心の穴を満たして   作:絆蛙

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感想のお陰で続けれてます。ありがとうございます。
ちょっとずつオリジナルになるかな。
一応最後まで行ったら、最後は分岐考えてます。
あとウルトラシリーズに関してネタバレ注意です。作者の個人的見解というか好みも入ってるので。
そういえばこの世界ってどこまでウルトラマンやってるのかな。ジード映画後、ルーブ放送中くらい?




幽・霊

 

 

 

 

---夢を抱くことさえ 許されないような時代が

君の涙を流すのかな?

でも夢を抱くことを そう 怖がらないで

足掻き探してゆくのさ

 

また聞こえてきた歌声。

夢を見つけられず苦しみながらも、自分自身の足掻きながら探るような歌。

 

---やりたいことを 見つけたとき。

きっと誰もが 輝くHERO

掴め確かな未来を 揺るがない想い抱いて

変わっていくことに怯えていないで

ゼロから始める夢が きらめく星になって

きっと僕らの未来 照らしてゆくから---。

 

何より、まるで何も無いところから夢を目指す者への励ましの歌。

一人でないことを伝え、力を合わせて、輝かしい未来を掴まんとするような歌詞。

知らないはずの曲なのに、知っている。

本当になんなんだ、これは---

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ…ぐう」

 

頭が痛い。

目が覚めて一番に思ったことはそれだった。

昨日は情報が多すぎた。

学校が燃え、街に怪獣が現れた。そしたら友達が巨人になって、グリッドマンとして戦った。

非現実ばかりだ。全く眠れなかった気がする。寝たのに意識だけがうっすらとずっと残ってたような、そんな感覚。

けれど学校の様子が気になるし、もしかしたら学校は無事かもしれない。

そのためにも行かないといけないだろう。

そう思って、俺は体を起こした。

 

「……は?」

『---へ?』

 

そう、体を起こした。

それだけだったが、目の前に映ったものに理解が追いつかなかった。

ここは何処だ? 俺の部屋。

当然ながら両親がいないから俺一人しかいないはず。

言葉が返ってきてる時点でおかしいが、一番おかしいのは目の前の存在だ。

浮いている。それはもう浮いている。

人間が空を飛ぶとはどういうことだろうか。もはや驚きを通り越して混乱していた。

見た目から判別出来るのは女性。

何故か見知らぬ制服らしきものを着ているが、黒髪の少女だ。見た目は整っていると思うし、外見的に美少女と呼べるだろう。

ただ不思議と彼女の容姿には既視感を感じる。

けれどやはり理解ができない。

 

『え? 見えてる? うそ、見えてるの? もしかして歌ってるの聴いてた?』

「………」

 

目の前の少女は驚いたようにこちらを見ると、恥ずかしそうにそんなことを聞いてきた。

どうやら俺は声が聞こえる上に見えてしまうらしい。

つまり、これは---

 

「夢か」

『え』

 

俺は考えるのをやめて布団に潜る。

寝たら目が覚めるだろう。夢の中で寝れるかどうかは分からないが、これ以上悩みの種を増やされては困る。夢だ、これは夢に違いない。

 

『って、こんな時間! 夢じゃないよー! ほら、自分の頬抓ってみて!』

 

誰が夢の中の言葉を真に受けるのか。

まぁしかし、確かめるのは無料だ。時間が掛かる訳でもないし試しに頬を強く抓ってみる---

 

「痛っ!?」

 

どうやら夢じゃなさそうだ。

ということはこれは現実か…そうか……学校あるか知らんけど休もう。

 

『ちょっ! もー! はいはーい! 朝だよ、起きて起きてー! 早く準備しよ準備! 学校行く時間だよ、少年! あっ、それともお姉さんが色々と手伝ってあげようか?』

「っー! 耳元はやめろ!?」

『やっと起きた! ほらご飯ご飯!』

「………はあ」

 

反射的に起きてしまったが、目の前には変わらず少女がいる。何が楽しいのか笑顔だし。

全く心臓に悪すぎる。これが夢じゃないなら俺の部屋に異性がいるということになるわけで…考える内容が増えた。

変わらずふよふよと浮いてるし、超能力か? そんなこと有り得るのか? いや、有り得てるんだよな…。

しかし彼女の言葉も最もだ。あんなことがあって休んだら心配させるかもしれないし、お腹が空いているのも事実。俺は自分の部屋から出て、いつもの癖でドアを閉めた。

 

「…あっ! ごめん---!?」

 

その行動を終えて気づいた。

俺の後ろを浮いてついてきていた彼女に当たってしまうと。

だが俺の心配は杞憂で、直ぐに驚愕の光景を目にした。

 

『えっ? なにが?』

 

ドアを閉めた影響で当たる---わけではなく、少女の体が埋まっていた。

首から先を出して、体は埋まったまま不思議そうに俺を見ている。

 

「なぁっ…!?」

『んー…あ、言ってなかったっけ? 私、死んでるんだよね! いわゆる幽霊ってやつ?』

「………」

 

聞いてもないし明るく言うようなことでもないと思うのだが。通り抜けて来たのを見れば流石になんと言うべきか分からない。

ご冥福をお祈り致しますとでも言えばいいのか?

