……悪の組織の女幹部になって、でっかい玉座に座って、万民を見下ろしつつ、ふふん、って悪役笑いしてみたい気持ちはなきにしもあらずでないこともなくもないけどやっぱりそれってどうなのって思ってやっぱり考え直すとおしい気がしないでもないものの理性的な私は断ることができる良い子!
……ふー……ベーゼ様の誘惑を振り切るのは大変だぜ☆
「……残念です。あなたになら、総帥の座を渡しても良いとすら思ったのですが。いや、もう、ホントに!」
ベーゼ様にそう言われると悪い気はしないけど。
どう考えてもデメリットの方が大きいですよね、って話である。
ベーゼ様もそれをわかっているから、それ以上の勧誘はない。……そもそも、この勧誘だって半ば冗談のようなものだろうしね。
……あの、だから、はるかちゃん……がるるぅ、って威嚇しないであげて?
なつなたちも真似しちゃうじゃん……。
ちなみに、アリスちゃんはちょっと残念そうにしている。
「……シスタギガントには逃げられましたが……まぁ、身に降りかかった火の粉を取り除くことはできました。一先ずはそれでヨシとしましょう」
……逃げた、か。……ふ~ん……?
強かなのはわかってはいたけど……おっぱいおばけめ!
「……レオちゃん、アリスちゃん。ルベルちゃんとロコちゃんを拾って帰りますよ」
「う~ぃ」
「……っ」
くるり、とベーゼ様が踵を返すと、レオちゃんが両手を頭の後に組んでそれに続き、名残惜しそうにし私を振り返りながらアリスちゃんが追従する。
ぶぉ、と黒い穴が開き、ベーゼ様がそれを潜り……最後に、にやり、と私に笑みを向けた。
……それは、新しいおもちゃを見つけた、とでも言うような挑戦的な笑みで……正直濡れた♡
(え~? あれって、私がエノルミータの前に立ちはだかったら、私にもえっちぃことしてくれるってことぉ♡)
……まぁ、生身では認識阻害とかないのでやるわけないんだが。……でも、誰も見てないところだったら♡ ベーゼ様だけに許しちゃう♡♡♡
内心で、うへへ笑いを浮かべつつも、はるかちゃんたちが残っているので自重しつつ、誤魔化すように、寝転がったまま、私は手近にあったなつなの髪をもっさもっさと撫でる。
「ふわぁ♡」
「……ずるい!」
「みふゆも撫でろ~!」
「はいはい」
三姉妹のふわふわな髪を一しきり堪能して、体を起こすと、はるかちゃんが近くで膝立ちのまま、頬を赤らめて、無言で私を見ていた。
…………………………撫でろと?
さすがにそれは恐れ多いので、はるかちゃんのトレードマーク、ドリルなツインテの先っちょを引っ張って、みょんみょんさせる。
(……すっごいドリル!)
メカにしたら絶対にちょーつおいドリル兵器になることが請け合いだ。
「……むー……」
私の対応にはるかちゃんはちょっと不機嫌そうだが……これってアレでしょ? ストックホルム症候群的なアレ。
三姉妹と違って、はるかちゃんが私に向けているのはそういう好意じゃないでしょうに。
……まぁ、そのうち元に戻るでしょ。というか、戻ってもらわないと困る! か、薫子ちゃんに殺されるぅぅぅ!!
いや、実力的には負けはしないと思うけど……薫子ちゃんならルール無用のデスマッチに持ち込まれそうなので敵対するのはゴメンなのだ!
(……というか、まぁ……知ってる人のそういう感情知ってて、その相手の好感度を積極的に上げにいくとかムリだし)
姉とキウィちゃんの関係に挟まっていくのは、WSSだからであってNTRではないのである。
(……どっちかというと、薫子ちゃんがどうやってはるかちゃんを篭絡するのか、一番近くでによによしながら見てたいなぁ♡)
NTRはNG派の私ではあるが、純愛ハッピーエンドなコイバナは嫌いじゃない。自分が関係ないところだったら、無責任に煽ってその結果がどうなるのかすごく観察したい!
