仲良きとは美しきかな
あさ。私は箒さんを、クリスカはイーニァを抱きしめながらの起床。大変よろしい目覚めとなった。今朝の朝食の席順は、イーニァ・クリスカ・私・箒さん。恥ずかしがり屋コンビを両隣において、控えに最強プリチーイーニァたんの布陣だ。隙はない。しかも、なんと。織斑先生がこの後の準備のためにいないのである。いるのは山田先生とキアラだ。呂布はいない。なので。
箒さん、あーん。
「や、やめろっ、恥ずかしい」
だめ。はい、あーん。
「ホウキ、あーん♪」
「イーニァまでっ!?」
「あーん♪」
「うぅ……あ、あーん」
ふっふっふ。次は、クリスカー。
「わ、私はいい!」
じゃあ、私にやって? あーん。
「あ、あーん……」
ぱくり。うまし。
「あー、わたしもー」
イーニァには私がしてあげる。はい、あーん♡
「あーんっ、んー、おいしー」
イーニァ、私にもあーんして?
「うんっ! はい、あーん」
あーん。美味しいね、イーニァ。
「うんっ!」
さて、おーりむーらくーん。隣にボーデヴィッヒさんがいるよ?
「こ、こっちのことは気にしなくていいぜ?」
そっか。
……そう言っちゃうんだ。
じゃあ、はい、あぁーん♥
「そ、それ、ワサビだから! 箸返せ!」
ジョーダンジョーダン。あ、ボーデヴィッヒさん。男の子にあーんをやるのは大切な女の子イベントだから、やってあげてね?
「む、そうなのか? 嫁よ、口を開けろ」
「ら、ラウラ、ストップストップ」
「き、岸波さん、ボーデヴィッヒさん!? ご飯中は静かにして下さーい!」
まぁまぁ落ち着いて。はい、山田先生、あーん。
「え、えぇ!?」
慌てながらも食べてくれる山田先生。可愛いですね。それじゃ、織斑先生が来る前に退散するとしよう。
今日は臨海学校の本題、装備試験運用だ。《聖杯》のオートクチュールは無いようだが、《ヴォジャノーイ》への運用も可能な武装のテストがある。水を操るとは、こう、ロマンがある。
試験用ビーチに集まり、千冬先生からいくつか指導を受ける。
「ではそれぞれ各班に別れろ。専用機持ちは各自専用パーツのテストだ」
このビーチには沢山のISパーツが置かれており、どこか舞台の練習場のような様相がある。ちょっとわくわくしてしまう。
「あぁ、篠ノ之はこちらに来い」
ちらりと見ると、箒さんが織斑先生に呼ばれていた。キアラの方を見ると、頷いてくれた。なので、私も後に付いてくる。
「来たか、って、どうしてお前までついてきている」
了承済みです。……束さんにも。
「……まぁいい。それでお前は……」
「箒ちゃーん」
いつの間にか織斑君の後ろにいた束さんが箒さんに抱きつく。箒さんも昨日言ったとおり頑張るようにしたようで、少し困った顔をしているが、一歩前進のようだ。織斑先生も驚いている。
「えへへ、久しぶりの箒ちゃんだ-」
「ね、姉さん……」
「うん、私もはくのんに絆されちゃった。お手紙読んでくれたのかな?」
「はい。その……これが、私の返事です。あとで、その、読んで下さい」
そういうと、箒さんは昨日書いていた手紙を束さんに手渡す。束さんは嬉しそうに受け取ると、大切に手紙をしまった。
「うん。あとでゆっくり読ませてもらうよ。あ、はくのん。はろー」
こちらは気にしなくてもいいのに。はろー。
いえーいとハイタッチ。おっと、パイタッチはさせないぜ。
「本当に姉さんと仲がよいのだな」
ほら、箒さんも。どーん。
「きゃっ!?」
「わっ、箒ちゃーん!」
仲良きことは美しきかな。
「お前はどんな魔法をつかったんだ」
魔法じゃありません魔術です。いえ、これも、二人が頑張った結果ですよ。
「……まぁいい。おい、束。仲が良いのは分かったから、自己紹介しろ。皆が困惑している」
「えー」
ほらほら、束さん。自己紹介自己紹介。
「わかったよ-。私が篠ノ之束だよ-」
とっても可愛いウサギさんです。
「……いらん補足が入ったが、お前達はテストに戻れ」
「ぶーぶー、お前なんてひどいなー」
束さんが千冬さんと話していると、おどおどした山田先生が千冬さんに声をかけた。
「あ、あの、この場合はどうしたら……」
「あぁ、それなら」
「それなら心配いらないのですよ。篠ノ之博士は《カリス社》の名簿に載っていますわ。なので、れっきとした関係者ですので、別段報告しないでも大丈夫です」
キアラが持っていた名簿を見ると、確かに「篠ノ之束」の名前。堂々としすぎ。
「……これは上の業務怠慢と苦情を言うべきか、《カリス社》の工作の巧みさを褒めるべきか」
多分前者です。そう言えば箒さんのIS、持ってきたんじゃないですか?
