治療も終わり、メイガスオーケーが出されたので、みんなと一緒に夕飯を取っている。デュノアさんは質問攻めにあっているが、まぁ、ばらすようなことはないだろう。あむ。
むぐむぐ……、で、私はというと。
「ど、どうだ? 美味しいか?」
「つぎはわたしー。はい、ハクノ」
あむ。
「おいしい?」
うん。とっても美味しいよ。イーニァもどうぞ。
「あーん。んー、おいしー♪」
メイドさん達とのいちゃいちゃタイムである。至福の時間だ。みれば、箒さんも織斑君の隣にいるが、なかなか一歩が踏み出せないようだ。ならば、私の出番である。おっりむっらくーん! 隣の幼馴染みに構ってあげなよー!
「は、白野!?」
「ん? 箒にか?」
そうそう。今日のご褒美に、そうだなー、あーんとかしてあげなよ。
「あ、あぁ!?」
「改めて言われると照れるな……。まぁ、箒。マグロでいいか?」
「あ、あぁ……」
行けっ、織斑先生は私が押さえる! 二人も手伝って!?
「お、おい! お前達までふざけるな!」
「主の命令だから、仕方がない」
「しかたがないの」
ちょっと楽しい。さすがの織斑先生も三人手足を捕まれては動きが鈍くなる。さ、今のうち。
「あ、あぁ。ほら、箒」
「あ、あーん……」
ぱくっといった。おぉぅ、幸せそう。
「……お前は楽しいか?」
えぇ、もちろ゛っ★
「まったく……おい、織斑。これ以上ふざけるのならば、海岸を走らせるぞ?」
「い、イエスマム!」
「ぽー……」
ふ、ふふふ……我ながらいい仕事をした、ぜ……ガクリ。
「ハクノ、だいじょうぶ?」
「ふふふ、困ったご主人様ね」
倒れる私の頭を撫でてくれるイーニァ。ありがとう、それだけで救われます。
色々あったが、夕食を終えた後、私たちは部屋に戻る。あ、そういえば箒さん。
「ん? なんだ?」
今更だけど、昨日海でみなかったけど、どこに行ってたの?
「あぁ……姉さんがいると思って、隠れてたんだ」
じゃあ、織斑君にまだ水着見せてないんだ。
「……そうだな」
ふむ、じゃあ、今すぐ見せに行かないと。
「だが、一夏は千冬さんの部屋だろう? 流石に無理だろう?」
ううん。キアラの情報によると、織斑君今海に入ってるみたい。それに、一人で。だから、見せてきてあげたら? 勝負水着なんでしょ? このビキニ? おぉ、セクシィ。
「勝手に荷物を開けるな! 全く……。……、行ってくる」
うん、行ってらっしゃい。……………………。じゃ、着替えようか。
「へ?」
だって、海には水着でしょ?
「いや、だから、何故海に、って、なんだその水着は!」
キアラにもらった奴。はい、二人の分。ヴィーラさんにもらったの。
「わぁ! すごいセクシー!」
「だ、だめよイーニァ!」
ぽんぽんと浴衣を脱いで、イーニァはあっという間にヒモ水着に着替える。お、結構スタイルいいね。
「えへへー、どう?」
とってもセクシー。私はどう?
「きゃっ! ドキドキしちゃうよ!」
まぁ、外に出るまでは上に浴衣着ていこっか。で、クリスカは外まで水着で行くの?
「そ、そもそもそんな水着は!」
ほら、一夏の思い出だから。お揃いお揃い。
「ま、待てっ! し、下着を脱がすなって、イーニァも止めて!」
三分後。
「うぅ……」
三人はお揃い水着になりました。さ、急がないと。
「あぁ、窓から行くのだな……」
スニーキングミッションですから。
目的はともかく、真夜中の海岸デートというのも乙である。少し肌寒いけど。
「わっ、つめたい♪ ね、クリスカ!」
「そ、そうね」
クリスカにはまだテレがあるようだ。ま、無理もないか。
「い、一夏っ」
ととっ、本題を忘れるところだった。隠れて隠れて。
こそこそっ。
スッ。
スッ。
スッ。
ふふふ。流石の織斑君も、箒さんのセクスィさにはたじたじだ。おっ、いい雰囲気。
「その、なんだ……誕生日おめでとう」
「一夏……」
テレながらも、しっかりとプレゼントを渡す織斑君。プレゼントはリボン。流石は幼馴染み。箒さんにピッタリだ。
ん? ありゃ?
