少年は犬に問いました。
「僕を食べるのかい、僕を食べるのかい」
犬は答えました。
「食べないよ、食べないよ」
少年は怯えた様子で言葉を続けます。
「でも食べるんだろう、今は食べなくとも、食べるものがなくなればァ、人間を食べるんだろう」
犬は言います。
「人間を食べるだなんて、そんなこと考えもしなかったな」
少年はそれを聞いて、羨ましそうに言いました。
「君たちはいいなァ。君たちは人間よりも強い。いざとなれば人間を食べて飢えをしのげる」
犬は少し怒ったようです。
「ばかを言うな、そもそも俺は彼らが大好きだ、食べたくないよ。それに食べてしまったら餌をくれる人がいなくなるだろう。それはお前も一緒じゃないか」
少年はきょとんとしました。
「それもそうかァ。飢えをしのいで、その次は考えていなかった......とでも思っていたのか? 人間はそこらにたくさんいるだろう、順に食べればいい。どうだ、これでずぅっと飢えを満たせる」
少年は誇らしげです。
「ばかだと言っている。人間はお前が思っている以上に色んなものを持っている。そうやって甘く見ているといつか痛い目を見るぞ、お前くらい馬鹿だと、そうだな、うん。明日にでも」
犬の言葉に、少年はしょんぼりしてしまいました。いつもこれです。犬は賢くて物知りで、飢えていないから頭が回るのです。
木に括りつけていたリードを外し手に持って、おばさんがやってきました。
「ほら、ジョン、行くわよ」
犬改めジョンは「おっともうそんな時間か」と呟くと、少年に尻尾を振って別れの合図をします。
「悪い、また今度だ坊ちゃん」
「うん、またね」
「次はそうだな、チーズかサラミを持ってくる」
「うん、ありがとねぇ」
ジョンは少年の口元が緩むのを見ました。二つとも少年の好物です。
―
「毎度、毎度、人間は食べないって言ってるのにあのガキときたら」
「ジョン、人のことを話すとき愚痴から入るのは喋りやすいけれども自分に毒だよ」
「でもあいつとする話は面白いんだ。わくわくする」
「確かにあなた、木曜日は特に嬉しそうな顔をしてるわね」
「来世は人間がいいな。ちょっとズル賢くて、でも人に助けてもらわないと生きられないような、そんな人間になりたい。きっと毎日どきどきして楽しい」
「ジョン、そんなことを言ってるとばちが当たるよ。善行を五万と積んだ聖人が一時の傲慢で地獄に落ちた話をしたでしょう」
ジョンはしょんぼりして、その通り、おばさんの言う通りだと思いました。
夕焼けが二人を照らしています。二人は丘の向こうへと消えていきました。
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公園の木陰には一人、少年が残されました。
「来世は犬がいいなァ。飢えることのない、飼い犬がいい。人にやさしくして、人と仲良くできるなら、もっといい」
読んでくださりありがとうございます。感謝を。