『英霊』。
これの話は言わなくても大体皆わかってるので、改めて言うことはない。
私が共通していると思ったのは、再生魔法少女にしろ、英霊召喚にしろ、莫大な魔力を用いて、生前の彼女たちを再現するという部分である。
後者は聖杯を起動するためのエネルギーとして召喚されているが、だとすれば、前者は何かということになる。
ここには霊脈などの外部から大きな魔力を得る術はなく、再生魔法少女は無駄に魔力を消費した、と言えなくもないが。
……私が彼女たちを魔力に還すことまでセットにされているとしたら、何某かの意図がある可能性がないとは言えない。
……利用されているのだとしたら、面白くないな……。
「……アリスちゃん、こっちはしまっといて」
……いらなくなった魔法少女しまっちゃおうねぇ☆
「……っ」
眠そうにしていたアリスちゃんが、私の言葉で何かを取り出した。
……はて? 適当なドールハウスに収納してくれればよかったのだが……。
……何かでてきた……ピンク色の動物……動物でいいのかな……? の、ぬ、ぬいぐるみ……で、いいんだよね……?
ソレは一体だけではなく……。
しまっちゃうよ~♪
どんどん増えていって……。
しまっちゃうよ~♪♪
妙に耳に残るボイスで歌を口ずさみ……。
しまっちゃうよ~でゅ~わ~♪♪♪
……どこかに彼女たちをしまってしまった……。
……………………私は何も見なかった! 何も見なかったんだ!!
サルファだって死んだ目で何も見なかったことにしてるもん!!
(……なんておそろしい……おこちゃまが見たらトラウマになっちゃうよ……っ!!)
……いや、正直、私でもトラウマものなのだが。
彼女たちは本当に無事なのだろうか……もしかしたら、この場で還した方がマシだったかもしれない。
……ま、まぁ、彼女たち、人格はあるようでない、謂わば精巧に作られた人形の魔物のようなものであるからして……何が起こったところで、ねぇ?
「……問題は、彼女たちの後にいるモノが何を考えているか、ですね」
「……せ、せやな」
私とサルファの中では先ほどのことは無かったことになっている!
「『魔力』の回収が目的なんやろ? そんなら、できるだけ大きく長くウチらが争っている方が利があるっちゅうわけや。これもウチらを煽っとるんとちゃうの?」
「ふむ……煽り、ですか……」
悪の組織と魔法少女の戦闘がマンネリ化するのは確かにマズいだろう。
クリーチャーどもの魔力回収へ支障をきたす上、こちらの世界の資金源となるアイドル活動やらグッズ販売などにも影響が出る。
大衆は飽きやすい。同じことの繰り返しでは、徐々にファンは離れて行ってしまう。
だからこそ、ちょっとしたスパイスは必要なのは間違いないが……。
「……だとすれば、今、一番、熱い私たちに絡んでくる理由が薄いですね。良くも悪くも、今、世間で一番目立っているのは私たちでしょうし」
アイドルとしてのトレスマジアとシンガーソングライターとしてのAtra。
年末の歌番組出場確実というくらいには売れている。
また、こっそりと『歌星ぱある』で、エノルミータも注目を集めており、世間が私たちを見る目は熱い。
今の私たちであれば、余計なことをしなくても、それなり以上に売り上げを伸ばせるし、魔力にしたって埒外の魔力を誇るベーゼ様もいるのだ。
少なくとも、他の地域に比べてテコ入れが必要な状態とは思えない。
……特殊性があるとしたら。ベーゼ様や私の暴走が起こった、というくらいか。
暴走の結果得られる魔力がどれ程になるかはわからないが、おそらく一時的に大きな魔力を手に入れることはできたとしても、長期的に見れば、だらだら戦わせた方が結果、得られる魔力は多くなるだろう。
クリーチャーは自身が救世主になるべく、一度に大きな魔力を手に入れようとしていたのだろうが、アレらの世界線では、必ずしもそれがベストではないだろう。
(……ヴェナさんもクリーチャーと同じ考えか? いや、しかし……)
だから、アレが何をどう企んでこの局面を見据えているかはわからないが……。
(……おそらくどっちでもいいハズだ)
このままだらだらと戦闘を続けて、細く長く魔力を吸い上げるのもヨシ、暴走させて一気に魔力を得るのもヨシ。どちらかと言えば、後者側に寄っているように見えるが、それはその機会があるならば、というだけのこと。
上手に育てて、その過程を楽しむか。咲いた花を愛でるか。……あるいは、熟れた実を食すか。
……既に花は散った。故に、アレは実が熟すのをじっと待っているだろう。
そして、その期間は長ければ長い程良いが、短くても別に問題なく、十分に腹は膨れる、といったところか。
(……そして、アレにとっての実はベーゼ様でしょうし)
大きく、甘い実。それがマジアベーゼ。熟れたその実はどれだけ甘く蕩けるように美味なのか!
