「いたぞ!捕まえろ!」
舞台の暗幕のような暗い空の下、金属で覆われた地面の上を青色のボディに金色のラインが所々に入ったバイクが走っている。バイクのヘッド部分は龍のような顔と金色の2本の角が着いている。そのバイクの姿を形容するなら中国神話に現れる伝説上の動物である麒麟が相応しいだろう。前後それぞれ1つずつある車輪が回転し、車体が前に進んで行くがその上には運転手の姿が見えない。運転手を乗せていないバイクは自分で車体を傾けて右に曲がり、道を進んで行く。
「追え!見付けたぞ!」
そのバイクの背後に4つのスラスターを持つドローンが何台か迫ってくる。
紫色のボディを持ちカメラアイを赤く光らせ、言葉を発して他のドローンと連携を取りながら自走するバイクの後を追う。
「しつこい奴らだぜ!」
追われている青いバイクも言葉を発する。
自身の背後に迫るドローンたちのスラスターの音から、何台ものドローンが自身に迫っていることが彼自身も把握している。追いつかれてしまうにではないかという焦りが生じてもおかしくない場面であるが、そのバイクは冷静だった。
「さあ、こっちだ!」
バイクは車体を傾けて左に曲がる。金属で構成される建物や多くの構造物に囲まれた道に青いバイクが入っていく。それに続いて4台の紫のドローンもその道に入っていく。
「ざっと4台ってとこか…」
青いバイクはハンドルミラーを使って自身の背後に迫るドローンの数を把握しながら先程よりも狭くなった道を走っていく。ドローン達と自分の距離をさらに開かせるためにバイクはスピードを上げていくが、その先には壁があり横に行くしかないT字路が待っている。
「さあ、どんどん来やがれ!」
「スピード上げろ!」
バイクを追うドローン達はT字路が待っている事には気づかず、スピードを上げてバイクに迫っていく。
だがその時彼らは既に、青いバイクの術中にハマっていた。
「今だ!」
T字路の曲がり角に差し掛かった時、バイクは車体を地面や周囲の構造物に触れてしまうのではないかと言う程傾けて進行方向を曲げて左側の道に入っていく。地面とタイヤが擦れて火花を散らしながらもバイクはT字路で曲がり切った。
「クソッ…!」
一方のドローンらは上手くスピードを下げることができず、4台の内2台が壁に激突して爆炎を上げながら鉄屑と化して地面に落ちる。
「まだ半分残ってんのか…」
だが、残った2台は未だにそのバイクを追い続けている。
まだ敵が追ってきているのならそのバイクは逃げ続ける選択を取るしかなくなる。
「撃て!撃て!」
ドローン達は自身の下部に付いた銃口をバイクに向け、レーザー銃で逃げるバイクを狙う。
「ホント、厄介な連中だ。」
放たれるレーザーの位置をハンドルミラーで見て把握し、車体を右に左に傾けていきながら攻撃を避ける。攻撃を回避する動作でスピードが落ちてしまうバイクと追うドローンの距離が徐々に縮まっていく。
「こうなったら…!」
ここで青いバイクは突如ブレーキを使って急停止すると、後輪を地面に付けてボディを振り上げる。ウィリーの様な体制になると、後輪を軸にボディを回転させて野球選手がバットを振るようにボディを振り回す。
「ぐあっ…!?」
そのバイクの動きに対応できなかったドローン達は振るわれるバイクの前輪にぶつかって打たれ、身体を砕かれてしまう。鉄の破片となった2台のドローンの身体が地面に散らばると、バイクは再び方向を変えて走り始める。
「早く行かねえと…ギャラクシーブリッジに!」
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「ええ!?昨日の嵐でバスが来れなくなった!?」
「はい…土砂崩れの影響でバスが通れる大きい道が塞がってしまったようで…」
