風呂上り。
「「……んくっ、んくっ、んくっ……ぷっはぁ~!」」
私とキウィちゃんは冷たく冷やしたミルクを一気飲みした。
風呂上りはやっぱ、これよな!
牧場から直接取り寄せている濃厚牛乳は、砂糖が入っているわけでもないのに、甘く感じる。
風呂上りに冷たい物はあんまりよろしくないらしいけど、汗をかいたり、別の液体を出したりして失った栄養分を補給しようと体が欲しているから仕方ないよね!
「……つぼみ、白いお鬚がはえてんぞ?」
「キウィおねえちゃんもね?」
お互いに鼻の下に牛乳の跡をつけながら、にひひ、と笑い合う。
そんな私たちを姉が少しだけ不思議そうに眺めていた。
そして、何か言おうとしつつも、くすり、と笑って口に出すことをやめた。
……まぁ、何となく言いたいことはわかる。
『姉妹みたい』。そんな風に思って、しかし、それを口にするのは無粋と思ったのだろう。
私とキウィちゃんは性格的にも性質的ににも似ているところが多々あるし……。
何より、未来の義姉妹だからね!!
姉もそんな未来をそこに見たからこそ、私たちを微笑ましく見ているのだ。
「…………くぁっ……」
大きな欠伸をしたこりすちゃんが、目をしぱしぱさせながら、軽く目を擦って、ソファに座っている姉に、ぽすん、と寄り掛かった。
「……あっ、こりすちゃん、おねむ……?」
まだ、辛うじて寝落ちはしていないが、夢の世界に羽ばたくのも近い頃合いだ。
(……こりすちゃんは健康的だなぁ)
私や姉は趣味に没頭していると日付をまたいでから寝るのなんてざらだが。
「こりすちゃん、歯を磨いて、お布団行こう?」
ててっ、とこりすちゃんに近づき、その手を取ると、眠そうにしながらも、私にしなだれかかるようにしながら立ち上がり、一緒に洗面所へと向かう。
お客用の使い捨てハブラシを一つ取り出して、ミント味の歯磨き粉を付けて、こりすちゃんの小さいお口に突っ込むと、その辛さのせいか、少し驚いたように目を開いた。
「……っ!」
ぷく、と頬を膨らませたのは、せっかく気持ち良く寝れそうなところに水を差されたからか、それともミント味が気に入らなかったのか……どっちかと言うと、後者っぽい。
「ほらほら、ちゃんと磨いて~」
しゃこしゃこ、と私がハブラシを動かすと、こりすちゃんは不承不承といった様子で自分で歯磨きを開始した。
その横で私も歯を磨く。
歯を磨きながらも、とろん、とした表情で落ちそうになっているこりすちゃんのサポートをしつつ、歯を磨き、口を濯ぐ。
ついでに、こりすちゃんにも水を口に含ませる。
「はい、ぐちゅぐちゅ、ぺーってして? ……あーんってして口の中見せて?」
……あ~……こりゃあんまり磨けてないなぁ……仕方ない。
私はこりすちゃんの手を引いてリビングに戻ると、ソファに正座して、こりすちゃんの頭を自分の両膝の間に乗せる。
「は~い♡ こりすちゃん、歯を磨いてあげますからね~? あ~んってお口開けててね~?」
……こんなことしてたら、姉たちの視線がすごいことになってるけれども。
こいつら、何やってんだ、という姉の割とドン引きしている視線と。
……うわぁ、という呆れたようなキウィちゃんの視線。
でも、仕方ないじゃない? 放っておけないし……。
こりすちゃんの口に歯ブラシを突っ込むと、優しく、丁寧に歯を磨いていく。
くしゅくしゅ。しゃかしゃか。仕上げはつぼみちゃ~ん♪
「……はぁぁぁ……つぼみはそういうところだよ……」
「……あ~、あ~……完全に甘やかしちゃって……あたしはどうなっても知らんからな~……」
姉二人が何か言ってるけど、聞こえないフリで。
こりすちゃんは私の妹分でもあるんだから、甘やかしちゃってもいいじゃない?
……あれ? でも、これは姉と言うよりも、母っぽい……? まぁ、いいか……。
「…………はい、キレイに磨けました。こりすちゃん、口濯いでね~、自分でできるかな~?」
こくり、と頷いたこりすちゃんが、再び、洗面所へ、ぽてぽて、と歩いていった。
しばらくして、戻ってきたこりすちゃんが戻ってくると、改めてソファに座った私の膝を枕にして、ご満悦になった。
……ん~! かわえぇ!
思わず撫でる。
むふーっ、とこりすちゃんは更に満足そうだ。……でも、このまま寝ちゃいそう……。
「……そろそろ、お布団に行こうか、こりすちゃん♡」
「♡」
……ここだけ、聞くと凄い意味深だけど、特に深い意味はない。
……ないんで、あの、おねえちゃん……睨むのやめて……?
