……影は一掃した。
……と同時、クトゥグアとイタクァから何かが抜けていくのを感じる。
(……そ、そんなぁ……威力調整して主武装にしたいくらいだったのにぃ!!)
ロマン溢れる二丁拳銃。黒い翼を持ったマジアアトラ。これぞ、天使ノ二挺拳銃!! ……ちょっと違うか?
(……まぁ、影相手には威力は十分だったけど、火力という点では、ふつーに『黒星』の方が上だしね……)
正直、魔法少女相手には火力不足の感は否めない。雑魚を散らす分には十分なのだが。
「……ありがとう、アリスちゃん」
……力を失った二つの銃を泣く泣くアリスちゃんに返却する。
むふぅ、と彼女は私のかっちょいい姿を見れたからか、ご満悦の様子である。
(……アリスちゃんが、終わった、と思って、魔法を解いたのか、それとも単純に時間切れだったか。見る限り、魔力消耗はそれ程でもないようだけど)
魔力付与した武器で周りが戦うのとアリスちゃん本人が戦うのとどっちが効率的なのか……いずれは検証が必要になるだろう。
……まぁ、正直、チートなアリスちゃんはどっちでもいいと思うんだけどね?
「……?」
本人はよくわかっていのか首を傾げているが。……くっ、かわいいかよっ!
「……えぇ……? ……いや、えぇぇぇぇ~……?」
ベーゼ様は戦闘終わりの私の様子を見て、お口をぽか~んである。
…………………………そういや、私、一般人だったわ!
そんな様子を見て、レオちゃんはけらけら笑っているし、花菱四姉妹は……何か顔が真っ赤である。……大丈夫?
「……あ、あの~……レオちゃん……?」
「いや、予想通りの結果過ぎて笑うしかないなぁ、と」
まぁ、私の正体を知っているレオちゃんは、いざとなったら私が変身するだけど思っているのだろうし、過程はともかく結果はわかってただろうね。
「……ベーゼさ……ん、お目汚しでした♡」
また、「ベーゼ様」とか言いそうになってしまった。危ない危ない。
えへ♡ と私が笑うと、ベーゼ様は、ひくっ、と顔を引きつらせるように愛想笑いを浮かべた。
「……ず、随分お強いですね……?」
……何故敬語?
「……? そうですか? ちょっと強いくらいじゃないですか?」
身体能力にはそれなりの自信があるけど、この結果は九割九分アリスちゃんの魔法のせいである。
「……い、いや……いやいやいやいやいやいや!? あなた一般人ですよね!?」
「通りすがりの一般人ですが。何か?」
「ふつーに魔物を倒す一般人がいてたまるかっての」
……レオちゃんが私の頭にチョップ。痛くはないけど、何となく叩かれたところを摩りながら、レオちゃんを見上げる。
「……私は魔物を討つものだから?」
「お前が持ってたのは銃だろうに」
…………。
「「あっはっはっは!!」」
「……二人だけで納得しないで!?」
「……まぁ、つぼみちゃんだからなぁ♡」
「納得の強さ♡」
「……ほれる♡」
「さすつぼ♡」
「(こくこく)♡」
「あれぇ!? 納得できてないの、私だけぇ!?」
がび~ん、とベーゼ様はショックを受けているが、彼女以外は当然の結果とばかりである。
……いや、さすがの私もアリスちゃんから借りた武器なしじゃ、あの数は無理ですよ? 少なくとも変身前では……。
……あ、変身前で倒してるのがおかしいと? いや、でもあれくらいならイケるでしょ? 薫子ちゃんとかならラフプレイに持ち込んでパイプイスでぼこぼこにしそうな感じはあるよ!
「んんっ……ま、まぁ、いいでしょう。……あなたのその強さを見込んで、どうです? エノルミータに加わりませんか?」
ベーゼ様が、にやぁ、と笑みを浮かべて、手を差し伸べてくる。
……しかし。ふ~む……?
「だ、ダメっ!!」
ここではるかちゃんがカットイン! 私とベーゼ様の間に立ちふさがった!