「……?」
私に弄ばれたはるかちゃん(髪)は、乱れた髪を直しつつ、じーっ、と見ている私を不思議そうに見つめ返した。
……ちょっと、顔を赤くしているのは見ないことにする。
(……はるかちゃんって割と鈍いんだよなぁ……)
薫子ちゃんとはるかちゃんがいるところは、私もたまに見かけるが、その程度の私ですら気づくレベルなんだけども。
小夜ちゃんとはるかちゃんは、お互いが親友!! って感じではっきりわかるのに、薫子ちゃんのは明らかに違うからね!
……私的には、はるかちゃんも実は満更ではないと思ってるんだけど。
「……どうしたの、つぼみちゃん? やっぱり疲れちゃった?」
……姉力というかママ力というか……はるかちゃんは優しすぎるから。
(……もし、自分の本当の気持ちに気づいても、蓋しちゃうかもなぁ……)
場の空気に酔って、私に恋愛的な好意を抱いているように錯覚しているようではあるが、彼女は私たちとは違って、常識人の部類だ。
それが自分の……薫子ちゃんのためにならないと思ってしまったら……たぶん、気づいたとしても、気づかない振りを続けるだろう。
「……大丈夫だよ、はるかちゃん。……はるかちゃんこそ、平気?」
「え? うん! つぼみちゃんが守ってくれたらね! 私たちは平気だよ!」
「……そ」
はるかちゃんの感謝の籠った笑みを見て、気恥ずかしくなって目を逸らした。
真っすぐ過ぎるはるかちゃんは、私にとって目の毒だ。
(……まぁ、私が汚れ切っているだけなんだろうけど)
姉という立場上、はるかは妹たちに譲ることが多い。わがままを言わない、いわゆる「いいこ」なのだ。
……もしかしたら、その心の裏側には、もっととんでもないものが潜んでいるのかもしれないけれど。
(そういうのも込みで、ちゃんとすきになってくれないとね、薫子ちゃん? ……はるかちゃんは任せられないよ?)
はるかちゃんは、私の中では結構大事な人に入っている。そりゃあ、仲の良い三姉妹よりは下だけど……。
幼い頃から今日まで……私のことを私としてちゃんと見てくれた人の一人だ。
下手な人には預けられない。薫子ちゃんのことはある意味、信用してはいるけれど……本当にはるかちゃんを任せられるかはまた別の話。
(……ちゃんと見せてよね、薫子ちゃん! 私、とっても楽しみなんだから♡)
……まぁ、特等席で他人の恋愛が見れるかも、とわくわくしている気持ちがなくもないんだけど。
「……ん~~っ! ……っと! はるかちゃん、早くおねぇたちと合流しよう?」
立ち上がった私は、大きく伸びをして、体を解す。
まだ座り込んでいる三姉妹たちに順番に手を貸して立たせる。
……そんな私の姿を見て、はるかちゃんは、微笑まし気に……そして、とても愛おしいものをみるように、くすり、と微笑んだ。
「……そうだね、行こうか」
……ほら、ね。やっぱりはるかちゃんが私に向けている好意は
(……だから勘違いしないで、ちゃんと自分に向けられる好意に気づいて欲しいな)
「……
「え? 何を? ……って言うか、つぼみちゃんから『おねえちゃん』って呼ばれるのも久しぶりだねぇ♡」
「今日くらいはね。あんまりこれを言うと……」
「「「……む~!」」」
「……ほら、なつなたちがむくれちゃうから」
たはは、と私は三姉妹の頭を撫でてご機嫌を取りつつ、苦笑する。
……昔は、だいすきなおねえちゃんが取られちゃう、と思ってたらしいけど。
「……ちょ!? みんな、引っ張らないでぇ!?」
むすっ、と不機嫌な顔をした三姉妹それぞれにぐいぐい引っ張られて、バランスを崩しそうになる。
……さて? 今のこの子たちは、何を考えているのやら……。
はるかちゃんと同じくにぶちんな私にはよくわからなかった。