新潟県の山の上にあるこじんまりとした温泉街。数ヵ月前であれば雪が積もり周囲のゲレンデでスキーをしに来た客が多く訪れていたが、今は旅行シーズンと言う訳でもなく客足は少ない。そんな数少ない観光客の1人である青年は、季節外れの嵐に見舞われ足止めを喰らってしまった様だ。
「この後帰って編集しないといけないのに…」
オレンジ色の髪を肩まで伸ばして後ろで括っている中肉中背の青年の名前は平良龍生。
切れ長の瞳と犬歯が印象的な、所謂イケメンな青年である龍生は動画配信者をしている。ハ―チューブと言うサイトでチャンネル登録者数50万人を抱える人気配信者である。彼の運営するリュウセイチャンネルの人気シリーズである旅行動画を撮影するためにこの温泉街に訪れていた。
「幸い部屋は空いています。食事は昨日より質素になるかも知れませんが、もう1泊泊まっていかれては?もちろん、お金はいただきません。」
「んじゃあ今日はご厚意に甘えさせてもらうとするかあ…あ、けど一泊分のお金は払います。」
未だGWや連休を迎えていないのが幸いしてか、龍生がもう1日過ごす部屋を確保することはできそうであった。無料で泊まらせてもらうのは申し訳ないと龍生はもう一泊分の宿泊料金も支払うと申し出た。
「いえいえそんな…」
「もしかしたら今日は土砂崩れでお客さん達来なくてそっちも大変なことになるはずだ。こういうのはお互いさまってことよ!」
「あ、ありがとうございます。」
龍生も家に帰れなくなったことで少し混乱していたが、旅館側の計らいで気を持ち直した。今日は開けてもらった部屋でノートパソコンやスマホで先日撮影した動画の編集でもしようと考えながらロビーの椅子に腰かける。
「ああ、そう言えば河原の湯には行かれましたか?」
「確か温泉街よりももっと奥にあるってとこだっけ?昨日は大雨で行けなかったとこだな。」
「ええ、嵐も過ぎ去ったので今日は入れるみたいですよ。折角なので行ってみては?」
「じゃあ今日はそこの撮影もしよう!その前に、もう一回ここの風呂も楽しませてもらうぜ~!」
「はい、ごゆっくりお過ごしください。」
もう1日この地に滞在することをポジティブにとらえて、龍生は温泉を満喫することにした。
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「ということで、嵐の影響でもう一泊することになったぜ!ってことで今日は昨日行けなかった河原の湯に行ってみるぜ!」
暫くして龍生はカメラを片手に温泉宿を出る。
彼が滞在する温泉街の規模は有名な観光地ほど大きくはないが、温泉宿とホテルが幾つかあり、少し奥の方にはメインの露天風呂がある。さらに奥の山の方には河原の湯と言う小さな露天風呂があり、知る人ぞ知る人秘湯に龍生は行く予定であったが昨日は嵐の影響で行くことができなかった。
「今日はリベンジだ。って言っても道がぬかるんでるから気をつけないとな。」
カメラを回しつつも雨の影響でぬかるんで滑りやすくなった道に気を付けながら龍生は歩を進めていく。河原の湯がある場所は森の中で、宿があったエリアの様に道が舗装されていない。
「こんな奥の方にあるのか…まさに秘境温泉って感じだ!」
こういうロケーションだからこそ、動画視聴者はこの温泉の動画により興味が出るものだ。勿論龍生自身も興味津々だ。リュウセイチャンネルの動画内容の多くは龍生自身が興味ある場所に行ったりするというものである。
「さて、いよいよ温泉に到着だ!入る前に一旦確認だ。」
河原の湯は無料で入れる混浴露天風呂であり、周囲にある建物は更衣室ぐらいだ。
入浴中の人間は新たな訪問者に裸を見られかねない状態だが、あまり人も来ない地なので気にする人はいない。一応龍生はもし他の人が居たら撮影は止める予定だ。
「さて、まずはどんなものか拝見だ。」