「エ、エノルミータは世界征服をたくらむ悪の組織でしょ!? そ、そんなのに、つぼみちゃんが加わるなんて……! 絶対ダメ!!」
エノルミータ、ダメ、絶対!
はるかちゃんの強い意志を感じるなぁ……。
……しかし、はて? 世界征服をたくらむ悪の組織とは……?
……………………………………………………エノルミータってそうだっけ?
魔法少女に悪戯したり、えっちぃことしたりと、魔法少女
まぁ、どちらにせよ、私には興味のないことだ! どっちかと言うと、ベーゼ様に弄んでもらう方が嬉しい! ……ん~……でも、同組織でベーゼ様のあんな顔やこんな顔を見たり、らぶらぶちゅっちゅするのもありか……?
……と言うか、私がマジアアトラである時点で、参加するのは無理だろう。……あれ? トランスアイテムを新しく貰えれば、もしかしてイケるのか……?
トレスマジアはハート。エノルミータは星。私のは菱形。
異なるトランスアイテムならもっと別の変身ができるのかも……?
(……いや、それはダメだな)
……おそらくだが、私は他のトランスアイテムでは変身できないだろう。地の身体能力はともかく、私単体の魔力量はそんなに多くない。
癪な話だが、マジアアトラはあのクリーチャーに見出されなければ、表に出ることはなかったハズだ。アレと私の性質が相まって、マジアアトラは生まれた。
『吸収』。
ソレがなければ、マジアアトラは存在できない。足りない魔力を外部から奪うことによって初めて存在できるのだ。
……もっとも? 魔力が足りなければ、外から補充する、という方法もあるのだろうけど。
(……しかし、それじゃあダメだ。いつでも切り捨てることができる駒でしかない)
あれでもクリーチャーとマジアアトラの関係は対等だったと思う。
少なくとも従属はしていなかった……させられなかった、という面は、クリーチャー側からしたらあるかもだけど。
ヤツは魔力を欲していて、その能力を十全に扱えるものを探していた。
そして、私はヤツの能力を扱えるだけの処理能力があった。……ヤツが考えている以上に。
結果はあんな感じになってしまったが、アレが焦らなければ、もう少しあの共犯関係を続けられていたと思うのだが。
(……ムリか。……アレはそんな悠長なタイプではないし、そうでなければ、
……いずれにしろ、ベーゼ様からのせっかくのお誘いではあるが、私には断る以外の選択肢がない。
……と言うか、ベーゼ様? 完全身バレするこの状況でスカウトってどうなの……? もしかして、断らせるために、ここで言った……? ベーゼ様も結構計算高いなぁ……。
まぁ、究極的にはどちらでもいいのだろう。乗ってくれば、戦力増強。乗ってこなくても、現状維持。エノルミータにスカウトされたっていう事実が伝播すれば、魔法少女側に与することもないと考えてのことだろう。……私にメリットが無さすぎるな!
断ろう、と口を開きかけたそのとき……。
「……こちらもハズレですかぁ。悲しいですぅ……」
(……シスタギガント!?)
……元・エノルミータ。ロードエノルメの腹心と言って差し支えない存在。
エノルミータの内部分裂のあと、レオちゃんにやられて以降、消息不明だったハズだが……。
「シスタギガント……この騒ぎはあなたの仕業ですか……?」
「悲しいですぅ……ルベルブルーメといい、あなたといい、証拠もないのに、犯人扱いなんてぇ……」
……いや、思わせぶりなこと言うからじゃないかなぁ……?
……ん? しかし、ルベルブルーメ?
「……何故、ルベちゃんの名が……? まさかっ!?」
「大丈夫ですよぉ? 殺してはいませんのでぇ。一応、元同僚ですしぃ、彼女たちには興味ありませんしぃ?」
……ぷち、と何かがキレる音がした。
……直後、ぶわっ、とベーゼ様から黒い魔力の奔流が巻き起こった。
(……あれ? ベーゼ様…………ぶちギレてるっ!?)
ベーゼ様って思ってたより、仲間想いなんだなぁ……かわいい♡