目の前の彼女は彼女の言うとおり幽霊というやつなのだろう。

何が原因かは分からないけど、死んでこの世界に留まってるわけで…。未練があるから成仏しないとか…。

 

『はい! 私のことはいいから少年は早くご飯食べる! じゃなきゃ育たないぞー?』

「---いや、誰目線?」

『お姉さん視点かなー』

 

考えても仕方がない。

彼女が誰なのか聞くのは後にしよう。

そう決めた俺は部屋からリビングに向かう。

 

『おおー! …って、そんな何も無いね?』

「何を期待したんだ…?」

『お姉さんがっかりだよー』

「悪かったな」

『でも部屋には怪獣のフィギュアがたくさんあったし、ちゃんと趣味があるのは安心かな』

「いや、あれは……まあ間違ってないか」

 

本当は記憶喪失前の俺が集めてたと思われるだけで、俺が集めた訳では無い。

しかし俺の中で怪獣が好きな気持ちがあるのは間違いないだろう。良くないことだが、怪獣が現れた時は内心で興奮した。

現物は迫力が凄く、凶暴性も熱も違ったが。

一人だったら興奮してはしゃいでたかもな。

 

『わあー! すごっ! ウルトラシリーズばっかり! 映画まで完備してる!? これフェスじゃん! ねぇねぇ、新世紀ウルトラマン伝説見よ?』

「待て、なんでそれチョイスした?」

 

名前を聞いた途端、一瞬でダンスするウルトラマンたちや親子が介入する話、天空魔と戦う内容が蘇ってきたが、もっと他にあるだろう。

 

「というか学校だから流石に見れない……ってしまった。買い物忘れた」

『んー? うわぁ……何も無い…。流石にこれはどうかと思うよ…?』

「……パンは買ってる。今日はそれでいいや」

 

俺の反応に気づいてか覗きにきた彼女は引いていた。

俺もどうかと思うが昨日はあんなことがあって、そのまま帰ってしまったのだ。

ただお腹は空いてたからコンビニでパンを買ってた記憶はある。

実際に昨日荷物を置いたところを見ると、五枚切りの食パンはあった。

冷蔵庫にマーガリンはあるし、それを塗って食べよう。

 

『あれ、少年は生派?』

「いや…そういう訳じゃないけど、今日はこっちでいい」

『ふーん……あっ、私も食べたい』

「いいけど…食えるのか?」

『ふっふっふっ…甘いよ、少年。ずっと無理だった!』

「………」

『ああっー! 待って待って! 今日はいける気がするの! お願い食べさせて! もう二週間も何も食べてないからぁあああ!』

 

そもそも幽霊って現実に存在する物に触れられるのだろうかとは思うが、朝から騒がれるのは勘弁願いたい。

ため息を吐いて俺はパンを三切れ取り出すとマーガリンを塗った食パンを二切れ用意し、何も塗ってない一切れはトースターに突っ込んだ。

 

「いただきます」

 

用意した食パンを齧りつつ、トースターを眺める彼女を見る。

相変わらず浮いているが、楽しそうな様子だ。

なんというか、掴みどころがない。

いや、そもそも…何も聞いてなかったな。

 

「えっと…ごめん、なんて呼べばいい?」

『え〜? お姉さん、でいいよ?』

「チェンジで」

『そんなぁ!? 酷いなーよよよ…』

 

悲しそうに泣き真似をするの彼女を冷めた目で見る。

涙を流されてたならともかく、嘘と分かってるのに引っかかるほど俺は間抜けじゃないんだけど。

 

「で、なんて呼べば?」

『少年が冷たい! まあ…変なのじゃなければ何でもいいよ。お姉さんとか幽霊とか』

「ふざけてる?」

 

選択が一つ増えたとはいえ、何も変わっていない。

俺は名前を聞きたいから聞いてるわけなのだが。

 

『ふざけてないふざけてない! 今回ばかりは本気だよ! というのも、私自分の名前知らないの』

「知らない? どういうことだ?」

『私、死んだって自覚はあるんだけどね? それ以外自分のことはさっぱりなんだよねー名前も知らないし死ぬ前に何をしてたのかも分からないんだ。なんて言うんだっけかーえーと』

「…記憶喪失」

『あ、そうそう! それそれ!』

 

驚いた。

幽霊なのはもう分かっていたが、まさか記憶喪失だったとは。

ということは本当にふざけてるわけじゃなかったのか。

悪いことをしたな……謝るか。

 

「それは…ごめん。配慮不足だった。記憶喪失がどんなのか分かってるのに」

『いいよいいよ。気にしてないから! それよりそれってどういうこと?』

「俺も記憶喪失なんだ」

『ええー! 凄い偶然! 仲間だねー、やっぱりお姉さんと呼んでいいよ?』

「---で、幽霊さんはどうしてここに?」

『少年のいけず! 寝坊助! 親切! 端正!』

「それ罵倒のつもりなのか…?」

 

もしそうなら、彼女は間違いなく人を罵る才能が無さすぎる。

なんか途中から褒められてるし。

 

『お姉さんと呼ぶまで答えません!』

 

そう思ってたら、拗ねたようにそっぽ向かれた。

幽霊なのにも関わらず人間味があるというか…人間とそう変わらない。幽霊なんて怖いイメージしかなかった。

ちょっと面倒臭いところがあるが…だいたい年齢的には同じくらいだろう。大学生ならまだしも、制服的に見たことは無い服だが高校生か中学生のどちらかだ。

 

