「……ネモちゃん、真珠ちゃん! おいっす~☆」
「!」
私がこりすちゃんをお姫様だっこしたまま、挨拶すると、こりすちゃんも挨拶代わりなのか、ビシィッ、とサムズアップした。
むふぅ、とご満悦そうな彼女はどやかわいい♡ ……何がそんなに気に入ったのやら。
……あ~……お姫様だっこ見せつけられて嬉しいのか。
こりすちゃんは軽いけど、さすがに自分と同じくらいの体重の相手をずっと支えられるほど、私は筋肉ムキムキではない……早く降りて~……。
……若干、腕がプルプルしていることに気づいたのか、こりすちゃんは器用にも、腕の中で体を弾ませ、ぴょん、と飛び降りると、まるで体操選手の着地のように両腕を大きく開いて見せた。
(……お姫様だっこ着地部門……降り技は、1/4ひねり降りってところかな)
支えている私にも技量を要求されるが、助走や反動がつけ辛いから、腕の中で体を跳ねさせるというのは意外にもセンスが要求されるだろう。……危ないけど。
ふんす、と得意気に鼻を鳴らしたこりすちゃんに、キウィおねえちゃんが、軽く頭を撫でると、途中で落っことしてきたらしいこりすちゃんの麦わら帽子を被せた。
「上手に降りたなぁ、こりす。ん~……9.0点かな。……ほれ、忘れもんだぞ」
頭に置かれた麦わら帽子の両脇のつばを押さえつつ、かぶり具合を調節しながら、こりすちゃんは、キウィちゃんを見ながら、こくっ、と頷いた。
……無口なりな彼女のお礼かな。キウィちゃんには一応意図が伝わったようだけど。
「……何か妙に距離が近いわね、アンタたち……」
じとー、と何かを探るような真珠ちゃんの瞳。
……うーん……鋭いっ! 自分のことには割とにぶにぶのクセにっ!
姉とキウィちゃんが特に共有してなければ、『つぼみ×こりす事件』は知らないハズだけど。
……やっぱりあれかな? 自分たちを同じような雰囲気があるのを覚った感じかな?
普段からネモたましてると、私たちのつぼりす(……現状だと逆のこりつぼ(何か肩凝ってそうだけど)かも?)波動を敏感に察知してしまうのだろう。
「……真珠ちゃんこそ、ちゃんとシャワー浴びてきた方がいいと思うよ」
「ちゃんと浴びてきたわよっ!? …………………………あっ……!」
失言に気づいたらしい真珠ちゃんは、顔を真っ赤にした。
へ~……ふ~ん。ほ~う! やっぱりお出かけ前に、ネモちゃんとシてきたんだね!
一方のネモちゃんは平常運転だ。
「……つぼみは鼻いいからどうせバレるんだって。……うてなも同じだぞ?」
……こちらはどうせバレるだろう、と思って開き直っていたらしい。
……いや、私はカマを掛けただけなんだけども。……でも、姉ってそうなのか……!
さすがは魔法少女同士のカップリングに勤しみ、拡散されている映像の魔法少女同士の匂わせ仕草を解析し、妄想の翼を授かっているだけのことはあるっ! ……もう少し、自分に応用してくれないかなぁ……。
「……あ、ネモちゃん、ネモちゃん!」
うぅ……、と恥ずかしそうにしていた真珠ちゃんは私から退避。こりすちゃんを連れて姉の方に向かった。
その間に私はネモちゃんと取引を始める。
すっ、と『例の物』が入った
「……ご注文のアレです。……上物ですよ?」
「……ほう? ……………………確かに上物のようだ」
特に意味はないが、ネモちゃんと闇取引ごっこをする。……ノリがいいのが、すきだよ、ネモちゃん!
しゃかしゃかと漏れる音楽を聴きつつ、ネモちゃんの様子を伺う。……思いのほか真剣な顔だ。
「……いい。いいな! ……すげぇな、つぼみ! 昨日の今日でこの出来かよ!?」
「まだ粗々だけどね~。歌詞次第でもうちょっと調整するから……雰囲気くらいは決まった?」
「……ん? そうだな……盛り込みたいフレーズはあるけど、この毒電波具合だったら合いそうだな」
毒電波って……まぁ、頭に残るメロディを何度も繰り返し使ってるけどね?
