まぁ、はくのんと仲良くなったからということで。
はくのんにとって会長さんには攻め対象。簪可愛いというのは共通認識。
今私は整備室にいます。何故かって? 箒さんとワイヤーブレードの訓練をしていたら、予想以上に《紅椿》の燃費が悪かったのである。
「何か分かったか?」
うーん……やっぱり、《紅椿》は《絢爛舞踏》有りきの機体みたい。性能が高いから、何も無しでやると、すぐにエネルギーを使い切っちゃうみたい。
「ふむ……やはり精進あるのみか」
ま、最終的にはそうだね。で、どうしよっか? 一応、燃費良くすることも出来なくはないけど。
「でも、それでは性能も落ちてしまうのではないか?」
んーとねー……あぁ、あったあった。いくつかバイパス繋げられるから、性能そのまま、燃費は……5%くらいなら上げられるよ。あと、少し性能を落としてもいいなら、30%くらいまであげられるけどどうする?
「……性能を落とした場合は何か他にデメリットはあるのか?」
そうだねー。全開のスペックに慣れることが出来なくなっちゃうかもしれないのと、《絢爛舞踏》をマスターするのが遅れるかも、ってとこかな。
「では、性能はそのままにしてくれないか? せっかく姉さんが作ってくれたものなんだ。その性能を全て出せるようになりたい」
オーケー。じゃ、そうするね。んじゃ、ここからはひたすらデータ打ちだから、ちょっとお茶とか持ってきてくれると嬉しいなー。
「ふふっ、それくらいならお安いご用だ。幸いに、高級な玉露が日本政府から送られてきたからな。贅沢に使ってやろう」
一応IS委員会の公認で、箒さんは《カリス社》の所属となっているが、まだ非公式である。だからか、箒さんには多くの「贈り物」なるものが来ている。金品や高級品は受け取っていないようだが、茶葉やたまにお菓子などはどうせだからと受け取っているようだ。これがやたら美味いのである。
さて、箒さんが帰ってくるまでに、少し整理でもしようかな……流石は束さんというか、無駄はないから……少し並びを変えてっと。……切り替え式にしてみようかな。取り敢えず、《絢爛舞踏》のシステムには手を出さないでおいてっと。……ありゃ? 簪さん?
束さんのシステム構築の見事さにシャッポを脱いでいると、いつの間にか後ろに女の子が立っていた。というか、簪さんである。
「白野って、プログラミングも出来たんだ」
専門はハッキングだけどね。まぁ、束さんのプライベートラインに割り込むのに比べれば、まだラクかなぁ。流石に一から組むとなると、センスが足りないけど。二式の進み具合はどう?
「……いまいちスラスターのバランスが悪い」
そっか。ちょっと見せてもらってもいい?
「うん」
新しく展開したスクリーンにデータを飛ばしてもらう。ふむふむ……最高速度を高くするあまり、燃費が最悪だ。こりゃ《白式》よりもひどい。ちょっとオーバースペック過ぎるかな。スラスターの容量を超えちゃってるから、このまま飛んじゃったら二、三分で爆発しちゃうかな。
「そっか……、うん、もう少しがんばってみる」
うん、頑張って。武装のデータ取りとかなら付き合えるだろうから、いつでも言ってね。
「うん。スラスターの方が終わったらお願いする」
バイバイと手を振り、こちらも作業に戻る。とはいっても、これからは箒さんの意見も聞かなければいけないので、少し休憩。
待つこと五分ほど。箒さんがお茶を持ってきてくれたので、それを飲みながら作業を開始する。箒さんの要望を聞きつつ、できる限り効率を良くしていく。取り敢えず区切りが良いところまで漕ぎ着けると、もう夕食の時間となっていた。
「すまないな。こんな時間になるまで付き合わせてしまって」
気にしないで。機械弄りは楽しいし。ほら、簪さんも行くよ?