「じゃあいいや。俺はとっとと学校行くから---」

『わぁー! 話す! 話すからー! パン食べさせて!』

 

気になった以外に理由がないから聞いただけなのだが、彼女は俺が家から出ることに焦るように慌てていた。

俺が学校へ向かうと不都合があるのだろうか…話してくれるならいいか。時間的にまだまだ余裕がある。早く出ようと思ってた理由は昼飯買おうかと思ってたくらいだし、学校の購買いけばいいか。

 

『もぉ! いつか呼ばせるからねー?』

「いや、どういうシチュエーションになったら呼ぶことになるんだよ…?」

 

生き別れの家族ならば、まだしも。

とにかく俺はため息を吐きつつ、トースターを止めると取り出したパンを皿に置いて幽霊の前に置いた。

すると彼女は目をキラキラ、と輝かしており---というかマジで見えるのは錯覚だと思いたい。

それはともかく、バターを塗るか聞いてから塗っておく。

ここまでして食べれなかったらどうしよう…と思ったけど、俺が食えばいいか。

朝から三切れはキツいが、勿体ない。

 

『食べながら話そっか』

「そっちがそれでいいなら」

『うん、いただきまーす!』

 

手を合わせて早速食べようと彼女は両手でパンを持とうとし、案の定すり抜けた。

うっすらと予感していた通りの展開になってしまい、俺は何も言えなくなると彼女は絶望したように勢いよく顔をテーブルに置いていた。

無論、全部すり抜けているので特に衝撃が来たりとかは無い。あくまで形だけだ。

 

『わたしの、ぱん……』

「…あー……えっ、と…」

 

生きてないのだから、物体に触れることは出来ない。

何らかの特殊な力があるならまだしも、そういうわけではないのだろう。

しかし流石に同情はする。

 

『つらい…もうむり……』

「まぁ…仕方がないんじゃないか。無理なものは無理で諦めるしか---」

『そんなの納得できなーい! もう少年の食べる!』

「いや、だからっ!」

 

人の話をまともに聞かず、彼女は勢いよく顔を挙げると俺の手にあるパンに口を開いて噛み付いてきた。

どうせすり抜けるだろうという安心感はあったので、俺は迫力があるなぁ、と呑気なことを考えていたら---

 

『お……おいしいー!!』

「…は?」

 

食べかけのパンに小さな齧ったあとが残っている。

男女の差があるのだろう。

明らかに俺が食べた一口と違い、彼女が食べた一口が小さく。お陰でパンの形がちょっと歪になっている。

そんなことはどうでも良く、問題はさっき食べれなかったのに俺が持っているパンを食べれた意味が分からない。

なんだこれは。

 

『美味しいよ、少年! 二週間ぶりの食事! 感動した!』

「…どういうことだ?」

『え?』

「さっきは無理だったのに、なんで?」

『あ、確かに! なんでだろう?』

 

本人が分からないなら俺が分かるはずもないだろう。

俺はちゃんと実体があるわけなんだし。

 

『じゃあ、試しに…と。

あ、無理かー。こっちは? おいひい!』

 

皿に置いている焼いたパンは無理だが、俺が持っているパンは食べることが出来ている。

よく分からないが、つまりそういうことなのだろう。

俺が代わりに焼いたパンを持って差し出してみると、彼女は目を丸くさせて理解したように頷くと一口食べる。

 

『わ、食べれた! さくさく〜♪』

「そういうことか…」

『?』

 

どういう原理かは分からないが、俺が触れていたら問題ないのだろう。

つまるところ、俺に特殊な力がある…というわけではない。

今まで得た情報から推察するに、彼女が原因か。

この家に居る理由と繋がっているかもしれない。

 

「多分俺が触れてるものなら食えるらしい。正確には触れられる? そこは調べないと分からないが…食べながらでいいからここにいる理由を教えてくれないか? そうしたら理由も分かるかもしれない」

『なるほどなるほど…といっても大したことじゃないんだけどね? 私死んでるでしょ?』

「みたいだな」

 

正直俺も壁に埋まっている状態やパンに触れられない姿を見なければ信じてなかったと思う。

夢か幻覚かと思ってたかもしれない。

 

『目覚めたのは二週間前くらい…かな? 倒れてたら誰も私を認識してなくて自分自身も何か分からなかったんだー。

だけど何もしない訳にもいかないから声を掛けたりしてみたんだけど聞こえてなくて。どうしてだろうと思って今度は触れたら気づいてくれて会話出来るかなって触れようとしたらすり抜けたの』

 

二週間前となると、まだ俺は記憶喪失になっていない頃だ。

彼女はそんな前から記憶もなく過ごしていたのか。

 

『それで気づいたんだ。ああ、私死んでるんだって。そう自分が理解したら特にやることもなくてね。ずっとぶらぶらしたり寝たり街を探索してたりしながら幽霊なら浮くことが出来るかなーって思って飛びながら眺めてたんだ。正直食事をしたいのに食べれないのは辛かったよー』

「……」

『そうそう! 一昨日かな? その時はね! 昼だってのに星みたいな光がバーって弾けてて綺麗だったなーなんだろ、花火でもやってたのかな?』

 

話が逸れている。

というか昼から花火なんてしても上手く見えないだろう。するわけ…一昨日?