「どうしたの?」
んふふ、ヤキモチ屋さん達のお出ましだ。
その後は何というか、ご愁傷様、織斑君。
で、残された箒さん。お疲れ様。
「お、お前達も覗いていたのか」
ふふふ、だって、こんなに面白そうなこと見逃したらもったいないもの。
「全くお前という奴は」
でも、良かったね。織斑君に誕生日プレゼントを貰えて。
「あぁ。……それとだな、白野。お前は姉さんと会えるのだよな?」
ん? まぁ、そうだね。
「……すまないが、これを姉さんに渡して欲しいんだ」
渡されたのは、今までつけていたリボン。でも、これ大切なものなんじゃないの?
「あぁ。引っ越す前に一夏にもらったものだ。これのおかげで、一人でも頑張れたんだ」
箒さんにとって、このリボンは心の支えだったのだろう。
「でも、私は今は一人じゃない。一夏、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、クリスカ、イーニァ。クラスのみんな」
あ、あれ……わたし。
「そして、白野。お前がいたから、姉さんとまた話せるようになった。だから、私の宝物を姉さんに持っていて欲しいんだ」
そっか。なら、しっかりと渡しておくね。
「ありがとう」
どういたしまして。ほら、早く織斑君を追いかけて、正妻アピールしなくっちゃ。
「ふふふ、そうだな」
っと、その前に。はい、箒さん。お誕生日おめでとう。あとで開けてね。
「ありがとう、白野!」
そう言って、織斑君を追いかけていく箒さんの笑顔は晴れ晴れとしたものだった。
「ホウキ、よろこんでたね?」
うん、よかったね。私はもう少し歩くから、二人は先に帰ってて?
「うん! はやくかえってきてね?」
「あまり、変なことはするなよ?」
ふふ、了解だよ。
二人と別れて、展望台のようになっている岬にこっそり行く。ぱっとみ誰もいないが……。
あ、束さーん。
木の陰に声をかけると、フッと気配が現れる。
「ありゃ、ちーちゃんは誤魔化せたのに」
よっこらしょと、岬に上がってくる束さん。まぁ、アサシンに比べたらまだまだですよ。
「暗殺者? まぁ、本職には負けるけどね。それにしても、凄い格好だね」
キアラにもらった水着です。着ないのももったいないし。それより、まだ帰らないんですか?
「もう帰るところ。ちーちゃんとも話したしね。それよりはくのんはどうしたの?」
箒さんと織斑君の逢瀬の見学と、束さんへの贈り物です。それを渡したくて。
「私に? 何かな?」
箒さんからの贈り物です。どうぞ。
「これ、いっくんからもらったリボン……」
大切なものだから、束さんに持っていて欲しいそうです。そうだ、付けてあげます。そこに座ってくださいな。
「……うんっ」
束さんの髪も、箒さんと同様とても綺麗な髪だ。箒さんと一緒の髪型にしますね?
「うん、よろしくね。……はくのん」
なんですか?
「《銀の福音》を暴走させようとしたの、私なんだ」
あ、やっぱり。
「なんだ、気付いてたの? まぁ、はくのんに説得されてから取りやめようとしたんだけど」
暴走したと。多分それ。
「えぇ。私ですわ」
この人のせいです。
「……まぁ、だろうと思ってたけど。で、なんで福音を暴走させたの?」
「博士と一緒です。《聖杯》の、白野さんの実力をみたかったからです」
なんとはた迷惑な……。
「あぁ、それと報告ですが、篠ノ之さんは《カリス社》所属に、あと、《銀の福音》もウチに後を任されることになりました」
なんと。
「よくアメリカが許したね。あれでも最新鋭機なんでしょ?」
「《聖杯》の一部データをお渡ししましたので。委員会の了解も得ていますので、ほぼ正式決定となりますね」
「そりゃ詐欺だね。《聖杯》に使われている展開装甲の機構ははくのんじゃないと動かせないし、そもそもあれを理解できる人なんて、それこそ《カリス社》以外にはいないでしょ」
「まぁ、アメリカもIS委員会も喜んでいたようですし、いいでしょう。第三世代機に転用させることも不可能ではないのですし」
「アンタならね」
どうやらアメリカは騙されたようだ。ま、仲間が出来ることは喜ばしい。っと、出来ましたよ束さん。
「ありがと、はくのん」
やはり姉妹。似合ってますよ。
「えぇ、とっても可愛らしい」
「あんたに言われても嬉しくない。でも、はくのんは別ー」
ぎゅーっとされた。フッカフカや。
「ふふっ。あ、私からも箒ちゃんにお誕生日プレゼントがあるの。はくのんから渡してくれるかな?」
もちろんです。
「ふふ、よろしくね。じゃ、私はもう帰るよ。はくのん、また連絡するから。じゃあね!」
そういって、にんじんロケットで飛んで行ってしまった。なんとも忙しい人だ。さ、私も帰ろうか。キアラはどうするの?
