悪の女幹部にあこがれて   作:MIA

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90 ドン引き

 キウィ……レオパルトたちは、つぼみたちと別れた後、ネロアリスが直ぐに合流したこともあり、さっさと変身すると周囲の影を一掃した。

 

「……ナイスだったぜ、アリス~。……でも、今度からは一言断ろうな~。心配しちまった」

 

 ぐりぐり、とレオパルトはアリスの頭を撫でる。

 

 こくっ、と頷いた彼女は心地よいのか、目を細めて、髪が乱れるのも気にせずに、レオパルトの手を受け入れていた。

 

「……これで終わり、ということはないでしょうが。……つぼみたちは大丈夫かな……?」

 

 現状の分析をしつつ、ぼそっ、と妹の心配をするマジアベーゼに、くす、とレオパルトは微笑んだ。

 

「へーきへーき。だってつぼみだぞ?」

 

 レオパルトの言葉にネロアリスも同意とばかりに、こくこく、と頷いた。

 

「……ぅ……? いや、でもつぼみはまだ小学生だし……ちゃんと逃げれるかな?」

 

 ぽろり、と漏れた妹を心配する言葉は無意識だったのか、それに反応があったことに少しだけ恥ずかしそうにしながらベーゼが答えた。

 

(……うてなちゃんは純粋に妹の心配してるのな。そりゃそーだ)

 

 今のところ、つぼみがマジアアトラだということは、レオパルトとアリスだけの秘密である。

 

 レオパルトにしてみれば、いざとなれば、つぼみが変身すればどうとでもなることである、との想いもあるが……。

 

(……今回のこの魔物……? 影……? 魔法少女のパチモン……? 数はそれなりで、連携もまぁまぁだけど、でも、それ以上じゃない)

 

 キウィたちが変身するまでの時間稼ぎで、アリスが倒しただけでも数体。変身後は、レオパルトとベーゼが倒した分も合わせれば、数十体に上るだろう。

 

 今現在、周囲に影の存在は見受けられないが、アリスが数体葬った時点で増えた。

 

 倒すと増える……あるいは、戦力がなくなったところに補充する形で影が出現しているものと予想した。

 

 延々と増え続けるのであれば、これ以上の脅威はないが、現状に鑑みれば、一応は撃退できた、ということであろう……もっとも、結界らしきものが解除された様子はないが。

 

「……こんくらいの相手ならつぼみなら倒しちゃうんじゃないか~?」

 

 なぁ、とレオパルトがアリスに振ると、アリスは、さもありなん、とばかりに頷いた。

 

「え~……いや、でも、魔物だよ?」

「そんなに強くなかったし……まぁ、数で攻められれば辛いだろうけど。一体や二体くらいじゃあ……なぁ?」

 

 どうにかなると思えん、とアリスが鷹揚に頷く。

 

「……そ、そうかなぁ……?」

 

 そわそわ、と不安そうなベーゼ。

 

(……う~ん……つぼみを心配するベーゼちゃん♡ かわえぇ♡)

 

 普段、悪の総帥として、一応振舞っているらしいベーゼは、余裕振った表情や悦楽、加虐的な笑みを浮かべることが多く、純粋に心配と不安で落ち着かない様子のベーゼの姿は珍しかった。

 

「……まっ、ベーゼちゃんが心配なら、さっさと合流しよ~!」

 

 おーっ、と拳を掲げると、アリスが笑みを浮かべながら、同じように拳を突き上げ、遅れて、ベーゼが小さく拳を、そろり、と伸ばした。

 

 レオパルトはつぼみが通るであろうルートを頭の中に浮かべると、そちらの方に自ら先陣を切って走り出した。

 

「……っつても、マジ、つぼみなら倒してそうなんだよな~。アタシは変身してても、正直、つぼみが本気なら接近戦で勝てると思えないし」

「そんなに!?」

 

(……あれ? ベーゼちゃんって、あんまりつぼみの実力とから知らない感じ?)

 

 過去のドールハウスでアトラ……つぼみとキウィが殴り合いをしたとき、彼女は打撃主体だった。

 しかし、いくつかの動きを見る限り、彼女の得意分野は総合格闘……いや、より正確に言うならば、超近距離での投げ・決め・打撃を得意とする柔術と中国拳法などのミックス格闘術だ。

 

 あのとき、つぼみが最初からそのスタイルであったのならば…………結果として、正気という狂気のつぼみのその有り余る魔力によって、世界が滅ぼされていたかもしれない。

 

(……二度とやりたくないな!)

 

 本人は無意識かもしれないが、結果、手加減されていたというのは明白だった。

 

 しかし、手加減がないつぼみ……恐ろしすぎる!

