はくのんIS(更新停止しています)   作:天神神楽

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これは布石


はくのん、からだをはる(偽)

場所は大座敷風花の間。どうやら、軍用IS《銀の福音》が謎の暴走を始めたらしい。時速二四五〇キロで超音速飛行を続けているようで、アプローチは一度きり、か。

織斑先生、ちょっといいですか?

「なんだ、言ってみろ?」

三分間で良ければ、完全に足止めできます。

「何だと? ……あの炎の壁のことか?」

そう。私には《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》がある。あれならば、三分間だけだが、完全な足止めが出来る。ただ、完全にサポートに専念しなければならないので、攻撃には回れないけど。

「それは、完全に《銀の福音》を止められるのか?」

確実にやるなら、その一回のアプローチで一瞬でも足止めしてから発動するのがベストです。

「分かった。オルコット、超音速での戦闘訓練時間は?」

「二〇時間です」

「それならば適任か」

「ちょーっと待ったー!」

あ、束さん。よく忍び込めましたね。

「え? キアラに頼んだら入れてくれたけど?」

「岸波先生……今は緊急事態です」

「だからこそです。現行最高性能の《紅椿》を最も知るのは、この方ですわ。ならば、話を聞かない手はないでしょう?」

「……束、何か案があるのか?」

「うん! ほら、これを見て!」

そう言うと、織斑先生の周りに複数のディスプレイが現れる。それを見る織斑先生の顔が、驚きに染まる。

「これは……」

「《紅椿》のアーマーの展開装甲を機動性につぎ込んだ時のデータ。足止めできた後は、攻撃に回せるから、こっちの方が今回の作戦にはピッタリだと思うけど」

束さんの言うとおり、そっちの方がいいだろう。織斑先生は作戦をそちらに切り替えると皆に指示を出し始める。

「岸波、その《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》はどの程度の範囲だ」

最大範囲は半径二〇〇メートルです。ただ、フルパワーで《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》の発動をしないといけないので、終了後は展開も維持できないかと。

「では、シェスチナとビャーチェノワは岸波の守りを担当しろ。織斑と篠ノ之以外の者は、武装を装備し終えた後、先行して指定のポイントに移動しろ。これは実戦だ。心してかかれ!」

「「「はい!」」」

返事と共に皆準備にかかる。といっても、私は追加の準備はいらないので、クリスカたちの所に向かう。何せ二人は私を守ってくれるナイト様だ。

「あ、ハクノ!」

海岸で準備をしていたイーニァが私に気付いた。二人とも、これからよろしくね。

「うん! ぜったいハクノをまもるから!」

「そうだ。安心していろ。お前には絶対傷ひとつつけさせやしない」

全く、頼りになるメイドさんだ。本当に心強い。

その内、準備を終えたオルコットさん達が、先行し接触ポイントに向かう。私たちは織斑君と箒さんと一緒に行く。その後すぐに二人もやってくる。箒さん、初めての実戦だけど、大丈夫?

「あぁ……と言いたいが、緊張している。だが、一夏がいるし、白野もいる。であれば、私に出来ることを精一杯にやりきるだけだ」

これは心強い。織斑君も、今回の作戦の要なんだから。失敗したらダメだよ?

「お、脅かすなよ。でも、絶対に成功させてみせるぜ」

うん、頼もしい。それでこそ男の子。じゃ、行こっか。

『織斑、岸波、篠ノ之。こちらの準備も完了した。それと、篠ノ之。お前は《紅椿》に乗るのは初めてだ。心してかかれ』

「はい。できる限りのことをやります」

緊張はしているけど、落ち着いている。がんばろうね、二人とも。

「あぁ!」

「あぁ。一夏、お前は私がしっかり運んでやるからな」

ふふふ、こちらも良好のようだ。

『よし、では行け!』

「あぁ!」

「了解!」

さ、出発だ。今回の私はサポート役だ。ならば、箒さんたちが全力を出せるよう、こちらも全力でいかなければ。

距離的には昨日よりも近い位置だ。《聖杯》と《紅椿》ならばすぐに到着出来る。時間はピッタリ。少し待つと、センサーに超光速でこちらに近付く反応。間違いなく《銀の福音》だ。

クリスカ、イーニァ、サポートよろしく。

「うん!」

「あぁ」

集中を途切れさせてはいけないから、口には出せないが、皆も一撃お願いね。

そして、数秒もしないうちに、視認できる位置に《銀の福音》が来ると同時に、二人が《銀の福音》に突撃する。私もスタンバイだ。止まるのは一瞬。それではもったいない。ならば、三分間だけ待ってもらおう。さあ、私たちのお城にようこそ、歌姫(ディーヴァ)さん。

――《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》。

その瞬間、半径二百メートルが炎の壁に囲われる。じゃあ、みんなよろしくね?