「うん! 箒ちゃん、これは私からのプレゼント。まだ、使いこなすことは難しいかもしれないけど、箒ちゃんの為のIS。箒ちゃんの自由の翼」
束さんがそう言うと、空から銀色の棺が落ちてくる。その扉が開くと、深紅の機体が現れる。まさしく《紅椿》箒さんにピッタリの機体だろう。
「これが、私の……」
「うん。箒ちゃんの。さあ、フィッティングとパーソナライズを始めるよ!」
「はい、よろしくお願いします」
箒さんが《紅椿》に触れると、《紅椿》は箒さんの鎧となる。うん、よく似合ってるよ、箒さん。
「ありがとう、白野。姉さん、どうだろうか?」
少し照れながら言う箒さんに、束さんも笑顔で答えていた。
「うん。とっても似合ってるよ。それに、箒ちゃん、力を上げたね。ずっと剣道を続けてたもんね。《紅椿》に積んだデータ更新しなくっちゃ」
嬉しそうにキーボードを叩く束さん。その間《紅椿》を眺める。前もっていくつか聞いていたが、かなりの万能型だ。その分展開装甲は《聖杯》ほど大規模ではないようだ。
「《聖杯》のは特別製。そのぶん《紅椿》は本当の意味で万能型の機体だよ。ほい、フィッティング終了。あ、そーだ。いっくんの《白式》も見せて?」
「え、あ、はい」
いつの間にかこちらに来ていた織斑君が《白式》を起動した。同じく《白式》にコードを繫ぐ。
「んー、何だか複雑なフラグメントマップになってるや。やっぱりいっくんが男の子だからかな?」
モニターを見てみると、私たちのとはパターンが異なるマップが広がっていた。束さんも言っていたが、男が着るISというのは、やはり違いが出るようだ。ついでに単一仕様能力の部分も独特だ。そう言えば、《白式》は第一形態なのに単一仕様能力を使えるし。あ、そろそろセカンドシフトしそう。
「岸波さん、それが分かるのか?」
何となくだけどね。データを組むのは無理。
「っと、パーソナライズも終わったね。じゃあ、試運転がてら飛んでみて? はくのんも一緒に飛んで見せてあげて?」
「はい」
がってん。処女航海、ご一緒させてね、箒さん?
「あぁ、頼む」
二人で空に飛び立つ。流石は《紅椿》。《聖杯》にもひけをとらない。
どう? 初めてのISの乗り心地は? 思った以上に動いちゃったみたいだけど。
「そうだな。私の思った以上の動きをしてくれている」
『まぁ、それは慣れるしかないかな。じゃあ、今度は刀を使ってみて? 右が《雨月》で、左が《空裂》。《雨月》は打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出するの。《空裂》は対集団戦用の武装で、斬撃と一緒に帯状にエネルギーを放出するの。箒ちゃんなら使いこなせるはずだよ』
ふむふむ、ロマン武器ですな。さあ箒さん、かかってきなさい。
くいくいっと箒さんに向けて手を向ける。箒さんは笑みを浮べると《雨月》で突きを放ってくる。それと同時にレーザーが私を襲う。これくらいなら避けられるが、近接戦でやられると厄介そうだ。
「いくぞ、白野!」
うん。破って見せて? 私の《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》を!
十六の宝具を箒さんに放つ。普通の機体なら避けるしかないだろう。
でも。
「――やれる、私と姉さんとなら!」
そう。相手は天才篠ノ之束とその妹篠ノ之箒。箒さんが《空裂》を振り抜くと、帯状のエネルギー派が宝具達を打ち落とした。
「はぁはぁ……」
お疲れ様箒さん。帰ったら一緒に訓練しようね?
「あぁ。よろしく頼む」
うん、いい笑顔。あ、こっちの新武装と合わせてテストしてみる?
「そうだな、それも面白そうだ」
了承も取れたところで、下に下りようとしたら、通信先から、山田先生の慌てたような声が聞こえた。首を傾げつつ下りてみると、他の生徒達がビーチから撤収を始めていた。キアラ、何事?
「緊急事態です。詳細は旅館で」
どうやら相当の緊急事態のようだ。専用機持ちが呼び出されたということは、荒事だろう。
箒さん、頑張らなきゃね。
「あぁ。皆がいれば、何があろうとやり遂げられる。白野、頼むぞ」
いい笑顔。ふふ、惚れ直したよ、箒さん。
「それを言うならこちらの台詞だ。《聖杯》と《紅椿》ともに舞台に乗るんだ。皆白野に惚れ直すさ」
箒さんは?
「もちろん、私もだ」
少し照れてたけど、合格。良い笑顔だよ。
《銀の福音》敗北フラグ。
おの小節では、箒は慢心していません。相手が《聖杯》かつ、はくのんにやられちゃってるので仕方が無い、ということでどうかひとつよろしく。