「私は、いい」
だーめ。しっかり食べないと、またバランスミスっちゃうでしょ。今日はスペシャルセット奢ってあげるから、一緒に食べよ。
「うぅ……分かったから。首、くるし……はなして……」
あ、ゴメン。
ともあれ、今日は箒さんと簪さんと三人で夕食だ。話題は今度行われるキャノンボール・ファストである。まさに、私のためにあると言っても過言ではないね!
「まぁ、確かに機動部門代表を目指すならそうだろうが……。高速機動下での戦闘は大丈夫なのか?」
スピードレースに武器なんて無粋です! 競うのはスピードと駆け引き!
「分かったから落ち着け……。全くもう……」
ふぅふぅ……。でも箒さんだって、優勝候補でしょ? 《紅椿》の展開装甲を機動方面に固めれば相当凄くなるはずだけど。
「そうなんだが、如何せん慣れていないからな」
じゃあ、明日はそれの特訓だね。そろそろ私も練習しなくちゃいけないしね。
「なら、頼んでもいいだろうか?」
もちろん。簪さんもスラスターは手伝うから、機動の練習しようね?
「うん……お願いしようかな……」
うん、良かった。……会長さんの殺気が。だから、さっさと仲直りしようよ……。
「今日白野にアドバイスもらったから、もう少し頑張ってみる」
むんっと、力を入れる簪さんは可愛い。これは会長さんと同感だ。じゃあ、消灯まで一緒に整備室で頑張ろっか。二人っきりで。
「(グググググググ……)」
へっ、素直にならないあなたが悪いのですよ。
「そんな言い方はやめて……」
あら、真っ赤っか。ふふふ、明日一緒に練習したいしね。ね、箒さん?
「あぁ。私は手伝えないから心苦しいが……その代わり、明日は協力するぞ」
「うん……ありがとう」
うむうむ。じゃ、整備室に行こっか。っと、その前に。
「? どうしたの?」
んーん。簪さんと箒さんは先に行ってて。ちょっとO☆HA☆NA☆SIしなくちゃいけないから。
「そ、そうか」
「じゃあ、先に行ってるね」
うん、じゃあね二人とも。…………。……で、そこのおバカさん。
「ぎくっ!? は、はろ~白野ちゃん」
はい、こんばんは会長さん。あ、私はこれから簪さんと二人っきりで夜を過ごすので、邪魔しないで下さいね。
「うぐっ……ずるいわ白野ちゃん。お姉ちゃんを差し置いて簪ちゃんと二人っきりだなんて」
だからさっさと仲直りしろっつってんだよこのバカ会長。
「……なんだか、白野ちゃん、私に対してどんどんひどくなってきてない?」
おっと失礼。ま、十月のタッグマッチの時は私が簪さんと組みますから。せいぜい、打ち破って見せて下さいな。私も全力でお相手しますから。
「そこは、私と一緒に組ませてあげるとか言うものじゃないの?」
だったら奪ってみなさいなお姉さん?
