「で、私は更識楯無。このIS学園の生徒会長で、ロシアの国家代表を務めているわ」
あの後、ヴィーラさんやクリスカ達と別れて生徒会室に連れて行かれた。今いるのは私と会長さんとあと一人。えーと、あなたは?
「私は会計の布仏虚です。お嬢様の従者も務めています。いつも本音と仲良くしてくれてありがとう岸波さん」
まさかののほほんさんのお姉さん。こちらこそいつもフカフカさせてもらっています。
「ふふふ、よく本音が嬉しそうに話していたわ。これからも仲良くしてあげてね」
もちろんです。えーと、のほほさん?
「……虚でいいわ」
じゃあ虚さん、よろしくお願いします。
「って、なんで虚ちゃんの方が先に仲良くしてるのよー!」
〈うらやま!〉扇子が吠える。アメ、食べます?
「もらうわ。……まったく、生徒会長はもっと大切にしないとダメなんだから……」
ロシアで買ってきたアメです。美味しいでしょ?
「確かに美味しいわね……」
「会長、お話はいいのですか?」
「はっ!? コ、コホン。今まではキアラ先生に止められてたから挨拶できなかったけど、ようやく顔を合わせられたわね。ロシアでは随分暴れたみたいね。それに、インタビューが載った雑誌、過去最大発行部数だったみたいだけど、もう売れ切れ状態みたいよ? 私も何とか一冊手に入れたけど、面白かったわよ。それに、元国家代表の英雄達とのサイン入りスリーショットなんて、これだけでもプレミアがつきそうよ」
思ったより大事になりつつあったようだ。あの写真、小さくしたの手帳に挟んでおいたんです。見ますか?
「え、見せて見せて。って、大統領達のもあるし、有名人との写真のオンパレードね。随分凄い人たちと知り合ったみたいね」
みんないい人でしたよ。その歌手の女性からは、東京公演のチケットももらいましたし。
「あら、その人のコンサートは予約開始と同時に完売と聞いていましたが……」
そう言えば、最前列中央って言ったっけ。
「恐らくキープしていたものなんでしょうね。随分と気に入られたようですね」
うーん、確かにギュッと抱きしめられましたけど。いい匂いがしたなぁ……。
「随分ひとたらしねぇ。私の専売特許だと思ってたけど、これは認識を改めないといけないわね」
? 私は可愛いもの好きなだけですよ?
「しかも自覚無しなのね。ま、今日は挨拶だけのつもりだったから、お茶にしましょ? 虚ちゃん、お願いできるかしら?」
「はい。少々お待ち下さいね」
少し待つと紅茶のいい香り。ロシアではいつも紅茶を飲んでいたので、楽しみだ。
「お待たせしました。ヴィオリニスタ様のようには淹れられませんが、お口にあえばいいのですが」
そんなことないです。とっても美味しいです。あ、お土産のジャムもあるんです。よかったら一緒にどうですか?
「ロシアンティーですね。では、せっかくですしいただきましょうか。お皿、持ってきます」
やっぱり、この飲み方が一番しっくりくる。なんだかんだでロシア人の飲み方がピッタリきている。
「そういえば、こんな飲み方をしたことなかったけど、美味しいわね」
「お嬢様もロシアの代表なんですから、少しはロシアの文化に触れないと。岸波さんに代表の座を奪われてしまいますよ?」
いや、私が目指すのは機動部門なので、大丈夫ですよ。(ニヤリ
「悪い顔してるわよ、もぅ。だけど、インタビューでも言ってたけど、格闘部門の代表は目指さないの? あなたの実力なら、決して不可能じゃないと思うけど。その《聖杯》も乗りこなしているわけだし」
だからこそです。《聖杯》に乗っていて一番楽しいのは飛び回ることですから。それに、他を寄せ付けずに、純粋なスピードで駆け抜けるのって、爽快だと思いませんか?
「機動部門でも戦闘はあるけど、《聖杯》ならスタートさえどうにか出来れば、独走で駆け抜けられそうね。純粋なスピードと機動で魅せるというのも確かに魅力的かしら」
でしょう? スピード勝負に武力なんて無粋なんですよ。
「早くも現行最強と名高い《聖杯》の操縦者が武力を否定とはなんとも皮肉ね」
だって、元々ISは宇宙開発用でしたよね? 束さんもそう言ってましたし、せいぜいデブリ破壊くらいかなって。
「まぁ、今の状態は博士にとっては不本意なものでしょうね。というか、本当に仲が良いのね。報告では聞いてたけど、ことがことだから信じられなかったけど、ビックリだわ」
まあ、あの姉妹は可愛い人たちですから。仲良きことは美しきかな、ってところです。
「あら、岸波さんったら、お母さんみたいですね」
いや、織斑先生と同い年の娘はちょっと無理が……。
「ふふふ、じゃあ、織斑先生も娘さんなのかしら?」
いや、世界最強と天災の母親とか、死ねるので……。
「おやおや、織斑先生に言っちゃうぞー」
その〈ニヤニヤ〉扇子が憎い。
「あら、もうこんな時間。会長、そろそろ」
「あ、そうね。今日は楽しかったわ。また、呼ぶことがあると思うけど、その時はよろしくね」
はい。その時はまた美味しいお茶を淹れて下さいね、虚さん。
「はい。とっておきのお茶を用意しておきます」
じゃあ。
「あ、あれ? 私は?」
あ、〈私は?〉扇子会長さんもまた。
「ちょ、ちょっと!? 変な……!?」
「さ、仕事もあることですし、働いてくださいお嬢様」
「う、虚ちゃーん!?」
生徒会役員達は仲が良いみたいだ。そう言えば、皆はこっちに戻ってきているのだろうか。オルコットさんはイギリスに帰るとも言っていたし。織斑君なんかも、家に戻るとも言ってたけど。修羅場とかあったか聞いてみよ。
でもこの後はどうしようか。時差ボケはもう大丈夫だし、ワイヤーアクションでもしようかな?