 

 そんなことを考えながら先を急いでいると、はるかの後姿が見え、その先には……。

 

 二体の魔物をあっさりぐっしゃり叩き潰したつぼみの姿があった。

 

 相手を引き倒しつつ、ぐるっ、と回って、相手の後頭部に肘をズトン。

 相手の体を駆け上がると、何というか、変化式のフランケンシュタイナーのような何か首をばっきり。

 

 いくら魔物が相手だとして、完全に殺す気の技を楽しそうにかけるなんて……。

 

(……いやぁ……引くわー……ドン引きだわー……)

 

 ……ちょっと間違えば、あの技が自分にかけられていた可能性のあるレオパルトである。

 

 つぼみの姿がどんなにかっこ良く見えても、全くときめかなかった! ……レオパルトは。

 

「♡♡♡」

 

 ……アリスの目はハートになった!

 

(……だろうなぁ)

 

 ハハハ、と遠い目をする。

 

 公平な目で見れば、かっこ良いのだ! レオパルトは首とか頭とかに冷たい汗が流れるが!

 

(……これ以上、こりすを惚れさせてどうするつもりなんだよ、つぼみ~……アタシはどうなっても知らないぞ~……)

 

「………………ウチの妹、強過ぎぃ!?!?」

 

 が~ん、と白目をむきながら、ベーゼはショックを受けていた。

 

 レオパルトと同様割とドン引きである!

 

 ……お気づきだろうか。

 

 ……自分を中心に全方位無差別広範囲に魅了を振りまく『つぼみちゃーむ♡』だが、致命的な欠陥がある。

 

 ……それは当の本人の気のある相手は、魅了にかかるどころかドン引かれること。

 ……そして、本人への好感度の高い相手にはクリティカルして効果が二乗になること。

 

「……っ♡」

 

 アリスが蕩ける様な笑みを浮かべて、つぼみのところへ駆け出そうとしていた。

 

 その先には、ふふん♪ とどや顔を浮かべるつぼみの他に、完全に目をハートにしている花菱四姉妹がいる。

 

(……はるかっぴもクリティカルされたのか……)

 

 はるかの妹たちは仕方ないにしろはるか本人にまで効力が及んでいることにレオパルトは呆れた。

 

 ……これで当の本人は完全に無意識なので扱いに困る。

 

(……将来後から刺されそうだなぁ……)

 

 ……まぁ、つぼみの場合、単純に後から刺されそうになったところで、先に気づいて制圧してしまうだろうが、相手は必ず一人とは限らない。

 

 ……物量で押されれば、さすがの彼女も危うい。

 

「……って、やっぱりそうなんのかよ!?」

 

 魔力が集まる。影が人型を作る。

 

 ……数は容易く十を超えるだろう。

 

 臨戦態勢をとったレオパルトは……その視線の先に見た。

 

「……っ!」

 

 ……ゆらっ、と髪がその怒りを受けてゆらめくネロアリスの姿を。

 

 ひゅっ、と思わず息を飲む。

 

 ネロアリスは無表情である。……いつも以上に。

 

 瞳は冷たくドブを見るようで、よくよく見ればコメカミには青筋が立っていた。

 

(……こわっ……!?)

 

 そして、額に刻まれた、+++++++++……!

 

 ……かつてないほど大激怒しているネロアリスの姿は、仲間であるレオパルトですら怖気が走るほどであった。

 

(……一体何で……あん? ……「わたしのカッコ良いつぼみを愛でる時間を邪魔したな……?」)

 

 ネロアリスは一言も言葉を発していないが、何となくその言いたいことはわかった。

 

 ……抱きついて労う時間を邪魔したな……?

 ……つーか、そもそも一緒に遊ぶ時間を邪魔したな……?

 ……ライバル増えてんじゃねぇか、ころすぞ☆

 

(……殺意マシマシじゃん!?)

 

 ゴゴゴゴゴッ、とネロアリスの周囲の魔力が震えている。

 

(ベーゼちゃん並み……っていうか、もしかして……!?)

 

 今、この瞬間だけならば、ネロアリスはマジアベーゼの最大魔力を超えているかもしれない。

 

「……人の妹を危険にするなんて……本当に度し難いですね」

 

(……ベーゼちゃんは、ベーゼちゃんで怒っていらっしゃるぅぅぅぅぅ!?)

 

 ……いつの間にか真化して、怒髪天するくらいには、ベーゼも妹が危険に晒されることにお怒りらしい。

 

(……まぁ、なんだかんだ言って、うてなちゃんもシスコンだからなぁ……)

 

 うてなのことがすき過ぎるキウィですら嫉妬する気が起きないほどには、うてなはつぼみを大事に思っていて、つぼみはうてなのことを大すきなのだ。

 

 ……そんなかわいい妹が危険な目に遭っているのだとしたら、そりゃあ、当然怒る!

 

 ……一方で、レオパルトは周りがあまりにもキレ散らかしているせいで、冷静になった。

 

(……う~ん……怒ってるベーゼちゃんはせくすぃ♡)

 

 自分の出番はないな、とレオパルトは、怒りで肌を少し赤くしているベーゼの胸とかへそとか尻とかを眺めることにした。

 

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