作ってる最中も「かわいいまたまちゃ~ん☆ きれいなまたまちゃ~ん☆ きょにゅうなまたまちゃ~ん☆」とか適当に歌詞を頭の中で当てていたので、大分頭悪い感じに仕上がっていると思う。
……まぁ、実際、真珠ちゃんに似合う曲は、聴いている人の脳をクラッシュするような電波ソングだと思うのっ! いやぁ、ネモちゃんと解釈一致で助かるよ!
「じゃあ、基本のメロディラインはこれで。……歌詞出来たら送って? 私が仮にレコーディングしてデモ返すから」
「おお、サンキューな!」
嬉しそうにネモちゃんが笑う。……今日もギザ歯が輝いてますね!
「……そう言えば、今日って何処行くの?」
「……何だよ、聞いてないのか? ……こりすのおもちゃ選びだよ」
「……ほ?」
……言葉通りの意味だよね?
……一瞬、こりすちゃん
◇◆◇
街で一番大きい玩具店。
姉は魔法少女グッズ目当てに、私はゲーム目当てに結構来る。
……そして、こりすちゃんのお目当ては!?
「……そっちかぁ~……」
いつものように、人形! ……と思いきや、何故か特撮物の変身グッズを手に持っていらっしゃる!
「お~! いいチョイスしてな~、こりす! そいつはお勧めだぞ!」
……そりゃあ、キウィちゃんは好きでしょうねぇ。
光る! 喋る! 効果音が鳴る! 変身アイテム!
私も嫌いではないけれど……。
「……うぅ……こっちのドールハウスの方がお勧めなのにぃ……!」
ちらり、と傍らに目をやれば、姉が悔しそうに膝をついていた。
昔の趣味を踏まえれば、姉が好きだったものをこりすちゃんも好みそうなものなのだが、最近色々と活発になってきたこりすちゃんは、お人形以外にも体を動かすようなことに興味深々だ。
その結果……どうやら、姉はキウィちゃんにプレゼンで敗れたらしい。
よしよし、と姉の頭を撫でる。……役得~♡ 落ち込んでる姉もかわいいなぁ♡
「……あれ? うてなちゃんに、つぼみちゃん?」
……名前を呼ばれてその声の方に顔を向ければ、はるかちゃんが……って!
「「「……つぼみ~!!」」」
彼女の足元にわらわらといたはずの三姉妹がミサイルのごとく、私をターゲットに!?
「……ちょっ!?」
……さすがに三人は受け止められないよ!?
……だが、そこはさすがの三姉妹! あり得ない連携を見せつつ、私に飛びついてきた!
一番やんちゃなみふゆが私の背後に回り込んで後ろから。
明るく活動的ななつなは側面から。
二人に比べるとおっとしているあきほが正面から。
……回避不能な花菱三つ子アタックである!
「……おぅふ……!」
……ぐぬぬっ! 正面から抱き着いているだけのあきほはまだしも、なつなとみふゆは完全に私に圧し掛かっているので……お、おもい……!
「久しぶりー、つぼみ!」
「……おひさ」
「何で最近遊びにこないんだー!」
むぎゅむぎゅと彼女たちが私に思い思いに密着してくる……っ!
「……久しぶり、なつな、あきほ、みふゆ。……重いし、苦しいし、痛いし、暑いからちょっと離れて?」
私は何とか三人を引き離そうとするが、そこに新たな勢力が!?
「……っ! ……っ!!」
空いていた腕にいつの間にかこりすさんが、ぷっくぅと頬を膨らませて抱き着いていらっしゃる!?
「なんだよー、こりす。独り占めするなー」
「……ずるい」
「つぼみはみふゆのだからなー!」
……あ、そう言えば、はるかちゃん繋がり……と言っていいのかわからないけど、一応、三つ子とこりすちゃんは面識あるんだったか。
……若干、みふゆの発言に対するこりすちゃんの視線が人を殺しそうで怖いが。
……え? 私のだって?
……いや、私、誰のものでもないんだけど……。