さて、夏休みも終わり、今日から二学期だ。全校集会ということで、会長さんの挨拶である。小さく手を振ると、ニコッと笑顔を返してくれた。
「さて、今回の学園祭だけど、今年は特別ルールを導入するわ」
ほう、なんだろうか?
「その名も『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」
いらねー。
「いや、はっきりと言わないでくれよ……」
「例年は投票で上位の部活に対して助成金を出していましたが、今回はそれではつまらないので、一位を獲得した部活に織斑一夏くんを入部させることにしました」
ふーん。まぁ、唯一の男子だから、欲しいのだろう。現に周りの子達は大騒ぎになっているし。
で、だ。その日の放課後。早速学園祭の出し物を決めることになったのだが……。
『織斑一夏のホストクラブ』
『織斑一夏とツイスター』
『織斑一夏とポッキー遊び』
『織斑一夏と王様ゲーム』
……『織斑一夏とドキドキ☆恋人喫茶』とかどう?
「「「それ!」」」
「却下だ!」
「「「えぇぇぇぇっ!?」」」
まぁ、せっかくの織斑君(景品)がいるのだ。ここは大人しく看板(生け贄)になりなさいな。
「何か含みを感じるけど……。ともかく、まともな意見をだな……」
「では、メイド喫茶などはどうだ?」
まさかのボーデヴィッヒさんからメイド喫茶をやろうという言葉が出てくるとは。でも、このクラスには美少女が多いし、織斑君には執事服でも着せておけばいいだろう。ついでにに《ご奉仕》もさせられるし。そうすればお客さんも集まるんじゃない?
「執事のご奉仕! いいわ!」
どうやらみんなも賛成のようだ。まぁ、メイド服なら、ヴィーラさんに頼めば融通してくれると思うし、衣装に関しては任せてもらっていいよ。
「ホント!? クラヴィア様と同じ服を着られるなんて、あぁ!! なんたる至福!」
流石というか何というか。私のメイドさんは大人気みたい。話を聞きながらヴィーラさんにメールをしてみると、すぐにオーケーのお言葉。それを伝えると、そのまま一組の出し物はメイド喫茶に決定したのであった。
私のクラスの出し物がメイド喫茶に決定したことをヴィーラさんやユイさんに連絡すると、楽しみだと言ってくれた。クリスカたちにもそう伝えると、必ず行くと言ってくれた。それで四組は何をするの?
「私達も喫茶店だ。何か衣装を着るみたいだがな」
「これがリストだって」
イーニァから渡してもらったリストを見ると、メイド服やナース服に始まり、チャイナ服にバニーまである。クリスカは……あ、この衛士強化装備なんか似合うんじゃない?クリスカ、スタイルいいし。
「どれだ……って、こんな服着れるか!?」
え、でも、これ、クリスカさんの、って印ついてるよ?
「んなっ!? 止めさせるよう言ってくる!」
あー、行っちゃった。イーニァはどれを着てみたい?
「わたしはメイドさん! ハクノとおそろい!」
イーニァのメイドさんか。《カリス社》のメイド服は見たことあるけど、こういう可愛いメイド服も似合いそうだ。私はクラシカルなのもキュートなのも大好きです。
「ふふふ、たのしみにしててねー!」
その後しばらくして憔悴したクリスカといっしょに校内を一緒に回ることにした。どうやら要望は却下されたらしい。まぁまぁ、初めての学園祭なんだから、少しくらい冒険しなきゃ。
「そういう問題じゃない……」
げんなりとするクリスカをイーニァと一緒に慰めていると、なにやら道場から音が聞こえる。覗いてみると、織斑君と会長さんが手合わせをしていた。覗いてみると、やはりというか、会長さんには全く歯が立たないみたいだ。あ、やられた。
「ふぅ。のぞき見はだめよ?」
あ、バレてた。まぁ、隠し通す着もなかったので、そのまま道場の中に入る。そういえば、どうしてこんなことを?
「んー、まぁ、織斑君の訓練ってとこかな。男の子は強くないと」
まぁ、織斑君、色んな人に狙われてるでしょうしね。それに、今度の学園祭に色々くるんでしょう?
「あら、気付いてた? もちろん学園祭だけではないけどね。強くないとこの先大変でしょうし、生徒会長としてサポートしてあげないと」
あら、優しい。会長さんは年下趣味ですか?
「そんなんじゃないわよ。そうだ、君たちも手合わせする?」
んー、私はご遠慮します。ラトロワさんにも訓練してもらってますし。
「あー、中佐直々にかぁ。じゃあ、やめておくわ。怒られちゃいそうだし」
ラトロワさん優しいですよ?