俺はその記憶が無い。というか記憶を失った日だ。

もしかして時期的にその光が何か関係が…関係あるとしたら、裕太くん…か? いやまさか、そんなわけ。

おそらく、偶然か。誰か実験でもしてたのかもしれないしな。

 

『あっ、ごめんね、話が逸れたね。それでねーいつもと変わらずにぶらぶらしてたら昨日怪獣が出てきて、他の怪獣とは違って動いてたし炎吐いてたのは驚いたなー。ただ怪獣には私のことが見えてるみたいで、私しかいなかったのにこっち向いて撃ってきたから慌てて逃げてきたの。何度も何度もすり抜けてたらいつもより動いたせいで疲れちゃってねーいつもこの付近は落ち着くから休む時は居たんだけど今日は少年の部屋で寝ちゃってた!』

 

どうやらここに来た経緯は偶然だったようだ。

ただ違うのは彼女を認識出来るのが誰も居なかったのに、俺は見えたという点か。

後は彼女も霧の向こうの怪獣が見えるらしい。これに関しては俺の気のせいではなかったということの証明になる。

別に本当だったってことが分かっても何かやるわけではないのだが…。

いやしかし、話から察するに今日の朝までここにいる理由にはならない。

落ち着くのは、まあ幽霊的に何かあるんだろうが。

そもそも、もしかしたら俺にも見えないと思ってたから居たのかもしれない。

 

「話は分かったけど……いつまでも俺の部屋に居る理由にはならなくないか?」

『あー…それは…えっとね……』

「?」

『お、怒らないでくれるなら…話す、よ?』

「聞いてみないことには分からないが…少なくとも記憶を失ってからは怒ったことは全然ないから安心してくれていい」

 

妙に歯切れが悪いのが気になるが、実際に俺は怒ったことは無い。

ボールが顔面に当たった時も怒りはなかったし。

あれに関しては裕太くんや新条さんに当たってたら怒ってたかもしれないけど。

ただ俺の部屋に居る理由だけが気になる。

 

『じゃ、じゃあ…実はね? 起きたとき、ちょっと動きにくいというか…とにかく違和感はあったんだけど気にしてなかったの。なんでだろうって思って周りを見渡したら少年が寝ててね? じーっと寝顔を見てたんだけど…』

「…ツッコミを入れたいところはあるけど、それで?」

『無防備で寝顔可愛いなーって少年のほっぺたつんつんしてたら少年に取り憑いちゃったみたい。えへ♡』

「……はぁ!?」

 

無駄に茶目っ気たっぷりにちろりと舌を出してウィンクする彼女。

怒りよりも驚きが感情を占める。

つまるところ彼女は俺に触れて取り憑いてしまったということなのだろう。

ならまず俺が触れてたら問題ないのはそこが理由としか考えられない。

 

『いやー今思えばあれって少年に吸い寄せられてたんだなって思うんだよねー。唯一触れることが出来たし? 私と少年、体の相性がいいみたい---なーんて♡』

「実体は無いだろ…」

『そうだった!』

「…はぁ」

 

なんというか、考えるのが嫌になってきた。

ようやく痛みが引いてきてたのに、さらに頭痛が酷くなって来た気がする。

片手で頭を抑えるが、それで治るはずもない。

考えるのはひとまず置いておいて、もう学校行くか……。彼女の性格も何となく分かってきた気がする。

 

「とりあえず…分かったことは俺が触れてるものなら問題ないのは、今のところ取り憑いてるのが原因だろうな。離れることは出来ないのか?」

『早速引き離す気!?』

「下手に動かれるよりはそのまま居てくれた方がいい……俺しか見えないなら放っておけないしな。ただ試しに、だ。吸い寄せられてるって言ってただろ?」

『もーそれなら最初に言ってよー。素直じゃなくとも優しい子は好きだよ!』

「あんまりそういうのはだな…いいや。それで行けるか? 恐らく動きづらかった理由も地縛霊的な感じだと思うしさ」

『なるほど! 早速試してみるねー』

 

俺の中で整理した内容を伝えると、従うように彼女は少しずつ俺から離れていく。

窓側の方へ向かっていき、すり抜ける。

しかし少しして動きが止まった。

彼女も首を傾げており、動こうとしているようだが進まない。

ざっと10mほどか。

試しに俺が彼女に近づいてみると、その分だけ進んでいた。

地縛霊のような場所に縛られるのではなく守護霊のような人に縛られるタイプのようだ。

そこは予想通りだったので何とも思わないが、戻ってくるようにどう伝えたらいいのだろうか…なんて思っていたら、普通に帰ってきた。

 

『どう?』

「10mくらいなら離れられるらしい…ってもうこの時間か。学校に行かないとまずいから行くが……」

 

この幽霊さんどうしたらいいのかな。

他の人には見えないなら問題はない…か? そもそも離れられないみたいだけど。

 

『じゃあ行こ! あっパンは食べたい!』

「…早く食いますかね」

 

何はともあれ、時間がないので喉に詰まらせない程度に食べるのを急いだ。

まだ道に慣れていないのもあって何があるか分からない。

少しは余裕を持って出たくて、食べ終わったら皿を洗ってからカバンを持って写真立てに行ってくることを言うと靴を履いてドアを開けた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