他の人がいた時のためにと龍生はカメラを切ってから河原の湯の看板前まで歩く。もう既に視界には浴槽周りの岩が入ってきていたのだが…
「バ、バイク!?」
龍生の視界には普段の河原の湯ではあり得ない光景が写っていた。青色でヘッドが龍の頭のようになっていて金色の2本の角が生えているバイクが、白く濁った露天風呂に浸かっていたのだった。
「おっと、人が来てしまったか…」
「喋った!?」
そのバイクは温泉に浸かってるだけでなく、龍生に向けて言葉を発した。
喋るバイクという存在に龍生は驚き腰を抜かしてしまう。
「おっと、どうやら他の奴に見られちまったみたいだな…大人しく行くか。」
言葉を発したバイクが自分で動き、水飛沫を上げながら湯船から飛び出してくる。人の手を借りずに湯船から上がって来るバイクの様子に龍生は言葉を失い、風呂から出て移動していくバイクを視線で追うように首を動かす。
「って、ちょっと待てよ!」
龍生がその場から去ろうとしたバイクの進行方向に立ち塞がり、走行しようとするのを止める。
「な、なんだ…?」
自分のことを止める龍生に、バイクは驚愕の念を抱きつつもその行動への疑問を投げかける。
この地球上では異質な存在である自分に警戒し、捕えようとしているのではないかと考えを巡らせて警戒する。
「お前…なんかすごカッコいいな!!」
「すごカッコいい?」
だが、龍生のリアクションはそのバイクにとって予想外のものであった。
龍生は目を輝かせて喋って動くそのバイクの存在に興奮し、かなりの興味を示している。
「すごくてカッコいいってことだよ!喋れるし自分で動けるって、どっかの新型車か?」
龍生の視線はヘッドからマフラーへとそのバイクのボディラインをなぞるように移っていく。
喋るバイクの特徴的な装飾を例えるなら中国の伝説上の生き物である麒麟が相応しいだろう。そんな青と金のボディに龍生は興味津々だ。
「お前、名前はなんて言うんだ?」
「おう!俺の名前はマシンキリンジだ!」
自分のことに興味を示し、"カッコイイ"と言ってくれた龍生に気をよくしたのか、喋るバイクは自身のマシンキリンジと言う名を彼に明かす。
「おおー!マシンキリンジか~良い名前だ!どっから来たんだ?ていうかお前何者なんだ?」
「それはまあ…話せば長くなる。それより、ここはどこなんだ?地球だよな?」
キリンジのことが気になって仕方ない様子の龍生ではあるが、会ってすぐの相手に自分の素性や正体を話せるわけもなく、話題を変えようとする。
「当たり前だ。ここは地球だぞ。」
「地名は?」
「日本の新潟県だ。」
「日本…良かった、目的の土地には着いてたみたいだ。」
今現在、自分がいる場所が日本であると聞くと、キリンジは少し安心した様子を見せる。
ここが日本であることは龍生にとって当然のことであるためか、キリンジの様子を不思議そうに見ている。
「目的?何言ってるんだ?」
「まあ良い、とにかく今は行かないと。教えてくれてありがとう…この恩は忘れない。それじゃあ俺は行くぜ。」
自身の現在地を知ることができたキリンジは、早々にこの場を去ろうと自走し始める。
龍生を車が追い越しをする時のように避けて進み始める。
「もう行くのか…変な奴。」
相手の名前しか知ることができず、あっという間に別れの時が来てしまったことに呆然としつつ去ろうとする相手の背中(?)をただ見つめる。
「ったく、なんだったんだ…ていうかバイクが入った後じゃ風呂も入れないんじゃ…?」
龍生は謎のバイクに困惑しつつも、撮影を続けようかと考える。ただ、彼が入ろうとしていた温泉に先ほどまでバイクが丸々1台浸かっていた。その後の湯で身を清めることは流石にしたくないし、寧ろ身体が汚れてしまうだろうと考える。
(ていうかこれ、この辺の人達にとっても迷惑なんじゃ…?喋ってたし動いてたし、ていうか温泉に思い切り使ってたけど壊れてないのか?)
