長かったロシア旅行も今日で最後だ。一杯お土産も買えたし、色々な所をクリスカ達と回れたから、楽しかった。今日は午後に出発だ。流石にゾフィーさん達は来られなかったので電話で挨拶をしただけだったが、また来てくれと言ってくれた。
「今日のお昼ご飯は外で食べていただきます」
今日も《カリス社》のお店?
「いえ、イヴァン様のオススメのお店です。とても評判のお店ですので、楽しみにしていて下さい」
うん、楽しみにしてるね。ホテルの人たちにお礼を言ってから行こ。
「はい。ホテルの皆も喜ぶでしょう。こちらですわ」
ホテルのロビーに行くと、従業員さん勢揃い。なんか見たことある。
「我々従業員一同、またのお越しを心よりお待ちしております」
ありがとうございました。こっちに来たときはまたよろしくお願いしますね。
「はい。最大限のおもてなしをお約束いたします。行ってらっしゃいませ、白野様」
従業員さんたちのお辞儀に見送られ、ホテルを後にする。少しモスクワの街を見てから、イヴァン一押しのお店に入る。ランチなので、結構カジュアルなお店である。
「ここのランチはロシアでも評判です。一度食べていただきたくて、最後の日になってしまって申し訳ございません」
ううん。気にしないで。それに、こんなにいい所に連れてきてくれて嬉しいよ。
「こちらは、特にピロシキやボルシチは絶品ですわ。私も何度も訪れたものです」
じゃあヴィーラさんオススメのご飯を食べてみよう。クリスカ達は来たことある?
「うん、ヴィーラにつれてきてもらったよ」
「何度かな。確かに美味しかった」
聞けば聞くほど楽しみだ。ワクテカしながら待っていると、お待ちかねのご飯がやってきた。おぉぅ、いい匂い。いただきます。ムグ……うーまーいーぞ!(小声)。
「ふふふ、お気に召していただけたようで何よりです。ふふ、この味はまだまだ出せませんわ」
どうやらヴィーラさんもご満悦の様子。いつもよりニコニコ六割増しだ。勿論私たちもニコニコ六割増し。クリスカだけ三割増し。恥ずかしがり屋さんめ。
「う、うるさい。美味いものは美味いんだ」
こんなに美味しいのに。ねー。
「ねー?」
「か、からかうな!」
クリスカカワイイ。
「うぅぅ……ハクノは少々意地悪が過ぎるぞ?」
だって、クリスカ可愛いんだもん。ヴィーラさんもそう思うよね?
「はい。前と違って、とても愛らしくなってしまって。ふふふ、可愛いですよ、クリスカ?」
「ヴィーラまで……許してくれ……」
クリスカで遊ぶのはこれくらいにして。ヴィーラさん、時間って大丈夫?
「はい、まだ余裕はありますが出発しますか?」
そうだね。早めについておいた方が安心だし。
「では、いくつかピロシキを包んでもらいましょう。機内で食べるのもよろしいですしね」
是非に。
いくつかとは言いつつ、結構な料のピロシキを包んでもらった後、まっすぐ空港に向かう。ちなみに、空港巡りはNGと言われた。残念。まぁ、このラウンジは凄く快適なので問題は全くないのだが。
紅茶をジャムと一緒に飲むのにもすっかり嵌まってしまった。ちょっとした大尉気分。あぁはなれないとは思うけど。私は銃より剣派です。
「スコーンはいかがですか?」
あ、いただきます、って、日本のラウンジの職員さん? あれ、日本にいたんじゃ?
「少し無理を言って、こちらに来させてもらいました。どうぞ、ここのスコーンは絶品ですよ」
じゃあお言葉に甘えて。アム。おぉぅ、美味しい。
「焼きたてですから、特に美味しいですよ」
お姉さんも一緒に食べよ?
「え? いえ、その……」
はくのんのお願いです。みんな仕事があるみたいで、一人だとちょっと寂しいというか。
「では……失礼いたします」
ありがとうございます。はいどうぞ、紅茶です。
「ありがとうございます」
それからお姉さんとお話をして時間を潰す。どうやらお姉さんもIS学園の卒業生らしい。それじゃあ先輩ですね。
「私がいた頃はヴィオリニスタ様が生徒会長でした。あこがれの先輩、といったところでしょうか」
へぇ。ミラさんもいたの?
「はい。ミラ様は副会長でした。実務はミラ様が主にやっていたようですが、行事などはとても楽しかったです」
そっかぁ。今の会長さんはどうなんだろう?
