私たちが降り立ったのはパンダ公園である。
……幸いにして人気は少ない。と言っても、全然いないわけでもない。
「エノルミータだぁぁぁ!? あ、でも、Atraもいる!? サインくださいっ!?」
……この街の人たちってすごいたくましいよね……。
私はアリスちゃんを降ろすと、どこからともなくサイン色紙を取り出した私たちよりも年下の少女の頭を撫でつつ、書きなれないサインを描く。
「……はい。たぶん、戦闘になるから危なくないように避難してね?」
きゃー、と喜ぶ彼女と握手をしつつ、ばいばい、と手を振る。
……ファンサービスは大事!
そんな感じで私が群衆は散らしつつ、アリスちゃんが結界の準備をしている。
「さて……っと。アリスちゃん、心当たりある?」
私の言葉にありすちゃんは、ふるふる、と首を振った。
彼女にも心当たりがないということは、この街で死闘(笑)を繰り広げている私たちとは別勢力ということだ。
ロードエノルメが『魔法少女狩り』を行っていたことがあるが、それはあくまで当時のエノルミータの勢力範囲内の話。
悪の組織も魔法少女にも一応縄張りようなものがある。
不可侵……とまでは言わないが、縄張り以外には手を出さないと言うのが、暗黙の了解である。
何故かと言えば、概ね担当している悪の組織対魔法少女の構図は互角……一進一退を繰り返しているのだ。自勢力範囲内で新規メンバーを加入させるなどするのはともかくとして、均衡を保っている状態から外に手を出せば、均衡は一気に崩れるだろう。
互いに同盟勢力を広げる程度の動きだったとしても、最終的に待っているのは、大規模な戦闘で互いに潰しあうという結果になる。
また、魔法少女にしろ悪の組織にしろ、その行動規範は大きく異なる。
ロードエノルメのように真面目に世界征服を考えている者も入れば、地域密着型の悪の組織もあるし、ベーゼ様の如く、魔法少女を愛でるために悪の組織をやっている場合もある。
魔法少女だって、悪の組織を改心させたいと考えている者もいれば、『見つけ次第ぶっ殺!!』と考えている者だっている。
そんな十人十色の各勢力が、協調路線を取れるだろうか。ロード団とエノルミータの抗争のように、悪の組織同士はもちろん、魔法少女同士の抗争が起こる可能性もある。
……そうなってしまえば、収拾がつかなくなる。
そして、大規模な争いになることは、関係ない一般市民への影響も大きいし、最悪は
これは、魔法少女側も、悪の組織側も……そして、この絵図を描いた者たちも望まない。
だからこそ、管轄区域外には、原則不可侵を徹底しているのだ。
(……それを知っていての干渉だとしたら、少々面倒臭いことになりそうだね)
そして、もっと面倒になりそうなのがもう一つ……。
(……そりゃ、こっちも来るよねぇ……)
幸いにして数は一つ……戦意の高そうなこの感じ……。
「……マジアサルファか」
相手が彼女だったのはまだマシかもしれない。トレスマジアの中では、一番裏のことも知ってそうだし? 仮に知らなくても、はんなり笑顔で黙ってくれそうだし?