先程出会ったバイクのことを考えると、龍生の頭には多くのクエスチョンマークが浮かんでくる。一先ず撮影を切り上げて宿に戻る前に湯船とそこから見える景色の方に龍生は視線を移す。
「ドローンか…?」
普段であれば、湯船に浸かりながらその先にある滝などの自然の景色を楽しむことができるのだが、龍生の視線にはまた異質なものが写っていた。それは滝の付近を飛び回る2台のドローンであった。それらのカメラアイが龍生のいる方向を見つめると、加速して一気に彼に近付いていく。
「なんだ!?」
急接近するドローンに、龍生は咄嗟に身構えるがそれは杞憂に終わる。
ドローンは彼の横を素通りし、先程温泉に向かうために彼が歩いた道の方に向かう。正確にはそこに付いたマシンキリンジのタイヤ痕を辿るように…
「来やがったか!?」
そして龍生の耳に飛び込んでくるのは、森の静寂を切り裂くような銃の発砲音と先程出会ったマシンキリンジの声だった。
「何が起きてるんだ…」
龍生の足は無意識に音のした方に向かって走り始めていた。
「もうここまで追ってきてるのかよ!」
「当然だ。ギャラクシーブリッジを持っているのはお前達だけではないからな。」
先程のドローン2台はマシンキリンジに追いつき、彼の正面で浮遊しながらレーザー銃の銃口をキリンジに向けている。
「あれってさっきの…」
その近くの森の木に隠れながら、龍生はその様子を見ている。喋るバイクに喋るドローンと言う謎の存在の搭乗に困惑しつつもカメラを回してその様子を映像に残そうとしている。何かの証拠になったりするかもしれないと、片手に持ったビデオカメラでキリンジらの様子を記録している。
「さあ、マシンキリンジ。ここで消えてもらおうか。」
「ベイダー様の野望の邪魔をする者は消す!」
2体のドローンが銃口をキリンジに向けると、彼を狙いレーザーを発射していく。
「あんな動きもできるのか!?」
するとマシンキリンジはバックで後退し、レーザー銃による攻撃を避けていく。
通常のバイクであればバックすることはできないが、それすらも簡単にこなしているキリンジにまた龍生は驚きカメラを向け続けながら彼らを追う。
「こっちだ!来やがれ!」
追われるマシンキリンジはドローンによる追跡を回避するために、道を外れて森の中に入っていく。
「撃て!」
森の中に逃げ込んだキリンジにも、ドローン達は容赦なくレーザー光線を連射していく。
それらは木々に当たり葉や枝を地面に落とし、時折幹にも大きな傷を付けていく。
「アイツら…」
ドローンの放つレーザーは、キリンジだけを狙っていなかった。周囲の木々を倒して視界を確保しつつ相手が隠れる場所を減らしてしまおうという魂胆であった。彼らが放ったレーザーが細い木の幹に当たると、当たった箇所で折れてしまう。その様子を見て龍生はおもむろにカメラを止めると太めの木の枝を手に取って駆け出す。
「お前ら!何やってんだ!」
その木の枝を龍生は一体のドローンに振り下ろした。木の棒を叩き付けられたドローンは空中で姿勢を崩すがすぐに立て直して龍生の方を向く。もう1体のドローンも一度龍生の方を向く。
「お前ら…ここの森に何してくれてんだ!」
何処から来たのかも分からないような者達に、自然豊かできれいな森を荒らされることが許せなかった。その怒りから咄嗟に龍生は木の棒でドローンに攻撃を仕掛けてしまった。
「ここはあの人達のものだ!お前らどっか行け!」
お世話になった温泉街の人々の森を荒らす彼らに、龍生は木の棒を横向きに振って叩こうとするがドローンは少し上に上昇して避ける。
「邪魔な者も、消す。」
ドローン達の銃口は、龍生に向けられた。マシンキリンジを倒す前に、邪魔をした彼の命も奪おうとしている。彼らの持つ銃であれば、普通の人間を一瞬で仕留められる。そう判断してキリンジを撃つ前に龍生を始末しようと考えた。
「嘘だろ!?」
危険を察知して、龍生は彼らに背を向けて走り始める。
逃げる龍生に向けて放たれたレーザー光線が彼に当たらず地面に当たって、土埃を巻き起こす。
「そいつを巻き込んでんじゃねえ!」
ドローン達が森の木々にも攻撃を加えたことは、彼らにとって悪い影響を2つ与えてしまった。
