流石に月の王にはなれなかったようだ。すぐに消えてしまった。でも、代わりに新しい光に包まれたかと思うと、懐かしい声が聞こえてきた。
『ふむ、奏者よ。妙なことになっているようだな』
『ご主人様ー、いきなりメイドを増やすなんてひどいですよー』
ごめんね。でも、みんないい人だよ?
『全く……君は下手な男より男らしいな』
『全くだ。貴様は我の物だ。勝手にいなくなるな』
男どもは失礼だ。
『ふふふ……みんなセンパイを心配してたんですよ?』
『そ、そうです……』
『全く、お人形のくせに、主人に心配かけるんじゃないわよ』
ごめんね。でも、私は元気だから心配しないで。でも、皆はどうしたの?
『奏者が呼んだのだろう? そなたに呼ばれれば世界くらい越えてみせよう!』
ありがとうセイバー。じゃあ、一緒に来てくれる?
『もちろんだ! 我が剣は奏者の物だ! いつでも奏者の傍へ馳せ参じよう!』
すると、私の中にセイバーが入ってくる。あぁ、これなら世界を駆けることが出来る。
『あぁ、奏者の中に入れるなんて、何たる至福だろうか! 私は何時までもこうしていたいぞ!』
『あー、ずるいです! 私もー!』
キャスター達はまた今度ね。これからは、沢山出来ると思うから。
『むー、絶対ですよ?』
うん、約束。
『ほら奏者よ。せっかくの初陣だ! 華々しく行くぞ! 何せ今の私は絶好調だからな!』
うん。一緒に戦おう。行くよ、セイバー?
『うむ! ――この一輪を手向けとしよう……舞い散るが華、斬り裂くは星!これぞ至高の美……しかして讃えよ! ドムス・アウレアと!!」
さあ、黄金の劇場の開演だ。
黄金の劇場の開演と共に、私の意識は現実に戻る。目の前には鳳さん、ボーデヴィッヒさん、デュノアさん。ふむ、3対1か。いや、3対2だ。それに、今の私たちは絶好調だ。三人が相手でも負けはしない。
「ほぅ、それが貴様の本気か」
うん。私たちの本気。
「岸波さん、この劇場は?」
ふふ、凄いでしょ? 空間に作用する装甲だよ。大規模支配型宝具ってとこかな。この劇場において、私に勝てるとは思わないでね。
「へぇ、大した自信じゃない。それなら、その力見せてみなさいよ」
うん。今日は自重しないよ。ね、セイバー。
『うむっ! ここでのこけら落としなのだ。華々しく行くぞ!』
あそことは違い、ここではセイバーと一緒に舞台に乗れる。ふふっ。
『む? 楽しそうだな奏者よ』
だってセイバーと一緒に戦えるんだもん。嬉しいの。
『う、うむ。余も嬉しいぞ』
じゃあ、行こうか。行くよみんな。
「えぇ、かかってきなさい!」
「その自信、叩き折ってやろう!」
「行くよ、岸波さん!」
三人が、連携をしながらこちらに向かってくる。ふふん、それじゃダメだよ。
それじゃ、ラニのバーサーカーにも敵わないよ!
デュノアさんとボーデヴィッヒさんの砲撃を切り裂き、斬りかかってきた鳳さんを《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》の焔でなぎ払う。
「きゃっ!?」
その悲鳴が隙だよ! ギルガメッシュ! 宝具、借りるよ!
「きゃぁぁぁぁ!」
金色の槍が海に着弾し、熱を持った海水が鳳さんを襲う。取り敢えず、鳳さんの動きは封じた。この隙に、驚いて止まっているデュノアさんに《星馳せる終幕の薔薇(ファクス・カエレスティス)》で斬りかかる。一瞬の油断が命取り。まずは厄介なデュノアさんを片付ける。
「くっ、まさか僕狙いなんて!」
《星馳せる終幕の薔薇(ファクス・カエレスティス)》は大出力の大技。デュノアさんのシールドエネルギーはほとんど無いはず。
『デュノア、戦闘を中止しろ! それ以上は明日に関わる』
織斑先生からのストップがかかる。これで2対2。そして、鳳さんもダメージがある。
「ほう、鈴を狙う振りをして、本命はシャルロットだったか」
水しぶきを上げた時点で、後方に下がったボーデヴィッヒさんが戻ってきた。隙あらばボーデヴィッヒさんにもダメージを与えたかったが、流石は軍人。隙はほとんど無い。
「鈴も大分ダメージを受けているようだが……、おい、行けるか?」
ボーデヴィッヒさんの言葉に、びしょ濡れになった鳳さんが戻ってきた。
「えぇ。ラウラ、一緒に畳みかけるわよ。合わせなさい」
「……まぁ、いいだろう。お前がメインで行け」
「当然よ。岸波、さっきの借り、すぐに返してあげる」
ふふふ、私の借りは高いよ。さながら私は太陽の騎士かな?