隠し事ができないマジアマゼンタはアウト。正義感の強すぎるマジアアズールはおととい来やがれ。
エノルミータは今更だし、シオちゃんズは……うん、まぁ、なんだ……難しいことは大体、イミタシオ任せだし……裏の話とか大好きでしょ、たぶん。
「……数的には三対三。相手が何をしに来たのか、余裕を持って聞けそうだね」
……個人的にはアリスちゃん一人でも完封できると思うけども。
「……なんやぁ? 何でアンタはんら二人だけやねん?」
「……あまりごちゃごちゃ来られても困るんだけど?」
「そらそうやけども……一番最初に来そうなベーゼは何しとんねん?」
まぁ、魔法少女が来ているのであれば、ベーゼ様が一番最初にかっ飛んできそうではあるが、サルファの問いかけに、アリスちゃんが首を振った。
……知らない、ではなく、来れない、の意でのものだが……。
「……チッ、アズールも来れんからなぁ」
おや? 意外にもサルファはアリスちゃんが何を言いたいかわかったらしい。
「……マジアアズールは補習でも受けてるんですか? 優等生面のクセに……」
……まぁ、私は大体わかってるんだけどね? サルファの情報管理がどんなものかとカマを掛けてみる。
「さぁて? ……それよりアンタはんらは仲ええなぁ?」
はぐらかしつつ、こちらのことを探りにくるサルファ。
……嫌いじゃないよ、そういうあなたのことは。
「一緒に仲良くしてもいいんだよ、マジアサルファ?」
くふ、と私が笑うと、サルファも表情に笑顔を張り付ける。
「……それもええかもなぁ。まぁ、でも、まずは……」
「「……あっちからやろ?」」
サルファの言葉を先読みして、呼吸を合わせて同時に同じ方向を向く。サルファがちょっとだけイラついた視線を送ってきた。……私にセリフとられたと思った? それとも、読まれたことに対する不快感? ……両方かな、これは。
私たち二人を見ながら、くすり、と笑い、アリスちゃんは一足先に戦闘モードへと切り替えている。
いつものネコのぬいぐるみにライドオンだ!
赤、青、緑の眩い光線を描きつつ、魔法少女が迫ってきていた。
三人揃ったような色違いの衣装……騎士服、とでも言ったらいいのだろうか?
鮮烈な赤色の髪と衣装。パッと見はショートに見えたが、後ろ髪には細い尻尾が見える。
透き通るような青色の髪と衣装。毛先まで艶やかな長髪と意思の強そうな瞳が印象的だ。
枯葉色の髪と緑の衣装。肩までかかった髪がくるんとカールしている。そして、貴重なメガネ枠!
……パンタノペスカ? あれは残念エロメガネという生物なので、カウント外である。
「……見つけたっ! 悪の組織!!」
そう言った彼女たちは、すぐに戦闘態勢に入った。
迂闊に攻めに入らなかったのは、私たちを警戒してのことだろうが……。
「……ったく、コイツらどこに目ぇついとんねん! ウチはどう見ても魔法少女やろがい!」
「私は?」
「アンタはんのは……どっちとも取れるなぁ!? ……ネロアリスも!」
私の衣装は、魔法少女っぽいけど、わかってないと悪の女幹部っぽくも見える。何故って黒いから。
対してアリスちゃん。……極端な露出があるわけでもなく、服は白と水色基調のアリスモチーフ。普通の魔法少女と見られてもおかしくない。
加えてサルファ。彼女のお腹の黒さとか、物騒な武装とかは、魔法少女らしくはないが、一応、魔法少女である。
「
にやぁ、と私は笑みを深くした。……彼女たちの状態は推して知るべし、って感じだ。
「……マジアサルファは緑のを。アリスちゃんは赤いのを。私は青いのを相手にします。色々お話したいので……そうですね、半殺しくらいで♡」
「物騒なやっちゃなぁ……まぁ、ウチに異論はない」
通常であれば、拒否してもおかしくない提案に、サルファは即座に頷いた。
彼女たちは
「……それにしても、ネロアリスは『アリスちゃん』なのに、なんでウチは未だに『マジアサルファ』やねん」
「あら? 呼びましょうか、『サルファちゃん♡』って」
「気色悪いわぁ……サルファでええよ」
「では、遠慮なく。……サルファは可能な限り話しかけて情報聞き出してください」
「まかしときっ!!
サルファが真化して、緑色のに吶喊する。本来なら様子見とかするんだろうけど……相手の能力など知ったことかとばかりに突っ込んでいく。……まぁ、大丈夫でしょ。相性の悪い相手だったとしても押し切れる程度の能力もあるし。
「アリスちゃんは適当に遊んでていいよ」
「……っ!」
こく、と頷いたアリスちゃんは、一番相性が悪いであろう赤いのに、ぬいぐるみに乗ったまま攻撃を始めた。あれ、一応、元はぬいぐるみだから、火は相性悪いとは思うんだけどねぇ……。
……まぁ、それで丁度良い、って言うか……仕方ないよね……アリスちゃんが本気になった時点で
私はむかつく
……まぁ、君はアレよりは慎ましいので手加減はしてあげるよ!
イメージはレ〇アースの三人組ですw