(……あ~、やべぇな、ベーゼちゃん、キレてるわ……)
噴き出した魔力で髪がなびいているベーゼの姿を見ながら、レオパルトは考える。
少なくともルベルブルーメは死んでいない。その情報には安堵こそすれ、ベーゼがキレる要素はないハズだ。
だとすると、シスタギガントが『興味がない』と言った点であろうか。
……ベーゼは魔法少女を愛している。
敵であろうが味方だろうが、ちょっと嬲りたいくらいに愛している。
正義の魔法少女に相対し、いい感じに痛めつけたり、嬲ったりしつつ、悪役ムーブを醸し出して、いい感じのところで引くこともそうだが、同僚だろうが何だろうが関係なく、ちょっと痴態を見るために、ちょっと抜けたフリすらする。一緒にダンジョンに送り込んだり、自分の能力で失敗した体で一緒に襲わせたり……。
ベーゼによる明確にえっちぃ被害を受けていないのはネロアリスくらいか。……まぁ、どっちかというと彼女はベーゼと同じ側に立って、魔法少女
……つまりは、正義の魔法少女だろうが、悪の女幹部であろうが、ベーゼにとっては愛すべき対象なのだろう。
それを興味ない? ……まぁ、逆鱗に触れたとしてもおかしくない。
……しかし、この場でベーゼがキレ散らかすのは少々マズいのだ。
(……『ハズレ』、な……)
シスタが求めていたのは何か。
この場合の当たりとは、トレスマジアか、シオちゃんズか、マジアアトラか。
それとももっと別の何かを探していたのか。
……あるいは。
(……ベーゼちゃんを暴走させるため、ってのはあるかもしんないなぁ)
……だとすると、ベーゼが致命的にブチギレるのは問題なのだ。
(……仕方ねぇなぁ~……アタシが……)
こういうとき、相手に当たっていくのは自分の役割だとレオパルトは思っている。
ただし、それはエノルミータのメンバーだけのときだ。
……この場にはもう一人好戦的なヤツがいる。
(……あぁ、そうだな……お前のことは誰より、アタシがわかってるよ……)
レオパルトは前に出る。
「……シスタよぉ……お前、アタシにボコにされたクセに、何のつもりだ、あぁン!? もっかいアタシがわからせてやんよ! 滅殺光線シュトラール!!」
問答無用とばかりに放った攻撃に、ベーゼがはっとレオパルトを見た。自身が冷静でないことを悟ったのだろう。そこにはレオパルトに対する深い信頼が見て取れる。
彼女は自分を冷静にするために、レオパルトが先んじて攻撃したことを理解したのだ。
(ふっ……また、ベーゼちゃんを惚れさせてしまったぜ♡)
そんな自画自賛をしながら、によっ、と笑みを浮かべ、滅殺光線シュトラールの着弾を見守る。
「くふぅ!」
にやぁ、とシスタが大きく笑みを浮かべ、瞬間、彼女を大きな壁が覆いつくした。
ずどぉぉん、と大きな音……しかし、どうやら攻撃は届かなかったようだ、とレオパルトは理解した。
「……あなたの攻撃はとても強いですけど……悲しいですぅ! 私には効かないですよぉぉぉ!」
無傷なシスタが、けたけた、と笑う。
それに対して、レオパルトは、にやり、と笑った。
「……ああ……アタシのはな?」
「……は?」
……爆発を隠れ蓑にシスタに肉薄したのはつぼみである。
シスタからすれば一般人であるつぼみは当然ながら、注目すべき相手ではない。
彼女が一から動向を探っていたのであれば、例え一般人であろうと無視していい存在ではないと理解できていたであろうが……。
マジアベーゼ、レオパルト、ネロアリスと三名のエノルミータの幹部が揃っていれば、この場を収めたのこの三人だと考えるのは当然のこと。むしろ、つぼみがほぼ単独で影たちを撃破したなどとは夢にも思うまい。
「……私の妹、好戦的過ぎぃ!?」
泣きそうな顔でベーゼがレオパルトにだけ聞こえるように嘆きの声を上げた。
◇◆◇
シスタギガント。
その能力は自身の体を大きくするというものだ。
身に着けている衣類ごと大きくなるということはある程度周囲を巻き込んでいるのであろうが……能力の概要としては間違いはない。……ないが、おそらくそれだけ、ということもないだろう。
アリスちゃんがその能力を再現できることも踏まえれば、本来の能力はそれほど簡単に模倣することができないようなもの……もう少し先にあるハズだ。
私がレオちゃんの攻撃に合わせて、シスタに近づこうとしたとき、彼女は大きな壁のような何かを全面に作り出して、その攻撃を無力化した。
一瞬だけだったが……。
(……部分的に大きくしたのか)
……おそらくは、手の平を一瞬だけ大きくすることで、レオちゃんの攻撃を弾いた。
大きくできれば大きくできるほど、その威力は極小化するだろう。
彼女がどの程度までこの能力を操ることができるのかは不明だが、自在に操ることができるのならば大層な脅威である。
(……だけど、私相手にどれだけ自在に使える?)