「それはあなたに対してだと思うわよ。あの人、ものすごく厳しいので有名だから」
うーん……。話聞く限り、部下の人たちには凄く慕われてるみたいだけど……。部下のターニァさんなんて、お母さんみたいに思ってるっていってたし。
「あぁ、それは《ジャール部隊》ね。中佐直属のIS部隊よ。今はその大尉が臨時司令官についているはずよ。会ったの?」
はい。ロシアに行っているときに。まだまだ若くて可愛らしい人でした。
「まぁ、たしかに美人だけどね。まったく、ロシアの人たちはあなたにべたぼれみたいね」
というか、ラトロワさんにはどんな服装が似合うか二時間語り合って仲良くなったんです。最終的にはメイド服を着てもらいましたけど。
「なにそれ見たい」
残念ながら写真はNGでした。でも、恥ずかしがってるメイドラトロワさんは最高でしたよ。ターニァさんがこっそり撮ってたみたいですけど。今度、サブカル文化を教えるって約束もしましたし。
「なんとまぁ、《ジャール部隊》も毒されつつあるのね。《永久凍土(ヴィェチナヤ・ミィェルズロータ)》とまで呼ばれてたのに」
確かにクールな人たちでしたけど、随分楽しんでましたよ。
「それが凄いことなの。元々人気はあった部隊だけど、これで更に人気がでるわね。今度、特集も組まれるみたいだし。これでまたロシア経済が潤うわね」
何だか、凄いことになっているらしい。ともかく、そろそろ織斑君を保健室に連れて行ってあげません? 流石に気絶しっぱなしなのはダメかと。
「おっと、そうね。じゃあ、私が直々に運んであげましょうか」
運び方については、織斑君の尊厳のためにここでは伏せておこう。写真は撮ったので、あとで枕元に置いておこう。
そこから数日。織斑君は会長さんと一緒に猛練習に励んでいるようだ。学校中の噂になっており、アリーナには連日結構な人たちが集まっていた。ついでに、箒さんたちの機嫌も悪くなっていたが、それはご愛敬という所だ。
今日は箒さんと一緒にご飯を作っていた。私はクリスカ達に向けて。箒さんはもちろん織斑君に向けて。箒さんはいなり寿司を作っていた。お母さん直伝のとっておきらしい。それに、唐揚げを一緒に詰めて、織斑君の好物で固めたらしい。私も気になるので、渡すところまでご一緒させてもらうことにしたのである。
だが……。
『一夏くん? 何してるの? あっ、浮気がバレちゃうから慌ててるんだ♪』
中からは会長さんの楽しそうな声。アチャー。
隣を見れば、黒いオーラを発している箒さん。箒さん、ドウドウ。
「白野! 止めないでくれ! アイツは亡き者にせねば!!」
はいはい。そこでぼこぼこにしたらダメ。はい、深呼吸。
「スー……ハー……」
うん、落ち着いた?
「……あぁ、取り敢えずはな」
オーケー。取り敢えず相手は会長さんだから武力に訴えるのはNG。ここは悲しげに織斑君に迫るのが吉。箒さんも悲しくなっちゃうでしょ?
「そ、それは……。あぁ、どうなっているのかが気になってしまう……」
うん。それは自然なことだから。朴念仁は罪悪感に苛まれればよろし。さ、入りましょうか。
扉を(強引に)開いて、部屋に入る。中には裸エプロン(偽)の会長さんに詰め寄られる織斑君。先程までのボルテージの箒さんだったら斬りかかっていただろうが、今の箒さんはしょんぼり状態だ。それをみた箒さんは本気で悲しそうな表情をしていた。
「その……なんだ……、一夏は年上の方が……」
「箒!? そ、そんなことは……」
「えっと、な? お前の好きないなり寿司と唐揚げを、作ってきたんだ……。置いておくから、あとで食べて……くれ……っ!」
それだけ言うと、箒さんはお弁当を置いて走り去って行ってしまった。んじゃ、私はフォローに行くので。
「えっ!? いや、白野ちゃん?」
会長さんも恋する乙女を邪魔しちゃダメですよ? あとで一声かけてあげて下さいね?
「いや、白野ちゃんが誘導したんでしょー!!」
あ、織斑君も、あとで箒さんにちゃんと説明すること。あと、そのお弁当は箒さんと一緒に食べるように。
「あ、あぁ……」
うん。織斑君には効果テキメンだったようである。ともあれ、まずは箒さんのフォローからだ。こういうときに行くのは屋上だろう。予想通り箒さんは屋上の隅っこの方で体育座りをしていた。ほら、そんなとこにいないで、ちゃんとベンチに座ろ?
「あぁ……」
あらら、そんなに落ち込んじゃって。大丈夫だよ。あれ、織斑君完全に巻き込まれた側の被害者だから。会長さんは私が懲らしめておいたしね!
「ふふふ、白野は相変わらずだな」
まぁ、織斑先生もいるし、年上好きな可能性は高そうだけどね。ともかく、お腹が空いてたら機が滅入っちゃうよ。はい、私だけど……あーん。
「ま、まて……全く……、あむ。……やっぱり美味いな、白野の料理は」
愛情たっぷりですから。
「ふふふ。あ、でも良かったのか? それはクリスカとイーニァの為に作ったものだろう?」
いいの。泣いてる女の子を放っておいたら逆に怒られちゃう。大体、たきつけたの私だし。
「そうだ。全く、怒るのも忘れてしまったからな」
でも、怒って斬りかかるよりはいいと思うけど。
「うっ、だがな……」
押してダメなら退いてみるの。カッとなる前に深呼吸すれば、落ち着くから覚えておいてね?
「……善処する」
ふふ、よろしい。それじゃ、私はクリスカ達の所に行ってくるから、箒さんはもう少しここにいるように。
「? まぁ、分かったが、何故だ?」
王子様がこっちに来てるからね。このままいたらお馬さんに蹴られちゃうから。
「か、からかうな!」
あら、可愛い。
取り敢えず、こっちに来ている織斑君に見つからないようにやり過ごした後、クリスカ達とご飯を食べた。その後、箒さんからお礼のメールが届いたので、作戦は大成功だったようだ。