『ほう、奏者があの騎士か。面白いな。一撃だけなら、余の剣を納めよう。あの小娘に英雄の力を見せてやれ』
セイバーからの許可も出た。嫉妬しないでね、セイバー。
《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》を納めて、《転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)》を取り出す。現時刻は午前9時過ぎで正午前。ならば、この剣は無敵だ。
「ふむ……その剣からはすさまじいエネルギーを感じるな。鈴、注意しろ」
「分かってるわよ。でも、それを打ち破ってこそ、でしょ?」
鳳さんは随分好戦的のようだ。ボーデヴィッヒさんも苦笑いだが、止めることはしない。彼女も一緒のようだ。
ならば、打ち破って見せて? 私も破ることが出来たのだ。ならば、私より才能豊かな彼女たちが打ち破れないという保障もない。「敗北」を知る身だ。油断なんて、してあげない。
彼の聖剣は太陽の具現。友の許しのもと、地上一切を焼き払う――この剣は太陽の映し身。もう一振りの星の聖剣……エクスカリバー・ガラティーン!
――さあ、文字通り最強の一撃。あなたたちを打ち払うよ。
「っ!? 鈴、避けろぉぉぉっ!!」
「そんなこと言ったって、間に合わっ、きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
ボーデヴィッヒさんは鳳さんに避けろと叫ぶが、こちらに向かってきていた鳳さんは太陽の灼熱に包まれる。
『デュノア! 鳳を受け止めろ!』
気絶こそしていなかったが、ISが解除された鳳さんはデュノアさんに受け止められていた。うん、無事のようだ。
「くっ、私も避けきれなかったか……、全く、今のは何だというのだ」
ボーデヴィッヒさんにもダメージは与えられたようだ。必殺の一撃を放った《転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)》は霧散する。これで最後だ。立て続けに大技を放ってしまったので、こちらも残りのエネルギーは少ない。
『ふむ、やはり条件が揃った《転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)》の力は恐ろしい。だが、余の《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》も負けてはいないぞ!』
うん。分かってるよ。だから最後は《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》で決めよう。
『うむ! 共に最高の音楽を奏でようではないか!』
「そちらも残りエネルギーが少ないようだな。ならば、こちらから行こう」
両手にプラズマブレードを出現させたボーデヴィッヒさんは、ものすごい速度で斬りかかってくる。流石は軍人。つけ込む隙がない。
「ほら、どうした? 大技がないと打ち破れないのならば、仕方ないぞ?」
確かにその通りだ。ならば、セイバー。力を貸して。
『承知だ! 余の腕、奏者に預けよう!』
その瞬間、両腕に力が籠もる。これならやれる!
「ふふっ、これが貴様の本気か! いいぞいいぞ! こんなに心躍るのは久しぶりだ!」
ボーデヴィッヒさんは、ワイヤーブレードも取り出して、縦横無尽な攻撃をしてくる。だが、セイバーには通じない。
お互いにエネルギーは残りわずか。一端距離をとってボーデヴィッヒさんをみると彼女も肩で息をしている。次で最後だよ、ボーデヴィッヒさん。
「分かった。受けて立とう岸波」
そうして、ボーデヴィッヒさんはレールカノンにエネルギーを集める。そして、視線が合った瞬間、フルパワーのレールガンが発射された。……会長、力を借りるよ。
――聖剣集う絢爛の城"(ソード・キャメロット)
全てを隔つ炎の壁が、ボーデヴィッヒさんのレールガンを止める。その隙を逃さず、瞬間加速で正面に回り、残ったエネルギーを《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》に込める。これで最後だ。行こう、セイバー。
『うむ!』
これでフィナーレ! ――《童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)》。
「ぐぅっ!!」
無防備なボーデヴィッヒさんの体に一撃が入り、ボーデヴィッヒさんのISが解除される。おっと、大丈夫。
「全く……何という技だ。まさかアレを止められるとは思わなかったぞ」
疲れた様子だったが、大きな怪我はないようだ。まぁ、あれは最強の会長さんの技だから。生半可な攻撃じゃ打ち破れないよ。
「よく分からんが……お前が規格外なのはよく分かったよ」
ふふふ、お礼にこの後の自由時間では色々サポートしてあげるよ。
「ま、全く……お前という奴は……」
『そうだぞ、奏者。私のことも愛でよ!』
うん。セイバーもありがとう。これからもよろしくね?
『もちろんだ! 愛しき奏者よ!』
単一能力が解かれ、セイバーの声も聞こえなくなる。ふぅ、これで終わりか。キアラ、これからどうすればいい?
『はい。全てのテストが終わりましたので、帰還して下さい。白野さんはボーデヴィッヒさんを、デュノアさんは鳳さんを連れてきて差し上げて下さい。それと、お三方の機体はそのままメンテナンスいたしますので、帰ったらすぐに織斑先生に渡して下さい』
まあ、あれだけ激しい戦闘をしたのだ。メンテナンスは大切です。
「全くよ。あんだけ派手にぶちかましてくれちゃって……。まぁ、機体へのダメージはそれほどでもないみたいだけど」
「うん。エネルギーはごっそり削られたけどね。これなら、明日までには間に合うかな?」
『それでしたらご安心下さい。各国の整備チームがすぐに到着いたしますので、明日には間に合いますよ』
それじゃ、急ごっか。遅くなったら遊ぶ時間もなくなっちゃうし。
その後、織斑君とオルコットさんとも合流し、海岸に戻る。海岸に到着すると、何故か疲れたような表情をした織斑先生に出迎えられたのでした。
《カリス社》の技術力は世界一。全てはキアラがいてこそ。彼女に逆らえる人類なんていません。
だれか、はくのんの貝殻ビキニ描いてくれる人いないかな(チラッ