魔法少女が相手ならば、彼女も手加減無しにその力を振るうことができるだろう。
しかし、彼女に肉薄したのが、私だと知ると、彼女は大きく狼狽した。
誰? 一般人? 魔法少女じゃない? 何で戦おうとしているの?
そんな疑問が彼女の中で巡る……そして、それは私にとっては致命的な隙でしかあり得ない。
「……くっ!」
彼女の出した結論は……私の意図はわからないが、とりあえず体を大きくして身を守ろう、だ。
(……悪手だ、それは悪手だよ、シスタギガント!)
目測でおおよそ、三メートル程度……とっさに対応できるのは、自分の体を倍にする、というところか。
……体重差はどれくらいだろうか。モデル体型の彼女であれば、四十キロ後半から五十キロ前半くらい。身長が二倍になったのだとすれば、この八倍くらい。三百キロから四百キロといったところか。
痩せぽっちの私からすれば、十倍差くらいである。
普通であれば、この体重差を埋めるのは難しい。
何せそれだけの質量があれば、適当に手足を振り回すだけで、私程度の体重の相手であれば事足りる。
もっともそれは私が何の格闘経験もないお嬢様であったらの話だ。
それに……。
(……あなたはそれほど、運動得意ではないでしょう、シスタギガント?)
そりゃあ、そんだけでかい胸部バルジが付いているなら、運動が得意なわけないよね、って話である(偏見)!
そして、でかくなった分だけ、その余分な脂肪も大きくなるわけで……さて、小っこい私を視認できる?
シスタの足元に私は飛び込む。シスタは私を完全に見失っており、慌てたように、足を引こうとするが……。
(……もらった!)
中途半端に上げられた足は私の獲物だ。滑り込みながら、彼女の足首を捉えて、体全体を使って捻じりつつ、積極的に彼女のバランスを倒しに行く。
「……えっ!? ふわっ!?」
ぐらり、とシスタが傾いて倒れていく。
ず、ずぅぅん……。
彼女は、受け身もまともにとれずに、斜めに顔面から地面に突っ込んだ。
「……うぅ……!」
彼女が体を仰向けにして、立とうとする寸前……私は彼女の胸元に飛び乗った。
……体重差があり過ぎるが、素人の彼女であれば、胸元を押さえるだけでも、簡単に立つことは叶うまい。
……そして構える。
「……つぼみ流絶技・首狩りっ!!」
なお、『乳』の字が抜けているが、首は首だ。
「あたっ、あたたたたたたたっ、ほわったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
開いた両手で突く! 突く!! 突く!!!!
にっくきでか乳のその頂点に向かって突きまくるっ!!!!
何だよ、このおっぱい!? 胸囲だけで私の身長ぐらいあるぞ!? 許せん!!
ちなみに乳首当てゲームは私の得意とするところ! 服の上からだって外すわけがない!
シスタのおっぱいのぽっち目掛けて、直接当てたり、掠めさせたり、前から横から、神速の突きを放ちまくる!!
「ひっ、ひぎぃぃっ!? ぃあっ、……ぁあぁぁぁぁん♡♡♡」
びくん、とシスタが体を大きく震わせた。
……私の……勝ちだ……っ!!
私は拳を大きく天にかざした。