1つは龍生の怒りを買い、彼による妨害を誘発してしまったこと。そうしてもう1つは一度斜面を降りていたマシンキリンジが再びこちらに駆け上がって来るための道を開けてしまったことだ。
「しまった!」
その間違いはドローン達の人生を一気に短縮してしまった。斜面を駆け上がって飛び出してきたマシンキリンジの前輪がドローン達にぶつかり彼らのボディを潰してしまった。
「た、助かった…」
「ったく、無茶しやがって…ただ、また助けられたな。ありがとう。」
「いいや、俺はただここの景色を守りたかっただけだ。あーやって森を荒らしたりするやつは許せない!」
この土地で1日滞在し、温泉や自然を満喫していた龍生にはこの土地の自然への愛着が湧いていた。
ここの風景を動画に収めて、視聴者に届けることを龍生も楽しみにしていた。
「で、アイツらは何なんだ?」
「その話は後だ。とにかく今はここから離れるぞ…」
襲撃者たちの情報が気になる龍生だが、まずはこの場から離れようとするキリンジ。龍生にとってはキリンジ自身のこともまだ分かっていないが今は彼の言葉に従うことが最良と考えて共に温泉街の方に向けて歩き出す。
「君達かい?ボクの可愛い部下たちを殺しちゃったのは?」
彼らが進み出そうとしたその刹那、何者かが上空から飛び降りて地面に着地する。
その者の頭部は地球上の生物で言えば馬の頭部の形をしている。その背中からは金属製の羽根が生えている。金属でできた体に人間と同じ両手両足が生えた体、まさに機械生命体と言える姿だろう。その怪人は龍生とマシンキリンジの前に立ちはだかる。
「お前は…ペガスノイド!」
「ぺガスノイド?まあ確かに、ペガサスっぽいとこはあるけど…」
馬の頭部に背中の翼、その名が表すように架空の生物であるペガサスを人型にしたような姿をしている。機械的だが美しいという印象を覚えるが、龍生達に敵意をむき出して、剣を右手に握っている。
「さっき君が潰した2体のドローン君達。僕の可愛い部下達なんだよねえ…おっと、君は星でもっと殺してったっけ?まあいいや。殺すのは決定だから。」
ぺガスノイドが剣先をマシンキリンジに向けながら、じわりじわりと歩を進めていく。
「で、どうすんだ?」
「逃げるぞ!俺に乗れ!」
「分かった!」
ぺガスノイドが剣を振るいながら彼らに駆け出すとともに、龍生はキリンジの上に乗る。マシンキリンジは龍生を乗せると180度旋回するとぺガスノイドに背を向けて走り始める。
「逃がさないよ!」
ぺガスノイドが翼を広げると龍生達に狙いを定め、金属の羽根を矢のように放って来る。
「撃ってきたぞ!しかもすごい攻撃頻度だ!」
「分かってる!」
連射される金属の羽根を避けるために、キリンジは車体を右や左に傾けつつ道を進んで行く。
「こっちに道がある!」
敵から逃げるために森林の中に入っていくと、その隙間を走り抜けていきまた新たな道に出る。
「そっちに行っても無駄だよ!」
ぺガスノイズは翼を使って飛行し、キリンジらを追う。低空飛行を維持しながら、道を走る2人を追う。
「このまま進む!」
「いや、ダメだ!」
まずは今は知っている道を進みながら、敵を撒こうとするキリンジ。だが、彼の考えていることを龍生が拒否する。
「なんでだ!?」
「この先に行けば温泉街だ。あんなやつ連れて来たら皆に被害が及んじまう!それだけは駄目だ!」
昨日1日お世話になり、嵐の影響で足止めを喰らった自分に親切に接してくれた宿の人々。彼らを巻き込んで被害を及ぼすことは龍生にとって避けたい事であった。
「つっても、このまま逃げることしかできないぞ!…いや、待て。まだあれがある!」
「アレってなんだ!?」
敵と自分達との距離、そして多くの人々がいる地域と自分達の距離が徐々に短くなっていく。その中でキリンジはある秘策を思いつく。
「なあ、お前名前は?」
「名前か?龍生、平良龍生だ!」
「そうか、じゃあ龍生!俺と一緒にアイツらと戦う覚悟はあるか?」
「覚悟か…覚悟ならある!この世界の…この国の素晴らしい景色を荒らす奴らがいるなら、俺がブッ飛ばす!!」
リュウセイチャンネルで、彼は多くの日本の地域を回っていた。そこで見た景色を愛し動画で視聴者たちに共有し続けていた。今自身に迫る脅威が、その風景を荒らすことは、彼にとって許せないことであった。
「良い覚悟だ!んじゃあ、共闘だ!一緒に戦うぞ!」