ドアを開くと、ちょっとした違和感を覚える。

なんというか、静かなのだ。

昨日怪獣が出たというのにここまで静かなものだろうか。

こんなことならニュースでも見るべきだった。学校に行く間に見るのも手だけど、そんな余裕なかったしな。

それもこれも俺に取り憑いた幽霊さんのことで一杯一杯だったからなのだが。

 

「どうしたの?」

「いや、別に何も……って、んん?」

 

今度は明らかな違和感を感じた。

つい普通に返してしまったが、違う。

隣から聞こえてきた声に俺はゆっくりと視線を向けると、そこには。

 

「おはよう、雨野くん」

「な……ぇ、新条さん!?」

「わっ…!? もぉー朝から元気だね?」

「ご、ごめん…驚いて…じゃなくって! え、どうして?」

 

昨日と何ら変わらない、赤紫がかった銀髪に赤い瞳の少女がいつの間にか俺の隣に居た。

正確には既に居た、というのが正しいのだが幽霊の存在よりも驚いてしまった。

内海くんの話的に、彼女はいわゆる高嶺の花といった存在のはずだ。

俺と関わる理由は、はっきりいってもうないと思うのだが。

 

「一緒に登校したいなーって思ってね〜。ダメかな…?」

「い、いや…新条さんがいいなら良いけど…待ってた、とか?」

「んー、ちょっとだけ?」

「それは本当に、ごめん……」

「あはは、雨野くんは悪くないじゃん。そりゃもう約束したのに遅れて来てたなら、アレだったけど---私が勝手に待ってただけ」

「そっか…うん、良いなら良いんだけどね」

 

正直新条さんと登校できるのは嬉しいと言えば嬉しい。

なんで俺なんかに近づいてくれるのか分からないが、話せる相手が裕太くんたちを除けば俺は新条さん以外いないぼっちなのだ。

学校に行ってからまさか本当にぼっちだったという嫌な真実に気づくとは思わなかったからな。

 

「それよりも」

「うぉ…新条さん?」

 

顔を近づけてきた新条さんにちょっと身を反らす。

彼女の赤い瞳が真っ直ぐ見てきて、引き込まれそうになる。

彼女の瞳を直視するのは、中々に難しい。

考えないようには頑張っているが、俺も男なんだけどな。頑張れているのも記憶喪失のお陰だ…お陰なのかな。もう便利な言葉になってるまである。

とりあえず記憶喪失のせいにしとけばいい気がしてきた。

つまり幽霊が見えるのも記憶喪失か…あれ、何かよく分からなくなってきた。

 

「……うん、大丈夫そう」

「……あぁ」

 

ゆっくりと離れる新条さんに俺は僅かに考えて思い出す。

なぜ彼女が突然顔を近づけてきたのか、考えるにひとつしかない。

 

「ありがとう、心配してくれた…のかな」

「少しね。顔だったから、傷ついてたら大変でしょ?」

「まぁ…けど、もしそうだったら新条さんを守れた名誉って思ってたかもね」

「へぇー面白いこと言うね?」

「そう思って貰えたなら、何よりだよ」

「ふふふ、そっかぁ。やっぱり会いにきて正解だったなー

 

ちょっとした冗談を言ってみたら、彼女は笑っていた。

本心かお世辞かどっちかまでは分からないが、ボソッとした小さな声の呟きを俺の耳は拾う。

俺は難聴でもないので、これくらいの距離なら聞こえる。

そう言ってくれるのは嬉しいものだ。

もちろん、小さな声ということは聞かれたくなかったかもしれないので言うつもりはないけど。

…そういえば幽霊さんがずっと静かだな。

 

『しょ、少年……やばいよ……』

 

そう思ってたら、声が聞こえた。

気づかれない程度に視線を移せば、幽霊さんが震えている。

……まさか、また怪獣か!? こんなところで!?

 

『この子、めっちゃかわいいんですけどー! え、なにこの子? か、かわ…きゃわわ! うわぁー! いい匂い! 顔も整ってるし、スタイル良いなー! 肌も白いし、柔らかそう! ねえ少年、この子の髪の匂い嗅いでみて! いい香りだよ! 髪質も良いし! 髪の毛長くしたらもっと色んな髪に出来るのになー!』

 

俺の心配を返して欲しい。

この人、もしかして変態なのでは無いだろうか。女の子同士だからセーフなのか? その辺はよく分からん。

てか俺がやったら犯罪というか姿が見えないことを良いことに自由にしすぎだろ…。

今からでもこの幽霊引き離せないかな。

 

『ちょっと少年、今酷いこと思わなかった?』

 

抗議の目を向けてくる幽霊さんを無視する。

話したら俺が変人扱いされてしまうし、自分自身の言動を思い返せとしか言いようがない。

 

『この子にしかやらないよ!!』

 

人の心をさらり読んでくるのなんなんだ。

というか新条さんにもやめろよ…。

 

「雨野くん?」

「……ああ、いや。あんまり眠れなくてさ。ぼうっとしてた」

「そうなんだ。ちゃんと寝ないとダメだよ?」

「…そうするよ」

 

無駄な心配をさせてしまったのは申し訳なくなる。

これも幽霊さんが原因なんだけど、言っても意味が無いことだ。

俺にしか見えないのが悲しくなる。誰かこの辛さを共有して欲しい。

 

『それにしても少年も隅に置けないなーこんな彼女がいたなんて』

「…彼女では…」

「? 何か言った?」

「時間! 時間やばいかなって!」

「時間? えっと、今は……」

 

新条さんがスマホを取り出している隙に俺は幽霊さんを忌々しげに睨む。

目を逸らされた。

いや、反応した俺も悪いが…それは流石に新条さんに失礼だろう。俺なんか記憶喪失が取り柄見たいなもんだぞ。

……ん?