(……じゅる……っ!)
……あぁ、私も食べたいなぁ♡ ベーゼ様のたわわ♡
「……おぅ、アトラ……涎拭けや!」
「おっと失礼」
……サルファが非難がましい目で私を見ている。
さすがに私がベーゼ様のたわわをはむはむしている想像をしていることまではわからないだろうが、やましいことを考えていることはわかっているようだ。
「……しかし……ふ~む? ……もしや、煽られているのは私たちではない?」
そもそもの狙いが私たちではないとするならば、サルファの言う通り、煽り、ということもありうるかもしれない。
クリーチャー同士の主導権争い。
……おそらく、今一番主導権を握っているのはヴェナさんこと、ヴェナリータであろう。
あの全身真っ黒なクリーチャーは、陰謀を巡らすことにかけては私も一目置く存在である。
……ベーゼ様の暴走のときは、ほぼリーチだったハズだ。そして、シオちゃんズに邪魔されたとはいえ、ある程度の魔力は回収していると思われる。
……仮にアレを煽っているとして……うぇぇっ……考えたくもない!
私なら、アレは真正面から敵に回したくないよ?
相手にするなら、従順なフリをして、油断させて、こっそり戦力を集めて一気に、って感じじゃなければ、逆にこっちが喰われかねない。
もし、そんなアレの性質を理解していない相手だとしたら……なむなむち~ん。
「……ヴァーツはんか?」
……………………あぁっ!? そんなのもいたなっ!! ……よく知らんけど。
「……トレスマジアのマスコットですか。……ソレは笑顔のまま陰謀巡らせたりしてる?」
「せんわっ!? 何やねん、笑顔のまま陰謀巡らせるマスコットって!?」
……世の中、そんな
「……しかし、アンタの話聞いてたら、ちょう自信なくなるなぁ……」
まぁ、私の話が真実であれば、そうなるのも無理はない。
「……警戒はするに越したことはありませんが、私の語ったことが真実であるとは限りませんよ?」
「そないなことはわかっとる。ウチはどないなことが真実であったとしても、マゼンタを……んっんっ! 仲間を守るように立ち回るだけや!!」
……今、ちょっとだけ、サルファの本音が見えたよね?
「……ほほぅ、マジアマゼンタですか。そうですか」
いや、わかっていたこととは言え、本人の口から零れると真実味が増してきますなぁ♡
「……ちゃうねん」
「どこまで進んでいるんですか♡ もういたしてしまったんですか♡」
……う~ん、正直、おねぇやキウィちゃん以外はあんまり興味ないと思っていたけど、思っていたよりも他人のコイバナは胸が躍るなぁ♡
「マジアマゼンタと言えば、くるくる髪ですよねぇ♡ 二人でいるときは、あの髪をみょんみょんしたりしてるんですか? それともあの美乳をさわさわしてるんですか? あぁ、安産型のお尻も良いですね! ぺちぺちして、なでなでしたりしてるんですか♡」
「……ぁがっ……アンタこそ、ネロアリスとどこまでいっとんねん!? アンタらの雰囲気な、言うたらなんやけど、あまあまのでろでろやでっ!? 絶対、健全な友達関係とかじゃないやろ!?」
……ぽっ、と頬を染めて、恥ずかしそうに口元に手をあてて俯くアリスちゃん!!
「…………なぁ、もうもしかして、ちゅう、とかしてるんちゃうん?」
サルファが顔真っ赤にしながら、興味津々に聞いてくる!
……それで慌てる私を見て、話し逸らそうって言うんでしょ? じゃあ……。
「してますが何か?」
堂々と言ってやる! 実際してるしね!
「えっ……あっ……おぅ……」
あまりに堂々とした私の返答にサルファが困惑している。
「友人同士だとしても、別にしても構わないでしょう? キスって親愛の表現ですし。私、あなたにだって、ほっぺにはしましたよね? ……あなたも満更ではなさそうな気がしていましたが」
……まぁ、認められて嬉しいのと恥ずかしいのの半々くらいだと思うけど。
「そ、そうやけど……っ! そういうのとは……なんか、こう……違うやろ!?」
「……『違う』、とわかるってことは、ちゅうはしたんだね♡」
「…………んみみぃ…………」
……んみみぃになったサルファは顔を赤くしたまま動かなくなった。