「おう!で戦うってどういうことだ?」
「こういうことさ、レイバドライバー!」
マシンキリンジが黄金に発光すると、その光が粒子となって龍生の腰に集まりベルトを形成する。
「な、なんだこれ!?」
「驚くのはまだ早い!いくぜ!」
『ヒーロー!』
『ローディング!』
キリンジのヘッド部分から飛び出してきた円形のディスクがベルトの中に挿入されていく。
「ベルトのレバーを引いて叫ぶんだ!"変身"ってな!」
「仕方ない、やるしかないんだ…いくぜ、変身!」
右手をキリンジのハンドルから離し、腰に付いたレイバドライバーのレバーを引く。
「こ、これは!」
『アップロード!ザ・ヒーローパワー!』
するとキリンジの身体が発光し、青色のボディが黄色に変化していく。そして光は機械の鎧へと変わり、キリンジに跨る龍生の身体に向けて飛んで行く。龍生の身体は黒いアンダースーツと、黄色の機械のアーマーに包まれていく。
「龍生、戦うぞ!」
「分かった!」
マシンキリンジに跨る龍生、いや仮面ライダーレイバと言うべき者は左足を地面に着けてキリンジの車体をスライドさせて停車。横向きに停車したキリンジに跨るレイバが仮面越しにぺガスノイドを睨みつける。
「さて、この森を…この街を荒らさせはしない!」
仮面ライダーレイバが初めて敵に対して行った攻撃、それはバイクでの突進だった。キリンジに跨りハンドルを握り、そのヘッド部分をぺガスノイドに向けてから加速していき真っすぐに突撃する。
「何ッ…!?」
ぺガスノイドは突撃してくるレイバとキリンジに対応できなかった。
一瞬空に羽ばたいて回避しようとしたが、先にキリンジの車体がぺガスノイドにぶつかり吹き飛ばされた敵の身体が地面を転がる。
「この僕の身体を汚したな!」
昨日の嵐で地面の土が濡れてぬかるんでいた。地面を転がったぺガスノイドの金属の身体に泥が付着する。自身の美しさに自信を持っていたぺガスノイドにとって、汚れがつくことは腹立たしい事である。
レイバ達を狙いって翼から金属製の羽を射出する。
「よし、いくか!」
レイバがキリンジから降りると、左右両方の腰に装備された鞘から剣を引き抜く。2本の剣、レイズブレードを左右それぞれの手に持ち振るい、飛ばされてくる羽根を次々と切り落としていく。
(軌道が分かるッ…!)
仮面ライダーレイバのヘルメット、通称レイズヘルメットは装着者の視覚をサポートする機能が多く搭載されている。暗視やサーモグラフィーなど様々な機能が搭載されているが、飛んでくる弾丸などの攻撃の軌道を読んで変身者に教える機能がある。
「便利だろ?その機能?」
「ああ、敵の攻撃がよく分かる!」
2本の剣を振るい飛んでくる金属製の羽根を切り落としつつ、レイバはぺガスノイドとの距離を詰めていく。そしてその間に、キリンジは自身の位置を調整していた。
「ファイア!」
突如レイバの後方で放たれた閃光が、ぺガスノイドの左翼を貫いた。
「僕の翼が!?」
「一丁上がりだぜ。」
翼を撃ち抜いたものの正体は、キリンジの車体後方にあるシートカウルから伸びた1つの砲台であった。
これは龍生が仮面ライダーレイバに変身した際にキリンジの身体に装備されたものであった。強力なプラズマキャノン、レイヤーキャノンがぺガスノイドの翼を狙い撃ち抜いたのであった。
「僕をここまでコケにして…!許さない!」
片翼を貫かれてしまったぺガスノイドは、怒りに任せてレイバらに突撃する。
レイバとの距離を縮めると、自身の持つ剣を彼の脳天目掛けて振り下ろす。
「こういう時は、もっと冷静にならないと。」
2本のレイズブレードを交差させて構え、振り下ろされた剣を受け止めながらレイバはぺガスノイドの足の脛部分を蹴って足払いして身体を転倒させる。
「いくぜ!」
倒れたぺガスノイド目掛けて、マシンキリンジが走り出して突進し、敵の身体を突き飛ばす。
「2対1は卑怯だぞ!やれ!やれ!」
ぺガスノイドが剣を上に突き出すと、複数体のドローンが彼らの下に飛んでくる。
「おっと、まだ居たのか。」
「何体来ようと、問題ないぜ!やれるな?龍生!」
新たな敵の存在に、少し驚きつつもレイバとキリンジはすぐに体制を整える。
4体のドローン達は低空飛行でレイバとキリンジに向けて突撃してくる。