 

「まだ余裕あるみたいだね」

「ありがとう、確認してくれて。俺が先に見れば良かったんだけど…ほんと……」

 

頭が痛くなってきて片手で抑えてしまう。

頭痛薬でも買うべきかな、これは。

 

「なんか体調悪そうだし……いいよ、そういう時もあるもんね」

「…今度何か奢るか何か出来ることあればやるよ」

「その時はお願いしようかな」

 

朝の用意の時に鏡で見た時に気づいたが、目には隈が出来ている。

それに助けられた気がした。

これのお陰で体調が悪いと思われたのだろう。

よく寝れなかったことが活きてくるとは…何があるか分からないものである。

 

「学校、行けそう?」

「行くよ。それに新条さんが誘ってくれたから…嬉しかったし」

「…そ、か。なら行こ?」

「うん」

 

普段言うことは無いであろうことが口から零れてしまった。

くそぅ、やはり今日は体調に優れないようだ。出来るなら変なことを口走らないことを祈ろう。

俺はそう思いながら、変態幽霊の言葉を無視した。

 

『ちょっとぉ!? 変態じゃないからね!?』

 

無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校への道はそこまで苦ではない。

新条さんと歩いて向かうのはこれで二回目だが、俺は嫌じゃなかった。

誰かと一緒に居るというのは心地が良いものだ。

もちろんこれは俺が勝手に思ってることなので、新条さんがどう思っているかは分からない。

 

『お姉さんは心配だなー少年は自己評価低すぎるんじゃない?』

 

低いのではなく、客観的事実だ。

俺は何も無い人間だ。特別な才能も記憶もない。

……裕太くんのような、やるべきことも。

 

「ねぇ、雨野くん」

 

そんなことを考えてたら、新条さんに呼ばれたので首を傾げる。

何か話があるのだろうか。

 

「怪獣のこと分かるんだよね」

「え? うん、一応」

 

果たしてそれは、どっちのことなのだろう。

ウルトラシリーズなのか、それとも……。

 

「どんな怪獣がすき?」

「どんな、どんなか……」

 

意味からして、ウルトラシリーズの方見たいだ。

けど俺は怪獣が分かるだけで、記憶があるわけじゃない。

そう言われたって、覚えているのは記憶喪失になってから頭に浮かんできた数体の怪獣のみだ。

家のソフビはあんまり見てないというか、そんな余裕一昨日も昨日もなかった。

 

『グロマイトとかどう? ウルトラマンメビウスに出てくる怪獣! メビウスはねーなんと地球人と共闘し、ウルトラ戦士の宿敵であるエンペラ星人を討伐して3万年前から続くウルトラ戦士と闇の一つの因縁に決着をつけるという凄いことを成し遂げたウルトラマンなんだよ』

 

薄々思ってたけど、この幽霊さんはウルトラシリーズに詳しいようだ。

自分のこと以外って言ってたし、その辺は覚えてるのだろうか。

活躍に関してはあんまり凄さは分からなかったが、すぐに思い出された『暗黒宇宙大皇帝』の強さはとんでもなかったので、記憶に蓋をした。全力を出さずウルトラマン二人を念力だけで圧倒するってなんだよ…。

しかしメビウスか…となると。

 

「ディノゾール、かな」

「ディノゾール?」

 

---宇宙斬鉄怪獣、ディノゾール。

群れで暮らし、生きるために必要なエネルギー源である水素を求めて宇宙を渡る習性を持つ怪獣。

いかつい見た目に反して自ら攻撃を仕掛けるような凶暴性は持たない大人しい性質を持つ割に、能力は割とえげつない怪獣。

矢尻のような二本の尻尾も強力で背部の爆発性のある流体焼夷弾も凄まじいが、一番はそこではなく。

最長1万m、直径約1オングストロームのムチを振るうなんて第一話に出てきていい怪獣ではない。

 

「確かに特にあの歯舌、断層…えーと」

「スクープテイザーだっけ」

「そうそう、それそれ! あれ凄かったもんねーもっと遮蔽物がないところだったらなーでも衛星を破壊した上に部隊をほぼ全滅させたのは頑張った方だよね」

「あれでもメビウスって優秀だったとか。

見た目も怪獣って感じで結構好きかな。あのちょっと長い首に凶暴性を感じさせる顔や口とか」

「あ〜分かるなー。ディノゾールといえば、ディノゾールリバースは?」

「うーん…あっちは、うん…ちょっと……否定はしないけどなぁ……」

 

またしても思い出すが、俺は通常の方が好みだ。

双頭というのも怪獣らしいと言えば怪獣らしいけど。

 

「私も同感かな」

「そう言う新条さんはいるの? せっかくだし、メビウスで」

「そうだなぁ…あっ! グローザムとか? バーニングブレイブを正面から倒してファイヤーウィンダムも一蹴した強さは凄いよねー」

「あそこの防衛チームは強いみたいだしね。不死身とはいえ、強化形態倒すのは普通にすごい。それ言えば、あのウルトラダイナマイトですら倒せなかったインぺライザーもなかなか…」