「ん? 岸波、戻ってきていたのか」
あ、ボーデヴィッヒさん。ただいま。あとでお土産渡すからね。
「ふふ、楽しみにしている。昨日帰ってきたのか?」
うん。昨日はホテルに泊って、それから帰ってきたの。
「そう言えば、ロシアでは大した活躍振りだったみたいだな。まさか、あのフィカーツィア・ラトロワを倒してしまうとは。本国からも問い合わせが大量に来たぞ」
ありゃ。それはご愁傷様。私はよく分からないから、詳しくはキアラに聞いてね。
「それは……無理だな。それより、これからアリーナに行くのか? 良ければ付き合うぞ」
じゃあ、お願いしようかな。ボーデヴィッヒさんって、ワイヤーブレードを使ってたよね。《聖杯》にもあるみたいだから、教えてくれるかな?
「分かった。少数から始めればあまり難しいものではないからな。最大で何本なのだ?」
百八十本。
「は?」
百八十本だって。しかも、やる気になればイメージインターフェイスで、自由自在らしいよ。
「……また、岸波先生か。まぁ、それは後々だな。取り敢えずは慣れてからだ」
イエス、マム。よろしくね、教官?
「よせ、それは恥ずかしい」
ふふふ、ゴメンね。でもせっかくの浪漫武器。きちんとモノにしないとね。
ということで、夕食までボーデヴィッヒさんと訓練した後、久しぶりに食堂でご飯を食べる。うん、ここの料理も美味しい。
「あ、岸波さん! 帰ってきてたんだ」
おや、相川さん鷹月さん。ただいまー。
「テレビで見たよ。また、凄いことしてたね」
「それに、雑誌も読んだわよ。ロシアから来た子に頼んでね」
うぬぅ、恥ずかしいのであんまり見ないでいただきたいです。
「ふふふ、一緒にいいかしら」
もちろん。ボーデヴィッヒさんもいいかな?
「かまわんぞ」
相川さん達とお互いに夏休みのことを話ながらご飯を食べる。おうやら、織斑君が色々やらかしていたようだ。あとで色々聞き出してやろう。
ともあれ今日は疲れた。もうすぐ授業も始まるし、たまには勉強とかもいいだろう。逃げだそうとしたのほほんさんを捕まえつつ、いくらか復習をした。
一通り終わった後、ロシアで買ってきたクッキーと紅茶を淹れてあげることにした。お疲れ様、のほほんさん。
「う~、はくのんスパルタ~」
まぁまぁ、ほら、このお茶美味しいよ?
「あ、ほんとだ~」
どうやら気に入ってくれたようだ。一押しのアメをあげたり、のほほんさんを餌付け。
「んぐんぐ……、そういえば、はくのん、お嬢様に会ったんだよね?」
ん? あぁ、会長さん? そういえば、虚さんにもあったよ。
「お嬢様、メールで泣いてたけど、何したの?」
んふー。完全勝利っすわ。なんだか、泣かせてみたくなっちゃって。何というか、ああいう泰然としてる人を涙目にさせると、こう、ゾクゾクするというか。
「ありゃりゃ、これはお嬢様にとっての天敵だね~。あんまり泣かせたりしたら、めっ、何だからね?」
のほほんさんから、めっ、てされた。ご褒美です。でも、止めません。のほほんさんも分かるでしょ、この気持ち?
「ん~、分からないでもないけど~。立場上、頷けないというか」
今の所は標的は織斑君と会長さんかな? 箒さんたちはかわいそうだし。
「じゃあ、おりむーだけは協力してあげる」
よし、愉悦部に新入部員加入。じゃ、久しぶりに、一緒に寝よっか。そろそろ良い時間だしね。
「うん。ふふふ~。はくのんと一緒に寝るの久しぶり~」
ヴィーラさんから、新しい寝間着もらったの。すべすべで気持ちいいやつだって。のほほんさんの分もあるよ。
「お~、高級シルクでスベスベ~」
流石はヴィーラさんの見立てに間違いがない。お揃いになって同じベッドに入る。久しぶりののほほんさんはやっぱりのほほんと出来る。すぐにウトウトしてきてしまう。
「うふふ~、はくの~ん」
んにゃ? なに?
「ぎゅ~」
おぉぅ、ふっかふか。
「やっぱりはくのんはあったかいね~」
のほほんさんもあったかいよ。やみつきになっちゃう。
「私もメロメロ~」
どうやら相思相愛みたい。嬉しそうにニコニコしているのほほんさんのぬくもりを感じつつ、心地よい眠りにつくことが出来たのであった。