先ほど彼らを襲った個体たちとは違い、ドローンの下部には電動丸ノコのような回転するブレードが付いており、回転する刃でレイバ達を切ろうとしている。
「当たり前だ!」
自身に向かってくるドローン達に対し、レイバも彼らの方に向けて剣を構えて走り出す。
レイバとドローン達の距離が徐々に縮まり、間もなく0になるかと思われた瞬間、レイバは地面にスライディングをして体制を低くしドローンの軌道から逃れる。
「はあッ…!」
下から上に向けて2本の剣を振り上げると、2体のドローンの身体を一刀両断。
更に地面を滑ってから立ち上がったレイバはぺガスノイドに切りかかる。
「後は任せろ!」
残ったドローン達が方向転換し、ぺガスノイドの援護を図ろうとするが、キリンジのプラズマキャノンが放たれ残ったドローン2体も撃ち落とされる。
「僕の可愛い部下たちを!またやったな!」
ぺガスノイドが振るう剣と、レイバが振るう剣が何度もぶつかり合う。
力は両手で剣を握るぺガスノイドの方が強いが、剣の本数ではレイバの方が多い。
1本の剣で敵の剣を受け流しつつ、もう1本の剣で切りつけ徐々にダメージを与える。
「くるぞ!」
だがこの距離をぺガスノイドは狙っていた。残った右翼から至近距離で金属の羽根を飛ばして攻撃しようと画策してた。だがその目論見はキリンジに見抜かれ、彼の警告を聞いたレイバは後退して回避。
自身に向かってくる羽根を剣で次々と切り落とす。
「やれ!キリンジ!」
さらにキリンジのプラズマキャノンが再び放たれ、ぺガスノイドの残った右の翼を撃ち抜いた。
「僕の翼が!!」
両方の翼がプラズマキャノンで撃ち抜かれてしまい、機能不全に陥ったぺガスノイドは空を飛んだり、金属の羽根を飛ばすことができなくなった。仕留めるなら今だと感じたキリンジがレイバに声を掛ける。
「トドメを刺すぞ!もう一度ベルトのレバーを引け!」
「分かった!」
『ヒーローパワー!フルバースト!』
キリンジの指示に従いレイバが自身のベルト、レイバドライバーのレバーを引くと中に挿入されたヒーローコアディスクの力を全開放して全身に駆け巡らせる。
「いくぜ!」
赤色のオーラがレイバ自身とキリンジの周囲に漂い、2人が高く飛び上がる。
『ヒーロー!ブレイキングフィニッシュ!』
右足を突き出した体制のレイバと、レイバの右隣のマシンキリンジが地上にいるぺガスノイドに向けて突撃していく。降下しながら身体を敵に向けて突撃させていき、ぺガスノイドの身体にレイバの蹴りとキリンジの突進がぶつかる。
「クッソ!ぼ、僕がこんなところで…!死にたくない!ああっ…!」
レイバのライダーキックを受けたぺガスノイドの身体が限界を迎え、爆発四散する。その様子を見ながらレイバはベルトからディスクを引き抜いて平良龍生の姿に戻る。
「中々やるな。龍生!」
「お前の方こそ、良い援護だったぜ。」
姿が黄色から青色に戻ったキリンジが徐行しながら龍生の下に寄って来る。
「今回は龍生がいてくれて助かった。無事にアイツを倒せたぜ。」
「まあな、それより気になることがある。結局、お前もあの敵も何者なんだ?」
「確かに、話す必要があるな。とりあえず他の奴がいない場所で話すぞ。」
「分かった。」
喋るバイクと言うこの地では異質な存在を、他の人に見られる訳にはいかないと隠れれる場所を探して歩き始めたのであった。
平良龍生
CV浅沼晋太郎
22歳
身長:170cm
体重:61kg
容姿
オレンジ色に染め、長さが肩まである髪を一つに束ねている。
ライトグリーン色で切れ長の瞳と犬歯が印象的な、端正な顔立ち。
キャラ詳細
性格は所突猛進で、天才型。かなりの自由人で普段から1人でいることが多い。
旅行やチャレンジ企画でチャンネル登録者数50万人を突破している人気動画配信者。
小学生の時から動画配信者に憧れて、高校時代にハ―チューブというサイトで配信活動を始める。
高校の卒業旅行で沖縄旅行に行ったときに壮大な自然の景色に惚れ、景色を守るだけでなく動画で多くの人々に自分が見た景色をシェアしたいと思い旅行企画をスタートさせる。
大学にも進学したが、旅行系動画を出すための遠征が増えて現在休学中。
勉強が得意で動画に関する知識や、動画で行った場所に関する知識が豊富。
トレーニングもしていて身体能力が高く、引き締まった体格をしている。