「そのインぺライザーや四天王を従えてたエンペラ星人もタロウの時に示唆されてただけあって凄かったもんね。全く寄せ付けない強さは惚れ惚れするよー」

「後に銀河伝説で改めてそう思わされたな」

「うんうん」

 

気がつけば次々と言葉が出てくる。

ころころと表情が変わっていく彼女を見てると、俺も嬉しくて。

きっとこんなふうに、自分の好きなものを話せることがなかったのだろう。

 

「でもやっぱり、メビウスって過去の怪獣が多いでしょ? ゼットンとかゴモラとかレッドキングとか超獣に円盤生物に宇宙人とか他にも色々。まぁゼットンはデータだけど」

「周年作品だし、集大成とも言える内容だったからね」

「過去の怪獣だけど活躍してたのは見てる側としては嬉しかったよー。新規の怪獣や宇宙人もいいけど、やっぱり好きな怪獣が出て活躍してくれるのはすっごく嬉しい」

「懐かしさもあるし過去とまた違った活躍が見れるもんな。なんというか、わくわくがある。新規は新規でどんな能力があるのか目的なのか、何も分からないからこその楽しみもあるけど」

「だねーあっ、メビウスといえばリフレクト星人とか---」

 

楽しい、と思ってしまう。

このような会話をしてるのがいい事なのかは分からない。そもそも怪獣のことばかりしか話してない。

これは俺だけの感情だ。

でも楽しい時間というのはあっという間に終わりを迎えるもの。

まだ語りたいことはあっても、ウルトラシリーズというのはとんでもなく長い。

怪獣一体一体に物語がある。その先を予想し、考察したり。明かされている設定とかも含めれば一体の怪獣だけでも数分は話せる。活躍や不満なども含めたら、きっともっと。

だけどこういった話が出来るのは、今だけ。

学校で俺が関われば新条さんに迷惑になってしまうかもしれない。

だからこそ、惜しいと思った。

学校が近づく。

となると人が増えるわけで、隣に並んで歩く訳にはいかない。

注目を浴びるのは嫌だろうと下がって。

 

「雨野くん? 何かあった?」

 

それが止まったと思われたのか、振り向いた彼女に俺は足を止める。

じっと見つめてくる新条さんは、何を思っているのか分からない。

ただ俺が勝手に気にしてることを素直に言う訳にもいかず、なんというべきかあぐねる。

 

「もしかして、体調酷くなった?」

「い、いや…それは大丈夫」

 

突然止まったら、元々体調が悪かったのだからそう思われてもおかしくない。

けど、無意味な心配をさせてしまうのは心苦しい。

だから。

 

「ただ俺と一緒に行ったら、新条さんが迷惑なんじゃないかって…周りの人にからかわれたり噂されるかもしれないから。ごめん。俺が勝手に思ってることなんだけど…」

 

この関係が壊れてしまうことになっても、素直に言うことにした。

気を悪くするかもしれないが、俺にとっては新条さんは恩人だ。

その恩人に対して悪い方へ行くようなことをしたくなかった。

 

「………」

 

この時間が少し怖い。

新条さんはただ俺を見るだけだ。表情は読み取れず、無表情。

赤い眼が俺を映すだけ。

きっとそれは、彼女も同じだろう。

俺の翠色の眼は、彼女しか映って居ないはず。

 

「ねぇ」

 

新条さんが口を開く。

俺は答えを待つしか出来ない。

怒るだろうか。嫌われるだろうか。落胆されるだろうか。こんなことを気にするのか、と思われる可能性だってある。

その時は素直に受け入れよう。

 

「そういうの嫌?」

「それは…えっと嫌じゃ…ないです」

「だったらそれでいいんじゃない? それに昨日も一緒に行ったんですけどー?」

「あ……で、でもあれは登校初日でしたし…」

「なんで敬語なんすか」

「なんか、つい…けど、いいの、かな」

「どうしようが私の勝手。そして君の勝手でしょ? 誰かに決めつけられることじゃないし。ああ、でも。文句を言われたりバカにされたり、ちょっかいかけられたりしたら言ってね。もし君の邪魔しようとする人が居たら、私がどうにかしてあげるよ。それなら安心出来る?」

 

俺を安心させるためか、そのようなことを言ってくれる。

噂になったとしても誤解として解いてくれるということだと思うが、彼女の言葉は胸に染みていく。

確かに、誰かに決められる権利はない。ちゃんと自分の意思で考えて行動が出来るんだ。

じゃあ、素直になっていいなら…俺は。

 

「…ありがとう。新条さんがよければ、一緒に行きたいなと思ってる」

「けってーい! このまま一緒に行こっ」

 

勇気づけられるように一歩踏み出して、隣へ行くと新条さんは何処か満足気に頷く。

どうやら俺の選択は、正解だったらしい。

もしかして新条さんも俺と怪獣の話がしたかったのかな…なんて、都合がいい現実があるわけないか。

もしもの話でそうだったなら、嬉しいけど。

 

本当に、不思議…

「新条さん?」

「なんでもないよ。君は君のままで居てね、雨野くん」

「……?」

 

心の声で漏れたのかボソッと呟いた新条さんがいつもと様子が違って気になったが、よく分からないことを言われて俺は理解が出来ない。

記憶を取り戻しても、今の俺で居て欲しいということだろうか?

