから考えればええんと違う?」

「そ、そうだね」

 

 マジアアズールとマジアサルファの言葉にマゼンタは頷いて、改めてレオパルトの方に目を向け……。

 

「遅ぇぇぇ!! 滅殺光線シュトラール!!」

 

 黒い破壊の光線がレオパルトから放たれる。

 

「ちっ!」

 

 サルファがマゼンタとアズールを庇う様に咄嗟に前に出て、障壁を展開。

 

 そのわずかな時間でアズールは真化しようと……。

 

「……(ラ・)……っ!」

「……おっと、させませんよ?」

 

 しゅるしゅる、と蔦が一瞬の内にアズールを拘束する。そして、その蔦はマゼンタとサルファにも襲い掛かる!

 

「……んぐ……っ!」

「いやぁ!?」

「……くぁっ!?」

 

 マゼンタに比べて、アズールとサルファの拘束は念入りだ。真化、という切り札を残した彼女たちは危険、という判断なのだろうが。

 

 ……何ともマジアベーゼ()()()()()

 

 普段の彼女であれば、嬉々として真化する状態を()()()、その姿を舐るように眺めて楽しそうにしているくらいなのに。

 

「……レオちゃんが激おこですからねぇ。あまり私の趣味に付き合わせるわけにもいかないので」

 

 そう言いながら、くすくす、と妖艶に笑うベーゼは、とても楽しそうに縛り上げられたマゼンタたちを見る。

 

「ベーゼちゃん、ありがとー♡ すきぃ♡」

 

 マゼンタたちを拘束して、取り合えず無力化したことで機嫌を良くしたらしいレオパルトがベーゼに抱き着いている。

 

「さて……レオちゃん、好きにしていいですよ?」

「いいの? やったぁ☆ とりあえず、剥いちゃえ!」

 

 わきわき、と指を動かしながら、レオパルトが悪戯めいた笑みを浮かべて、近寄ってくる。

 

 マゼンタは前に、廃墟でマジアベーゼとレオパルトに責められたことを思い出し、ぎゅっ、と目を瞑った。

 

 そして、息がかかる程に近くに来たレオパルトの気配を感じ……。

 

 

 

 

 

 

 ……バサリ、という羽音とともに、大きい魔力が落ちてきた。

 

 マゼンタたちと同じふりふりの服。二対の黒い翼を一度大きくはためかせると、それはきらきらと残滓を残して消えていく。

 

「レオちゃん、警戒を!!」

 

 一早く異常に気付いたらしいベーゼの緊張した声に、レオパルトも戦闘態勢を取った。

 

「失せろや、魔法少女!! 滅殺光線シュトラール!!」

 

 相手が何かも確認せず、しかし、魔法少女と断定したレオパルトは有無を言わさず、必殺の黒い破壊光線を放つ。

 

 しかし、それは、その少女がかざした手の平に吸収されていく。

 

「なっ!?」

 

 ぎょっ、としたレオパルトが、それでも危険を感じて、後ろに飛び退くと、そこには一陣の黒い光が迸った。

 

「……ちっ!」

 

 ぴょんぴょん、とレオパルトは少女から距離を取る。だが、少女はそれを確認するや、黒い光をマゼンタたちに向けて放ち、その拘束を断ち切った。

 

「……っのやろぅ!」

 

 ……これで状況はレオパルトたちが不利になる。

 

 トレスマジアの三人はほとんど戦闘をしていない状態でベーゼに無力化されており、その魔力は未だ健在。むしろ、大技を放っているレオパルトが一番消耗しているくらいである。

 

 ……だが、この状況に埒を開けるのだとしたら、目の前の少女を倒すのが一番である。それを本能的に察したレオパルトは屈み込み、近距離で『死ねボンバー』を食らわせようと力を溜める。

 

 しかし、そんなレオパルトの前に、すっ、とベーゼが立ち少女を眺める。

 

 ……まるで、獲物を品定めするように。じっとりと。足の先から、髪の毛の先に至るまで。

 

「……レオちゃん、退きますよ」

「でも、ベーゼちゃん!?」

 

 食い下がるレオパルトに、ベーゼが見せたのは笑み。

 

 にたぁ、と口の端が大きく歪んでいる。

 

「退きますよ?」

「……う、うん」

 

 強い口調で再度言われれば、レオパルトも、しょんぼりした感じで怒気を収める。

 

「……私の名前はマジアベーゼ。エノルミータの総帥です。貴女の名前を伺っても?」

 

 恭しくカーテシーをしながら、ベーゼが少女に問う。

 

「……………………アトラ。……マジアアトラ」

 

 その黒い少女はそう名乗った。

 

 それを聞いて、ベーゼは満足そうな笑みを浮かべた。

 

「……それでは、マジアアトラ。またお目にかかる日を楽しみにしていますよ」

 

 くすくす、と楽しそうにしたマジアベーゼは、少しだけ不満そうなレオパルトを連れて、開いた黒いゲートの中に姿を消していった。

 

 マゼンタは、はっ、としたようにアズールとサルファの様子を確認する。

 

(大きなケガはないみたい。よかったぁ……)

 

 ほっ、と一息ついてから、どうやら助けてくれたらしい、少女、マジアアトラに小走りに駆け寄っていく。

 

「ありがとう! えっと、アトラちゃん、でいいかな? 私はトレスマジアのマジアマゼンタだよ!」

「……まぁ、助けなんかなくても、何とかできたけどなぁ。とりあえずおおきに」

「こら、サルファ! ……ごめんなさい。助かりました。ありがとう、マジアアトラ」

 

 どうやら同じ魔法少女らしいと思われる()()()()()()()()のマジアアトラにマゼンタたちは比較的親しげに声を掛けるが……。

 

「……………………………………………………足りない」

 

 マゼンタたちをちらりと見た彼女はそうポツリと呟くと、マゼンタたちに背を向ける。

 

「……トレスマジア。私はあなたたちと馴れ合うつもりはありません。……私の目的はエノルミータです」

 

 ふぁさ、とマジアアトラの背に黒い翼が現れると、それを羽ばたくようにさせながら、彼女は空に舞った。

 

「え!? ちょっと!?」

 

 マゼンタが更に声を掛けるもののマジアアトラはマゼンタたちに面白くなさそうな視線を向けると、そのまま飛び去ってしまった。

 

「……あ、あれぇ?」

 

 ……ファーストコンタクト失敗。

 コミュニケーション能力には自信があったマゼンタは半ば無視されたような状態にちょっとだけ涙目になった。

 

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