「つぼみは、こりすちゃんと一緒のお布団じゃダメだからね……?」
笑顔だけど、圧の強い姉。
……う~ん、姉は夕方の件を引きずり過ぎだと思うの。
いくら私でも姉の部屋で姉もいる中で、親友にえっちぃことはしないよ? ……姉とキウィちゃんなら吝かではないが。
「……おねぇこそ、キウィおねえちゃんと一緒だったら、えっちぃことするんでしょ?」
「し、しないよ!?」
「「……しないの~?」」
くすくす、と笑みを含んだ私とキウィちゃんの言葉が被る。
「……こりすちゃんは、私とベッドで! キウィちゃんはつぼみとお布団で! それでいいでしょ!?」
顔を赤くした姉が、強権発動してそのように決定した。
まぁ、順当かな……お風呂と同じ組み合わせだしね。
「……実はおねぇがキウィおねえちゃんと一緒に寝ると我慢できそうにないだけだったりしてね……?」
私が、ぼそり、と呟くと、キウィちゃんは気づかなかったが、どうやら姉は気づいたようだ。
……私と目線を合わせないように、明後日の方向を向いている。
(……また日和ったんだね、おねぇ……)
私とこりすちゃんがいるというシチュエーションの悪さがあるとは言え、一緒のお布団でらぶらぶできる貴重な機会だったのに……自らそれを手放すとは……。
……いや、ある意味、自制したとも言えるのか。
姉も、止まらない、止められない、とそう思っているのではないだろうか。
私は、ちらり、とキウィちゃんに目を向ける。
当の本人は気づいていないようだが、姉の心は既に決まりつつある。
……勇気がないとも言えるし、大事だからこそ慎重に考えているとも言える。
……でも、キウィちゃんの恋が成就するのは、秒読み段階だ。
……そして、私の夢も。
◇◆◇
四人で姉の部屋に移動する。
眠そうなこりすちゃんを姉がベッドに誘導すると、こてん、と横になった彼女は気持ちよさそうに目を瞑っている。
「……う~ん、やっぱりこりすちゃんはおねむか~」
せっかくのお泊りなので、パジャマパーティーと洒落込みたかったのだが。
……とりあえず、パジャマなこりすちゃんはレアなので、写真でも撮ろうっと♡
はるかちゃん辺りは「きゃ~♡ かわいい♡」って喜びそうだし。それ以外の人たちもこりすちゃんの天使な寝顔にはほっこりですよ?
カシャカシャ、とアングルを探りつつ、写真を撮っていると、姉は苦笑していた。
「……勝手に他の人と共有しないようにね?」
「え~……これは共有したくなるかわいさだけどなー」
「……わかるけど」
くす、と笑みを浮かべた姉が、ベッドに入りながら、毛布を掛けて、こりすちゃんの頬を、ぷに、と突く。
口をうにゅうにゅさせながら、眉をしかめたこりすちゃんが寝返りを打ち、姉に抱き着くと、安心したように笑顔になる。
あ~、かわええ♡
……これには姉も、でれっ、とした顔になる。
……キウィちゃんはちょっと歯ぎしりしているが。
「……ところで、あの、キウィちゃん……それで寝るつもり……?」
風呂上りは、私が引っ張り出してきた姉のパジャマを着ていたキウィちゃんだが、姉の部屋に入ると、彼女は下着姿になった。
「だって、暑いし?」
よっこらせ、と布団に横になったキウィちゃんがそう答える。
エアコンはつけているけれども、設定温度は高め……少なくともガンガンに冷やすようなことはしていない。暑いというのはわからなくもない。
……そして……。
「私は気にしないからいいよ!」
お布団でキウィちゃんの素肌に触れられるのは、私にとってはウェルカムだ!
わ~い、と私も布団に入って、キウィちゃんの腕に抱き着く。
「……つぼみ……わかってるよね……?」
笑顔の姉。
……いや、そんな圧力かけなくても、抱き着いたりする以外は何もしないよ?
「もう♡ おねぇったら、うらやましいなら素直にうらやましいって言えばいいのに~♡ ……今からでも変わろうか?」
きひひ、と私が笑うと、姉は顔を赤くすると私に背を向けた。
「……だ、大丈夫……!」
あ~いろいろ葛藤しているであろう姉の表情を想像するのも楽しいなぁ♡
悔しがってる? 嫉妬してる? それとも何か想像して他人様に見せられない顔してる?
どんな姉もかわいらしい♡
……まぁ、でも今は……。
「んぁ? 何だよ、つぼみ?」
今、私の腕の中にあるキウィちゃんも楽しまないとね♡
挿絵はPixAI Harukaモデル。
キウィちゃんはLoRa使用。
LoRA:Araga Kiwi - (Mahou Shoujo ni Akogarete) XL / Pony / Illustrious