「ぐぐぐ……」
じゃ、今日はこれで。織斑君のことはお願いしましたよ? 亡国企業みたいなのが他にいないとも限らないですし。
「……分かってるわよ」
ふふふ、すねないで下さいな。仲直り計画はしっかりやらせてもらいますから。
「…………うん」
簪さんのこととなると、とたんに可愛らしくなってしまうのだから困ったものだ。そんな会長さんと別れ、約束通り整備室に向かう。さてと、時間も限られてるし、少し急ごっか。
「うん」
とはいっても、さっきのもバランスが悪かっただけで、基本格子は出来てるし、完成はもう少しかな。後々調整はしなくちゃいけないだろうけど。
「ちょっとだけど、調節してみた。見てくれる?」
うん。もちろんだとも。
その後も、あーでもないこーでもないと議論しつつ、最低限満足できる所まで漕ぎ着けたところで、巡回にきた織斑先生に時間だと言われて整備室を追い出されたのでありました。ぎゃふん。
と言うことで週末。織斑君はデュノアさんとお買い物に行ったみたいだが、私たちは約束通りキャノンボール・ファストの練習。ちょっと箒さんの機嫌が落ち込み気味だったが。まぁまぁ、よかったら明日三人でお買い物に行きましょうよ。そして、可愛い服買って、織斑君を悩殺しちゃいましょう。で、簪さんは会長さんに鼻血でも吹かせてやろう。
「ふふっ……分かった」
「い、一夏を、か……」
ま、それは明日のお楽しみということで、まずは《打鉄二式》の飛行テストからだね。データ上では大丈夫だろうけど、確認しとかなくちゃ。私は下で待機してるから、箒さんは簪さんと一緒に飛んでみて。
「分かった。《紅椿》行くぞ」
一足先に箒さんが《紅椿》を展開して空に飛ぶ。《紅椿》なら、《打鉄二式》に何かあってもフォローできるだろう。
「うん……行こう、《打鉄二式》」
《打鉄》とは違う装甲を纏う《打鉄二式》。武装はまだ不十分だけど、こう見ると十分な出来だ。
そう、纏った感じで、何か違和感とかはある?
「ううん、大丈夫。じゃあ、飛んでみるね」
そう言って、箒さんの所まで飛ぶ簪さん。ここまでは問題はないようだ。じゃあ、箒さんについて行ってみて。箒さん、少し速めに飛んでみてくれる?
『了解した。行くぞ、簪』
『うん、お願い、箒』
そうして、二人は周回状のアリーナを飛び始める。二周ほどしても、《打鉄二式》に問題は見られない。
じゃあ、これからが本番だよ。簪さん、フルスピードで飛んでみて。大丈夫、箒さんも私もついてるから、安心して吹っ飛ばしちゃって。
『……うん!』
『白野の言うとおりだ。安心して飛べ!』
箒さんの激励を受け、簪さんと《打鉄二式》は一気にスピードを上げた。スクリーンの速度計はみるみる数字をあげていき、スペック上の最高速度をたたき出す。それでも、機体には何の不具合も出ていない。うん、完璧だ。おめでとう、簪さん。第一段階突破だよ。
『うん……うんっ!』
ほら、涙ぐんじゃったら危ないよ? 泣くのは武装が出来てから。後、一周したら下りてきて?
『えへへ……そうだね。うん、分かった』
そうして下りてきた簪さんの目元は少し赤かったけど、とても晴れ晴れとしていた。
「それにしても速かったな。何かいじくったのか?」
すこし《聖杯》のデータを使ったの。武装関連は複雑すぎて使えないところが多いけど、ブースター自体は一応普通の技術だから。バランス構成とかなんて、《紅椿》以上だしね。流石は《カリス社》というかキアラというか。
「うん。少し見せてもらったけど、凄かった。まさに芸術品」
ちなみに、昨日《紅椿》にやったのも、《聖杯》の機能の一つね。私はあんまり使わなかったけど、参考にはなったからね。
「そうだったのか。やはりというか、凄いのだな《カリス社》は」
まぁ、あそこの人たちチート集団だし。ロシア本社で一般IS向けの武装見せてもらったけど、ロマン溢れるものばっかりだったし。ドリルとか電撃とか、ドリルとかドリルとか。会長さんの武装もいくつか手掛けてるみたいだし。
「お姉ちゃんの?」
あ、聞いてなかった? 会長さん、ISの基本構造は会長さんが組んだみたいだけど、あの水のナノマシンとかは《カリス社》が主導して作ったみたいだよ。まぁ、あの武装は普通の人じゃ無理だろうし。《ヴォジャノーイ》のコンセプトは《ミステリアス・レイディ》みたいだしね。
「そうだったんだ……」
「というか、どれだけドリルが好きなんだ……」
んなっ!? だって、《零落白夜》とかいらないくらいの高威力で、こう、攻撃こそ最大の防御、いや、攻撃isパワーを体現しているドリルだよ? それもそれをロケットみたいに飛ばせるなんて、ワクテカするじゃない!