「更識楯無さんでしたね。彼女もなかなかに楽しいことが好きだと聞いています。休みがあれば文化祭も始まりますから、きっと今よりももっと楽しくなると思いますよ」
文化祭か。なんだろう、メイド喫茶とかやるのかな?
「白野様のメイド姿ですか。うふふ、見てみたいですね」
写真で良ければ送りますよ。アドレスさえ教えてくれれば。
「それはとても魅力的ですが、流石に業務違反になってしまいます。でも、嬉しいです」
そっか。じゃあ、ここの会社宛に送るのはいいですか?
「それでしたら是非。みな喜びます」
って、メイド喫茶に決まったわけじゃないのに、流石に早とちりしすぎだった。
「そうでしたね。でも、どのような衣装であっても白野様でしたらお似合いだと思います。お写真楽しみにしていますね?」
ちょっと恥ずかしくなったところで、飛行機が到着した。あ、お姉さんは普段は日本にいるの?
「はい。《カリス社》の専属職員ですので、今は日本を本拠地としています。なかなか頻繁には顔を出せる所ではございませんが、ご用の時は何なりとお申し付け下さいね」
はい、きっと。あ、これ、私のプライベートアドレスです。秘密ですよ? オフの日に、街を案内して下さい。(コソコソ
「もぅ。白野様ったら。……分かりました。休みの日に連絡しますわ。っと、自己紹介がまだでしたね。私はユイ・ジュイティエフです」
よろしく、ユイさん。
ユイさんに街を案内してもらう約束をしてから、飛行機に入る。まぁ、長い空の旅。今日は朝も早かったことだし、少しお昼寝しよう。
スピー、と眠ること一時間。予想以上に疲れていたのか、思ったより眠っていたみたい。隣にはイーニァ。私が起き上がったので、イーニァも起こしてしまった。おはようイーニァ。
「うにゅぅ……あ、おはよ~ハクノ」
寝ぼけているイーニァはいつもの三〇割増しで可愛い。反則である。思わず抱きしめてしまった。
「にゅ? ハクノ、ぽかぽかぁ……」
はぁ……ヌクい。
「お、起きたのか。今しがたヴィーラがピロシキを温めていたが、食べるか?」
たべるー。
「わたしもー」
「ほら、その前に目を覚ませ。顔でも洗ってこい」
ジャブジャブ。はくのん、復帰!
「イーニァも!」
「分かった分かった。ほら、こっちだ」
クリスカの後について、食堂に行く。そこでは先にラトロワさんがピロシキを食べていた。
「うむ? あぁ、先にいただいているぞ」
あ、いいなー。
「白野様たちの分もちゃんとありますよ。こちらにお座り下さい」
ラトロワさんのお隣に失礼して、熱々のピロシキをパクリ。んまー。
「お前は本当に美味そうに食べるな」
だって美味しいじゃないですか。
「まぁ、ここのはどれも絶品だからな。そういうふうになるのも分からんでもないがな」
あれ? ラトロワさんもあのお店のファンなんですか?
「あそこの近くに家があるのでな。軍に入る前は、あそこでよく朝食やランチをしたものだ。ま、常連という奴だ」
あ、ラトロワさんのお家って、あの辺りなんですね。あ、ありがとうヴィーラさん。……やっぱり美味しい。
「あそこに行くと聞いていれば、一緒に行ってもよかったのだがな。まぁ、やることもあったから仕方がなかったが、一言挨拶くらいはしておいても良かったか」
じゃあ、今度は一緒にいきましょ?
「あぁ、楽しみにしているよ」
その後も時間はたっぷり余っていたので、クリスカやイーニァとお話ししたり、みんなと映画を見たりして時間を潰した。
日本に到着した頃には、もう深夜になっていた。そう言えば、もう寮には入れないんじゃない?
「今日はホテルに一泊してから学園に戻る予定です。明日の朝はゆっくり出来ますので、しっかりとお休み下さい」
時差もあるし、流石に疲れた。その日はベッドに入るとすぐに眠ってしまった。
次の日、IS学園に行くと、一人の生徒が私を待っていた。
「待っていたわ、岸波さん。やっとご挨拶できるわ」
扇子を持ったその人は、どこかで見たような……。あ、たしか。ごそごそ。
「えと、挨拶して、いいかしら?」
ちょい待ち。えーと……あ、これこれ。ロシアで買ったマトリョーシカを取り出して、その女の人の顔の横に並べる。うん、そっくり。ということは、会長さんですね? どうぞ、ロシア土産です。
「あ、どーも……、って、紹介する前に気付かれたー!?」
次回から五巻に突入。ちなみに一夏達は夏休みを満喫しました。弾や蘭はもう少し後に登場かも。もしかしたら休日談あたりで出すかもしれないです。