「私もご一緒します。一応、外出禁止の時間になっていますからね」
ありゃ。じゃあ、よろしくお願いしますね、岸波先生。
「はい。では参りましょうか」
旅館までキアラと一緒に帰り、こっそりと部屋に戻ろうとすると、部屋の前に織斑先生。バレテーラ。
「帰ったか岸波」
な、何のことでございませうか。
「そのことを叱る気はない。それより少し話したい。ちょっといいか?」
はい。なんですか?
「束のこと、礼を言う。私ではどうにも出来なかった」
気にしないで下さい。私は自他認める子リスですから。もふもふはしていませんが。
「何のことだ。全く……。それでも、私は束と箒が一歩を踏み出してくれたことが嬉しい」
親友ですもんね。あ、束さんから箒さんのプレゼントも預かったんですよ?
「そうか……。引き留めて悪かったな。そろそろ部屋に戻れ。一応外出禁止の時間帯だからな」
了解です。じゃ、お休みなさい。
「……お疲れ様、岸波」
織斑先生貴重なデレ。いいもの見れたぜ。
「あ、ハクノ! おかえりなさい!」
ただいま。あ、箒さん。束さんからのプレゼント。どうぞ。
「も、もう会ったのか。それより、その……」
うん、しっかり渡したよ。髪を結ってあげたらとっても喜んでたよ。あとで写真も送るね。
「ありがとう。その、白野がくれた鈴のチョーカー、その、似合うか?」
うんとってもよく似合ってる。猫耳もあれば完璧かな。それ、「天女の鈴」っていって、お守りの意味も込めてあるから、大切にしてね。ちょっといじくれば音止められるから。
「あぁ。大切にする」
そうだ。束さんのプレゼントも見せて欲しいな。
「あぁ。今開ける。これは、写真立てか?」
中に入っていたのは写真立て。ひっくり返すと、その中に小さな箒さんと、その箒さんを満面の笑みで抱きしめる束さんが写っている写真が収まっていた。写真の中の箒さんは恥ずかしそうにしているが、可愛らしい笑顔だ。本当に仲の良い姉妹が写っていた。恐らく、束さんの宝物なのだろう。写真は古いものだろうが、とても綺麗な状態だ。大切にされていたことがありありと伝わってくる。
「ね、姉さん……っ!」
箒さんも涙が止まらないようだ。これを止めてしまうのは少しもったいない。だから、抱きしめてあげる。
「ホウキ、よかったね」
「……お前は一人ではないぞ」
イーニァとクリスカも箒さんを抱きしめて慰めてくれている。箒さんは私たちの中で、大きな声を出して泣いてくれた。
何分か頭を撫でていると、箒さんがモゾモゾと体をよじる。顔を見ると、涙は止まっており、少し目元が腫れている。それでも表情は晴れ晴れとしている。まぁ、恥ずかしそうにはしているけど。
「も、もう頭は撫でなくていい」
今は大人しく撫でられてなさい。なでなで。
「ふふっ、なでなでー」
「も、もう大丈夫だから! は、恥ずかしい!」
ふふ、分かったよ。
これ以上はかわいそうなので解放してあげる。どう? スッキリした?
「あぁ。こんなに思い切り泣いたのは久しぶりだ。何だか、胸のつかえが全部取れたようだ」
そっか。この写真は神社の前で撮ったの?
「あぁ。私の七五三の時に撮った写真だ。何故か私より姉さんの方が張り切っていてな。母さんやおばさんたちが慌てていたのをよく覚えている」
だから振り袖姿なんだ。
「おにんぎょうさんみたいでカワイイ!」
「このような服を着るのだな」
二人も興味深げに写真を見つめている。箒さんはこの写真、持ってなかったの?