「分かった、分かったから落ち着け……」
ん……まぁ、この話はまた今度。じゃ、簪さん。今度は私と競争しようか。スペック上は《聖杯》の方が上だけど、やりくり次第では勝てるかもしれないしね。
「……そうかなぁ」
うん。それに、スペック上は上の相手はたくさんいるんだから。簪さん、織斑君と《白式》に勝ちたいでしょ?
「!? …………うんっ!」
よし、いい返事。箒さんもエネルギー大丈夫?
「あぁ。いつもよりも減りが緩い。それにしても、《聖杯》はあれだけ大規模な攻撃とかをしてるのに、どうしてエネルギーが減らないんだ?」
あぁ……普段の、例えば《ゲイ・ボルグ(刺し穿つ死棘の槍)》なんかだと、本気で解放するとエネルギーを食うけど、普通に使う分には普通の槍だからね。それに《空想具現化》を使っているときは、じつはコアに最強の鞘を展開してるから、実質無尽蔵状態なの。
「最強の鞘?」
「よく分からないが、それは少々犯則ではないか?」
一応、無尽蔵といっても、厳密にはシールドエネルギーとは別口だから、やられると言えばやられるけどね。さてと、とりあえず、準備運動がてらひとっ飛びしてくるから、二人は休憩してて。
Another side 簪
行っちゃった……。
本当にあっという間に《聖杯》を展開して飛んで行ってしまった。しかもものすごいスピードで。世界最高傑作の名は伊達じゃない。
「全く白野は……。簪は疲れていないか?」
そう心配してくれるのは新しく出来た友達の箒。あの篠ノ之束博士の妹だ。私と似た、いや、私以上の境遇の人だ。
「うん。箒も、付き合ってくれてありがとう」
「気にするな。私も高速機動の練習をしなければならないからな。まぁ、あれは参考にならなそうだが」
ちらりと上を見ると、ものすごいスピードで飛び回る白野。見れば背面飛行もしている。……確かに参考にならない。
「以前言っていたが、本当にスタート直後に対応できなければ相手にもなれないな。加えて、加速も零からトップスピードに持っていけるからな。どうすればいいんだ」
そう言えば、前に見せてもらった映像では、八つの的を同時に破壊していた。……もう、白野が優勝で決まりじゃないかな?
「でも《紅椿》なら追いつけるんじゃないの?」
「……どうだろうな。昨日、姉さんに聞いてみたのだが、やはり《絢爛舞踏》を使わないと難しいらしい。エネルギー配分についていくつかアドバイスをもらったのだが、簪も見るか?」
「篠ノ之博士の?」
篠ノ之博士のアイデアはとても魅力的だ。だけど、私は他のことも気になってしまう。
これも人伝で聞いた話だが、箒と篠ノ之博士は仲が良くなかったと聞いている。そして、それが改善されたということも。それは、今聞いた話からもよく分かる。
できすぎる姉を持つ気持ちというのは、よく分かる。そして、その姉にどう接していいか分からないという気持ちも、痛いほどに知っている。だからこそ分からないのは、どうすれば、昔のように接することが出来るのか、ということ。
「簪? どうしたのだ?」
「箒は、篠ノ之博士……お姉さんとどうして仲直り出来たの?」
思わず口に出してしまったのは、今までの話題とは全く関係の無いこと。箒は驚いたように目を丸くしていたが、すぐに機を取り直し、何やら恥ずかしそうにした。
「その話か……。恥ずかしいことだがな、白野のお陰というか、白野がいなかったら、私も姉さんも歩み寄れなかったと思う。私ばかりが辛かったと思っていたし、私が姉さんにどれだけ守られていたか、それに、愛していてくれたのか、ということも知ることはなかっただろうな」
「そうなの?」
「あぁ。それに、白野に言われて思い出したんだ。今のようになる前。姉さんに対することが出来なくなる前の時のこと。この写真なんだが……」
