ナハトベース。
どこぞの異空間の中にあるそこは、エノルミータの本拠地であり、うてなたちの溜まり場でもある。
いつも会議で使っている大広間の中、うてなは自分専用の総帥の椅子に座りながら、楽しそうに笑みを浮かべた。
「何か、嬉しそうだね、うてなちゃん?」
「ええ、とっても! だってだって、キウィちゃん! マジアアトラ、ちゃんと見ました!? あの子は素晴らしいですよ!? あの子は逸材です! あの子は自分の立場を弁えている! それでいてきちんとテコ入れをしてくれる存在です!」
きらきらした笑顔で語るうてなの姿を見て、キウィは少し嫉妬するが、楽しそうなうてなの姿を見て、すぐにどうでも良くなった。
キウィは興奮しているうてなの膝の上にさり気なく座って、その肩の辺りに頭を置いて、うてなを上目遣いで見る。
色々と妄想が捗っているとき、うてなのガードは意外と弱い。
「……どーいうこと?」
「ずばり、彼女はお助けキャラなんです!」
「あー……」
物語の中盤(あるいは序盤)辺りで主人公たちがピンチになると颯爽と駆けつける、いわゆるお助けキャラ。
てっきり、シオちゃんズ辺りがそうなのだろう、と思っていたが。
「……シオちゃんズじゃダメなの?」
「あの人たちはどっちかと言うとライバル関係でしょう?」
「ふーん」
うてなにとっては、重要な違いのようだが、キウィにとっては、比較的どうでもいい。
目下、重要なのは、うてなが喜んでいることと、その肌がつやつやしていることくらいである。
「……でも、せっかくいい雰囲気だったのにぃ♡」
ぽっ、と頬を紅くするキウィを見て、うてなも同じ様に頬を染めた。
デートの終盤、食事とショッピングを楽しんだ二人は、キウィの自宅にいた。
実は二人きりになるのは結構久し振りであり、お互いドギマギしながらも、密着しながら、ジュースを飲んでいた。自然、手を重ね合い、キウィがうてなの肩に甘えるよう頭を置いて、うてなが優しくその頭を撫で、互いに見つめ合ったそのとき……。
……大きな魔法少女の魔力を感知した。
またか、またなのか、と盛大にぶちギレたキウィが変身すると同時、真化して現場に突っ込んだところ、トレスマジアと鉢合わせた、という形になる。
「……ふむ。だとすると、あの魔力反応はトレスマジアではなく、マジアアトラのものだったのかもしれませんね」
「……アイツのー?」
うーん、キウィは首を捻る。
マジアアトラが舞い降りてきたとき、確かに大きな魔力反応はあったが、その直前までは、魔力反応を感じなかった。だからこそ、キウィはその場にいたトレスマジアが邪魔したものと判断して彼女たちに襲い掛かったわけだが……。
それに、マジアアトラの能力も気になる。
強いて能力を分類すると、トレスマジアであれば、マジアマゼンタは『回復』。マジアアズールは『水』。マジアサルファは『雷』。
エノルミータであれば、マジアベーゼは『支配』。レオパルトは『爆発』。ネロアリスは『ドールハウス』。ロコムジカは『音』。ルベルブルーメは『影』。
シオちゃんズであれば、イミタシオは『毒』。ベルセルガは『血』。パンタノぺスカは『土』。
ロード団であれば、ロードエノルメは『魔物生成』。シスタギガントは『巨大化』。
おおよそではあるが、こんなところだろう。
この中で、特殊なものと言えば、ベーゼの『支配』、アリスの『ドールハウス』、ロードの『魔物生成』だ。
特にアリスの『ドールハウス』は、アリスの持つドールハウスの中ならば、という制限こそあるものの、ほぼ何でもありという出鱈目さである。正直、どう分類するのが正しいのかもよくわからない。
「……直接戦ったキウィちゃんとしては、彼女の能力はどう考えます?」
「そーだなー……『反射』、『複製』……あとは『吸収』かなー」
彼女と戦った時、レオパルトの放った『滅殺光線シュトラール』は、かき消されたように思えた。それだけなら、『消去』という選択肢も出てくるが、直後にマジアアトラが放ったのは、『滅殺光線シュトラール』に酷似していた。
キウィの分析にうてなは上機嫌でキウィの髪を撫でる。
「良い感じの分析です、キウィちゃん。私も同じように分析していますが、その中であえて言うなら?」
「……『吸収』、だろーねー」
直接対峙したキウィだからこそ分かる。『滅殺光線シュトラール』がかき消されただけならともかく、それ以上の魔力がレオパルトから持っていかれた。
落ち着いた今だからこそ、そのように分析できるが、あのまま突っ込んでいたらどうなっていたことか。
マジアベーゼが退くという判断をしたのは、マジアアトラの能力を図りかねたということも理由の一つだが、レオパルトに危険が及ぶことを危惧してのことでもあるだろう。
……もっとも、これらとは別に、彼女なりの美学という要素も強いようではあるが。
「……んふー♡ うてなちゃん、すきすきー♡」
「ちょっ!? キウィちゃん!?」
キウィはうてなの首筋に抱き着き、その付け根にキスをする。軽く吸い付けば、薔薇色の痕を残した。
(……うてなちゃん、あたしを大事に想ってくれてる♡)
うてなにはうてななりの計算あってのことではあるが、その中には、キウィが傷つかないように、との想いがあったことを感じ取る。
うてな自身の決意がまだ固まっていないことはともかくとして、大事にされている、愛されているという実感は、キウィの胸を熱くさせ、下腹部の辺りが、きゅん、となる。
「……ちゅー♡ ……んっ、ちゅっ♡」
「やめっ!? キウィちゃん、やめてっ!? そこにキスマーク付けられたら隠せない!?」
(……付けるのはいいんだ♡)
くふっ、と笑ったキウィは、うてなの首筋を、ぺろり、と舐める。
「……あは♡ うてなちゃん、あまーい♡ おいしー♡」
「……はぅ♡ ……っん♡」
頬を紅潮させたうてなが、目を、とろん、とさせながら、恥ずかしそうに、声を我慢している。
……もっと先を、と思う気持ち。
そして、これ以上は、ダメ、という理性。
二つの思いがせめぎ合った結果、キウィは、くす、と笑みを浮かべて、うてなから体を離す。
『やくそくだからするの?』
……二人でホテルで繋がろうとしたあのとき、流されるのはイヤだ、と思ってしまったのはキウィ自身である。
だから、今は、まだ、それ以上はできない。
「……ここから先は、うてなちゃんからしてね♡」
……急かすつもりはない。
……ないが、溢れ出る想いを受け止め続けるには限界がある。
「……キウィちゃん……ズルいよ……」
うてながキウィを大事に想っていることはわかる。
初めてできた友達を大事にしようと想っているからこそ、友達以上への道に足を踏み出すことに躊躇している。
だが、キウィと
だから、少なくとも、嫌じゃない、してもいいかな、くらいの気持ちは持ち合わせているわけで……。
「……あたし、ちゃんと待つよ? ……でも、最後までじゃない、今日くらいのスキンシップはたまにはいいよね♡」
「……キウィちゃん! もうっ! もうっ!!」
「あっはは! うてなちゃん、ウシみたい!」
軽く頬を膨らませて、もーもー、と言いながら、ぽこぽこ、と叩いてくるうてなを見ながら、キウィはとびっきりの笑顔を見せる。
ぽっ、と顔を紅くするうてなを見て、キウィは、いひひ、と悪戯っぽく笑う。
……二人がちゃんと繋がるのはまだ先の話。
キウィはそのときが早く来ることを願った。