「引っ越しの時にバタバタしていてな。もしかしたらおばさんが持っているかもしれないな」
そっか。じゃあ今度帰ったときに探してみないとね。
「あぁ。保護プログラムも解除されたから、一度実家に帰ろうと思っていたからな。その時アルバムも持ってこようと思う」
じゃあ、その時はアルバム鑑賞会だね。織斑君にも持ってこさせようか。
「ふふ、それはいいな」
……どうやら、箒さんは吹っ切れたのかな。束さんのことを聞いても、嬉しそうに話してくれる。これならば、この写真のような関係に戻る日も近いだろう。ふぁ……。
「む? あぁ、もうこんな時間か。色々あったんだ。ハクノも疲れてるだろう。ほら、こっちにこい」
…………ゑ?
「きょ、今日は私が一緒に寝てやると言っているんだ。お前はそういうのが好きなのだろう?」
や、好きですけど。い、イーニァ……。
「ホウキはわたしといっしょね!」
「そうだな。じゃあお休み、二人とも」
あぁっ! 箒さんがニヤニヤしている! 完全に楽しんでるよこれ!
「イヤ、なのか……?」
あーもう! そんなわけないでしょうが! ほら、ギュー!
「ふふっ……、あぁ、温かい」
私を抱きしめるクリスカの顔は、本当に心からホッとしているようで。どうやら、私はご主人様失格のようだ。こんなに主人想いのメイドさんを不安にさせてしまったのだから。だから、そのお詫びに。心からの感謝を込めて。クリスカの体を抱きしめる。
「お前が生きていてくれて、本当に良かった」
私も、あなたが隣にいてくれて良かった。ありがとう、クリスカ。私の大切なメイドさん。
翌朝、朝食が終わると、すぐに学園に帰るための作業に入る。それも十時頃には終了し、皆バスに乗る。流石に暮らすが違うのでクリスカ達とは別行動だ。
今回の隣の席は箒さん。その箒さんは織斑君が気になっているご様子。まあ、仕方ないか。
ほらほら、優しくしてあげないと。水でも持っていってあげたら?
「そ、そうだな」
箒さんが立ち上がろうとすると、バスに一人の女性が入ってくる。確かあの人は《銀の福音》の操縦者の人だったはず。まだ、ここにいたのか。
「あ、織斑一夏くんって、君?」
「え、あ、はい。そうですけど」
どうやら探し人は織斑君のようだ。しかしどうして?
「ふーん君が。私はナターシャ・ファイルス。《銀の福音》の操縦者。これはお礼よ。ありがとう小さな騎士さん」
チュッと、織斑君の頬にキスをするファイルスさん。あちゃー。
まぁ、この後の結末は簡単に予想ができるので、私はファイルスさんの後を追う。バスを出たところで何やら悲鳴が聞こえたが、乙女の純情を傷つけたのだ。甘んじて受けきってもらおう。
バスの外に出ると、ファイルスさんは織斑先生とキアラと一緒に話していた。
「岸波。バスに戻らないか」
「あら、この子が《聖杯》の操縦者? 随分可愛い子だったのね」
自他共に認める子リスです。またの名をフランシスコ・ザ……、岸波白野です。
「白野ね。これからはあなたの後輩となるわけだから、よろしくね」
抱きつきながら、ほっぺにキスされた。おぉ、アメリカ人。
「あら、仲がよろしいようで何よりですわ」
あ、キアラ。
「……思うところがないわけではないけれど、あの子を救ってくれたことだけは感謝しているわ」
「そう言って貰えるならば救われますわ。査問委員会では全力で支援いたしますので、ご安心なさって下さいませ」
キアラの全力。…………恐ろしすぎる。
「《カリス社》の本気ね。頼もしすぎて恐ろしいわ」
「我が社の社員に全力を尽くすのは当然ですわ。さ、そろそろ白野さんを話して差し上げて下さいな。もう出発の時間ですので」
ちなみにこの間、私はファイルスさんの腕の中にいました。じゃあファイルスさん、また。
「えぇ。あ、あと私のことはナタルでいいわ。これからよろしくね。可愛い先輩さん」
はい。よろしくね、ナタルさん。
ナタルさんに手を振ってバスの中に入って先ず目に入るのは死屍累々の織斑君。軽く手を合わせてから、頬を膨らませている箒さんを宥めることにするのだった。
濡れ場は後日upします