そう言って見せてくれたのは、丁寧に収められた写真。そこには小さな箒と、篠ノ之博士が写っていた。二人とも、笑顔だ。
「これは、姉さんの宝物なんだ。それを私に預けてくれた。小さくしてもらって、いつも持ち歩いているんだ」
私とお姉ちゃんが、こんな風に笑えなくなったのはいつからだっただろうか。昔の写真を見なくなってしまったのはいつからだろうか。
「簪も会長さんと、その、色々あるのだと思う。私もその気持ちは分かるから、簡単に仲良くなれだなんて言えないけど……それでも、いつか、一歩踏み出してみて欲しい、と思う」
一歩。その一歩が限りなく重い。
「なに、今すぐというわけではないさ。それに、白野もいるし、私もいる。それに、会長さんもいる。簪は一人じゃないんだ」
一人じゃ、ない……。うん……そうだ。私は一人だと思っていたけど、私の傍にはいつも本音がいてくれた。それに今は箒もクリスカもイーニァも白野も、それに、お姉ちゃんも私の周りにいてくれた。お姉ちゃんから離れようとしていたのは、他でもない私だ。
思わず涙を浮べてしまった私のことを、箒が抱きしめてくれた。とっても温かい。
「お姉ちゃ……」
「ふふっ、私はどちらかと言えば妹なのだがな」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
うぅ……恥ずかしい。
「ん? っと、これでは色んな人に嫉妬されてしまう」
嫉妬? 何のことだろうかと周りを見てみると、白野が頬を膨らませてこっちに来ていた。
Another side out
ウォーミングアップから戻ると、簪さんと箒さんが抱き合っていた。何事でしょうか。それ、私の役ー!
「何を言っているんだお前は……」
「同意。白野の役目じゃ、ないよ?」
ぐぬぬ、簪さんを箒さんに取られた。NTRですか?
「バカなことを言ってないで、ほら、簪と一緒に行ってこい」
むぅ……いいもん、すぐに奪い返してやるんだから。行こ、簪さん。
「ん、分かった。よろしくね、白野」
よっしゃ、さあ、ついてこれるか、簪さん。
「いや、本気出されると、ムリ……」
じゃあ、慣らしながらいこうか。補助バイザーにも慣れないといけないしね。
「うん。じゃあ、高速機動で行く」
さっきも最高速度で飛んでいたが、高速機動はまた違ったものがある。今回は《打鉄》の高速機動パッケージを流用している。確か《飛燕》だったか。……アサシン?
「アサシン? 何のことかは分からないけど、まずは飛ぶだけにしよ」
うん。じゃあ、箒さんも視線のカメラ繫いでおくから、見ててね。あと、合図もよろしく。
『分かった。じゃあ、行くぞ。3、2、1、スタート!』
箒さんの合図と共に、同時にスタートする。周りの風景は一瞬で流れていくのに、その風景がハッキリ見えるこの感覚。あの青タイツはこんな風景を見ていたのか。羨ましす。
簪さん、どう?
『うん、大丈夫そう。後一周したら、妨害とかもして欲しいかも』
ん、了解。ちょっぴりハードモードでいくよ。
『ん、どんとこい』
さて、高速機動でイヤなのことと言えばトラップである。と言うことで、王の財宝、散りばめました。
『……流石に嫌らしすぎっ!?』
いや、これこそ本領発揮かなって。まぁ、あとで怒られそうだけど。ほら、目線をそらしたらダメだよ。トラップが一つだけとは限らないんだから。
『もうっ、いやらし、すぎっ!』
ほら、早く追いつかないと、独走しちゃうよ?
『くっ、だったら!』
そういうと、簪さんは高速機動下で、瞬時加速をかけて、一気に間を詰めてくる。っと、危ない。
『あたれっ!』
ノンノン。当たってなんかあげないよ。
『むぅ……エネルギーが……』
やはり、無理矢理の瞬時加速はエネルギーを食ったようだ。キリもいいので切り上げて箒さんの所に戻る。どうだった箒さん。私の視線の移動とか参考になったかな?