「「「あぁ!」」」

多対一だが、相手は軍用IS。こちらに軍属はボーデヴィッヒさんだけだ。クリスカ達は私についてくれているから、油断は出来ない。しかも範囲が半径二百メートルと限られてる。相手は広範囲殲滅型だから、下手すれば全滅に危険がある。その場合は私がしんがりになって撤退させるしかないだろう。

とはいえ、今の所は大丈夫そうだ。福音の殲滅攻撃はこちらも狙ってくるが、二人が完璧に防いでくれる。特にめまぐるしく動くのは箒さんと鳳さん。近距離と中距離の攻めも激しく、そこにデュノアさんやボーデヴィッヒさん、そしてオルコットさんの後方支援が降り注ぐ。特にオルコットさんの支援砲撃は見事だ。的確に嫌なところをついている。

「このまま畳みかけろ! 一夏は一端下がって、《零落白夜》の準備をしなさい!」

「あぁ! 頼んだぞ!」

いよいよ大詰め。時間も二分経った。あと一分。だが、福音は決定的な隙を見せず、織斑君の攻撃は受けないよう徹底している。次いで、この壁を作っている私への攻撃も苛烈さを増している。

「ダメ! 時間が!」

タイムリミットが近付き、皆も焦り始める。少し、まずいかな、と思っていると、まだこのような戦闘に慣れていない箒さんの刀が弾かれてしまい、一瞬の隙が生まれる。そして、それを狙っていた福音がそれを逃すはずがない。福音は箒さん以外に向けて波状攻撃を仕掛け、加勢できないようにするやいなや、箒さんにとどめを刺そうとする。

停止する思考が、箒さんの動きを停止させる。でもね、安心して。せっかくお姉さんと仲良くしようとした、頑張ろうと一歩を踏み出した君を守ると約束した。

だから、私があなたを守るよ、箒さん。

あとはよろしく、《聖杯》。……うん、ありがと。

今は福音も箒さんに集中している。だから、最後のエネルギーを私自身に回せる。

「ハクノ、何を……おいっ!?」

ごめんねクリスカ。でも、あの子も守るって決めたから。すぐに元気になるから、今は、ゴメン。

「ハクノ! いっちゃダメー!!」

イーニァが私がしようとしたことに気がついたのか、叫んで止めようとしてくれる。でも、性能で言えば私の《聖杯》は世界最高だ。イーニァでは追いつけない。

まさに一瞬。炎の壁が消え、晴天の空の下、私は福音の散弾に体中を打ち抜かれた。

 

 

 

Another side クリスカ

 

ハクノが倒れた。

私が守るべき主が、シノノノを、私たちを守るために、倒れた。

あの後、皆撤退し、ハクノはキアラに連れていかれ、部屋に寝かされている。命の危険はないようだが、目は覚まさない。

《銀の福音》は、その場で動かず留まっているらしい。だが、そんなことを考えている余裕はなかった。

今、私の前には静かに眠るハクノがいる。いつもなら、私を抱きしめてきてくれるのに、ハクノは私を抱きしめてくれない。手を握っているのに、握り返してくれない。いつもは笑ってくれるのに、笑ってくれない。

感情が、押さえきれない。涙を拭う為に、手を離したくない。ずっと、握っていたい。少しでも離したくなんか、ない。

こんな風に私を変えてくれたのは、お前なんだ。素直に感情を表せるのは、お前だけなんだ。

抱きしめてくれ。

あーん、をしてくれ。

涙を、拭いてくれ。

笑ってくれ。

してくれるなら、お前に全部してやるぞ? 恥ずかしいが、お前がして欲しいこと、何でもやってやる。

「だから、目を覚ましてくれ……っ」

それでも、ハクノは目を覚ましてくれない。キスをすれば、目を覚ましてくれるのか? ならば、私のファーストキスを、お前にくれてやる。

「んっ――――」

「クリスカ?」

遠くから聞こえる声に、ハクノから唇を離すと、部屋の前にはイーニァがいた。イーニァは驚いた顔をしていたが、こちらにくると、イーニァもハクノにキスをした。

「……ハクノ、おきないね」

「うん。ハクノったら、いつも他の人のことばっかりなんだもの。困ったご主人様ね」

「うん。わたしたちをおいていっちゃうんだもん。めっ」

イーニァも悲しそうにしているが、涙は流していない。……これではイーニァの方が姉のようだ。これではいけない。ハクノにも笑われてしまう。

「クリスカ、大丈夫?」

ゴメンね、イーニァ。私はもう大丈夫。立ち上がれる。

「うん。大丈夫よ。もう大丈夫」

「それじゃあ、いこっか」

「うん!」

待っていてくれ、ハクノ。お前のメイドは頼りになるメイドだということを証明してきてやろう。だから、帰ってきたら、頭を撫でてくれ。

 

Side out

 




クリスカたんかわいいよ。
クリスカははくのん依存症ぎみになりつつあります。
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