過去の俺は今の俺とは違うのだろうか…でもきっと、記憶を取り戻しても変わることは無いだろう。

過去の俺にとって今の俺は変わってしまっているのかもしれないが、そんな確信はあった。

もう一度記憶喪失になってしまったら自信はないけど。

そうして俺たちはちょっと怪獣とはかけ離れた普通の話をしながら、学校へ辿り着く。

そう、たどり着いたのはいいのだが。

 

「これは……」

 

学校が元通りになっている。

正直俺はそこまで驚いていない。

というのも、街が普通だったのだ。学校へ行く道すがら見ていたが、昨日怪獣が暴れて多くの被害が出たというのに嘘のように何も変わっていなかった。それこそ俺は夢でも見てたのではと錯覚するほどに。

そうなると、薄々学校も同じなのだろうということは簡単に予想がつく。

後は新条さんや他の人たちは普通であるかのように学校へと向かってたのだから、学校は無事ということだ。

分からないのは、なぜそうなっているのかということ。

…やばい、頭痛が痛くなってきた。

ただでさえキャパオーバーしてるのに考えるのは無理だ。そもそも今言葉がおかしくなってた気がする。

もうダメかもしれない…このことは今度考えよう。

その前に心の中で復唱しておこう。

思いついた可能性は三つほど。

①グリッドマンが修復した。

②そういう能力がある怪獣か宇宙人がどこかに存在してやった。

③黒幕的な存在がやった。

ここまでは浮かんだが、それ以上は深く思考しなければ無理そうなので俺はもうやめた。

 

「着いちゃったね」

「うん…新条さんと話しながらだとあっという間だったな」

「おー嬉しいこと言ってくれるじゃんー」

「…いやごめ。なんか恥ずかしいから忘れて」

「やだー覚えておいてあげる」

「く……やらかしたか」

「そんなことないと思うけど、ね?」

「それはどういう……」

「ほら、行くよ」

 

睡眠不足のせいだろうか。

なんだか攻めるような発言をしてしまって、無かったことにしてもらおうとしたら、断られてしまった。

ちょっと意地悪なところもあるんだな、と思いながらも彼女の真意までは分からなくて。

それを追求するよりも早く歩を進める彼女の背を俺は追う。

その道中で向けられる数々の視線に気づきながらも俺は気にせず彼女の隣で教室に向かった。

その視線がどんなものでも、誰の隣に居ようとも俺の勝手なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に着くと席は違うので流石に分かれる。

近くではあるが、ぼっちの俺と違って新条さんは友達がいる。

そして裕太くんたちはまだ来てないようだ。今回のことを聞きたかったのだが、眠過ぎて寝そうだ。

何より今一番気になるのは……。

 

「そんな拗ねなくとも……」

 

散々無視してたせいか、頬を膨らませながらそっぽ向く幽霊が居た。

ため息混じりの言葉に一瞬こちらを見る。

 

『拗ねてないもん!』

 

再びそっぽ向かれた。

言動が一致してないのだが、否定するなら相応の行動でして欲しいものだ。

分かりやすいってのはいいと思うけど。

 

「…好きな物食べていいから……」

『えっ、ほんと!? やったー!』

 

ただでさえ頭が痛い上に喋る必要があるので顔を机に伏せながら小声で言うと、心配になるレベルで機嫌が戻った。

それでいいのか、と思ったけど…二週間も何も食べてないことを考えたら仕方がないことかもしれない。

 

『でも考えごとをしてたのは本当だよー?』

「……?」

『少年、怪獣の話ばっかだったでしょ? 家の中を物色してもウルトラマンのグッズがひとつもなかったし? だからヒーローが嫌いなのかなーって。少年はヒーローが嫌い?』

 

考えごともしてたようだが、まず人の家を勝手に漁らないで欲しいのだが。

変なものを置いてたらどうする気なんだ。危ないものもあるかもしれないだろうに。

けど、ヒーローか……。

 

「…どうだろう」

『?』

 

分からないというのが答えだ。

ウルトラマンは怪獣を倒して人類を守ってくれる。空想でしかなかったはずのそれは、今似た状況になっている。

怪獣が現れた世界。

グリッドマンというウルトラマンのような巨人が現れた世界。

空想だったはずのものが、こうして現実になっている。

確かに存在していた現実が壊されて、それを成したのは怪獣だ。

ヒーローは主役。でも俺は怪獣が主役なんじゃないかと思う。

俺はヒーローが嫌いなんじゃなくて、怪獣が悪としか見られないのが好きじゃないのかもしれない。

それとも過去に俺は…ヒーローを嫌う現実を経験したのか。

考えても仕方がないか。俺はもう、寝る---

 

『あっ少年少年! 誰か近づいてきたよ』

「…あ、居た」

「おーい」

「奏くん!」

 

そう思ってたのに顔を挙げたら、いつの間にか六花さんと内海くんと裕太くんが居て。

どうやら俺は寝れないらしい。物凄く頭痛いのだが、裕太くんたちの顔を見る限り、昨日の件だろうなぁと思った。

…というか、俺だけハブられてた? そんなことはないと思いたい。

 

 

 

 

 

 

 





作者の個人的幽霊さんのイメージCVは高橋李依さんのつもりで書いた。
それだけ
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