「役には立ちそうだが……やり過ぎだ。というか、あんなに移動していたのだな」
まぁ、トラップとか潜ませなくちゃいけないし、相手の居場所把握しなくちゃいけないしね。単に吹っ飛ばすだけなら、随分単純なんだけどね。
「背面飛行とかもするのにか?」
あれはISのセンサー使ってるから、問題は無いんだけどね。対空というか、自由自在に動きたいから、ってだけ。
「……まぁいい。それよりも簪、大丈夫か?」
「うん、エネルギーが少なくなっただけだから。でも、少しくらくらするかも」
「ならば休んでいるがいい。白野連続だが、いけるか?」
うん。エネルギーはまだ余裕があるから、大丈夫だよ。じゃあ、お互いに勝負しながらにしようか。
「そうだな。ふふ、同じく第四世代同士だ。なんだか楽しみだな」
そう言えばそうだ。《白式》も展開装甲は使ってるみたいだけど、正式な第四世代モデルは《聖杯》と《紅椿》だけだ。というわけで、私と《聖杯》が全力で勝負できる相手なのである。
『では簪、合図を頼む』
『ん。3、2、1、スタート』
簪さんの小さな合図で、私と箒さんが同時に飛び出す。加速は私の方が上だが、《紅椿》の速度はバカに出来ない。あっという間に追いついてきて、後ろからレーザーを放ってくる。っと、あぶね!
『ふふ、余裕でいる暇なんか与えないぞ?』
むむむ、こしゃくな。こっちだって、《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》で焼いちゃる。
『っと。そんな大振りではあたらなっ!?』
ふふん。言ったでしょ? トラップは一つだけじゃないんだって。
『っく、やるな白野!』
ふふん、こちらの方が一日の長があるのです。ほら、そうしている間に、差が開いちゃったよ?
『ならば、打ち落とすまでだ!』
のわっ!? のわわっ!? あ、かすった!
『白野の言うとおりだ。攻撃は何度も重ねた方がいいみたいだ』
くぅ……、何だか悔しい。でも、負けてなんかあげないんだから。《ゲイ・ボルグ(刺し穿つ死棘の槍)》で打ち落としてあげる。その心臓(エネルギー)、全部もらうよ?
『白野、なに、をって、キャッ!?』
たとえ掠っただけでも、エネルギーを根こそぎ取っていく。それで、《紅椿》の動きが遅くなる。もう、高速機動を維持するだけのエネルギーがないのだ。ということで、今日は私の勝ちー。
『くっ、反則だぞ、その武装は』
へへん。でも、《紅椿》だって相当強いんだから。取り敢えず、《絢爛舞踏》を自由に発動できるようにしなくちゃね。
『うっ……分かった』
それじゃ戻ろっか。簪さん、どうだった?
「何というか、むちゃくちゃすぎ」
「ははは……、少し熱くなりすぎたかもしれないな」
ごめんなさい。つい、楽しくて。
「確かに凄かったけど。センサー無しじゃほとんど分からなかった」
まあ、超高速だったからね。さてと、取り敢えず今日はこの辺りにしよっか。エネルギーもないし、体も休めないといけないしね。午後は……ゆっくりお茶でも飲もっか。
「白野のお茶なら、喜んでご馳走になろう」
「うん。美味しいから楽しみ」
ふっふっふ、ならばゾフィーさんとイヴァンさんからもらった取って置きを披露しましょう。旧ロシア王室御用達の紅茶だから、目が飛び出るほど美味しいから、楽しみにしててね。
「ほぅ、ならば私もクッキーを持っていこう。たしか、評判の店のだったはずだから、美味しいと思うぞ」
「むぅ……じゃあ、私も取って置きのお菓子も持ってく」
おや、何だか豪華なお茶会になりそうだ。ま、ゆっくりお話ししながら過ごしましょうか。